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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2018年02月04日

東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会決勝リーグ 東京ヴェルディユース×FC町田ゼルビアユース@ヴェルディG

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0203verdyg.JPG事実上のセミファイナルは西が丘での頂点を巡るラストステップ。東京ヴェルディユースとFC町田ゼルビアユースの激突はヴェルディグラウンドです。
クラブユース選手権の関東予選、Jユースカップの2回戦と共に湘南ベルマーレユースに行く手を阻まれる格好で、全国での躍進は叶わず。プリンス関東でも最終盤に勝利を挙げ切れず、6位という結果でプレミア復帰は再び持ち越しとなった昨シーズンの東京ヴェルディユース。永井秀樹監督体制2年目となる今シーズンはいろいろな意味で勝負の年。「『このヴェルディを再建するのはオマエらしかいないんだぞ』という本気の覚悟をきちんと背負わせる作業をしているんです」という指揮官の下、まず"1冠目"を狙う今大会は、初戦で大森FCに6-0で快勝を収めると、先週のFCトリプレッタユース戦も2-0で制して、西が丘行きは確定。決勝へ進むか、3位決定戦へ進むかの大事な90分間を迎えます。
「ここにいる選手たちの質は間違いなく僕がやってきた中で、少しずつですけど積み上げはあると思います」と竹中穣監督が口にしたように、近年は関東でも全国でも着実に一歩ずつ明確な結果を重ねてきているFC町田ゼルビアユース。今シーズンはようやく辿り着いたT2リーグという強化の場も得たことで、よりステップアップを狙えるシーズンに。「西が丘に必ず行きたいというみんなの気持ちがある」(野呂光希・2年・ウイングスSC)今大会も、初戦のFCトリプレッタユース戦に1-0で競り勝ち、2戦目の大森FC戦も10-0で勝ち切って、既に目標としていた西が丘への切符は獲得。ファイナルへの進出権が懸かったこの一戦に全力で挑みます。両チームは昨年のクラ選関東予選で対峙しており、その時はゼルビアが2-1で勝利を手にしており、今回はいわばお互いの意地がぶつかり合うリターンマッチ。リベンジか、返り討ちか。注目の一戦はヴェルディのキックオフで幕が上がりました。


ファーストチャンスはヴェルディ。2分に高い位置でこぼれたボールを、キャプテンを託されている森田晃樹(2年・東京ヴェルディJY)が頭で右へ流し、飛び込んだ荒木大輔(2年・東京ヴェルディJY)より一瞬早くゼルビアのGK市橋和弥(2年・FC町田ゼルビアJY)がキャッチしたものの、惜しいシーンを。8分にも飯島蓮(2年・東京ヴェルディJY)の左クロスに、荒木が合わせたボレーは、ゼルビアの左サイドバックを務め、「絶対にヴェルディに勝ちたいなというのがあった」と語る野呂が体でブロックしましたが、まずはヴェルディが攻勢に打って出ます。
さて、トップチームのキャンプに3人の選手が参加しており、「彼らがいないのは、ここにいる子にとっては凄くチャンス」(竹中監督)というゲームを迎えたゼルビアも8分にファーストシュート。内野豊羽(2年・FC町田ゼルビアJY)の左足ミドルは枠の左へ外れましたが、1つフィニッシュを取ると、11分にはビッグチャンス。左サイドから野呂が蹴り込んだFKに、フリーで合わせた杉本裕哉(1年・東急SレイエスFC)のヘディングは、しかしヒットせず。先制とは行きません。
