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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
2年ぶりの覇権奪還か。それとも一気に初の戴冠まで駆け抜けるか。FC東京U-18とFC町田ゼルビアユースのファイナルは、もちろん味の素フィールド西が丘です。
「リーグ戦だろうがトーナメントだろうが練習試合だろうが、一戦一戦すべて勝ちにこだわる中でどこまで行けるか」というベースを携えた中村忠監督が就任して約1か月。「全員まだ揃ってやっていない状況があるんですけど、この先はまだ伸びしろもあると思いますし、練習も結構みんな意識高くできていると思うので、これを継続していきたいと思います」と湯本創也(2年・FC多摩)も話したように、少しずつチームの芽が膨らみつつあるFC東京U-18。今大会は初戦でFCトリプレッタユースを苦しみながらも4-2で振り切り、Rio FCから10-0で勝ち点3を奪取。先週の三菱養和SCユース戦は、ディフェンス陣の奮闘もあってスコアレスドローで2年ぶりのファイナルへ。「『東京で1位を取らなきゃ、これからオレらが目指している所に届かない』というのはみんなで決めていた」とは宮田和純(2年・FC東京U-15深川)。タイトル獲得への意欲は十分です。
「サッカーってチームスポーツなので、個性を出す所とどこかで個性を押し殺して、チームが転がるために自分を切り捨てる瞬間と、そのバランスをこっちがどう見てあげるかということと、彼らがそういうバランスを少し感じられたときに、非常に良いグループに僕はなると思っています」とは竹中穣監督。当然プロを目指していく大前提の中でも、個と組織の融合を高次元で結び付けることが求められるフェーズに入ってきた感のあるFC町田ゼルビアユース。今大会は初戦で東京武蔵野シティFC U-18に1-0で競り勝つと、大森FCにも4-0で快勝を収め、グループ首位を懸けた東京ヴェルディユースとの決戦にも、江口大介(1年・FC町田ゼルビアJY)のドッピエッタで鮮やかな逆転勝利を収め、初めての西が丘ファイナルへ。「今年の目標は全部優勝なので、西が丘でも勝てるようにしたいです」とは八木直人(2年・FC町田ゼルビアJY)。冬の東京制覇を勝ち獲るための90分間へ堂々と向かいます。相変わらず底冷えのするスタンドには、少なくないサッカージャンキーが。注目の決勝は13時30分にキックオフされました。
スタートからペースを掴んだのは「今まで自分たちは立ち上がりは良くなかったんですけど、今日は良く入れました」と大会を通じて中盤で存在感を発揮してきた常盤亨太(1年・FC東京U-15深川)も言及するFC東京。この大会から取り組んできた3-4-3ではなく、4-4-2を敷いてきた布陣の中で、右の小林里駆(2年・FC東京U-15むさし)、左の角昂志郎(1年・東京武蔵野シティFC U-15)を配したサイドハーフも、外と内を使い分けながら攻撃の推進力に。9分に角が枠へ収めたミドルはゼルビアのGK鈴木悠矢(2年・桐光学園中)のパンチングに阻まれましたが、勢いを持って立ち上がります。
すると、11分に生まれた先制点。ここも小林の仕掛けで獲得したCK。右からキャプテンマークを巻くバングーナガンデ佳史扶(2年・FC東京U-15深川)がファーまで蹴り込むと、待っていた木村誠二(2年・FC東京U-15深川)のヘディングはゴールネット左スミへ飛び込みます。「トップ昇格よりも、まずはチームをプレミアに戻すというのが今年1年の最大の目標です」と言い切るディフェンスリーダーが攻撃面でもきっちり結果を。FC東京が1点をリードしました。
15分の決定機もFC東京。最終ラインから木村が好フィードを送ると、抜け出した久保征一郎(2年・太陽SC鹿児島U-15)のループはクロスバーの上へ外れるも、トップチームのキャンプを経験した2人でシンプルなフィニッシュまで。22分にもバングーナガンデが蹴った右CKはシュートまで至りませんでしたが、続くFC東京のリズム。
一方のゼルビアは「当然守備の所で怠ってないので、なかなかトップの菊池のラインを人が追い越していくという所が出なかったですね」と竹中監督が口にしたように、右から高島大夢(2年・FCヴァーデュア三島)、小山田賢信(2年・FCトッカーノ)、新井田楓(2年・府ロクJY)と最終ラインに並んだ3枚と、右に船戸詩季(1年・FC町田ゼルビアJY)、左に関口陽大(2年・FC町田ゼルビアJY)を配したウイングバックも含めた5バック気味の時間も長く、5-4-1で守備に比重が掛かる中で、1トップの菊池陸斗(2年・FC町田ゼルビアJY)にボールが入っても、否応なく孤立気味に。ボールを奪った流れも手数には結び付きません。
