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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2019年11月03日

高校選手権東京B準々決勝 東京朝鮮×大成@清瀬内山G

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東京朝鮮×大成.JPG

お互いに初めての全国だけをその先に見据えた強豪同士の激突。東京朝鮮と大成のクォーターファイナルは、清瀬内山グラウンドです。

ここ4年の選手権予選ではいずれも西が丘、すなわちベスト4まで勝ち上がってきているものの、いずれも西が丘での敗退、すなわちベスト4での敗退を強いられている東京朝鮮。「西が丘では3年連続4失点しているので、西が丘で勝つためには守備が大事で、そういう意味ではT1で揉まれて勉強させてもらったのが生きているんじゃないかなと思います」と姜宗鎭監督も口にしたように、守備力の向上に着手した成果は今大会にも繋がっており、初戦の都立駒場戦にスコアレスからのPK戦で競り勝つと、2回戦でも都立東大和を1-0で下して、2試合連続無失点でこのステージまで。"5年目の正直"へ、まずはその舞台へと駒を進めるための大一番へ挑みます。

昨年度はファイナルまで勝ち上がりながら、わずか1点差で冬の全国には届かず。その時のメンバーを多数揃えた今シーズンは、インターハイ予選で堂々たる戦いを披露し、最後は名門・帝京をPK戦で振り切って、夏の全国を経験してきた大成。ただ、その全国では初戦敗退を突き付けられ、「本当に何もできずに終わって、やっぱりあの経験をゼロにしたくない」と内田康平(3年・FC多摩)も気持ちを新たに。「全国を経験して、全国大会に出るのが目標だったのが、全国で勝てるチームを創りたいという所に変わったので、そこが本当に一番の大成高校の大きな財産だったと思います」とは豊島裕介監督。もう一度あの舞台へ。強い覚悟が今の彼らを衝き動かしています。清瀬内山グラウンドのピッチをグルリと取り囲んだ大観衆。注目の一戦は東京朝鮮のキックオフで幕が上がりました。

2分のファーストチャンスは大成。2分に左サイドで得たFKを内田が蹴ると、ニアへ飛び込んだ佐藤イライジャ(3年・FC GLORIA)のヘディングはクロスバーの上へ消えますが、まずは好トライ。5分にはまたも内田の左FKから、東京朝鮮の右サイドバックを務めるチョ・リョンシム(2年・西東京朝鮮第一中)のクリアを、尾崎元(2年・FC GLORIA)がそのまま叩いたボレーは枠の左へ。さらに11分にも宮脇茂夫(3年・練馬三原台中)の展開から、再三の仕掛けが目立つ大石勇冴(3年・FC多摩)が奪った左CKを内田が短く蹴り出し、大石のクロスは東京朝鮮の1トップに入るリャン・ユンデ(3年・東京朝鮮第一中)がクリアしたものの、まずは大成がセットプレーを中心に押し込みます。

さて、「もうちょっとロングボールを使いながら、押し込んだ所で自分たちの崩しをアイデア出しながらできるかなと思ったんですけど」とキャプテンのオ・テヤン(3年・東京朝鮮第四中)も首を傾げた東京朝鮮は、なかなか手数を繰り出せない展開に。12分には右からチョ・リョンシムがロングスローを投げ込むも、佐藤のクリアを大成のGKバーンズ・アントン(1年・FCトリプレッタJY)がキャッチ。1トップのリャン・ユンデとその下に位置するキム・スソン(3年・東京朝鮮中)までボールが入らず、移れない攻撃のフェーズ。

14分は大成。右から阪口駿(3年・あきる野東中)がロングスローを投げ込み、こぼれに反応した尾崎のシュートはチョ・リョンシムがブロック。直後にも阪口の右ロングスローから、宮脇のシュートはDFがブロック。15分も大成。大石が起点となり、尾崎のエリア外シュートは枠の左へ。22分には東京朝鮮も左サイドバックのク・ソンハッ(2年・東京朝鮮中)を起点に、オ・テヤンのフィードへリャン・ユンデが走るも、バーンズが確実にキャッチ。23分は大成。宮脇の右FKはオ・テヤンがクリアするも、大石が狙った左足ボレーはゴール左へ。29分も大成。内田の右FKに佐藤が競り勝ち、金井渉(3年・FC多摩)のヘディングは、東京朝鮮のセンターバックを任されたアン・ジュノ(3年・東京朝鮮中)が懸命にクリア。「予想していたよりも『アレ?』って感じで、防戦一方でしたね」とは姜監督。押し込む大成。耐える東京朝鮮。

ところが、先に歓喜を享受したのは、まさに"防戦一方"だったレッドタイガー。34分に右サイドでリャン・ユンデがドリブルからFKを獲得すると、キッカーのキム・スソンは丁寧にファーへ。ここに潜っていたホン・チグッ(3年・東京朝鮮中)が体を折り畳みながら頭で合わせたボールは、右スミのゴールネットへ綺麗に吸い込まれます。「もうなんか『えオレが決めたの?』って(笑) テンパり過ぎて喜び方もちょっとわからなかったです」というボランチの一撃に、「T1では結構セットプレーでやられていたので、セットプレーで取りたいというのはあったんですけど、やっと来ましたね」と指揮官も破顔一笑。押し込まれていた東京朝鮮が1点のリードを奪って、最初の40分間が終了しました。

後半はスタートから大成に交替が。1トップ下でスタメン起用されていた佐野弘毅(3年・ヴェルディSS相模原)に替えて、ルーキーながら10番を背負う原輝斗(1年・FCクレセル)をピッチへ送り込み、着手したアタッカーの顔ぶれの変化。43分には阪口の右ロングスローから、宮脇のシュートはDFがブロック。45分に右サイドバックの加藤竜吾(3年・Forza'02)が積極的に放ったシュートから手にした右CKを宮脇が蹴り入れ、金井渉が頭で残すもシュートは打ち切れず。なかなか相手の牙城を打ち破れません。

