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さらに、1周を終えたメインストレートではTGRファンシートで応援するファンたちが、赤いボードを使って『38』の文字を作り、立川に感謝の気持ちを伝えたほか、ゴール地点にGTA坂東正明代表をはじめGT500・GT300各チームのドライバーがで迎えた。2人のお子さんがチェッカーフラッグを担当。普段は立川に傘をさし、近くで応援するチームのレースクイーン『ZENT Sweetis』の中には涙を流しているメンバーもいるなど、最後は大きな感動に包まれた。
引退セレモニーでも、終始笑顔で振る舞っていた立川。「多分、(一番の思い出になるレースに)この最終戦がそうなると思います。引退を表明してから、すごく多くの方に応援してもらっていたし、こういう場も皆さんに用意してもらえて……長いドライバー人生の中でもこの数ヶ月間は、本当に特別な思いがあるし思い出に残る数ヶ月になりました」と、応援してくれる人への感謝の気持ちを伝え続けた。
注目の最終戦決勝は、自らチェッカーを受けるべく後半スティントを担当した。途中に雨が降ってくる難しいコンディションにはなったが、何度も抜きつ抜かれつのバトルを披露し、11位でフィニッシュした。
チェッカー後のクールダウンラップでは「この時間がもっと長く続いてほしいと……寂しさを感じました」と立川。引退を表明してから、どの場面においても気丈に振る舞ってきた印象があるが、この時初めて“もっと乗っていたい”という感情が露わになった瞬間だったかもしれない。
マシンを降りると、最終スティントで順位を争った阪口晴南や牧野任祐が握手を求めにきた。特にスーパーフォーミュラでは立川が監督を務めるセルモインギングで戦う阪口は、今回のために立川のレプリカデザインヘルメットを用意し、彼のGT500最後のスティントを間近で走った。
グランドスタンドからは、惜しみない拍手が贈られ続け、立川もそれに応えるように各方面を向いて手を振り、ピットへ戻っていった。こうして、彼のGT500最後のレースは幕を閉じた。
引退会見後の囲み取材で「立川選手にとって、SUPER GTとは?」と質問すると……、彼は少し考えた後にこう答えた。
「“人生”ですね」
「SUPER GTがあったから今の僕がありますし、多分レースをやっていなかったら大した人間ではなかったと思います。大して何もできないような僕が、唯一できたことです」
彼のラストランから早1ヶ月以上が経った年末に、J SPORTSでは彼の引退特番『ありがとう!立川祐路 SUPER GTベストレース』と題して、彼が繰り広げた名レースを振り返る。
もう一度、SUPER GT最速男の魅力溢れる走りが観られるチャンス。ぜひ、その目に焼き付けてほしい。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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