すると、先に歓喜が訪れたのはホームチーム。12分に森田が右へ振ったボールを荒木が折り返すと、森田の枠内シュートは市橋がファインセーブで阻みましたが、DFのクリアが相手に当たったルーズボールに素早く反応したのは飯島。ダイレクトボレーで叩いたボールは鮮やかにゴールネットへ飛び込みます。「良い選手だし、感覚は面白い」と指揮官も認める森田の仕掛けから、飯島の正確なフィニッシュワーク。ヴェルディが1点のリードを手にしました。
以降もゲームリズムはヴェルディ。15分に左へ流れた村井清太(2年・東京ヴェルディJY)のシュートは、市橋がファインセーブで何とか回避。18分にレフティの左サイドバック遠藤海斗(1年・東京ヴェルディJY)が蹴った右CKは、ゼルビアのキャプテン鈴木舜平(2年・FCトッカーノ)がクリアしましたが、19分にもGKへ戻したバックパスに、飯島が速いプレスを敢行。こぼれを狙った石川拓磨(1年・東京ヴェルディJY)のシュートは、ここも市橋が懸命のセーブで掻き出すも、直後に遠藤が入れた右CKを、フリーで当てた綱島悠斗(2年・東京ヴェルディJY)のヘディングはゴール右へ逸れたものの、漂い続ける追加点の気配。
22分には印象的なシーンも。右サイドバックの栗畑玲偉(2年・ヴェルディSS花巻)のアーリークロスはファーへ流れ、収めた荒木は確認して1つ外へ。ここに走り込んでいた遠藤のシュートはDFに当たり、枠の左へ逸れましたが、ベンチの永井監督からは「走り込むのが1秒、いや、1.5秒遅い!」という声が。これに関して、当の指揮官は「ボールは1個しかないし、出るのがわかった瞬間にスタートを切っておけばいいんですよ。そこでの"1秒"とか"1メーター"とか、そこが俺は凄く気になるんです。やっぱり数的優位をどの局面でも作るためには、良いポジションに早く立ってないと。だから数的優位とポジショニング優位というか、そこで主導権を持ちたいというか。だから、そういう所のスピードを物凄く要求していますね」とのこと。『"1秒"とか"1メーター"』。永井監督のこだわりが窺えるワンシーンでした。
鈴木舜平も「前半は全然ボールも動かなくて、相手のペースに飲まれた」と話したゼルビアは、なかなかチャンスを創り切れない中でも少しずつ全体の強度は向上。29分には右のハイサイドへ飛び出した内野がCKを奪い、野呂が蹴ったキックはファーまで届くも、飛び込んだ塩澤拓馬(1年・FC栃木)は残し切れず。32分にも右CKを野呂が入れると、ここはヴェルディのGK佐藤篤輝(1年・東京ヴェルディJY)が好判断でパンチング。33分は決定的なチャンス。左サイドでまたもCKを獲得し、大塚拓哉(2年・横浜FC JY)のキックはフリーの齊藤滉(2年・コンフィアール町田)へ。ところが肝心のヘディングは枠の上に消えてしまい、絶好の同点機を生かせません。
「フロントボランチの所の展開力だったり、そこから動かすのか刺して前に進むのかという判断に、少し変化が欲しかった」永井監督は、20分前後に右ウイングの荒木と左ウイングの飯島を入れ替えたのに続き、30分前後には3トップ中央の森田とフロントボランチの一角を担っていた村井もチェンジ。36分には荒木が外へ付け、今度は良いタイミングで上がってきた遠藤が鋭いクロス。飛び込んだ飯島はわずかに触れなかったものの、短い時間で遠藤の判断に変化の跡が。45分はゼルビア。左センターバックのレフティ青木拓洋(2年・FC Consorte)が速いボールで左へ付け、野呂のクロスは佐藤にキャッチされましたが好トライ。「前半なんかはだいぶ合格点までは行かないけど、60点、70点ぐらいにはなってきている」(永井監督)「前半からそうなんですけど、マイボールになった時の個人の判断がなくて、それはチームの悪循環に影響したなと思います」(竹中監督)。前半はヴェルディがペースもリードも掌握し、45分間が終了しました。


