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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
2013年のインターハイ予選や2016年の選手権予選など、近年は大事なクォーターファイナルで激突することの多い両者の対峙。帝京と東海大高輪台の好カードは駒沢第2球技場です。
最後に東京の代表権を手にしたのは2010年のこと。以降は3度のベスト4、3度のベスト8とあと一歩やあと二歩のステップを踏み越えられずに、全国から遠ざかっている帝京。9年ぶりの戴冠を目指して臨む今大会は、昨年末の参入戦で勝利したことで今シーズンはプリンス関東に在籍しているため、このゲームが初戦ではあるものの、「選手たちには『プリンスリーグの1節から7節まではトーナメントの気持ちでやれ』と言ってシーズンに入っているからね」とは日比威監督。そのプリンスでも3勝3分け1敗の3位と好位置に付けており、実戦経験で積み重ねた自信を携えて、重要な初戦へ向かいます。
過去に全国へと出場した3年前も10年前も、共に支部予選から勝ち上がっての"下克上"的に歓喜を享受した東海大高輪台。今大会も関東大会予選の早期敗退で、支部予選からのスタートとなりましたが、2試合15得点という圧倒的な攻撃力で抜け出すと、一次トーナメントも早稲田実業にPK戦で、東京実業に2-1で粘り強く競り勝ち、二次トーナメントに入っても東海大菅生、都立東大和を共に2-1で退けて、この準々決勝まで。「ここからも強豪相手に気を引き締めて行けると思うので、そういう面ではチャレンジャー精神を持ってやっていきたいと思います」とはキャプテンの藤井一志(3年・ヴィッセル神戸伊丹U-15)。3度目の"再現"を達成すべく、目の前の80分へ挑みます。駒沢は朝から強い雨に包まれるコンディション。注目のクォーターファイナルは10時ジャストにキックオフされました。
先にチャンスを創ったのは帝京。3分に右CKをレフティの左サイドバック石井隼太(3年・FC東京U-15むさし)が蹴り込むと、ファーに突っ込んだ宮崎海冬(2年・FC多摩)のシュートはゴール左へ外れたものの、惜しいシーンを。4分にも右サイドで得たFKを石井が蹴り入れ、ここはDFのクリアに遭いましたが、まずはセットプレーからチャンスを掴みます。
ところが、10分にスコアを動かしたのは高輪台。DFのクリアがラインの裏に抜けると、飛び出した桑山侃士(2年・GRANDE FC)は左足一閃。強烈な弾道はゴール左スミへ突き刺さります。「この大会は予選から結構点を決められているので、良い波に乗れているかなと思います」と口にするストライカーがこの日も一仕事。高輪台が1点のリードを手にしました。
さて、帝京側からするとオフサイドをアピールしたものの、ゴールが認められた失点を経て、「心理的にも消極的になったがために高輪台に前を向かれたりとか、プレッシングが甘くなって、寄せ切れなかった部分はあるかもしれないですね」とは日比監督。17分も高輪台。苗加慶太(3年・浦和レッズJY)の左CKを、ニアで植山想太(3年・三菱養和調布JY)がフリックしたボールに藤井はわずかに届かなかったものの好トライ。21分も高輪台。センターバックの茂木成志(3年・ジェファFC)を起点に、藤井が枠へ収めたミドルは帝京のGK冨田篤弘(3年・FC多摩)がファインセーブで回避。追加点とは行きません。
直後の21分も高輪台。左からサイドバックの宮田龍芽(3年・FC.PROUD)が斜めに付け、横山歩夢(2年・FCトッカーノ)が放ったシュートはゴール右へ。22分は高輪台に決定機。相手ボールを奪った横山はドリブルで運び、枠へ飛ばしたシュートは冨田がここもファインセーブ。右から苗加が蹴ったCKはシュートまで至らなかったものの、攻め立てる高輪台。
