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「1周目で(後ろに)抜かれないだけのギャップを広げられれば、(ペースを)コントロールしようと思っていました。確かに今年のソフトタイヤの持ちはいいですが、必要以上に攻めてタイヤを消耗させてしまうと、(勝負どころで)ペースを上げられなくなってしまいます。それは勝つための戦い方ではないです。」
「ソフトで長く走ろうと思っていたので、タイヤをケアすることも考えていました。だから、抜かれることがないギャップを1~2周で作れたら、そこからは詰められても抜かれないギャップでコントロールしていました」
「最初はルーカス選手も調子よく走っていて、きっと全力で僕を追いかけてくるだろうと思ったので、逆に彼に背後に来てもらってタイヤを消耗させようという考えもありました。ただ、思ったほど彼のペースが上がってこなかったので、それを見て一気にペースアップして1分08秒台前半で走りました」
自分の状況だけでなく、トップを争うライバルの状況まで先読みしてレースを進めていた山本だが、途中“マズイな”と思った瞬間があったという。それが周回遅れのマシンだ。
「1周目にピットインするクルマがいるだろうなとは思っていましたが、例えば2番手の野尻選手がピットインして出てくるのと、最後尾の選手がピットを終えて出てくるのでは(コース上での位置関係が)全然違ってきます。後ろのクルマが早めにピットインしたら、早めに周回遅れに引っかかるだろうなとは思っていました。ただ、周回遅れのクルマのことを考え出してしまうと、逆に僕たちの戦略の幅が狭くなってしまいます」
「(先にピットインして)誰もいないクリアなところで走れるとずっと安定して速いんですが、今回はスタートを決めて逃げ切るレースを前提で考えていました。そうするとバックマーカーに何回も引っかかって、(引っかかると)ペースが簡単に1秒落ちてしまいます。そこは勿体なかったし、それがあればもっと楽をしてレース後半のピットインを迎えられましたが、トップにいるとそういうことも起きるので、仕方ないです」
10周目以降の状況をこのように振り返った山本。周回遅れのマシンを処理するのにある程度のタイムロスは覚悟の上だったようだが、相手も終盤の逆転を狙って先にピットインし、そのポジションにいるだけだから、山本に前を譲って周回遅れにはなりたくない。ただ、その時に強力な助けになったのがチームだった。
「ブルーフラッグが振られているのに、バックマーカーに3周くらい前を塞がれてしまったことが5回くらいあったんですよね。それだけが(レース中)不味いなと感じましたが、そのたびに無線で言って、チームが頑張って動いてくれて、相手のチームに対して譲ってほしいということを言ってくれました」
「そういうのも含めて今回は、“自分が速く走れた”、“チームが速いクルマを用意してくれた”だけじゃなくて、チームが勝つために速く走れる環境をみんなで作り出してくれたということが、一番の勝因だったと思います」
こうして、後続に対して十分なギャップを築いた山本は、51周目にピットインしミディアムタイヤに交換。その後も安定した走りを見せ、終盤にはセーフティカーが2回連続で入り、後続との距離が縮まったものの、最後まできっちりと逃げ切り今季初優勝。予選Q3での鬱憤を見事なまでに晴らした勝利だった。
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