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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2018年02月18日

東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会決勝 三菱養和SCユース×東京ヴェルディユース@西が丘

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0211nishigaoka2.JPGシーズン1冠目を巡るファイナルは6年ぶりにこのカード。三菱養和SCユースと東京ヴェルディユースの対峙は、もちろん味の素フィールド西が丘です。
激戦のプリンス関東を2位で抜け出し、プレミア参入戦へと進出。初戦でサガン鳥栖U-18を退け、久々のプレミア復帰に王手を懸けながら、最後は富山第一の前に屈したものの、「結果的に最後は負けちゃいましたけど、よくやったと思うんですよ」と増子亘彦監督も言及したように、一定の結果は残してみせた昨シーズンの三菱養和SCユース。不動のエースだった中村敬斗がガンバ大阪へと加入した今シーズンは、「『今年はどうなの?』って、まず新チームが立ち上がった時に思われたと思うんですけど、実際彼がいなくなったということは、みんなが1.5倍くらい頑張っていかないと点も取れないし、守備もやられちゃうという所でチームがまとまれています」と栗原イブラヒムジュニア(1年・三菱養和巣鴨JY)。今大会も決勝リーグ最終戦では、FC東京U-18に4-0と快勝を収めてファイナルへ。タイトル獲得に向け、絶好調に近い状態でこの90分間を迎えます。
2連勝で迎えた決勝リーグ最終戦は、FC町田ゼルビアユースを相手に勝利のみがファイナル進出の条件という中で、終盤に追い付かれて窮地に立たされましたが、後半アディショナルタイムに坂巻日向(1年・東京ヴェルディJY)が決勝ゴールをマークし、3年ぶりの王座奪還へあと1つに迫った東京ヴェルディユース。「去年のチームもそうですし、僕たちの学年もそういう所で勝負弱かったりというのがあったので、こういう所で勝てる勝負強さは次に繋がるし、良いことだと思います」と話したのは、今シーズンのキャプテンを託された森田晃樹(2年・東京ヴェルディJY)。「基準は難しいんですけど、数字で言うとボール保持は85パーセント以上、パスは800本、シュートが前半9本、後半9本で18本、5分に1回はシュートということを目指したいです」と言い切る永井秀樹監督の下、内容と結果の両面を手にするためのファイナルへ臨みます。西が丘のスタンドには少なくないサッカー好きが集結。13時30分に注目の一戦はキックオフされました。


「ヴェルディさんの攻撃に対して、しっかりチームでコンパクトにしてスペースを与えずにといった所で、たぶん立ち上がりの10分くらいは前線からうまく規制が掛からなくて、入って来られちゃっていたと思う」と増子監督も話したように、うまくゲームに入ったのはヴェルディ。馬場晴也(1年・東京ヴェルディJY)と綱島悠斗(2年・東京ヴェルディJY)のセンターバックとアンカーの山下柊飛(1年・東京ヴェルディJY)の3人を軸に、きっちりボールを動かす意識を表出。主導権を奪いに掛かります。
「立ち上がり15分はあまりみんなうまく行かなくて後手を踏みまくっていた」(栗原)養和でしたが、「最初は結構『フォワードがセンターバックに勢いよく飛び出して、プレッシャー掛けてけ』って言ってたんですけど、行っても取り切れないから、途中からは『行かずにステイして』という感じでセンターバックと話していた」とはドイスボランチの一角を担う冨久田和真(2年・三菱養和調布JY)。これには右サイドバックの宮嶋俊弥(2年・三菱養和調布JY)も「ヴェルディはパスを繋ぐのが本当に上手くて、自分たちは最初は前から行っていたんですけど、取れないことに全体が気付いて、ちょっと後ろからブロックを作っていこうとなった」と同調。清水雅仁(1年・三菱養和巣鴨JY)と遠藤光(2年・三菱養和調布JY)のセンターバックコンビもラインを微調整しながら、図る守備面の安定。
逆にヴェルディはボールこそ動くものの、「キーパーを使って数的優位を作って、そこでボールを回しているだけで進まないというのは、別に目指している所ではない」と永井秀樹監督も口にした通り、大きなチャンスは創り切れず。ファジーなポジションを取る森田の個は目立つ中で、なかなか養和ゴールへと近付くことができません。
すると36分にスコアを動かしたのは、少しずつゲームリズムを押し戻していた養和。右サイドからCKを蹴った宮嶋は、再び自分の元へボールが戻ってくると、「クロスを上げようと思ったんですけど、前が空いていたので、そこで2タッチくらいして中に切れ込んで、誰かに出せばという感じで」中央へ。収めた栗原は「普段ああいう所は人を使いがちなんですけど」、自ら反転して前を向きながら左足一閃。右スミへ転がったボールはゴールネットへ吸い込まれます。「あそこで1個入れ替われたのが素晴らしいプレーだと思うし、守備に回る時間が多かった分、ああいうプレーで流れを持ってこれたのは大きかったと思います」と自ら振り返るストライカーの貴重な先制弾。養和が1点のリードを奪って、最初の45分間は終了しました。