「トーナメントは一発勝負ということもあって、やっぱり雰囲気も何もかも違って、やりにくい部分はありました」とキャプテンの冨田も振り返った帝京は、31分に好アタック。ボランチの佐藤悠生(3年・三菱養和調布JY)が右へ出したパスは相手に少し当たり、山川高暉(2年・FCトリプレッタJY)のクロスに走り込んだ高橋岳(3年・鹿島アントラーズつくばJY)はわずかに届かず。37分にも山川と本山大器(2年・FC東京U-15深川)のワンツーで得た右CKを石井が放り込み、本山のシュートも中瀬拓夢(3年・FCトリプレッタJY)のシュートもDFに弾かれ、高橋のシュートもDFに当たって枠の右へ逸れるも、ようやく出てきた前へのパワー。
40分は高輪台。藤井が左へ振り分け、桑山が右の裏へ落とすも、走った横山はシュートを打ち切れず。「入りも別に悪くなかったですけど、やっぱりあの1失点目がポイントでしたね」とは日比監督。高輪台が1点のアドバンテージを握ったまま、最初の40分間は終了しました。
後半開始早々の44分にカードを切ったのは帝京ベンチ。右サイドハーフの本山に替えて、石川航大(3年・鹿島アントラーズつくばJY)を1トップ下に送り込み、小島匠瑛(3年・FC東京U-15深川)が1トップへ、中瀬が右サイドハーフへそれぞれスライド。46分には高橋のパスを受け、佐藤が1人外してエリア外から狙ったシュートはクロスバーの上へ消えましたが、「このチームにとっては一番の心臓だと思う」と日比監督も認める石川投入で、踏み込みたい攻撃のアクセル。
49分に到来した同点機。山川が持ち前のスピードで右サイドを運び、高橋が左へ展開したボールを、「石井が外を回って、最初は出そうと思ったんですけど、カバーがいたのが見えたので、見えた相手のギャップにちょっと浮かせて」石川が出したパスがディフェンスの手に当たると、ホイッスルを吹いた主審はペナルティスポットを指し示します。キッカーは石川。「結構緊張はしていたんですけど、後ろから『思い切って蹴れ』と聞こえたので、迷うことなく蹴りました」というキックはGKも届かず、ゴールネットへ飛び込みます。「ゴールで活躍したいという想いはありましたし、チームが負けていたので救いたいという気持ちはありました」と話した途中出場の石川がきっちり果たしたジョーカーの役割。スコアは振り出しに引き戻されました。
追い付かれた高輪台は続けて交替を。52分は1人目の交替として、苗加と小島渉(2年)をスイッチすると、54分には2人目の交替として先制弾の桑山を下げ、ようやく負傷から帰ってきた塚原智也(3年・FC.PROUD)をピッチへ解き放ち、取り戻したいゲームリズム。
55分は帝京。石井が蹴った右CKは、懸命に飛び付いた高輪台のGK豊田隼(3年・東川口FC)がフィスティング。58分も帝京。小島、宮崎、高橋とスムーズにパスが回り、石川のシュートはDFに当たって枠の右へ外れたものの、綺麗なアタックを披露。直後の右CKも石井が蹴り込み、豊田のパンチングを高橋が残すと、小島の頭を経由して宮崎が合わせたヘディングはゴール左へ。61分は高輪台。藤井が中盤から縦パスを打ち込むも、塚原のミドルは枠の上へ。やり合う両雄。ぶつかり合う勝利への意欲。
カナリア軍団の執念は65分。2分前に佐藤と松村亮祐(3年・三菱養和調布JY)を入れ替えた帝京は、65分にスローインの流れから右へ開いた中瀬が中央へ折り返すと、高橋は利き足の左足で躊躇なくシュート。枠を捉えたボールは、右スミのゴールネットへ飛び込みます。「先制されて折り返されても、みんな『できる!できる!』と落ち込むこともなかったと思います」とは冨田。帝京が逆転に成功します。
折れなかったタイガー軍団。失点から2分後の67分は高輪台。名倉海登(3年・ジェファFC)が丁寧に落とし、後ろから飛び込んできた鈴木颯太(3年・Forza'02)が狙ったシュートはDFにブロックされましたが、こぼれにいち早く反応した横山は懸命にクロス。走り込んだ藤井のヘディングは、左スミのゴールネットへ弾み込みます。「キャプテンで10番を背負わせてもらっている以上は、目に見えない形だけじゃなくて結果もしっかり残さないといけないなと思います」と語る藤井が執念の同点弾。あっという間に両者の点差は霧散しました。
