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2011-2012(‘12季)フリースタイルW杯モーグルは、全13戦の内、8戦を消化。今週末はいよいよ苗場大会だ。18日(土)がモーグル(シングル)、19日(日)がデュアルモーグルである。今回のコラムは、その見どころに触れておこう。
やはり、まず最初に触れておくべきなのは、今季、絶対的な強さを見せつけている、男子ミカエル・キングスバリー(カナダ)、女子ハンナ・カーニー(アメリカ)に関してだろう。
ミカエル、通称ミックは、第7戦アメリカ・ディアバレー大会デュアル決勝で敗れ、連勝はストップ。しかし第8戦中国・ベイダレイク大会では、再び勝利。今季、8戦7勝2位1回。'00季にヤンネ・ラハテラ(フィンランド/現日本チームコーチ)が記録したシーズン7勝(シングル5勝・デュアル2勝)に並んでいる。苗場で新記録達成なるか、注目だ。
対抗馬はジェレミー・コータ、パトリック・デニーン、ブライオン・ウィルソンなどのアメリカ勢、ヴォルコフ兄弟のロシア勢、調子を上げてきたフィリップ・マーキーらカナダのチームメイトあたりだろう。
しかしながらシーズン総合優勝争いに関しては、1位ミックと2位コータの差がすでに401点もあり、コータが大奮起とミックの大失敗がないかぎり、苗場でミックの総合優勝が早くも決まる。
ハンナは、今季負けなしの8連勝(昨季から合わせると15連勝中と大記録更新中)。’90年代の大女王、通算46勝を誇るドナ・ワインブレット(アメリカ)が記録したシーズン勝利数8勝を、昨季に続き超えるチャンスを迎えている。
対抗馬はずばり、ジャスティン・デュフォー-ラポイント(カナダ)だ。8戦中2位が6回と、勝てないものの必死にハンナに食らいついている。まだ成長まっしぐらの17歳であり、一旦逆転すれば、そのまま勢いにのる可能性もある。
ただし、女子もW杯総合ポイントは、1位と2位で312点差がついている。ジャスティンが差を縮めなければ、苗場でハンナの総合優勝が決まる。男女とも残り3戦を残している日本大会で、シーズンチャンピオン決定の瞬間が見られる可能性が極めて高いのだ。
なお今季からは、「スーパーファイナル」という制度が導入されている。従来は予選1本、決勝1本であったのが、スーパーファイナルは決勝の上位4人が優勝をかけてもう一本滑るという新ルールだ。単純に、上位選手の滑りが3本見られるというのは、観戦者としては楽しい。そして、4位以上を確定した選手が一発勝負をかけてくるハードアタックも見ものだ。スーパーファイナルでミックやハンナを本気にさせるパフォーマンスを他選手が見せれば、勝負はより面白くなる。現在最高難度と言えるダブルフルとコーク1080を、ミック始め複数選手が繰り出す展開を期待したい。
実力にプラスして、ルックスにも恵まれた話題の選手も、リストアップしておこう。ジャスティンは姉が2人おり、全員がW杯選手なのだ。23歳の長女マキシムは現在総合12位、20歳の次女クロエは現在総合6位。そして、17歳の三女ジャスティンは、前述のように2位。美人三姉妹が揃って世界トップレベルのアスリートであるのは、稀なケース。勝敗の行方だけでなく、こんな点も見どころだろう。
そして、日本チームだ。
ずばり、予言したい。「遠藤尚の表彰台は十分にある!」。
先日のW杯カルガリー大会では、スーパーファイナルで失敗し最終順位は4位だったが、予選2位、決勝3位。モーグル選手としては長身で、バックフリップなど巨大なエアは豪快。スピードも世界トップ標準だ。もはや表彰台未経験なのが、不自然に思える滑りだ。彼の地元、福島&宮城をパッと盛り上げるパワーがある。楽しみだ。
西伸幸は、今季大きな結果こそ出ていないが、デュアルこそこの男のスピードが活きる。19日の日曜に注目か!?
女子の一番の注目は、やはり上村愛子だ。さすがに1年のブランクから完全には戻っていない印象だが、今回の苗場大会での活躍を目標に調整してきた。もし、世界選手権を制した'09季のテクニックとスピードが戻れば、ハンナに対抗できる存在なのは愛子なのだ。
そして、伊藤みきが復調の兆しを見せている。今季は星野純子も、予選ながら4位を記録するなど成長を見せている。女子では数少ないバックフルを飛ぶ、村田愛里咲のパファーマンスも楽しみだ。
苗場でのW杯は通常よりも多い、17名の日本選手が出場予定だ。附田雄剛、里谷多英らベテラン、これから活躍が期待される若手も登場。地元開催の大会は、新たにブレイクする選手もたびたび登場する。新たなヒーロー、ヒロインの活躍も楽しみにしたい。
[写真左]ミックには、1シーズン全W杯で表彰台という記録も掛かる。’95季のセルゲイ・シュプレツォフが出場全戦で表彰台だったが欠場試合がある
[写真中央]こうなったらハンナには、シーズン全勝という奇跡的記録を期待!我々は偉大な伝説の目撃者になれるかもしれない
[写真右]'09季終盤の愛子は、ハンナすら寄せ付けなかった。どこまでテクニック、パワーが復活しているか?
[写真左]遠藤のスケールの大きな滑りは、間違いなく世界トップレベル。ミックを止めるのはこの男、といっても大げさではない
[写真右]左から次女クロエ、三女ジャスティン、長女マキシム。三姉妹で世界転戦しているのが、力をプラスアルファしているとも言える
Photo / Shin Okamoto
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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