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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2019年10月18日

高校選手権東京A1回戦 成立学園×駿台学園@成立学園鷲宮G

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成立学園×駿台学園.JPG

昨年度の選手権ベスト4同士が激突する1回戦屈指の好カード。成立学園と駿台学園の"同地区対決"は、成立学園鷲宮グランドです。

ここ4年の選手権予選における成績はベスト4、準優勝、準優勝、ベスト4。あと一歩という所まで進出しながら、既に14年もの長きに渡って冬の全国から遠ざかっている成立学園。「選手権はもう10年以上全国に出ていないと思うので、ウチらの代で全国に行って、成立学園の名前を全国に知られるように頑張っていきたいと思います」と豊田優磨(3年・成立ゼブラFC)が話せば、「やっぱり今年はウチが出て、全国に成立のサッカーを見て欲しいというのはあります」とキャプテンの宇津木優人(3年・柏レイソルU-15)も同様の意気込みを。まずはこのホームから、東京制覇を自らに課した道のりを歩み出します。

昨年度は関東大会予選で決勝進出を果たし、一躍注目の的に。加えて抜群のノリと勢いと確かな実力で選手権予選でも西が丘まで勝ち上がり、最後は優勝した駒澤大学高にPK戦で屈したものの、東京の高校サッカーファンに鮮烈な印象を残した駿台学園。迎えた今シーズンはなかなか思うような結果が出なかった中で、苦しんだ選手権の1次予選も何とか抜け出してこのステージまで。「上の代は凄かったですけど、もう上の代を気にせず、自分たちのサッカーを見せて盛り上げていきたいですね。自分たちの中ではもう楽しもうって思ってます」とはキャプテンの村雲礼惟(3年・駿台学園中)。狙うは"アウェイ"での大物食い。その覚悟は整っています。会場はポツポツと雨が落ちてくるような曇天模様。注目の一戦は成立学園のキックオフでスタートしました。

先にセットプレーで押し込んだのは成立。4分に右CKを岡澤韻生(2年・ソシエタ伊勢SC)が蹴り込み、ニアで中村大輝(3年・東松山ペレーニア)がフリックしたボールはファーへ。8分には戸田岳滉(2年・アイリス住吉SC)のクロスで得た左CKをここも岡澤が担当し、駿台学園のセンターバックを務める三澤崚太(3年・駿台学園中)がクリアしたものの、2つのCKで相手ゴールを窺うと、10分にも左からカットインした戸田は枠内シュート。駿台学園のGK安井祐貴(3年・ヴェルディSSレスチ)がキャッチするも、ホームチームが攻勢に打って出ます。

すると、先制点が生まれたのは12分。右サイドを駆け上がった豊田のクロスから、宇津木のシュートはブロックされましたが、ルーズボールを収めた吉長真優(3年・FC府中)が右へ流すと、「最初はみんなで前、前ということを意識していて、シュートを打てる所は打つって決めていた」という豊田は左足でコントロールシュート。ボールは左スミのゴールネットへ吸い込まれます。「ゴールが見えて打った感じですね。綺麗に決まって良かったです」と笑った右サイドバックが貴重な一撃。成立が1点のリードを手にしました。

早々に追い掛ける展開を強いられた駿台学園。21分には中島倫太(2年・草加ジュニアFC)が仕掛けて獲得した左FKから、レフティの延山光聖(3年・クリアージュFC)が蹴ったボールは成立のGK大野来生(3年・ソシエタ伊勢SC)ががっちりキャッチ。22分には成立も左から切れ込んだ藤原進士郎(3年・FCトリプレッタJY)がシュートまで持ち込むも、軌道は枠の左へ。25分は再び駿台学園。中央で受けた高橋秀斗(3年)が右へ振り分け、開いた三瓶航太(3年・駿台学園中)のクロスはわずかに中島へ届かず、大野にキャッチされましたが、ようやく少しずつ見え始めた攻撃の糸口。

ところが、35分の衝撃は「ウチには凄いストライカーがいるので」と宇津木も胸を張った10番によって。右サイドで戸田からパスを引き出した吉長真優は、ゴールまで30m近い位置から右足一閃。ボールは強烈な尾を引きつつ、クロスバーを叩いてネットへねじ込まれます。「ゴール自体はあまり見えていなかったんですけど、感覚で打った感じのシュートでした。選手権で点を取るということは特別なので、凄く嬉しかったですね」と言いつつ、「あのタイミングで打てないと、ですよね。またレベルが上がってきたら、ああいう所で決めていかないと勝てないと思うので」と続けたジュビロ磐田に内定しているストライカーのスーペルゴラッソ。点差は2点に開きます。