後半はスタートから両チームに交替が。ヴェルディはセンターバックで奮闘した松井陽斗(1年・東京ヴェルディJY)に替えて、藤田譲瑠チマ(1年・東京ヴェルディJY)をアンカーに送り込み、アンカーの位置にいた山下柊飛(1年・東京ヴェルディJY)がセンターバックにスライド。一方のゼルビアは「自分たちとヴェルディさんの力関係を僕なりに分析した中で」(竹中監督)、左サイドハーフの金澤空(1年・FC町田ゼルビアJY)と北野拓海(2年・コンフィアール町田)を入れ替え、最終ラインを右から鈴木琉(2年・FC町田ゼルビアJY)、杉本、青木の3バックにシフトし、北野は右ウイングバック、野呂が左ウイングバックに入る3-4-3にシフト。形と立ち位置を変えて、残された45分間へ向かいます。
そんな中で次の得点を奪ったのもホームチーム。49分に荒木がシンプルなパスを、右サイドからラインの裏へ放り込むと、抜け出した村井はGKの脇を冷静に転がすシュートを選択。ボールはゴールネットへ到達します。「基本的にハーフタイムで言ったのは、相手のラインをよく見なさいと。なるべく前で引っ掛けるというのを狙って、前掛かりに来ているんだったら空いているのはどこだという話をしました」とは永井監督。両者の点差は2点に広がりました。
54分はヴェルディに2人目の交替。石川を下げて、坂巻日向(1年・東京ヴェルディJY)を最前線へ投入し、村井は再びフロントボランチへ。55分はゼルビアも2人目の交替。大塚とレフティの甲斐稜人(1年・FC町田ゼルビアJY)をスイッチして、アタッカー陣に変化を加えると、56分には鈴木を起点に北野が繋ぎ、飛び出した塩澤のグラウンダークロスに、ニアへ突っ込んだ齊藤のシュートは枠を捉えられなかったものの、「全員が前からプレスという意識が高まって、1人1人前から行けた」(鈴木舜平)ゼルビアの反撃弾はその3分後。
59分に相手の攻撃を押しとどめた流れから、内野のパスを右サイドで受けた塩澤は斜め前へ優しく。駆け上がった北野が完璧なクロスを送り届けると、待っていた齊藤はこれまた完璧なヘディングをゴールネットへ流し込みます。前半はそういう形を創れなかったので、サイドから良いボールが出て、滉が合わせて良かったです」と鈴木舜平が話せば、「サイドの高い位置で奪う仕組みなので、そういう意味ではあそこで奪って、クロスに行けて良かったですね」と竹中監督も評価を口に。ゼルビアが綺麗な形で1点を返します。
ヴェルディも最初は3トップの中央に入った坂巻と、右ウイングの荒木を入れ替え、中盤での数的優位を再び取り戻しに掛かりますが、「相手が前から来ているという所で、繋ぐのか、1回前に蹴ってラインを上げるのか、という所がしっかりできていない所があって、ちょっとバタバタしちゃったかなと思います」と森田も振り返る中で、なかなか流れを押し返せず、やや劣勢の印象に。ただ、ゼルビアも「全部150(パーセント)でやってるぞ!」とベンチの竹中監督から声が掛かったように、スピードと判断のマッチングがハマり切らず、双方の手数が出ないまま、気付けば残り時間は15分間とアディショナルタイムに。
75分はゼルビア。野呂が上げ切ったアーリークロスへ、塩澤が懸命に突っ込むもわずかに届かず。77分はヴェルディに3人目の交替。遠藤と天満恭平(1年・東京ヴェルディJY)を入れ替え、攻守におけるサイドでの強度アップに着手。78分はゼルビアも内野に替えて、3枚目のカードとなる八木直人(1年・FC町田ゼルビアJY)をピッチへ。82分はゼルビアのチャンス。ここも左サイドでボールを引き出した野呂がクロスを入れるも、佐藤がパンチングで対応。変わらないスコア。消えていく時間。
手繰り寄せた執念の結実。87分に左サイドで塩澤が獲得したFK。スポットに立った甲斐が得意の左足を振り抜くと、落下地点に走り込んだのは「僕自身が何もしていなかったので、『点ぐらいは取らなくては』と思っていました」という鈴木舜平。頭で軌道を変えたボールはゴールネットへ吸い込まれます。その瞬間。ピッチもピッチの外も沸騰。キャプテンが見せた魂の同点弾。これでファイナルへの切符は、得失点差で上回るゼルビアの手中に移動。最終盤。ドラマの結末は果たして。
