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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2019年02月18日

新人戦埼玉決勝 正智深谷×昌平@青木町公園G(2019)

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0217aoki.JPG埼玉の"一冠目"を巡るファイナルは文字通りの頂上決戦。8年ぶりの優勝を狙う正智深谷と、2年ぶりのタイトル奪還を目指す昌平の一戦は川口市青木町公園陸上競技場です。
インターハイ予選は準々決勝で浦和南に、選手権予選もやはり準々決勝で昌平に競り負け、全国切符を掴み取るまでには至らなかった昨シーズンの正智深谷。復権へと向かう新シーズン最初の公式戦となる今大会は、初戦で大宮南に5‐0で快勝を収めると、準々決勝では浦和南を2‐1で退け、まずは夏のリベンジを達成。準決勝の聖望学園戦は後半終了間際に追い付かれながらも、延長戦で津川勇作(2年・愛知FC)が決勝ゴールを叩き出し、3‐2の辛勝でファイナルまで。今度は秋のリベンジを成し遂げるべく、決勝の80分へ挑みます。
3年連続となった夏の全国では、結果的に選手権王者となった青森山田に高体連との対戦では唯一の土を付け、2年ぶりに堂々たるベスト4進出。冬の日本一が現実味を帯びていったものの、埼玉スタジアム2002で浦和南に1‐2で逆転負けを喫し、埼玉決勝での敗退を突き付けられた昨シーズンの昌平。主力の大半が入れ替わって臨んだ今大会でしたが、初戦の熊谷工業戦を7‐0と好発進でスタートすると、西武文理に9‐0、西武台に6‐0と、3試合で22得点という驚異的な攻撃力を遺憾なく発揮。「優勝して課題を見つけていくのが理想だという話はしました」と藤島崇之監督も話したように、リーチの懸かった"一冠目"を全力で奪いに行く覚悟は整っています。スタンドはほぼほぼ大入り満員。楽しみな決勝は昌平のキックオフでスタートしました。


開始1分経たない内のチャンスは昌平。中央でボールを持った須藤直輝(1年・大宮アルディージャJY)はすかさずスルーパス。「動き出しが自分の特徴だと思います」と話した小見洋太(1年・FC LAVIDA)が抜け出し掛けると、たまらずDFがイエローカード覚悟でストップしましたが、いきなりFKのチャンス。ゴールまで約25mの位置からレフティの大竹琉生(2年・FCクラッキス松戸)が枠へ飛ばしたキックは、正智深谷のGK上原雄翔(2年)が掻き出したものの、直後に今度は左から大竹がクロスを送り、小見が放ったシュートはまたも上原がファインセーブで回避。いきなり昌平がフルスロットルで立ち上がります。
ただ、15分を過ぎたあたりから正智深谷も少しずつ手数が、津川を起点に波多野晟愛(2年・GRANDE FC)が左へ振り分け、上がってきたサイドバックの市川侑吾(1年・東松山ペレーニアFC)が入れたクロスはゴールラインを割ったものの、ようやくチャンスの一歩手前まで持ち込むと、直後にも金田奎人(2年・高崎FC)が山本滉(1年・1FC川越水上公園)とのワンツーからエリア内へ侵入するも、ここは昨年から昌平の守護神を務める牧之瀬皓太(2年・GRANDE FC)が丁寧にキャッチ。19分にも金田のポストから津川が左へ送り、波多野のドリブルは昌平の右サイドバックに入った柳田亘輝(2年・三郷JY)がカットしましたが、「相手に前で基点を作られて、こぼれを拾い切れなかった」と藤島監督も振り返ったように、正智深谷が押し戻したゲームリズム。
20分も正智深谷。相手のパスを引っ掛けた金田がドリブルから打ち切ったシュートは枠を越えるも、積極的なファーストシュートを。22分も正智深谷。右サイドバックの大塚天翔(1年・坂戸ディプロマッツ)、右サイドハーフの佐々木達也(2年・高崎エヴォリスタFC)、波多野とボールが回り、津川のシュートは牧之瀬が何とかキャッチ。25分も正智深谷。津川の左クロスに、ニアへ飛び込んだ佐々木のヘディングは枠の左へ外れるも、27分は決定機。佐々木の縦パスを収めた金田は、反転から左足一閃。ここも牧之瀬がファインセーブで阻止しましたが、山田裕翔(2年・大宮アルディージャJY)と猪爪悠真(2年・東松山ペレーニアFC)のセンターバックコンビと、中盤アンカーの山口正樹(2年)で組んだトライアングルも安定感を増し、漂い出す先制点の香り。
ところが、ワンチャンスを生かしたのは緑の王者。30分に紫藤峻(2年・大宮アルディージャJY)からボールを受けた大和海里(2年・VIVAIO船橋)は、「ゴール前の所でドリで行くと見せかけたら、峻がうまく動き出してくれたので」絶妙のスルーパス。抜け出した紫藤は冷静に左スミのゴールネットへボールを送り届けます。「あそこに出せば峻は決めてくれる」という大和の信頼にきっちり応えた紫藤はこれで4戦連発。昌平が1点のリードを奪いました。
35分も昌平。右サイドで柳田がスローインを送ると、ターンしながら左足で狙った小見のシュートは上原がキャッチ。37分も昌平。ボランチから右サイドハーフへスライドした小川優介(1年・FC LAVIDA)と小見の連携で獲得した右CKを大竹が蹴ると、上原のパンチングから今度は正智深谷のカウンター。佐々木がゴールライン際で残して上げたクロスに、山本のシュートは牧之瀬にキャッチされたものの、確実にフィニッシュまで。「前半は良くなかったですね」とは藤島監督ですが、最初の40分間は昌平が1点のアドバンテージを手にして、ハーフタイムに入りました。