畳み掛けたゼブラ軍団。39分には中村大輝、藤原と回したボールを戸田が打ったシュートは安井がファインセーブで掻き出しましたが、エリア内で吉長真優が倒されると、ホイッスルを吹いた主審はペナルティスポットを指差します。キッカーは吉長真優自ら。「日頃から結構練習していますし、インターハイはPK戦で負けちゃったので、その借りは返さないとなと思ってやっています」という10番は、きっちりGKの逆にグサリ。40分には駿台学園も田代将馬(3年・駿台学園中)の右スローインから、高橋が浮き球で1人外してチームのファーストシュートを放つも、ボールはゴール左へ。「2点目ですね。あそこで真優のミドルシュートが入って、流れが落ち着いたのかなと」と太田昌宏監督も話した成立が3点のアドバンテージを握って、最初の40分間は終了しました。

駿台学園はハーフタイムに2枚替えを決断。右サイドハーフで奮闘した本田颯大(2年・駿台学園中)と中島に替えて、横内翔(3年・クリアージュFC)と茂木健人(3年・クリアージュFC)をピッチに送り込み、4バックだった最終ラインも、右から寺田凌(3年・埼玉UNITED FC FESTA)、村雲、延山の3バックに変更し、右ウイングバックに横内、左ウイングバックに田代、ボランチに茂木と三澤を並べ、高橋と三瓶の2トップ下に中村海知(3年・駿台学園中)を置く3-4-1-2気味のシステムで勝負に出ます。

41分は駿台学園。左から田代が入れたクロスを三瓶が頭で残し、ファーに飛び込んだ横内のシュートはゴール右へ外れるも、入ったばかりの19番がフィニッシュを取り切ると、43分には中央をドリブルで運んだ中村海知が無回転気味のミドルを枠へ飛ばし、大野が何とか弾いたボールを、詰めた中村海知が再度狙ったシュートも大野にキャッチされましたが、「後半の初めにちょっと相手がプレッシャーを掛けてきて、引き気味になっちゃっいましたね」と宇津木も言及した通り、駿台学園が踏み込んだアクセル。

46分は成立。宇津木を起点に吉長真優が左へ丁寧なラストパスを通すと、藤原のシュートは安井がスーパーセーブで仁王立ち。50分も成立。右サイドをえぐった宇津木がマイナスに折り返すも、戸田のシュートはヒットせず。52分も成立。センターバックの横田文洋(3年・クラブ与野)を起点に、宇津木が繋いだボールを吉長真優が打ち切ったシュートは安井がファインセーブで凌ぐも、55分にはまたも成立に決定機。左サイドで中村大輝が縦に付け、受けた吉長真優は丁寧に中央へ。ここにフリーで走り込んだ宇津木は、丁寧にボールをゴールネットへ流し込みます。「最後に真優から良いラストパスをもらえて、流し込むだけだったんですけど、ちょっとフリー過ぎて緊張しました(笑)」と笑顔の宇津木が4点目。広がる点差。

57分には駿台学園にビッグチャンス。右サイドを運んだ横内が中央へ折り返し、右に流れながら田代が放ったシュートは大野のファインセーブに阻まれると、直後の決定機をきっちり仕留めるホームチーム。58分に藤原とのワンツーから宇津木は右へ。中村大輝の丁寧なグラウンダーのクロスに、中央で待っていたのは10番。「フリーだったので落ち着いて決めるだけでした。何度かああいう形でチャンスが生まれていたんですけど、中の枚数がちょっと足りなくて、決められないシーンが多かったので、しっかり入ることで得点に結び付いたんじゃないかなと思います」と笑った吉長真優はこれで圧巻のハットトリック。5-0にスコアは変わりました。

