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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
全国常連校同士のファーストマッチ。鹿児島県代表の神村学園と東京都代表の國學院久我山が対峙する一戦は、金武町フットボールセンターです。
激戦の鹿児島を6試合連続完封という素晴らしい結果で力強く抜け出し、3年連続で全国の舞台まで勝ち上がってきた神村学園。今大会はチームのキャプテンで中盤のキーマンでもある軸丸広大(3年・神村学園中)を負傷で欠くことになりましたが、「軸丸さんがいない分、『みんなでしっかりと戦おう』という気持ちだったので、その分に関しては今はみんなでできていると思います」と話すのはストライカーの寺田聡(2年・神村学園中)。キャプテン不在を糧に上位進出を狙います。
新チーム結成からの半年で積み重ねた公式戦の連続勝利は15試合。T1リーグ、関東大会予選、関東大会、インターハイ予選と一度の負けもなく突き進むなど、強烈な勝負強さをシーズン当初から纏ってきていた國學院久我山。先週日曜日のリーグ戦でとうとう連勝記録はストップしたものの、「それを引きずることはないと思います」と言い切るのは、やはり公式戦15戦連発と驚異的なハイペースで得点を量産してきた、ゲームキャプテンでストライカーの山本航生(3年・東急SレイエスFC)。真剣に狙う頂を見据えながら、まずは目の前の初戦に向かいます。金武町の空は綺麗なまでに夏模様。楽しみな70分間は神村学園のキックオフでスタートしました。
ファーストシュートは8分の久我山。左から山下貴之(3年・ジェファFC)が狙ったシュートは枠の左へ外れましたが、先に積極的な姿勢を打ち出すと、9分には自らのドリブルで奪った右CKを戸坂隼人(3年・FC東京U-15むさし)が蹴り込み、保野友裕(3年・東京武蔵野シティFC U-15)が合わせたヘディングも枠の左へ逸れたものの、まずは久我山がアグレッシブに立ち上がります。
12分は久我山に決定機。右サイドから戸坂が入れたグラウンダークロスに、ニアへ走り込んだ山本航生のスライディングシュートは、神村学園のGK吉山太陽(2年・神村学園中)がファインセーブで回避。14分にも右サイドを運んだ戸坂が、カットインしながら枠へ収めたシュートも吉山がキャッチ。「前半は多少バイタルに入ってサイド攻撃とか、結構ワイドを使いながら広くできていた」とは山本航生。続く久我山のゲームリズム。
すると、3分間のクーリングブレイクを経て、先にスコアを動かしたのはやはり久我山。25分に戸坂が蹴った右CKの流れから、大窟陽平(2年・1FC川越水上公園)の入れたボールを残っていた保野が落とすと、田中琢人(2年・ジェファFC)はミドルレンジから右足一閃。ボールは素晴らしい軌道を描いて、左スミのゴールネットへ突き刺さります。久我山のエースナンバーを背負う14番が魅せたゴラッソ。久我山が1点のリードを手にしました。
「だいぶ相手に回されましたね」と有村監督も振り返る神村学園は、31分にようやくフィニッシュが。キャプテンマークを巻く濱屋悠哉(3年・神村学園中)が左へ振り分け、野邊滉生(3年・神村学園中)の折り返しを濱屋が叩いたシュートは、DFに当たって枠の左へ逸れましたが、その左CKのこぼれをキッカーの永吉飛翔(2年・FCアラーラ鹿児島U-15)が再びクロスに変えると、野邊、稲田翔真(2年・神村学園中)と繋いだボールに寺田が反応。きっちりゴールネットへ押し込みます。「最近周りが見えるようになってきて、いる位置とかも良くなってきた」と指揮官も口にした2年生ストライカーが一仕事。神村がすぐさま同点に追い付きます。
35+2分は久我山。山本航生がGKまでプレスを掛け、こぼれたボールを山下が拾ってフィニッシュまで持ち込むも、ボールはゴール左へ外れると、直後に生まれたのは逆転弾。「相手が上手いというのはわかっていたので、もう剥がされても前から行って、ボールを2度3度追いながら、どこかで引っ掛からんとウチは勝機はないよという話はしていた」と有村監督が話したように、久我山の最終ラインでのパス回しを樋渡鯉太郎(3年・神村学園中)が引っ掛け、完全にGKと1対1の局面へ。そこに「みんなキツい状態で付いてきていなかったので、自分が走らないとと思って」と並走していた寺田へ、樋渡は冷静にラストパス。12番は無人のゴールへボールを流し込みます。「少しでもオトリになれればいいかなと思っていたら来たので、9割方は樋渡さんのゴールだと思います」と笑った寺田はこれでドッピエッタ。神村学園がスコアを引っ繰り返して、最初の35分間は終了しました。
「アレだけ前に人を置いておいて、あそこで引っ掛けられて持っていかれればピンチになるのはわかっていたので、そういう意味ではボールを持つ自覚や覚悟や責任が足りないと思いますね」と清水恭孝監督も渋い顔の久我山は、それでも後半スタートからラッシュ。36分には左サイドバックの森次結哉(1年・FC東京U-15むさし)を起点に縦へ運ぶと、山下のシュートは神村学園の右サイドバックを務める中島吏九(3年・神村学園中)がきっちりブロック。43分にも中盤アンカーの福井寿俊(3年・東急SレイエスFC)が縦へ付け、大窟が右へ展開したボールを戸坂がシュートまで持ち込み、吉山にキャッチされたものの、一段階踏み込んだアクセル。