後半はスタートから両チームに交替が。養和は清水に替えて、渡辺大貴(2年・三菱養和巣鴨JY)をそのままセンターバックへ。ヴェルディは左ウイングに入っていた荒木大輔(2年・東京ヴェルディJY)を下げ、松橋優安(1年・東京ヴェルディJY)を最前線に置いて、フロントボランチに森田を、左ウイングに村井清太(2年・東京ヴェルディJY)をスライドさせて、まずは1点を返すための態勢を整えます。
51分は養和。右から宮嶋が蹴ったCKは、ヴェルディのGK佐藤篤輝(2年・東京ヴェルディJY)ががっちりキャッチ。53分はヴェルディ。森田の左CKはDFが大きくクリア。58分もヴェルディ。右ウイングに入った栗畑玲偉(2年・ヴェルディSS花巻)の積極的なミドルは枠の上へ。61分は養和。ボランチの田中恭司(2年・Forza'02)を起点に、右サイドで獲得したFKを宮嶋が蹴り込むと、渡辺がうまく合わせたボレーはゴール左へ。「セカンドボールをしっかり拾って、自分たちのリズムになったというのはあるけど、1対1の局面は相手の方が上だった感じはあります」とは冨久田。やり合う両者。出し合う手数。
63分にはヴェルディに2人目の交替。馬場と坂巻を入れ替え、前線の顔ぶれに新たな変化を。65分に松橋がミドルレンジから左足で狙ったシュートがDFをかすめ、ゴール右へ逸れたシーンと、直後にレフティの山本理仁(1年・東京ヴェルディJY)が蹴った右CKもDFにクリアされたシーンを経て、お互いに切り合うカード。66分は養和。右サイドハーフで奮闘した林壮真(2年・三菱養和調布JY)と上田英智(1年・三菱養和巣鴨JY)をスイッチ。70分はヴェルディ。村井に替えて、石川拓磨(1年・東京ヴェルディJY)をピッチへ。73分は養和に2枚替え。先制ゴールの栗原と勝浦太郎(2年・横浜F・マリノスJY追浜)の2トップを同時に下げ、西田湧大(2年・三菱養和巣鴨JY)と樋口陸(1年・三菱養和巣鴨JY)をそのまま前線へ。差し掛かる終盤。双方にとって勝負の時間帯。
74分に記録されたのは養和の追加点。右サイドで上田が外へ付けると、「最初はダイレで上げようと思ったんですけど、1個持ったら宮本が良い所にいてくれたので」という宮嶋はピンポイントクロスをファーサイドへ。きっちり走り込んでいた10番の宮本康生(2年・三菱養和調布JY)は、ヘディングでボールをゴールネットへ突き刺します。「昔はクロスが得意だったんですけど、最近は調子があまり良くなくて、監督からも『最近全然だな』みたいな感じで言われて自分も悔しかったんですけど、ちょっと見返せたかなと思います」と笑顔を見せた2アシストの宮嶋に対して「本来の持ち味が整理できてピッチに立っていたので、今日なんかは前半から思い切って行っていましたね」と指揮官も確かな評価を。養和のリードは2点に変わりました。
「色々なプランを試すのもそうだし、せっかくの決勝の舞台なので、そういう経験もなるべく多くの人間にさせたいなというのもありましたね」という永井監督は、2点のビハインドを追い掛ける展開の中で、78分に4人目の交替。栗畑と小林優斗(1年・東京ヴェルディJY)を入れ替えると、80分にはエリア内でマーカーを外した森田が左足で枠へ収めるも、ここは養和のGK渡辺舜作(1年・三菱養和巣鴨JY)が丁寧にキャッチ。右から宮嶋、渡辺、遠藤、廣川虎太郎(2年・三菱養和巣鴨JY)で組んだ養和4バックの安定感も、時間を追うごとに高まるばかり。追撃の一手とは行きません。
80分に宮本と小山竜二(2年・三菱養和巣鴨JY)を交替させた養和は、その2分後にチャンス到来。右サイドでボールを持った宮嶋は、「『アレ、行っちゃってる?』みたいな感じで、右と左とか見えてなかったんですけど、来た人を抜いてスルスルっと行けたので」カットインしながらシュートまで。最後はDFのブロックに遭ったものの、「ドリブルは得意じゃないですけど、たまたま行けて選択肢はシュートしかなかったですね」というフィニッシュを独力で。
86分はヴェルディ。山本がヒールで残したボールから、右サイドバックの三浦雅仁(2年・東京ヴェルディJY)はクロスを上げ切り、ダイレクトで叩いた坂巻のシュートは枠の左へ。直後には5人目の交替として、山本と天満恭平(1年・東京ヴェルディJY)をスイッチ。87分は養和に決定機。樋口からボールを引き出した冨久田は「あまりああいうパスが今日はなかったので」と、絶妙のショートパスを西田へ。シュートは佐藤のファインセーブに阻まれましたが、「去年から出ているので、自分が最高学年になって、チームを引っ張っていかなきゃいけないというのはこの大会で凄く感じました」という7番が披露した確かなセンス。
90分はヴェルディ。左サイドバックの飯島蓮(2年・東京ヴェルディJY)が奪ったCKを森田が蹴るも、DFが懸命にクリアすると、これがこのゲームのラストチャンス。最後は90+1分に望月海輝(1年・三菱養和巣鴨JY)と田村進馬(1年・三菱養和調布JY)も同時投入してゲームを締めた増子監督は「彼らは明るくて良い子たちだと思います。今までは3年生がいたけど、1個学年が上がったので、そうなってくると『責任感というか、求められるものが強くなるんだよ』と。『エラくなった訳じゃないからな。その分、自分のことをやらなきゃいけないし、チームのためにといった部分だよ』ということを言い聞かせてます(笑)」と笑顔で。養和が2月の東京を見事に制する結果となりました。


