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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
2度の全国出場経験を有する都立の雄と、4度の全国出場を誇る私立の古豪がぶつかる注目の一戦。都立駒場と城北の2回戦も引き続き駒沢第2球技場です。
最後に冬の全国へ勝ち上がったのは8年前。昨年度の選手権予選はベスト8で国士舘に惜敗し、都内屈指の名将として知られる山下正人監督が勇退した都立駒場。今シーズンは関東大会予選こそ初戦で駒込に1-2で競り負けたものの、インターハイ予選では東海大菅生と都立狛江を1次予選で撃破して準々決勝まで。最後は多摩大目黒との撃ち合いに2-4で屈しましたが、一定の結果を残した夏を経て、最後の冬へ向けてまずは大事な初戦へ臨みます。
最後に冬の全国へ勝ち上がったのは32年前。過去には2度の全国16強を経験するなど、昭和の東京高校サッカー界で存在感を放っていた城北。近年の選手権予選では"あと1勝"の壁に阻まれ、なかなか都大会進出が遠かった中で、一昨年と昨年はきっちり1次予選を勝ち抜いたものの、共に都大会は初戦敗退。今大会も1次予選を1度のPK戦と2度の1点差勝利で抜け出すと、先週の都大会初戦では都立鷺宮を2-1で下して、久々にベスト16のステージまで。好素材を各所に配し、真剣にクォーターファイナル進出を狙います。4試合目を迎えた駒沢に少しずつ迫りくる夕暮れの予感。楽しみな80分間は城北のキックオフでスタートしました。
勢いよく立ち上がったのは駒場。3分には右サイドバックの後藤大雅(2年・ジェファFC)が短く流したパスから、右サイドハーフの清水草汰(3年・府ロクJY)がクロスを放り込み、突っ込んだ鳥山凌佑(3年・東京ベイFC U-15)はわずかに届かなかったものの、鋭いサイドアタックを繰り出すと、4分には高橋克明(2年・調布FC)の左CKを今川雄太(3年・鹿嶋鹿島中)が残し、早川太晟(1年・JFC Veragista U-15)と田中翔(3年・調布FC)のセンターバックコンビが相次いで打ったシュートは共にDFのブロックに遭い、入鹿就斗(2年・FC GABE)のシュートは枠を外れましたが、まずは駒場が続けてチャンスを創出します。
6分は城北。右CKを辻章太(3年・城北中)が蹴り込むも、DFがきっちりクリア。9分は駒場。右サイドからレフティの天野貫太郎(3年・FCトレーロス)が入れたクロスはこぼれ、今川のミドルはゴール左へ。12分は城北。左サイドを辻が鋭くえぐり、中へ折り返したボールは駒場のGK根本朔也(3年・調布FC)が果敢にキャッチ。16分は駒場。高橋が枠へ収めたミドルは、城北のGK小島東伍(2年・城北中)がキャッチ。「最初は簡単にやろうという感じでやっていました」と駒場のキャプテンを務める宮崎光太郎(3年・POMBA立川FC)が言及した"最初"が経過し、やり合い始めた両者。
21分は駒場。清水の突破で得た右CKを高橋が蹴るも、シュートには至らず。25分も駒場。宮崎の左クロスに清水がニアへ飛び込み、こぼれたボールは城北のインサイドハーフに入った谷口迅(2年・江戸川南葛西第二中)が間一髪でクリア。26分は城北。右サイドで手にしたFKを蓑毛大晴(3年・城北中)が蹴り入れると、走り込んだ木村俊介(2年・城北中)はわずかに届かず。36分は駒場。左CKをレフティの宮崎がアウトスイングで蹴り、田中のヘディングは枠を捉えるも、城北の右サイドバック鈴木隆弘(2年・城北中)はスーパークリア。スコアは動きません。
「中盤で競り合いに負けて逸らされて、みたいな展開があった」と宮崎も話したように、182センチのアンカー張健(2年・城北中)や180センチの左サイドハーフ榎本琢人(3年・JACPA東京FC)を筆頭に、サイズで上回る城北も徐々に攻撃のテンポが。36分には左に開いた1トップの後閑正乃介(2年・城北中)がドリブルで運び、辻が打ったシュートはゴール左へ。40分にも吉村太晴(3年・城北中)が左へ付け、辻のグラウンダークロスに榎本と谷口が飛び込みましたがわずかに届かず。「自分たちは初戦なので、前半は硬くなってゼロゼロというのは想定内だった」とは宮崎。駒場は田中と早川、城北は木戸康介(3年・城北中)と木村、両チームのセンターバックコンビを軸に、守備組織はどちらも揺るがず。一進一退の攻防は、スコアレスでハーフタイムに入りました。