53分は大成。阪口の右クロスから、ファーに走り込んだ金井陸人(2年・三鷹F.A.)のミドルはゴール左へ。53分に豊島監督は2人目の交替を決断。尾崎を下げて、2回戦の逆転勝利を支えた平川優大(3年・調布第八中)をピッチへ解き放つ新たな一手を。59分は東京朝鮮。右サイドハーフのパク・ソンヒョ(3年・ギラヴァンツ北九州U-15)がクロスを上げ切り、ファン・チャンジュン(2年・埼玉朝鮮中)は粘るもフィニッシュまで持ち込めず、こぼれを狙ったホン・チグッのミドルは枠を越えましたが、この日2本目のシュートを記録します。

大成が切った3枚目のカードは61分。金井陸人と今西奏真(3年・府ロクJY)を入れ替え、今西が右サイドバックへ、加藤が左サイドバックへスライドする配置転換を。63分は東京朝鮮が1人目の交替として、殊勲の先制弾を叩き込んだホン・チグッに替えて、キム・ミョンス(3年・栃木挑戦中)を投入。64分は大成。原がドリブルで運び、左から大石が枠へ収めたシュートは東京朝鮮のGKチン・ユヨン(3年・東京朝鮮中)が丁寧にセーブ。64分は東京朝鮮に2人目の交替。パク・ソンヒョとソン・ユソン(3年・東京朝鮮中)をスイッチして、攻守におけるサイドの強度アップを。65分は大成。宮脇の右CKに金井渉が競り勝つも、チン・ユヨンのパンチングをソン・ユソンが大きくクリア。スコアは1-0のままで、ゲームはいよいよ残り10分間の攻防へ。

71分は大成に決定機。宮脇の右CKへ、絶妙のタイミングで飛び込んだ佐藤のヘディングは、しかしゴール左へ外れて抱える頭。74分も大成。内田の左CKは東京朝鮮のセンターバックを託されているリュウ・セグン(3年・東京朝鮮中)が弾き出し、阪口の右クロスはチン・ユヨンがしっかりキャッチ。75分も大成にビッグチャンス。内田のパスを大石は左へ丁寧に流すも、上がってきた加藤のシュートはクロスバーを越えてしまい、今度はピッチもベンチも抱える頭。追い付けない大成。凌ぎ続ける東京朝鮮。

千載一遇の追加点機は76分。ショートカウンター気味に抜け出したキム・スソンが縦に付けると、リャン・ユンデはフィニッシュを取り切れなかったものの、拾ったキム・スソンが右へ持ち出しながら放ったシュートはゴール左へ逸れ、点差を開かせることは叶わず。79分は大成。エリア外でマーカーを外した内田のシュートは、鋭い弾道もゴール左へ。東京朝鮮は80分に3人目の交替。ファン・チャンジュンを下げて、キム・フィガン(3年・埼玉朝鮮中)を送り込んで、取り掛かるゲームクローズ。アディショナルタイムの掲示は4分。最終局面。西が丘へと続く扉を開けるのは果たして。

80+3分は大成。右から宮脇が蹴った渾身のFKは、チン・ユヨンがフィスティングで懸命に回避。80+4分も大成。内田が気持ちを込めて蹴り込んだ左CKは、リュウ・セグンが執念でクリア。姜監督の冷静な采配は、80+4分の東京朝鮮にとって4人目の交替。リャン・ユンデが下がり、ヒョン・ヨンジュ(3年・東京朝鮮第四中)をクローザー起用。80+4分は大成。右サイドから阪口が投げ込んだロングスローは、エリア内でオフェンスファウルを取られると、これがこのゲームのラストチャンス。次に聞こえたホイッスルは、西が丘へのファンファーレ。「この1年はセットプレーでの失点が多すぎて、選手権では特にセットプレーからの守備に重きを置いてやってきたので、自信を持って対応することができましたし、やってきたものが出せたと思います」とオ・テヤンも胸を張った東京朝鮮がインターハイの東京代表校を撃破し、5年連続となるセミファイナルへと勝ち上がる結果となりました。

決勝ゴールを叩き出したのは、ボランチを務める伏兵のホン・チグッ。試合後に話を聞こうとすると、チームメイトから冷やかされる場面も。その一連に彼の立ち位置が見え隠れします。改めてゴール後に応援団が陣取るスタンドへ一直線に走った理由を問うと、「ゴールを決めた時にスタンドで応援してくれている仲間が見えたんです。自分も去年までCチームにいて、全然試合にも出れなくて、そのCチームで一緒に切磋琢磨してきたメンバーに入れない子がいたので、その子の分まで頑張ろうと思っていましたし、その子たちと喜びたかったので」とのこと。彼の生み出したスタンドも含めた一体感は、間違いなくこのゲームのピッチに立っていた選手たちを力強く後押ししてくれたはずです。次はいよいよ5年連続の晴れ舞台。「あまり大きな声では言えないですけど、目標は優勝ですし、そこを目指す中でやっと西が丘に辿り着けたので、もうここは行きたいと思います」と姜監督が話せば、「先輩たちが涙を流しているのを何回も見ているので、ここは突破して、同胞たちとかいろいろな人たちに力を与えたいですし、下級生にも夢を与えられる試合をしたいです」とホン・チグッ。西が丘のその先へ。東京朝鮮の進撃はまだまだ続きます。     土屋

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