後半から始まった養和のゴール裏ステージショー。時には中島みゆきの『糸』。時には大塚愛の『さくらんぼ』。時にはSMAPの『世界に一つだけの花』。時にはTWICEの『TT』。もはやただのカラオケ大会と化していた時間帯もありましたが(笑)、「アレは去年の先輩たちです。後半から来てくれていて。大学の練習とか試合があったみたいなんですけど、後半から声を出してくれていたのは今の3年生です。去年はリーグ戦でも流経のグラウンドとかで歌ったりとか(笑)、ちょっと恥ずかしかったというか、それで相手の調子を崩すという感じでね」と苦笑いを浮かべた増子監督が、「でも、ああいう良いお兄さんになれればいいじゃないですか。サッカーをやりながら」と続けた言葉が、おそらくは養和の在り方を最もよく表現しているのかなと。実際にトラメガを持って歌いまくっていた"先輩"の加藤慎太郎は、U-19日本代表に選出されてスペイン遠征に行ってきたばかり。そういう"お兄さん"たちが、ピッチの内外でハイパフォーマンスを発揮し続けてきたからこそ、養和には脈々と続くあの雰囲気がある訳で、栗原も「あまり上下関係はなくて、凄く話しやすいので、そういう所で言いたいことを言えるのは大きいと思います。サッカーものびのびできたり、選択肢も増えたりするので大事ですね」ときっぱり。彼らの伝統とも言うべきスタイルの持つ強みを、改めて実感するようなファイナルだった気がします。      土屋

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