同時に両ベンチが動いたのは60分。駿台学園は高橋から鮫島貴士朗(3年・足立第十一中)へ、成立は中村大輝から水野友雅(3年・東京武蔵野シティFC U-15)へ、それぞれスイッチ。62分は成立。右からカットインしてきた豊田はクロスバーを越える左足シュートまで。67分も成立。吉長真優のパスから、水野が打ったシュートは枠の右へ。67分は成立に2人目の交替。吉長真優はここでお役御免。飯島大貴(2年・FC LAVIDA)がピッチへ送り込まれると、69分も成立。左サイドで1人外した宇津木のシュートは枠の上へ。70分は駿台学園。ミドルレンジから三瓶がトライしたシュートはクロスバーの上へ。残りは10分間とアディショナルタイムのみ。

72分はまたも双方に交替が。成立はアンカーで存在感を発揮した木村将汰(3年・1FC川越水上公園)と中田開人(2年・成立ゼブラFC)を、駿台学園は寺田と廣瀬文也(3年・足立六月中)を入れ替え、迎える最終盤。74分は成立。中田が右へ送り、水野の折り返しを飯島が合わせたシュートはDFに当たってゴール右へ逸れるも、その右CKを岡澤が蹴ると、ニアに突っ込んだ横田は高い打点のヘディングでズドン。ボールは豪快にゴールネットへ突き刺さります。6-0。攻撃の手を緩めないホームチーム。

75分は成立に4人目の交替。宇津木が下がり、ルーキーの吉長由翔(1年・FC多摩)がピッチへ。76分は駿台学園。田代が思い切って狙ったミドルはクロスバーの上へ。77分は成立が最後の交替として、先制弾の豊田と濱田陸汰(2年・大宮アルディージャJY)をスイッチ。78分は成立。右サイドでドリブルを敢行した水野のシュートは枠の上へ。そして80+1分に飛び出した意地の一発。鮫島と横内の途中出場コンビでもぎ取った右CK。こちらも途中出場の茂木が蹴り込んだボールは、GKが掴み切れずにエリア内でこぼれると、最後は中村海知がゴールへ押し込みます。駿台学園が挙げた1点は、「最後はみんなで良い形で悔いなく終わりたいですね」と話していた3年生による後輩への置き土産。スコアは6-1に。

大トリは1年生アタッカーが。80+2分。成立のラストチャンス。右サイドから飯島が入れたクロスがこぼれると、いち早く反応した吉長由翔はすかさずプッシュ。ボールはゴールへきっちり転がり込みます。これには兄の真優も「自分が取ったくらい嬉しかったですね。自分も1年生の時はメンバーに入っていたんですけど、出場機会もなかなか得られずに、ゴールはなかなか遠かったので、1点取るか取らないかという所は凄く大きいと思います」と弟を称賛。ファイナルスコアは7-1。「今は攻撃のフィニッシュの所をトレーニングしていて、そういうシーンもちょっと出ているので、練習の成果は出ているかなと思います」と太田監督も話した成立が快勝を収め、2回戦へと勝ち上がる結果となりました。

成立のキャプテンマークを巻く宇津木は、最近こそスタメンでの出場が増えてきたものの、今シーズンの途中まではなかなか出場機会を得られないなど、決して順風満帆とはいかない時期を過ごしてきました。本人も「自分自身ケガが多くて、インターハイとか出場機会も少なくて、自分も納得のいくプレーができずに終わってしまって、キャプテンという立場でチームを引っ張っていけてるのかなと思っていました」と当時を振り返りながら、続けて「やっぱり試合に出れないと悔しいですよね。でも、『自分には何ができるのか』だったり、『何で出れないんだろう』というのは考えながら、自主練は怠らずにずっとやっていて、そこは我慢強くやっていました」とも。その日々の積み重ねが、ようやくここに来て実り始めているようです。

太田監督も「彼にはキャプテンとして言葉じゃなくて、ああいう形でどんどん攻撃も守備もやってもらって、引っ張っていってもらえればなと思っています」と期待を口にすれば、宇津木のゴールをアシストした吉長真優も「キャプテンは自分で引っ張るという感じじゃなくて、しっかり陰で頑張ってくれる感じなので、アイツが決めるとチーム的にも盛り上がるんです」と笑顔。2人の言葉からも、宇津木が確実にチーム内での存在感を高め続けている様子が伺えます。次戦以降に向けて「自分がやらなきゃと思っていて、チームのためにも走らなきゃいけないし、声も出し続けて、チームを鼓舞し続けたりできればいいと思います」ときっぱり言い切ったキャプテンのここからにも、大いに注目したいと思います。      土屋

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