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いよいよ日本ラグビーの頂上決戦である。12月15日、午後2時、秩父宮ラグビー場にて、サントリーサンゴリアスと神戸製鋼コベルコスティーラーズが対決する。この試合は、トップリーグ総合順位決定トーナメントと日本選手権の決勝を兼ねている。実力は拮抗しており、キックオフ直後から一瞬たりとも目の離せない戦いになりそうだ。
トップリーグ三連覇を目指すサントリーは、ヤマハ発動機ジュビロとの死闘を制しての決勝進出だ。その準決勝から先発で3名の変更がある。先発HO中村駿太、PR垣永真之介は、準決勝ではリザーブ(控え)から途中出場。HO北出卓也、PRセミセ・タラカイと先発、リザーブが入れ替わった形だ。14番のWTBは負傷の中鶴隆彰に代わってチーム加入2年目の成田秀平が先発する。一方、神戸製鋼は怪我で準決勝を欠場したLOトム・フランクリン、FB山中亮平が復帰してきた。今季のベストメンバーが揃っての戦いとなる。
両チームは同じレッドカンファレンスに所属し、9月14日の第3節で対戦。この試合がトップリーグデビュー戦となったSOダン・カーターの活躍もあって神戸製鋼が36-20で勝った。今回はそのリベンジに燃えるサントリーという構図だが、神戸製鋼もカーターを軸にした攻撃に磨きをかけており、互いの成長度合いがはかられる試合でもある。
延長戦の末にヤマハ発動機を破った直後、サントリーの沢木敬介監督は「神戸製鋼にダン・カーターがいるなら、サントリーにはマット・ギタウがいます」とコメントした。その言葉通り、ニュージーランド代表で112キャップを持つカーターと、オーストラリア代表で103キャップのギタウというプレーメイカー対決は最大の見どころ。ともに正確なプレースキッカーであり、戦略的キック、パス、ランとすべてのスキルに優れる世界屈指のSOだ。どのようにゲームを組み立てていくのか、2人の動きを見ているだけでラグビーの奥深さを感じられるだろう。
神戸製鋼が昨季までとは生まれ変わったように攻撃的チームになったことで、もともと「アグレッシブ・アタッキングラグビー」を掲げて戦ってきたサントリーとのアタック合戦に胸を躍らせるファンは多い。今季、ここまでの9試合を数字で比較すると、トライ数は神戸製鋼が「61」、サントリーは「40」で大きな差がある。ボールを持って走る「ボールキャリー」の数字は拮抗しているが、ディフェンスをクリアに破る「クリーンブレイク」は、神戸製鋼「173」、サントリー「87」と倍以上の開き。しかし、タックルされながらも前進する「ディフェンス突破」は、神戸製鋼の「270」をサントリーの「293」が上回る。サントリーは粘り強くボールをつないでディフェンスを突破し、神戸製鋼はいとも簡単にディフェンスを破ってトライを重ねているように見えるのだが、それを裏付ける数字だ。
挑戦者である神戸製鋼は、FW陣が小刻みにパスをつないでディフェンスを崩し、カーターが自在に動けるスペースを作り出してきた。サントリーのディフェンスの前でも同じスタイルで戦うことができるのか。サントリーのスピーディーなアタックに翻弄される前に攻め勝ちたいところだ。対するサントリーは、準決勝でヤマハ発動機が徹底してボールをキープして攻めてきたことで苦戦した。神戸製鋼の攻撃力はヤマハ発動機以上だ。ボールを長い時間支配されれば苦しい。いかにボール保持時間、アタックの機会を多くできるかが勝利のカギだろう。80分を走り切るスタミナではサントリーに分があるように見える。最後まで試合がもつれ、3点差以内で終盤を迎えれば、カーターかギタウのドロップゴールによる決着もありそうだ。
攻撃の質の高いチーム同士の対決だけに、スクラムで優位に立ったチームが有利だ。スクラムで圧力をかけ、ディフェンスの出足を遅らせることができれば、攻めるスペースは広がる。また、反則を誘って、PKからのタッチキックでラインアウトからモールを組むチャンスも訪れるだろう。勝敗を分けるポイントはいくらでもあげられるが、正確なプレースキッカーがいるだけに自陣での反則は命取りになる。
個々の選手の対決も楽しみだ。神戸製鋼のSH日和佐篤は昨季までサントリーでプレーしていた。サントリーでは試合の終盤に流大キャプテンと交代で登場し、落ち着いたプレーでチームを勝利に導いてきた。プレー時間をもっと長くして日本代表復帰を目標に神戸製鋼に移籍しており、流とのマッチアップは楽しみだ。FW第一列は神戸製鋼が平島久照、有田隆平、山下裕史、サントリーが堀越康介、中村駿太、垣永真之介で、ジュニアジャパンの中村以外は日本代表キャップホルダーであり、どんな駆け引きを繰り広げるのか。
CTB対決も面白い。神戸製鋼のリチャード・バックマンはスーパーラグビーで活躍し、アダム・アシュリークーパーは、オーストラリア代表116キャップを誇る。サントリーは日本代表入りしたばかりの梶村祐介、攻守にハードにプレーする村田大志が相対する。神戸製鋼のトライゲッターであるWTB山下楽平、アンダーソン フレイザー、サントリーの尾崎晟也、成田秀平のスピードとランニングスキルの勝負も興味深い。どこを切り取っても楽しめるカードだ。
サントリーの沢木敬介監督は、「サントリーが自分たちのスタイル、やり方をどれだけ出せるか。そこにチャレンジしたい」とコメントし、神戸製鋼のディロン・ヘッドコーチは「1週、1週決勝だと思って戦ってきたので3回目の決勝を戦うつもり」と話した。
SOとして格違いのパフォーマンスを続けるダン・カーターは、準決勝でトヨタ自動車ヴェルブリッツに勝ったあとの会見で、「今年一番成長できたのは、自分ができると信じること=セルフ・ビリーブ。選手一人一人にセルフ・ビリーブがあり、お互いのためにプレーできているし、チームの一体感がある」と語った。セルフ・ビリーブは、サントリーにも備わっているものだろう。だからこそ、連覇を達成できたのだ。自分たちの力を信じ、冷静に実力を出し切れるのはどちらか。長く語り継がれる決勝戦が見たい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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