その起伏、ジェットコースター並み。失点直後に杉本紀人(2年・東京ヴェルディJY)を送り込んだヴェルディの意地は90+1分。右サイドで粘って手にしたCK。森田が「コーナーキックとかは基本的に人には狙っていなくて、『この辺に蹴ればいい所行くかな』みたいな感じなので、『飛び込んでください』って感じで蹴った」キックは、坂巻の頭にドンピシャ。ボールはゆっくりとゴールネットへ吸い込まれます。一目散にベンチメンバーの元へ走り出した坂巻を中心にできた狂喜の輪。その後はヴェルディが小林優斗(1年・東京ヴェルディJY)、ゼルビアが山野辺夢歩(2年・FC町田ゼルビアJY)をそれぞれ送り込むも、スコアは変わらず。「去年のチームもそうですし、僕たちの学年もそういう所で勝負弱かったりというのがあったので、こういう所で勝てる勝負強さというのは次に繋がるし、良いことだと思います」と森田も話したヴェルディが壮絶な"セミファイナル"を制し、西が丘での優勝決定戦へと勝ち進む結果となりました。


「グループを見た時に『西が丘に行けるな』と思いましたし、もうゼルビアは決勝でやらなきゃいけないチームになってきていると思うので、決勝でやりたかったです」と鈴木舜平も悔しさを滲ませたゼルビア。竹中監督もそのキャプテンに対しては、「『あのゴールを取ったから"マル"にはならないよ』ということは彼には言いましたし、チームにとって重要なパス1本が、僕のカウントの中では今日の彼は1本だけなんですね。でも、1試合の中で400本くらいボールが動くと考えたら、彼の中でやっぱり2割以上は動かないとチームとしては攻撃できない訳で、そういう意味ではちょっと厳しい言い方ですけど、今日の彼はバツです」とキッパリ。続けて鈴木舜平と野呂を名指しして「そんなにうまく行くことばかりではないのがサッカーというのは理解しているつもりですけど、もう少し彼らがこのチームにもたらさなくてはいけないものというのはもっと感じて欲しいし、チームを背負って欲しいと思っています」とも口に。彼らはこの指揮官の期待に結果で応えていく必要があるのは間違いありません。来週には竹中体制になって初めての西が丘のピッチが。「せっかく西が丘でできるので、今日の試合で出てきた課題を反省して、良い試合を皆さんにお見せできればと思います」と鈴木舜平。西が丘での初勝利が次なるゼルビアのミッションです。
「一番最初に永井さんが監督になって、こういうやり方になった時に本当にみんな苦戦して、全然サッカーにならなくてボロ負けとかして、そういう所でチーム全員がしっかりミーティングとかを聞いて、戦術理解度が上がったのかなと思います」と森田が言及したように、永井監督の色が少しずつ着実に浸透し始めているイメージのヴェルディ。その指揮官も「読売クラブからの流れを考えて、本当に日本のリーディングチームであったヴェルディを早くそこに戻したいというのを考えると、じゃあそのためには何が必要で、どこを目指してという基準でユースの子を見ているので、彼らからしたらもちろん要求は高いですよ、でも、それを妥協しても意味がないというか、去年の春先なんか一般的な指導者と真逆のことを言われたりする訳なので、戸惑うこともいっぱいあったと思うんですけど、やっていく内にわかってきていると思うしね」と明確な意図を口に。その中で永井監督がこのゲームで特に評価したポイントは「パワープレーをしなかったのは良かった」という部分。「得てして失点して、もう最後は放り込んでパワープレーをやりがちなんですけど、当然俺はそんなことやらないし、彼らも誰一人として『パワープレーやっていいですか』とか聞いたり、上がっていくヤツもいなかったし、きちんともう1回サッカーして、というのがあの点に繋がったというのは良かったですね」とも。永井色が色濃く反映され始めつつあるヴェルディの今シーズンも非常に楽しみです。     土屋

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