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おめでとう!この日を待ってました!とまず書きたい。
3月9日のW杯11戦スウェーデン・オーレ大会、男子は遠藤尚が3位、女子も村田愛里咲が3位。男女揃って期待の星が、初めてのW杯表彰台に上がったのだ!
モーグル日本チームに、新たな歴史を作り始めたと言って過言ではないだろう。どちらも王者のスピードを上回るパフォーマンスであり、大きな自信をつけたに違いない。次の戦いにも必ずつながる堂々たる滑りであり、ソチ五輪に結び付くものと期待したい。
そして、オーレ開催の第11戦&第12戦では、女子はハンナ・カーニー(アメリカ)が連勝し、今季12戦11勝。男子はミカエル・キングスバリー(カナダ)が敗れはしたものの、2位と3位で、今季一度も表彰台を逃していない。男女とも、偉大な記録が更新中だ。今季はまさに伝説になるストーリーを目の当たりに出来た記念すべきシーズンだったと言えるが、その反面、王者に対して強力なライバルが存在し激しい勝負が展開されてこそ、スポーツとして面白くなるのも確かだ。遠藤と村田には是非トップと競い合う存在になってほしい!という期待も込めて、今回は今までの「モーグル名勝負」をいくつかご紹介したい。
おそらく史上最もドラマティックに語られるのは、’94年リレハンメル五輪のエドガー・グロスピロン(フランス)、ジェン-リュック・ブラッサール(カナダ)、セルゲイ・シュプレツォフ(ロシア)の3強バトルだろう。
’92アルベールビル五輪金メダル獲得など絶対的王者のエドガー。’93季に大ブレイクし、W杯も世界選手権も制したジャン-リュック。’93季はエドガーが怪我をしていただけに、’94五輪ではどっちが強いのか、どっちが金メダルを獲るのか、注目された。そして、そこに割って入ったのがセルゲイ。元々他種目もこなすコンバインド選手だったが、モーグルに専念しブレイク。2強に並ぶ存在になった。
強烈なスピードが持ち味のエドガー、雪面に吸いつくような華麗なターンのジャン-リュック、マシンのように高レベルで正確な滑りを見せるセルゲイ。個性豊かな3強の戦いは、エドガーが2人より1秒以上速かったにも関わらず銅メダルに留まり、銀メダルはセルゲイに。ターンジャッジ5人中の4人が5点満点をつけたスーパーランによって、ジャン-リュックが金メダルを獲得した。
翌’95季もこの3強バトルはさらに白熱し、今度はセルゲイがW杯出場9戦で6勝&全戦表彰台と圧勝。ただしエドガーも、地元ラ・クルーザの世界選手権で優勝と、最高の舞台はきっちり主役を演じる。ジャン-リュックも、世界選手権では2位に食い込むなど、2人と競り続けた。
この3強バトルは終焉もドラマチックだった。エドガーは’95季にて現役を引退。セルゲイは最強伝説の始まりと思われたが、’95年7月にオートバイ事故で死亡する。残されたジャン-リュックは、新たなる戦いをいくつも重ね、’02季まで現役を続けた。
フィンランド vs. アメリカという、チーム対決も’02季~’06季頃、大変に熱かった。’98長野五輪後の男子モーグルは、ヤンネ・ラハテラ、サミ・ムストネン、ミッコ・ロンカイネンらのフィンランドチームに完全に支配された状態だった。そんな中迎えた’02ソルトレークシティ五輪、自国開催での活躍を目指すアメリカの、ジェレミー・ブルーム、トラビス・メイヤーら新勢力が次々台頭。長野五輪金メダリストのジョニー・モズレーの復活もあり、勢いはアメリカにあった。そんな中「(アメリカの)2万人の大観衆をシーンとさせてやるよ」と宣言。アウェーでの戦いだったフィンランド勢だが、ヤンネがしっかり金メダルを持ち返った。
この後も、チームの勢いは完全にアメリカが勝るが、翌’03季、五輪と同じ会場のディアバレーの世界選手権にて、今度はミッコがアメリカ勢を抑え優勝する。自国の大舞台で、一番おいしいところを続けて持っていかれたアメリカは、悔しさを重ねることとなった。
そして’05季世界選手権フィンランド・ルカ大会。今度は絶対負けられないのが、ホーム・フィンランドチームだった。ところが、ヤンネ、サミ、ミッコが予選1~3位を占めるものの、決勝では撃沈。アメリカのネイサン・ロバーツが、伏兵ながら優勝をさらう。さらにデュアル戦でも、アメリカのトビー・ドーソンが決勝でサミを破って優勝。加えて女子は19歳のハンナ・カーニーが優勝。’02五輪、’03世界選手権のリベンジをするが如く、フィンランドの大イベントをアメリカが完全にジャックしたのだった。
そして、チーム抗争の最終激戦と見られた’06トリノ五輪の結果は、ミッコ銀メダル、トビー銅メダル。両国ともメダルを獲るが、デイル・ベッグ-スミス(オーストラリア)という新たなキングの出現で、最強チーム対決は鎮静化されていった。
女子では、カーリー・トゥロー(ノルウェー)vsジェニファー・ハイル(カナダ)の対決が大きな歴史を残した。
’01季、27歳になったカーリーはW杯総合優勝&世界選手権優勝。怪我などの不遇を乗り越え、女王へとのし上がる。同じシーズン、ジェニファーは17歳でW杯デビュー。総合4位になるなど、いきなり大物ぶりを示した。
翌’02季、カーリーはトリノ五輪で金メダル。ジェニファーは0.01点差でメダルを逃す。この時点での2人は「女王」と「新人」だった。
2人のデッドヒートは、’04季から始まる。女王としての実績、風格で、男子レベルのエアにもトライするカーリー。その女王に必死に挑戦する、前年の休養シーズンから復帰したジェニファー。勝利数は女王が勝ったが、W杯総合優勝の座は挑戦者のものとなった。
これ以後、W杯総合優勝ジェニファー、総合2位カーリーという構図は3年間続いた。そして’06トリノ五輪でも、ジェニファー金メダル、カーリー銀メダル。これが事実上、最終バトルとなる。
’04季以降、成績的にはジェニファーが上だが、イメージ的には「女王カーリーに挑戦し続けたジェニファー」という雰囲気だった。まるで、カーリーがジェニファーを五輪金メダリストに育て上げたような、2人のバトルだった。
さて今後、モーグルW杯にはどんな対決が待っているのだろうか?ミカエル、ギルボー、アレックス、そして遠藤までもが加わった4強になったら、男子は最高に面白い。女子は女王ハンナに、復活した前女王上村愛子が先月の苗場大会で再戦への挑戦状を叩きつけた形だ。ジャスティンの成長もあるだろうし、村田の成長も著しい、ハンナの1人勝ちがずっと続くわけではないだろう。
これからの展開から、ますます目が離せない。
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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