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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2020年02月03日

東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会決勝ラウンド FC東京U-18×東京Vユース@小平(2020)

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今大会は決勝ラウンドで早くも実現した東京ダービー。FC東京U-18と東京Vユースのビッグマッチは、引き続き小平グラウンドです。

大森FCに2-0、FCトリプレッタユースに5-0と、共に無失点勝利で西が丘のファイナルへ王手を懸けているFC東京U-18。「今年は何が楽しみかと言ったら、ヴェルディとやった時に、昨年のファーストゲームはたぶん8対2か91ぐらいでボールを持たれたと思うので、じゃあそれが73ぐらいになっていたら進歩だし、そういう部分でも、持つだけじゃなくて決めるという部分が必要だから、うまくそれがリンクしていくと、去年の守ってカウンターというだけじゃなくて、こっちが主導権を握れる時間帯が出てくるかなと。そんなにすぐ急激に変わらないですけど、そういう見方でヴェルディとかボールを動かせるチームとやる時は、それをウチも今年のテーマの1つにしているので、バロメーターになっていくのかなと思います」と2週間前に話していたのは中村忠監督。常に進化を遂げていく1年にするために、この2週間での成果を発揮するのには最高の相手とホームで対峙します。

FCトリプレッタユースに4-0、大森FCに5-0と、こちらも共に無失点勝利で西が丘のファイナルへ王手を懸けている東京Vユース。「今年に関しては突出した選手がいる訳でもないですし、チームとして一体感は求めたいし、ひたむきに100パーセント出し続けながら、攻撃も守備もやると。もちろん守備はたぶん好きではないので(笑) ただ、『何のためにやるか』という所で、攻撃が好きならボールを取らないといけないし、そのために守備をしなくてはいけないし、攻撃も守備も頑張ってできるようなチームになっていければいいかなという気はしていますけどね」と語るのは、実質昨年の途中からチームの指揮を執っていたクラブOBの中後雅喜監督。新2年だった阿野真拓は既にトップへ昇格。他にも代表やケガなどで主力を欠く中でも、このダービーでライバルの後塵を拝するつもりは毛頭ありません。早速この段階で迎える東京ダービーに、ゴール裏のスタンドはかなりの数の観衆が。シンプルに強いのは青赤か、緑か。注目の90分間は13時30分にキックオフされました。

まずは「東京ダービーということもあって感情的にもなっていたので、『勝ちたい』という想いは普通の試合よりは大きかったですね」と角昂志郎(2年・東京武蔵野シティFC U-15)も明かしたFC東京が前への推進力を。7分には左サイドで獲得したFKを谷村峻(1年・FC東京U-15むさし)が蹴り込み、小林慶太(2年・FC東京U-15むさし)が合わせたヘディングは枠を越えたものの、セットプレーからファーストシュートを。以降も「前に行くだけじゃなくて、組み立ての所で自分がすべての局面に顔を出して前と後ろを繋ぐ役割とか、もちろん最後のフィニッシュ、アシストも含めて結果も残さなければいけないなと思っている」と言い切る常盤亨太(2年・FC東京U-15深川)の圧倒的な回収力をベースに、前向きにボールを奪える青赤がペースを掴みます。

19分もFC東京。右サイドバックの上田浩大(2年・FC東京U-15むさし)を起点にして、左サイドへの展開から角がカットインしながら放ったシュートは枠の左へ。20分もFC東京。常盤がボール奪取からラストパスを繰り出すと、走った谷村のシュートはクロスバーの上へ。28分もFC東京。カウンターから運んだ安田虎士朗(1年・FC東京U-15深川)が左へ流し、飛び出したGKも外した角がゴールへ流し込むも、ここは全力で戻った東京Vの右サイドバック粟津一輝(2年・三菱養和調布JY)がライン上で執念のスーパークリア。直後の左CKを谷村が蹴るも、東京Vのセンターバックを託された冨樫輝(2年・東京ヴェルディJY)が大きくクリア。ゴールは許しません。

