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強かった。決勝戦で8トライである。久しぶりの優勝を後押ししようと、神戸、大阪から駆けつけたファンですら戸惑ったという。神戸製鋼コベルコスティーラーズの18シーズンぶり10度目の日本選手権優勝、15シーズンぶり2度目のトップリーグ制覇は、55-5という大差で成し遂げられた。
MVPは、ダン・カーター。ベストフィフティーンには、山下裕史、トム・フランクリン、中島イシレリ、アンドリュー・エリス、アダム・アシュリークーパー、リチャード・バックマンの6名が選出された。ベストフィフティーンは、記者投票などによって決まるが、優勝決定後の投票であれば大半が神戸製鋼の選手だっただろう。個人的には、神戸製鋼のアタッキングラグビーを支えたFW前5人、特にLOトム・フランクリン、張硯煥(チャン・ソクファン)の献身的な仕事量を一番に称えたい。
決勝戦の直後、神戸製鋼のデーブ・ディロンヘッドコーチは「みんながチームメイトを思いやりながら戦っていた。会社の歴史を理解し、平尾誠二さん(故人)のことを思って戦った。チームを誇りに思います」とコメントした。
印象に残る言葉だった。総合順位決定トーナメントが始まる前、チームのアドバイザーを務める神戸製鋼OBの増保輝則さんに話を聞いたことがある。多くの人はダン・カーターの加入がチームを劇的に変えたと感じているようだが、増保さんは、ウェイン・スミス総監督の存在の大きさを語っていた。チームのカルチャーを作るところから再建を始めたからだ。会社の歴史を理解し、震災からいかに復興したかを学び、その延長線上に自分たちがラグビーをしていることを認識させた。決勝戦のフィールドに登場した23名の選手はグランドコートの下に会社の作業着を着用していた。ラグビー部OBの社員が集めてきたものだという。それもウェイン・スミス総監督のアイディアのようだ。
卓越したスキルを持った選手が揃っているだけでは勝てない。ハードなトレーニング、戦術・戦略の理解、チームメイト同士の信頼感、そして、感謝の気持ちである。それを1シーズンで選手に徹底、花開かせた点でスミス総監督以下のコーチ陣の手腕は高く評価されるべきだろう。
一方、敗れたサントリーサンゴリアスも立派に戦ったシーズンだった。沢木敬介監督が「日本人選手を育てたい」と、外国人枠をフルに使わず、堀越康介、梶村祐介、尾崎晟也らのルーキーほか若い選手を積極的に起用し、接戦を潜り抜けてファイナリストとなった。日本代表に多くの選手を送り出し、主力選手には疲労も蓄積していただろう。連覇のあとの準優勝は立派な成績だ。「この負けでまた強くなれる」。沢木監督の言葉がラグビーワールドカップ2019以降のトップリーグに期待を抱かせてくれる。
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