後半のファーストチャンスは正智深谷。41分に相手のパスミスをさらった波多野は、津川とのワンツーからエリア内へ潜ってシュート。最後は昌平のセンターバック高橋孝太(2年・浦和レッズJY)がブロックしたものの、前半から目立っていた波多野と津川でやり切ったフィニッシュに滲む同点への強い意欲。
44分の主役は「チームを得点という部分で引っ張るポジションなので、得点は決めないといけない」と言い切るストライカー。小見からのパスで前を向いた大和が、「自分でターンした時にシュートが第一の選択肢にあったけど、洋太の方がフリーで見えたので」高速スルーパスを通すと、「結構速くて浮いていたんですけど、準備はできていた」小見は極上のトラップから、冷静にゴールの左スミへボールを流し込みます。「多分グラウンドも天然芝でフワフワだったので、人工芝だったら流れていたかなというのもあるんですけど、まあ、良かったです」と笑った11番は、これで紫藤に続いて圧巻の4戦連発。昌平のリードは2点に広がりました。
48分には双方に交替が。正智深谷は山本を下げて、大橋力也(2年)をそのままインサイドハーフへ。昌平は小川と鎌田大夢(2年・JFAアカデミー福島)をスイッチして、アタッカーの顔ぶれに新たな変化を。58分には昌平にFKのチャンス。左寄り、ゴールまで35m弱の距離でスポットに立ったのは大竹。ここまで7ゴールをマークし、チームのトップスコアラーとなっている左サイドバックは直接狙い、ボールはわずかに枠の上へ外れたものの、「キックは良いものを持っている」(藤島監督)レフティが沸かせたスタンド。
真打ちの追加点は60分。須藤、鎌田、小見と細かく繋いだボールを、鎌田は丁寧にラストパス。「大夢くんに付けて、押し込んだ時に自分も追い越して、スペースに入っていった」須藤は1対1の状況にもGKを右へ外し、無人のゴールへシュート。ボールはゴールネットを確実に揺らします。「去年は全然ゴールが決められなくて、チームを引っ張っていけなかったので、もっともっとゴールに近い選手というのを意識してやっていきたいと思います」と口にした10番は、今シーズンも高校サッカー界の要注目選手であることに疑いの余地なし。昌平に大きな3点目が記録されます。
63分の決定的なチャンスは「去年とは全然違いますよね」と指揮官も言及するナンバー9。鎌田がドリブルで果敢に仕掛け、こぼれを拾った大和は右に持ち出しながら、そのままシュート。軌道はクロスバーを越えたものの、「自分は緩急とか、ドリブルとか、ゴール前のアイデアとか、そういう所が武器になってくると思う」と話す大和の爽快感すら覚える仕掛けへの強い意欲。逆に65分には正智深谷に久々のチャンス。中央を通した大橋のスルーパスに、金田が走って抜け出すも、飛び出した牧之瀬は躊躇ないタックルで危機回避。66分は昌平に2人目の交替。後半は効いていたボランチの藤原太征(2年・ヴェルディSSレスチ)に替えて、柴圭汰(1年・伊奈小針中)をそのままの位置に投入。67分は正智深谷に2枚替え。佐々木と猪爪を下げて、宮島夕翔(1年・カムイFC)と荒井巳稀(2年)をピッチへ。ゲームは残り10分間とアディショナルタイムへ。
70分は昌平のアタック。須藤、大和、須藤、小見とフラッシュパスの連続で、飛び出した大和はわずかにコントロールを失ったものの、終盤でも衰えることのない躍動感を。78分は正智深谷。中盤で奮闘し続けた山口のミドルは、牧之瀬ががっちりキャッチ。79分の昌平は3人目の交替として、スタンドからの歓声も大きかった小見と山内太陽(2年・プレジールSC入間)をスイッチ。80+3分の正智深谷は、4人目の交替で左サイドへ送り込まれた須田廉太郎(2年)が軽やかなドリブルからシュートまで持ち込むも、DFがブロックすると、これがこのゲームのラストシュート。「25得点がたぶん注目されがちなんですけど、チームとしては失点ゼロで行けたというのが、今大会の良かった所だと思います」と大和が話したように、西澤寧晟(2年・リベロ津軽SC U-15)と高橋で組んだセンターバックコンビとGKの牧之瀬を中心に、鉄壁の守備陣は大会を通じて1つの失点すら許さず。昌平が4試合で25得点無失点という圧倒的な力の差を見せ付け、埼玉での"一冠目"を獲得する結果となりました。


「極端な話、もうバイタルに入ったら仕掛けの所と、サイドもオープンでボールを受けたら縦に行こう、縦に行こうというのはアリかなと思って。上手さだけでテクニカルな状況が目立つだけより、縦の推進力とか、そういう所は今年はできるかなと思っているので」と藤島監督が話したように、今シーズンの昌平はおなじみの流麗なパスワークに加えて、個でやり切る姿勢がより鮮明に。「あまり自分は体が強い方ではないので、相手をわざと寄せたりとか、ギリギリのタイミングで前に出れればファウルももらえますし、ボールタッチの場所とか、スピードとか自分はこだわってやっています」という大和のスピードや、「もっと自分ならできるというのを自分に問いながらサッカーをやっています」と話す須藤のクイックネスは別格として、「オフ・ザ・ピッチも結構みんなやんちゃというか、個性的というかで大変なんですけど、それもサッカーの面で個性が出ているというのは本当に良い所だと思います」とその須藤も笑ったように、今年は今年で他にも強烈な個性派揃い。「今年の方ができないことが多いので、去年より伸びしろが確実にあると思います。頑張らせます(笑)」と指揮官も新たな期待を寄せる2019年度の昌平も、大いに注目する必要があることは間違いありません。       土屋

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