69分は高輪台。藤井がヒールで残し、塚原がドリブルから打ったミドルは枠の上へ。72分は帝京にFKのチャンス。中央やや右寄り、ゴールまで約20mの位置からセンターバックの鳥木秀音(3年・東急SレイエスFC)が直接狙ったキックはゴール右へ。73分も帝京。宮崎のパスから石井が左クロスを上げ切るも、中瀬のヘディングは豊田がキャッチ。73分は高輪台に3人目の交替。植山と伊藤唯(3年・クリアージュFC)を入れ替え、右サイドの守備を再構築。2失点後は帝京が柳大弥(2年・三菱養和調布JY)と鳥木、高輪台が茂木と岡田知也(2年・GRANDE FC)、双方とも両センターバックを中心に高い守備の安定感が。
74分は帝京。本山が左から中へ戻し、小島のミドルはわずかに枠の左へ。80+1分は高輪台。名倉のパスを引き出した横山が左へ展開し、宮田が打ったシュートはゴール左へ。80分間では決着付かず。「2失点目をされた時に若干『アレ?』みたいな感じになったんですけど、みんなでしっかり切り替えて、『次だぞ』ってできていました」とは石川。ベスト4の行方は延長戦へと委ねられることになりました。
雨脚の強まる中、高輪台のキックオフで始まった延長戦。前半開始時から市川颯馬(2年・FC東京U-15むさし)を投入した帝京は83分に、中瀬のパスから「頑張ったね。アイツは今日の試合の一番かな」と指揮官も評価した山川が右サイドをえぐって折り返すも、戻った名倉が必死にクリア。86分にも山川の右クロスに、宮崎が左足で放ったミドルはゴール左へ。4枚目の交替として名倉と山田喬介(3年・GRANDE FC)をスイッチした高輪台は、90+1分にセットプレー。右CKを藤井が蹴り入れ、飛んだ鈴木のヘディングはDFがきっちりブロック。スコアは2-2のままで、残された時間は10分間のみ。
後半開始時の91分に帝京は4人目の交替。小島と照田拓史(3年・三菱養和調布JY)を入れ替えると、訪れた絶叫は96分。右サイドで手にしたCK。スポットに向かった石井が鋭く蹴り込んだボールは、混戦の中で高輪台のディフェンダーに当たってしまい、ゴールネットへ到達します。「ああいう場面であそこにボールを入れた石井のボールが良かったですね」と日比監督も言及した、石井の軌道で勝負あり。最終盤で再び帝京が1点のリードを強奪します。
攻めるしかない高輪台は、97分に5人目の交替。小林啓人(2年)をピッチへ送り出し、前線へ惜しみなくパワーと推進力を。99分にはセットプレーの好機。右サイドから小林が蹴ったボールはそのままクロスバーを越えてしまうと、これがこのゲームのラストチャンス。5人目の交替として宮下正太郎(3年・FC東京U-15むさし)というカードを切り、ゲームクローズにもきっちり成功した帝京が激闘を制し、準決勝へと駒を進める結果となりました。
「これはある意味、負け試合ですよね。内容は何もないです。1つ言えるのはトーナメントは負けなくてよかったという、そこだけですよね」とは日比監督ですが、近年はここ一番でなかなか勝ち切れなかった帝京が、延長戦を粘り強く制して全国へと王手を懸けたあたりに、今年のチームの逞しさを感じます。「去年の三浦颯太みたいな選手はいないので、『全員でやってやろう』という気持ちはあって、1つのミスがあったら全員で『こうした方がいいんじゃない』とかミーティングしてきましたし、僕たちは1人じゃ勝てないので、チームとして戦えていることが今年の強みだと思います」とはキャプテンの冨田。良い意味で自分たちの強みと弱みをきっちり把握して、ピッチに反映できているのかなと。これで9年ぶりの全国へ必要な勝利はあと1つ。「去年の選手権でも決勝で勝ち切れずに全国に行けなかったですし、個人的には去年のインターハイもケガをしていて、試合に出れなくて負けちゃったりしていて悔しい部分はあって、今年のラストの夏にみんな懸けている部分はあるので、全国に行きたいです」と言い切ったのは石川。カナリア軍団が次に奏でる歌は歓喜か、それとも。 土屋
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