ただ、「先に点を獲っちゃったんで『よし行けるぞ!』みたいに、勢いだけでサッカーをやっていた部分があった」(中村監督)「先制点も獲れたんですけど、その後の時間帯から全員のやりたいことが噛み合ってなくて、ミスとかも増えてしまった」(常盤)と2人が声を揃えた通り、ボールこそ長く持っているFC東京も手数は少なめ。34分に自ら蹴った左CKのこぼれを森田慎吾(2年・FC東京U-15むさし)がクロスに変えるも、湯本の位置がオフサイド。36分に木村がくさびを打ち込み、反転した久保のエリア外シュートは鈴木がキャッチ。42分に角が左へ展開し、バングーナガンデのクロスにニアで合わせた久保のヘディングは枠の左へ。逆に44分には町田にチャンス。ボランチの一角に入った金澤空(2年・FC町田ゼルビアJY)が左へ流し、八木のスルーパスに抜け出した菊池はオフサイドを取られたものの、ようやく狙いの一手を。「思ったよりはエネルギーを出し戻したので、そこはポジティブに捉えていました」とは竹中監督。前半はFC東京が1点のアドバンテージを携えて、ハーフタイムに入りました。
後半はスタートから双方に交替が。FC東京はバングーナガンデに替えて、大迫蒼人(中学3年・FC東京U-15むさし)をそのまま左サイドバックへ。ゼルビアは2枚替え。八木と米盛憲輝(1年・FC町田ゼルビアJY)を下げて、猪野毛日南太(1年・FC町田ゼルビアJY)と坂野大地(1年・FC町田ゼルビアJY)をそれぞれ右シャドーとボランチに送り込み、「攻撃を改善しましょうということで」(竹中監督)同点、逆転への態勢を整えます。
52分はFC東京に決定機。右サイドから小林が好クロスを上げ切り、突っ込んだ角のダイビングヘッドは枠を捉えるも、カバーに入った船戸がスーパーブロックで危機回避。54分もFC東京。木村が左へ流し、大迫はドリブルから積極的なミドルを枠の左へ。59分もFC東京。再び左サイドをドリブルで駆け上がった大迫は2人をぶっちぎり、マイナスに折り返したボールから久保が狙ったシュートは新井田が体でブロック。「後半はもうちょっと謙虚に行こうと」(常盤)後半に入ったFC東京の続くアタック。
62分はFC東京に2枚替え。木村と久保がベンチへ下がり、大森理生(1年・FC東京U-15むさし)と横田峻希(2年・FC東京U-15むさし)がピッチへ。65分はゼルビアに2枚替え。「非常に前半からタイトにやってくれていたので、どこまで行けるかなという所だった」と竹中監督も評した菊池と新井田を、江口と石川凛太朗(1年・FC町田ゼルビアJY)にスイッチして、最前線に江口と石川、中盤はサイドハーフとして右に猪野毛、左に塩澤拓馬(2年・FC栃木)を配し、ボランチは坂野と金澤、最終ラインは右から船戸、高島、小山田、関口を並べる4-4-2で勝負に出ます。
68分はゼルビア。左サイドから塩澤が蹴ったFKは、FC東京のGK飯塚欣士(2年・前橋FC)がしっかりキャッチ。72分はFC東京。角が左へ展開し、大迫のクロスにダッシュで飛び込んだ角のシュートは塩澤がブロックしたものの、躍動感を放ち続ける大迫とアグレッシブな姿勢の続く角でフィニッシュまで。72分にはその大迫が右CKを続けて蹴り込み、どちらもシュートには結び付かなかったものの、中盤で攻守に的確なプレーを続ける安田虎士朗(中学3年・FC東京U-15深川)と大迫の"中学3年生コンビ"は、ごくごく普通にやれている感が。
77分もFC東京。角が左FKを蹴り込むと、4分前に投入されたばかりの岡哲平(2年・FC東京U-15深川)が合わせたヘディングはゴール左へ。80分はFC東京に決定的なチャンス。左サイドを圧巻の突破力で貫いた小林が中央へ戻し、受けた横田はフリーでシュートを放ったものの、ここは鈴木が懸命に残した手でビッグセーブ。ゲームを決める次の1点は奪えません。