44分も久我山。大窟のパスから、右サイドバックに入っていた山本献(3年・横浜F・マリノスJY追浜)が中へ付けるも、田中はシュートまで至らず。46分は神村学園。樋渡の左クロスは、久我山のセンターバック加納直樹(3年・ジェファFC)が丁寧にクリア。47分は神村学園にビッグチャンス。左に開いた濱屋のクロスに、中央でフリーになった野邊が枠へ収めたシュートは、久我山のGK村上健(2年・FC東京U-15深川)が超ファインセーブで仁王立ち。48分は久我山に1人目の交替。森次を下げて、河原大輔(3年・横浜FC JY)を右サイドバックへ投入し、山本献を左サイドバックへ移して、整える追撃態勢。
「最近練習していて、うまくハマりましたね」と有村監督も笑顔を見せた52分の衝撃はセットプレーで。右寄り、ゴールまで約25mの位置で神村学園が獲得したFK。スポットに立った樋渡と下川床勇斗(2年・神村学園中)がボールをまたぎ、濱屋はグラウンダーで中へ。このパスを永吉がダイレクトで右へ流すと、走り込んでいたのは"1人目"にまたいだ樋渡。まったくのフリーで放ったシュートがゴールネットを揺らします。このデザインされた鮮やかな一撃には、思わずスタンド部分の芝生席からも大きなどよめきが。神村学園のリードは2点に広がりました。
「2人またいだ瞬間に『何かがあるな』って誰もが思ったはずなのに、すべての人間が止まりましたから。綺麗にやられましたから。集中力がなかったですね」と清水監督も悔やんだ久我山は、小さくないビハインドを追い掛ける展開に。61分にはピッチ中央、ゴールまで約30mの距離から保野が直接狙ったFKは枠の右へ。64分には山下と安田修都(1年・ジェファFC)を、66分には田中と吉田圭佑(2年・東急SレイエスFC)を相次いで入れ替え、最後の勝負に。アン・デービッド(2年)と稲田のセンターバックコンビを中心に、守備の集中が続く神村学園も67分に最初の交替。中盤で奮闘した加治屋陸(3年・日置伊集院北中)に替えて、大迫魁士(3年・FC REALIZE鹿児島)をピッチへ送り込み、取り掛かるゲームクローズ。灼熱の70分間もいよいよ大詰め。
70分は神村学園に決定機。細かいパスワークから樋渡が右へ付け、野邊のシュートは村上が懸命にファインセーブで阻止すると、直後の70分に歓喜を迎えたのは久我山。右サイドを交替出場の安田が粘って切り裂き、中央で受けた山本航生は冷静に左へ。走り込んだ吉田のシュートはゴールネットへ転がり込みます。土壇場で飛び出したコンビネーションでのフィニッシュ。3-2。アディショナルタイムの掲示は6分。正真正銘、360秒のファイナルバトル。
70+2分は久我山。左サイドで奪ったCK。山本献が慎重に蹴り込んだボールは、判断良く吉山がパンチングで回避。70+3分も久我山。ピッチ右寄り、ゴールまで約25mのFKを山本献が直接狙うも、神村学園の人垣が必死のブロック。70+6分も久我山。福井が縦へクサビを打ち込み、大窟がスルーパスを送るも、走った山本より一瞬早く吉山が勇敢に飛び込んでファインキャッチで凌ぐと、これがこのゲームのラストチャンス。「自分たちはパス回しで翻弄するというのが武器ですけど、魅せるサッカーをするために走ることは欠かせないと思うので、みんなで共通理解してやってこれたと思います」と胸を張ったのは寺田。神村学園が接戦をモノにして、2回戦へと勝ち上がる結果となりました。
「先制した後に少しトーンが沈んだと思っているんですよ。『ずいぶん沈んだな』という感じがしたので、『それじゃあ苦しむだろうな』と思ったら案の定ですから、それでもミスがなければもしかしたら失点もなかったかもしれないですけど、負けるべくして負けたと思いますけどね。今日は完全に自滅でした」(清水監督)「先制点を取ったことが悪い方に転んだなと。得意なパターンで取った訳でもないので、流れ的にも良くないなと思っていて、後ろから『しっかり締めろ』とは言っていたんですけど、コーナーキックからの不用意なミスと、カウンターで一発という最悪の2失点で、アレだけスタメンで出ている11人が責任感のないプレーをしていて、終始それに尽きたので、完全にそれが敗因ですね。技術に関しても相手の方が上だったと思います」(保野)「前半アレだけ攻めていて、あの流れで1点取れて、自分たちの中でも『行けるんじゃないか』みたいな雰囲気が出ていたのは絶対あると思いますし、そこで同点ゴールを取られた後に、相手の方がグッと盛り上がっちゃったのは感じていたので、自分たちの1点目の所でちょっと変わっちゃったかなと思います」(山本航生)と3人が口を揃えたように、久我山は先制点が逆に流れを引き渡す要因になってしまった印象です。上を目指すだけの十分な力があっただけに、ゲーム運びも含めてもったいない試合だったことは間違いのない所。「これで夏が終わって、じゃあ次は冬ってすぐ切り替えないといけないんですけど、そこはちょっと難しい部分もあるので、このあとリーグ戦も戻って始まりますし、これを冬の選手権やリーグ戦に繋げないと全国に来た意味もなくなっちゃうと思いますし、今はみんな悔しかったりいろいろな想いがあると思うんですけど、そこをしっかりこの後に繋げないと絶対ダメだと思うので、自分も含めてチームでもう1回冬に向けて変わっていきたいと思います」と山本航生。この経験をどう生かすことができるかは、彼ら自身がどういう意識でこれからの時間を過ごすかに懸かっているはずです。 土屋
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