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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2020年11月16日

全国高校サッカー選手権東京B決勝 堀越×大成@駒沢陸上

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堀越×大成.jpg

29年ぶりの復活か。初の栄誉か。いわゆる古豪と新鋭校のビッグマッチ。堀越と大成の東京ファイナルは、引き続き駒沢陸上競技場です。

最後に冬の全国に出場したのは1991年。6年前と5年前には2年連続でファイナルに進出しながら、なかなか頂点には届いていない堀越。「まずこの大会をやってくれていることがありがたいですし、僕らが表現できる場を作ってくださっているので、本当に感謝しながら『ちゃんと勝負事にこだわってやろうよ』と思っています」と佐藤実監督も話した今大会は、初戦こそ都立上野に21-0と大勝したものの、東京には苦戦しながらも延長で2-1と辛勝を収めると、準々決勝は実践学園に5-0、準決勝は東京実業に4-1と続けての快勝でファイナルまで。29年ぶりの戴冠へ。機は熟しています。

一昨年度の選手権予選は決勝で国士舘に0-1と惜敗。昨年度は混戦の東京を抜け出し、インターハイで悲願の全国切符を掴むなど、都内でも強豪校として認知されつつある大成。「2月15日にした練習試合から、次に練習試合をしたのは820日でした」と豊島裕介監督も明かしたような状況を経て、迎えた今大会は八王子に3-0、都立石神井に1-0と無失点で勝ち上がると、準々決勝で成立学園に2-1、準決勝で駿台学園に2-1と粘り強く勝ち切って2年ぶりの決勝へ。初戴冠へ。こちらも機は熟しています。陽の光が降り注ぐ駒沢は、11月と思えない最高のコンディション。注目の80分間は堀越のキックオフで幕が上がりました。

ファーストシュートは6分の大成。中盤でルーズボールを収めた三宅航太(3年・JACPA東京FC)がミドルレンジからシュートにトライ。ここは堀越のGK平野裕太(3年・武蔵野第二中)がキャッチしたものの、積極的な姿勢を前面に。堀越も9分にチャンス。10番を背負う日野翔太(3年・FC町田ゼルビアJY)のパスから、古澤希竜(2年・FC多摩)が右クロス。東耀也(3年・横浜FC鶴見JY)のシュートは大成のボランチ大関晟太朗(3年・S.T.FC)がブロックし、堀田五月馬(3年・横浜F・マリノスJY)のシュートはゴール右へ逸れましたが、お互いに1つずつフィニッシュを取り合います。

すると、早くも動いたスコア。13分。右センターバックの市村大基(3年・FC府中)が縦に刺したパスを古澤が落とし、日野は絶妙の柔らかさでラインの裏へ。走った宇田川瑛琉(2年・東京ヴェルディJY)のクロスに、ファーから山口輝星(2年・三菱養和調布JY)が突っ込むと、こぼれに誰よりも早く反応した尾崎岳人(3年・すみだSC)がボールをゴールネットへ送り届けます。殊勲のストライカーはベンチへ一目散に猛ダッシュ。1-0。堀越がリードを奪いました。

さて、「ウチの今日の前半は相手にボールをいっぱい持たせて、0-1か0-0でというプランニング」(豊島監督)という大成も、バタバタする雰囲気はなし。18分には井上太聖(3年・インテリオールFC)のクサビを宇田川が繋ぎ、日野がシュートを枠へ収めた堀越のビッグチャンスも、GKの永田陸(2年・RIO FC)がビッグセーブで凌ぐと、20分には左CKを前澤亮太(3年・府中第三中)が、23分には右ロングスローを加藤大嗣(3年・FC多摩)がそれぞれゴール前に放り込み、どちらもシュートには至らなかったものの、セットプレーに活路を見い出します。

25分は堀越。「1年生の時から少しずつ試合に出させてもらっていて、絶対自分が引っ張っていかないといけないという想いがある」と言い切る井上が、斎藤光(3年・東京武蔵野シティFC U-15)から受けたパスで持ち上がり、そのまま枠を越えるミドルまで。32分も堀越。右から古澤が上げたクロスに、ファーで山口が合わせたシュートはクロスバーの上へ消えるも、シャドーの2枚でフィニッシュを。37分は大成。金井陸人(3年・三鷹FA)が縦に差し込み、エリア内へ侵入した前澤はマーカーともつれて倒れるも、ノーホイッスル。「前半はウチがボールを保持して主導権を握り、相手が守備ブロックからカウンターを狙っている展開だったと思います」と佐藤監督も振り返った前半は、堀越が1点のアドバンテージを握って、40分間が終了しました。

後半はスタートから大成に交替が。三宅に替えて、準決勝でも活躍の目立った加藤慶八(3年・MIOびわこ滋賀U-15)をそのまま右サイドハーフへ投入し、さらなる推進力向上に着手するも、42分は堀越にチャンス。日野が蹴った右FKから、山口が上げた右クロスに尾崎が合わせたボレーはクロスバーの上へ。49分は堀越に決定機。尾崎が時間を創り、宇田川がダイレクトで出したパスから山口がラインブレイクするも、ここは永田がビッグセーブで仁王立ち。追加点を許しません。

51分は堀越。宇田川の左クロスがこぼれると、東のミドルはゴール右へ。53分は大成にビッグチャンス。相手のパスミスを奪ったキャプテンの片原崇也(3年・FC多摩)が浮き球でラストパス。最後尾から上がってきた熊倉拓海(3年・和光ユナイテッド)のシュートは平野がファインセーブで防いだものの、変わりつつあるゲームリズムの中で、57分は大成に2枚替え。前澤と野田歩夢(3年・清瀬第五中)を下げて、原輝斗(2年・FCクレセル)と田中ハーディー啓秀(2年・FC府中)をそのまま2トップに送り込み、「後半残りで勝負を懸けるプラン」(豊島監督)に打って出ます。