さて、「前半凄くFC東京さんのプレッシャーに戸惑ったというか、圧力を感じていましたけど、ああいうふうに来てくれるチームというのは少ないので、凄く良いトレーニングになったと思います」と中後監督も振り返った東京Vは、「ウチのチームはボールを持って繋いで、運んで決めていくチーム」と口にするGKのカウンゼンマラ(2年・東京ヴェルディJY)も、センターバックの石井貫太(2年・東京ヴェルディJY)と冨樫に加わりながら、丁寧にビルドアップしていく姿勢は窺えるものの、前にポイントがなかなかできず。手数を繰り出すまでに至りません。

すると、先にスコアを動かしたのはホームチームの青赤。31分にミドルゾーンで前を向いた常盤は絶妙のループパスをラインの裏へ。「亨太は結構多彩なパスを出すので、自分もループパスが来た時は一瞬戸惑いもあったんですけど、シュートにより速く行けるように、良い所にボールを置けたなと思いますね」という角は正確な胸トラップから左足一閃。ボールは右スミのゴールネットへ吸い込まれます。「去年は(小林)里駆くんがチームを引っ張って点を決めたりしていて、『次は自分が里駆くんみたいにならないといけないな』と思っていたので、このチームの攻撃は自分が創り上げたいなと思います」と言い切る40番のゴラッソ。FC東京が1点のリードを手にしました。

31分には東京Vに1人目の交替。その少し前の接触で足を痛めていた福西翔太(1年・東京ヴェルディJY)に替えて、根本鼓太郎(1年・東京ヴェルディJY)がそのままインサイドハーフ=フロントボランチへ入るも、37分はFC東京にチャンス。細かいコンビネーションから安田を経由し、谷村のシュートはゴール右へ。45+1分もFC東京。角が左へ小さく出すと、上がってきたサイドバックの大迫蒼人(1年・FC東京U-15むさし)のクロスはDFにクリアされたものの、狙いのあるサイドアタックを。「やろうとする姿勢は見せてくれたので、そこは良かったんじゃないかと思います」とは中村監督。前半はFC東京が1点のアドバンテージを握って、ハーフタイムに入りました。

後半はいきなりの決定機から。まだ開始のホイッスルから1分も経っていない時間帯に、東京Vは右ウイング=ワイドストライカーの青木瑠星(1年・東京ヴェルディJY)がクロスを上げると、三村愛斗(2年・Wings U-15)のシュートはFC東京のGK彼島優(1年・FC東京U-15深川)がファインセーブで凌ぎ、詰めた岩崎壮真(中学3年・東京ヴェルディジュニア)のシュートも彼島が連続セーブで弾き出しましたが、「初先発だったので、公式戦も初めてで凄く緊張しましたし、前半はまったく自分のプレーが出せなくて、結構苦戦したんですけど、ハーフタイムにみんなから声を掛けてもらって、後半は自分のワンプレー目で良いプレーができたので、そこから気持ちが乗ってきたかなと思います」と話す中学3年生のこのプレーはのちの布石に。

52分は東京V。三村の左クロスから、ファーでトラップした青木のシュートはクロスバーの上へ。54分はFC東京。谷村が右へ散らし、佐藤恵介(2年・FC東京U-15深川)のクロスに、ファーへ自ら入って行った谷村のシュートが枠を越えると、55分に飛び出したのは"布石"の1つ目。ピッチ中央で根本からパスを受けた安藤如登(2年・東京ヴェルディJY)の強烈なミドルはクロスバーに弾かれましたが、ここに飛び込んだのはまたも岩崎。今度はボールをきっちりゴールネットへ流し込みます。「ユースの練習が始まってから、紅白戦がある時とかはずっと点を狙っていて、実際に決めれる所もあったんですけど、今日みたいなごっつあんゴールが結構多くて、その中で自分の感覚的に『勝手に良い所にいたな』と思っていて、決めれたので良かったです」と笑った15歳が大仕事。スコアは振り出しに引き戻されました。

