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田村は正確なキックだけではなく、的確な攻撃選択でチームを勝利に導く出色のパフォーマンス。リーチが好調時のパフォーマンスに戻ってきているのも心強い。彼が先頭に立ってファイトすることでチームには勢いが出た。福岡の攻守にわたる別格の働きは神々しさを感じるほど。先発では唯一今季のスーパーラグビーを経験していないLOアニセ サムエラも献身的に働いた。198cmの長身はラインアウトでも大切な戦力だ。
「練習でやっていたことが、そのまま試合で発揮できた」(松島幸太朗)。その言葉がすべてだろう。意図的にキックを多用して、相手を走らせ、後半仕留める狙い通りの展開だった。「勝って反省できるのがいい」。これはリーチの言葉。最後はスクラムで反則を取られたし、タックルミスも多く、ディフェンスを破られて大幅にゲインされることも多々あった。しかし、粘り強くディフェンスし、イタリアが得意とするスクラムでも互角に戦い、モールも止めることができた。ラグビーの根幹であるボール争奪戦の部分で堂々たる戦いができたのは自信になる。
スーパーラグビーでは苦しい戦いを続けるサンウルブズだが、そこで多くの日本代表選手がヨーロッパ勢にはないスピーディーなラグビーを経験できたことは、この日の勝利につながった。加えて、サンウルブズではコンディション重視のメンバー選考が行われてきた。それによってスーパーラグビーでは黒星が多くなっているが、コンディションの良い選手をイタリア戦に出すことができた。テストマッチ(国代表同士の試合)で7連敗中だったとはいえ、イタリアが戦ってきたのは、イングランド、アイルランド、ウェールズなど強豪国だ。日本がイタリアに6度目の対戦にして初めて勝ったのは、2014年6月のことだ。RWCを一年後に控えた今回と同じ時期の対戦だった。その時は、26-23という接戦。スコアだけでは測れないが、34-17という勝利は自信を持つべきだろう。応援し続けるファンを笑顔にできたことも、今後の日本代表キャンペーンには前向きな要素だ。
ただし、6月のテストマッチはあと2試合ある。ここを勝ち切ってこそ、本当の勢いがつく。コーチ、選手が一番分かっているはずだが、第1戦の快勝で楽観視することなく、きめ細やかな準備で第2戦に臨んでもらいたい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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