59分は大成。右からのCKを片原が蹴るも、シュートは打ち切れず中央でオフェンスファウル。62分は堀越に1人目の交替。堀田と山口諒大(3年・FC.GONA)をスイッチして、全体の強度を再構築。65分は大成。片原の右FKは、平野がキャッチしてオフェンスファウルになったものの、「山口がフリーになった11から潮目が変わりましたね」と佐藤監督も認めるように、流れは完全に大成へ。

堀越は66分に2人目の交替。先制弾を叩き込んだ尾崎に替えて、若松隼人(3年・田無第一中)を最前線に投入。67分は大成。ここも片原を起点に大関が繋ぎ、田中のシュートはゴールネットを揺らすも、オフサイドで堀越は命拾い。70分も大成。サイドバックの田山虎太朗(3年・S.T.FC)の仕掛けで得た左FKを片原が蹴るも、DFがきっちりクリア。直後の右CKも片原が蹴り入れ、ラインを割ってゴールキックにはなりましたが、大成ペースのままで試合はラスト10分間の攻防へ。

71分は堀越。右サイドを粘って運んだ若松が、そのまま打ち切ったシュートはDFに当たってゴール左へ。そのCKを日野が蹴り込むも、フィニッシュまで届かず。74分は大成。片原の右CKに味方が殺到するも、シュートは打てず。76分も大成。今度は左から片原が蹴ったFKは、若松が懸命にクリア。77分は堀越に3人目の交替。足を痛めた市村と五十嵐翔(3年・FC府中)を入れ替え、取り掛かるゲームクローズ。守る堀越。攻める大成。耐える堀越。押し込む大成。

土壇場で実った大成の攻撃姿勢。78分。左サイドで獲得したこの日5本目のCK。キッカーの片原が鋭いボールを上げると、センターバックの渡辺誠史(1年・三菱養和巣鴨JY)が触ったボールは原の足元へ。10番が必死に蹴り込んだボールは、ゴールネットへ到達します。「選手たちがやりたいことを体現してくれた」と豊島監督。1-1。1-1。試合は振り出しに揺り戻されます。

「失点した時の試合の進め方もプランとしては想定していたので、落ち着いて返そうということは話をしていました」(日野)「大成も活性化していましたし、このまま終わらないという印象は持っていました。失点もあると思っていたので、そこは想定内でしたけど、僕より選手が冷静でしたね」(佐藤監督)。それでも堀越は死なず。

80+2分。斎藤が蹴り込んだボールを、若松が大事に大事に収め、走り込んできた山口は短く右へ付けると、「『自分が何とかしなきゃ』ということは強く思っていますけど。まずはチームの勝利を考えていますし、自分よりはこのチームを勝たせられるかという所が大事ですよね」と語っていた日野が右足一閃。ボールは左スミのゴールネットへ滑り込みます。狂喜。絶叫。走り出した10番を中心に、広がったチームメイトの笑顔。再び堀越が1点のリードを強奪します。

天国から地獄に叩き落された大成が、全力で前へとなだれ込むパワーをいなしつつ、80+4分に中村ルイジ(2年・調布FC JY)を4枚目のカードとして送り込んだ堀越は、少しずつ、少しずつ時間を丁寧に潰すと、澄んだ青空へ吸い込まれていった激闘の終わりを告げるタイムアップのホイッスル。堀越が29年ぶりの全国切符を劇的に掴み取る結果となりました。

2度目の決勝も、再び準優勝という結果を突き付けられた大成。「彼らは経験値というものが新チームになってから凄く少なくて、自信もなくて、『1個上の先輩には敵わない』というものが彼らから伝わってきました。ただ、去年と今年で違う部分もあって、もちろん去年のこの部分には敵わないけど、たとえば『自分たちを見つめることができる部分は去年を上回っているよ』と伝えました」と豊島監督。その中で選手権を通して、少しずつ成長を遂げていった感覚は指揮官も共有しており、「リーグ戦で絶望的に成立に0-4で負けた時は、『本当にもう終わりだ』くらいの感じだったんですけど、トレーニングを含めて確実に階段を上っていることを説明しながら、しっかりと選手たちも理解をしてくれた結果、決勝まで来ることができたのかなと思っています」と選手たちを称える言葉も。冬の全国を目指す大成の戦いは、これからもまだまだ続いていきます。

今年の堀越は去年のチームの影響が非常に大きかったと、スタッフも選手も誰もが語ります。準々決勝の試合後に「僕らの目標は去年の子たちが『本当に東京制覇する』ということを掲げた所からスタートしているので、対戦相手がどうなるかとかも皆さんは気にして下さるんですけど、そんなことではなくて、相手が変わっても僕たちが追い求めてきているものは何も変わらないんです。去年の彼らが忘れてきたモノを、西が丘でもそうですし、駒沢でも僕らがちゃんと回収できるようになればいいし、相手がどうだとかは関係なく準備して、やるべきことをやるというだけのことだと思います」と佐藤監督が話していた言葉も印象的。"去年の彼らが忘れてきたモノ"は、きっと西が丘でも駒沢でも"今年の彼ら"がきっちり回収してくれたのかなと。「我々は"古豪"と言われていて、メディアの皆さんにもそうですし、家では子供にもそう言われていましたけど(笑)、積み上げていけばいつかは結果が出ると思っていましたし、『それは今年のチームなんだろうな』という手応えはありました」と指揮官も笑顔。堀越が四半世紀の時を超えて、全国に帰ってきます。

土屋

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