追い付かれたFC東京も58分にチャンス。常盤が右へ振り分け、佐藤のクロスにファーで待っていた角のヘディングは枠を越え、同点とは行かなかったシーンを経て、次に飛び出したのも"布石"の2つ目。60分に左サイドでボールを持った三村が右足でクロスを放り込み、岩崎が競り勝ったボールを粟津は粘って粘って枠内シュート。彼島がファインセーブでストップするも、三たび嗅覚を発揮した岩崎は誰よりも速くこぼれ球に反応し、ゴールネットへボールを打ち込みます。「いつも緊張してあまり喋れないんですけど、先輩たちが凄く喜んでくれて、凄く嬉しかったです。ハーフタイムにも『自分のプレー出せよ』とか、声を掛けてくれていたので、凄く助かりました」という岩崎はこれで圧巻のドッピエッタ。1-2。東京Vが逆転に成功しました。

「中後さんが就任されてから、『ゴール前の迫力を出していこう』ということで、仕掛けの部分だったりとかも今日の試合で見えたと思う」とカウンゼンマラも胸を張ったように、畳み掛ける緑。67分には流れの中で右に回っていた左サイドバックの廣野零二(2年・東京ヴェルディJY)が得意の左足で好クロスを流し込み、ファーで枠へ飛ばした三村のシュートは彼島がビッグセーブ。直後の右CKは根本がショートで蹴り出し、三村のクロスはそのままファーへ流れたものの、まさに迫力ある一連を。72分に根本がここは中に入れた左CKも、シュートは打てませんでしたが、ゲームを決める意志は緑に十分。

「ちょっと足が止まった部分と、相手が負けていたから前から来た中で、それを掻い潜るだけの技術とか戦術眼がなかったですね」と話した中村監督が相次いで切った交替のカード。73分には谷村と川口祐馬(2年・FC東京U-15深川)を、76分には佐藤と熊田直紀(中学3年・ESTRELLAS FC)をそれぞれ入れ替え、狙う同点とその先。81分には東京Vも3枚替え。殊勲の2ゴールを挙げた岩崎、最前線で体を張った堀内泰雅(2年・東京ヴェルディJY)、三村を下げて、橋本陸斗(中学2年・東京ヴェルディジュニア)、吉田崇幸(1年・東京ヴェルディJY)、瀬川サーシャ(1年・東京ヴェルディJY)をピッチへ解き放ち、突入する残り10分の攻防。

同点弾は82分に意外な形から。東京Vが自陣のFKからビルドアップにミスが出ると、ボールを拾った常盤はすかさず右サイドの裏へフィード。ここに戻ったDFのバックパスが小さくなったところを見逃さず、並走していた川口はボールをかっさらってそのままフィニッシュ。ボールはゴールネットへ転がり込みます。「ちょっともったいない失点ではありましたけど、その中で相手に自分たちで勢いを与えてしまったというのは、1つ課題ですね」と中後監督。2-2。再びスコアは均衡状態に。

84分は引っ繰り返したいFC東京。角がドリブルで粘って左へ付け、大迫が打ち切ったミドルはゴール左へ。85分は勝ち越したい東京V。廣野のパスから橋本がエリア内に入るも、きっちり寄せた石井玲於奈(1年・FC東京U-15深川)と古屋颯眞(2年・FC東京U-15むさし)の青赤のセンターバックコンビがシュートは打たせず。88分は東京Vに5人目の交替。上下動を繰り返した粟津に替えて、伊藤竜海(中学3年・町田大蔵FC)を投入し、最後の勝負へ。

このままだと得失点差でファイナル進出には届かないFC東京のラッシュ。90分に川口のパスから、左サイドを単騎で持ち込んだ熊田のシュートはカウンゼンマラがファインセーブ。直後の左CKを安田が蹴り込むも、熊田のヘディングは枠へ飛ばず。90+3分にも右に開いた安田のクロスに、ボレーで叩いた角のシュートはクロスバーの上へ。直後に3枚目の交替カードとして加藤大地(1年・FC東京U-15むさし)を送り込み、続く猛攻。90+4分にもドリブルでエリア内へ侵入した角がシュートを打ち込むも、「シュートストップは自分の得意な部分で、今まで積み上げてきたものがこういう試合でできて良かったと思います」と笑うカウンゼンマラがファインセーブで仁王立ち。