「『初戦がうまく行かないのは当たり前だと思って』というふうには言ってあった」という駒場の松本匡央監督が動いたのは後半開始から。入鹿に替えて、菊池陽(3年・ジェファFC)を1枚目のカードとして投入。「ゼロゼロだったら自分が後半に出てチャンスを創ってやろうと思って見ていました」という10番に、攻撃のアクセント役を託します。
44分は城北。後閑が積極的な仕掛けでエリア内へ侵入するも、フィニッシュは取り切れず。45分には城北も1人目の交替。榎本を下げて、佐々木凛(2年・城北中)を送り込み、奪いたいサイドの主導権。46分は城北に決定的なシーン。左から辻が低いボールで入れたFKは、密集を抜けてグラウンダーでゴールへ向かうも、ここはカバーに入っていた田中がライン上で決死のクリア。先制とは行きません。
すると、50分の歓喜は都立の雄。守備のファインプレーでチームを救ったばかりの田中が前方へフィードを送ると、右サイドを抜け出した鳥山は、マーカーと並走しながら右足一閃。描いた軌道は一直線に左スミのゴールネットへ突き刺さります。「後半の立ち上がりが応援も含めて、相手にペースを掴まれた感じがあったので、あそこで1本カウンターで決めてくれたのは大きかったですね」とは宮崎。ナンバーセブンの貴重な先制弾。駒場が1点をリードしました。
52分には駒場に2人目の交替。天野と中野立樹(3年・大田貝塚中)を入れ替え、狙うさらなる追加点。そしてこの前後、真っ暗な雨雲に覆われた駒沢はポツポツ模様から、一気に豪雨と言っていい天候に変化し、ピッチ上にも水が浮き始めるレベルまで。「雨でピッチコンディションが変わるので、『しっかりそれを考えてプレーしよう』という声かけはしていました」と宮崎も話したように、ゲームの様相は天候で大きく変わっていきます。
71分に輝いたのは10番のドリブル。左サイドで逆からのクロスを拾った菊池は、縦にドリブルで運びながら「雨が降ってきてピッチがちょっとスリッピーだったので、『転がせば中で何かが起きるかな』と思って、相手が足を出してきたので股を抜いて」中央へクロス。GKは懸命に弾き出しましたが、いち早く反応した中野がプッシュしたボールはゴールネットへ到達します。ジョーカーとして切られたカードの菊池が持ち味を発揮し、大きな2点目が駒場に入りました。
追い込まれた城北。72分に2人目の交替として、吉村と小菅将仁(3年・城北中)をスイッチして、何とか詰めていきたい点差。73分は大きなチャンス。エリア内、右サイドで混戦に突っ込んだ谷口のシュートは、根本がファインセーブで仁王立ち。74分には阿部修平(3年・城北中)をピッチへ解き放ち、最後の勝負へ。80分には辻の右CKから、ルーズボールを拾った蓑毛が左クロスを上げるも、根本がキャッチ。ゲームはアディショナルタイムの攻防へ。
80分の得点も駒場に。左サイドでボールを収めた高橋が、得意の左足でループを狙うと、ボールはGKの頭上を破り、美しい軌道を描いてゴールネットへ吸い込まれます。この一撃で勝負アリ。最終盤は楠本琉海(3年・ジェファFC)と鎌田大慶(3年・世田谷砧南中)をクローザーとして送り込み、聞いたファイナルホイッスル。「彼らも慌てないでできたかなと。今日は勝つことだけが重要なので、良かったかなと思います」と松本監督も口にした駒場が、ベスト8へと進出することになりました。
途中出場で2点目に絡んだ菊池は、ここに来てジョーカー的な役割での起用が増え、ベンチスタートが多くなっている現状に、「スタメンで出たい気持ちはありますけど」と前置きしながら、「出れない人もたくさんいる中で、自分は出してもらっているので、一生懸命チームを救えるようなプレーをしたいなと思っています」と続けます。実は最近ある経験があったとのこと。「今回のゲームは結構3年生がいっぱいベンチに入ったんですけど、Aチームの中で1人だけベンチに入れない3年がいて、その子はクラスメイトなんですけど、本当に悔しそうだったので、それを見てからは死ぬ気でやらなきゃいけないなって思っています。『もう勝つしかないな』って自分の中で思っていて、『出れない人のためにも戦おう』って。『ベンチでも文句なんて言えないな』って」。数々の支えを受けてピッチに立つことができる喜びやありがたさを痛感した10番は、改めて感謝の想いを胸に、自分に与えられた役割をまっとうする決意を定めています。 土屋
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