「今日は何としてでも勝ちたかった」竹中監督は、82分に5枚目のカードを投入。町田丈(1年・Forza'02)を右サイドハーフに解き放ち、猪野毛を左サイドハーフにスライドさせて、踏み込みたいラストアクセル。85分にレフティの関口が放り込んだ右FKは湯本にクリアされますが、最終盤で到来したこのゲーム最大にして唯一の得点機。90分。鈴木が自陣から大きく蹴り込んだFKをGKはファンブル。エリア内にボールがこぼれます。誰よりも早く落下地点に入ったのは小山田。10番のキャプテンが左足で狙ったシュートは、しかし枠の右へ逸れてしまい、千載一遇とも言うべき同点のチャンスを逃すと、程なくして聞こえたファイナルホイッスル。「選手が頑張ってくれたと。1試合ずつ元気になってくれて、今日の試合なんか今までで一番僕がベンチからの口数が少なかったと思うんです。アレでも(笑) みんなで声を出している部分が結構あったので、そこは良かったなと思います」と中村監督も語ったFC東京が"ウノゼロ"できっちり勝ち切って、2年ぶりのタイトルを手にする結果となりました。
「本当に優勝を狙えるチームはこういうゲームをしていないはずなんですよ。僕が言うのもおかしな言い方なんですけど、そこはまだチャレンジャーで、どっぷり組み合って『オマエ何できるの?オレはコレできるぜ』っていう見せ方をしている訳じゃないと、僕は本当に正直に捉えていて、そこにはまだもう少し時間が掛かると思っています」と竹中監督も話したゼルビア。指揮官は続けて「僕が一番彼らに多く話をするのはサッカーとどう関わるか。自分がサッカーを愛していて、継続してきているものに対して、ふとした瞬間に凄くルーズなサッカーとの関わり方をするようになったり、多感な時期ですので、他のことにちょっと目が行きかけたり、行ったり。そういう所も含めてサッカー選手になるにはそれではダメだと。サッカーを通じて大人になるという意味ではいいんですけど、『君たちはプロになるんだよね』っていう。『プロになるためにゼルビアを選んだんじゃないの?』ということはテーマとして言っていますけど、何人がそれをスタンダードにしているか。1人じゃみんな見上げているだけだし、その人数をチームとして増やさなきゃいけないと。そこがFC東京との明らかな差というふうに僕は捉えていますので」とも。おそらくはシュート1本に抑えられたこの決勝の景色をどう上書きしていくかが、今シーズンのゼルビアのカギを握ってくるであろうことは間違いなさそうです。
「『試合に出たい!』『俺は元気があるぞ!』というヤツが1人でも増えて欲しい、というのがこの大会通してのテーマの1つだった」と中村監督も口にしたFC東京の今大会を振り返ると、個人的に2人の選手が特に印象に残っています。1人は常盤亨太。「去年はプレミアのベンチばっかりで悔しい思いをしたので、今年は自分が引っ張れるくらいの立ち位置でやりたいなと思っています」と話すボランチは、中盤で攻守に中心と言えるようなパフォーマンスを継続して披露。「今大会に関しては守備の所もサボる回数も少なく、今日も2,3回サボったシーンはあったんですけど(笑)」とは指揮官ですが、本人も「この大会は、去年より一段階攻撃面も守備面も上がったかなとは思っているんですけど、トップレベルに近い相手に対して、まだまだできることはあるんじゃないかなって思っています」とさらなる向上心を。このポジションも新1年生を含めて激戦区と言えるだけに、常盤の今シーズンには大いに注目したいと思っています。
もう1人は宮田和純。「どちらかというとチームをまとめたいというか、勝つために自分から行動したいので、これからもやる機会があったらしっかりやりたいと思ってます」というキャプテンをこの日は譲り、「毎試合指名なので、今日はオレじゃなかったですけど、『最後までやり切りたかったな』というのはありました」という想いこそあったものの、最前線で気持ちを前面に押し出しながらのプレーは、常にチームへ一定以上の推進力を。「征一郎がトップに呼ばれて、里駆がイングランド遠征に行っていた中で、彼は前で中心になって、この大会は良くやってくれたのかなと思うので、これを継続できるとね。まだ失う回数も多いし。もっともっと質を高めないと。ただ、やれる選手かやれない選手かという最後の見極めは、『もっとオレがやってやろう』という気持ちを持っているか、持っていないかだと。そこは大事にしたいですし、結局そういう選手はグラウンドに立つ回数は増えると思うんですよね」と中村監督も触れた宮田のメンタルは、見る者に訴えかけてくる何かがあると思います。「たぶんオレらは1試合1試合選手が固定されないので、出ている選手が自分をどんどん主張して、周りが受け入れて、それでうまく試合の中で成長できたらと思います」と話す13番のストライカーが、2019年に向かう青赤の命運を左右する選手になる可能性は、決して小さくなさそうな気が個人的にはしています。 土屋
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