さらに90+5分。大迫がトライした左ロングスローがこぼれ、いち早く反応した角のミドルは「アウト回転を掛けて枠に飛ばそうとしたんですけど、思ったように足を振り切れなくて」ゴール左へ逸れていき、万事休す。結果は打ち合ってのドローでしたが、「いつも言っていますけど、それは勝ちたいけれど、結果というのは終わってみないとわからないので、『どれだけ100パーセントで臨めるか』ということが大事で、その結果が勝ちだったり、今日みたいに引き分けだったり、負けだったりとかありますけど、まず前提として100パーセントでプレーしてくれないと、その結果というのは付いてこないと思うので、『結果がどうであれ、100パーセントでやる』というのを今は伝えている中で、試合自体は良かったと思います」と中後監督も一定の評価を口にした東京Vが得失点差で西が丘のファイナルへ勝ち上がる結果となりました。

「まだ本当に全然個人でやれることが少ないから、やれることを増やさないといけないし、強度も上げないといけないしと、そういう部分がたくさんあるんでね。でも、そうは言っても、試合だから、サッカーだから、勝ち負けがあるスポーツだから、やっぱり勝たなくちゃいけないよという。そこのメンタリティの部分はまだまだ足りない部分だし、偏らずに両方上げていきたいなというのが本音で、今日はちょっと向こうの方がそれがちょっと上回っていたかなと思います」と試合を振り返った中村監督。特に前半はボール支配率でも悪くない流れは掴んでいた中で、「丁寧にサッカーをやるという所は、去年よりだいぶ上げないといけないので、もっと上手くならなくちゃいけないし、もっと賢くならなくちゃいけないしということで、そこの部分を今年は上げていこうという話はしていて、まだまだ始まったばかりだから、そんなすぐに上手くいくとは思わないし。でも、今やろうとしている感じはあったので、また継続していければなという感じですね」と言いつつ、「見ていた人たちが去年とこういうふうに変わったと見えたら、今日は進歩したんじゃないかと。去年と変わらないじゃんってなったら、進歩していないのかなという所ですね」とも。いろいろな意味で相反するものを含んでいる現状のFC東京は、まだまだ楽しみな経過観察が続いていきそうです。

「今いる選手たちは凄く意欲もあって、技術はもっともっと付けるべきだと思いますし、全体的にレベルアップはしていって欲しいですけど、チームとしてまとまりがあるようなチームにしたいですし、100パーセントでやれるようなチームにして行きたいなと。どういう状況であれ、どういう環境であれ、やれるような子が多くなれるようなチームにしていけたらいいですけどね」と今シーズンの展望を語った中後監督。何度も出てきた"100パーセント"というフレーズは、今シーズンの東京Vにとってカギを握って来そうな中で、個人的に目を引いたのは得点が入った時や、西が丘のファイナルを決めたタイムアップの瞬間に、ベンチの選手たちが歓喜をみんなで共有していたこと。これには指揮官も「ちょっとけが人も多い中で、サブの選手を含めてみんなでやっているので凄く良いゲームだったと思うし、みんなでサポートしながらやるという意味では、『試合に出た人がすべて』じゃいけないと思うし、出ている人と出ていない人がいる訳で、その中で役割を100パーセントで、そこがピッチなのか外なのかに関わらず、しっかりやってくれて良かったと思います」とピッチ外での役割も100パーセントでこなしていく部分も求めていく様子。2得点を叩き出した岩崎が「交替でベンチに戻ってからも、試合に出ていないケガしている先輩が凄く盛り上げていて、『チーム全体で戦っているな』と思ったし、後ろの先輩たちが体を張って、最後までマラくんを含めて止めていた所を見て、自分の得点以上に決勝進出という所ではそこが大きかったなと思いました」と語った言葉こそ、おそらくはチームの大きな柱になり得る要素。今シーズンの東京Vも面白くなっていきそうな香りが確実に漂っています。           土屋

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