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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
全国を制したばかりのタイガー軍団と進境著しい新鋭校の対峙。前橋育英と高崎健康福祉大高崎のクォーターファイナルは前橋育英高校高崎グラウンドです。
とうとう辿り着いたのは、悲願とも言うべき冬の日本一。これからの1年は全国王者としての力が試されていく前橋育英。ほとんどの主力は3年生だったため、昨年度とは違って新人戦からは実質の"新チーム"に。選手権決勝から1週間も経たずに迎えたこの大会は、初戦で太田を5-1で下すと、3回戦でも吉井に6-0と快勝を収めて準々決勝まで。「自分たちはまだ何も結果を残していないので、今年は今年でもう1回イチからチャレンジャーの気持ちで、自分たちらしくやっていきたいなと思っています」と話すのは現時点でキャプテンマークを託されている若月輝(2年・アルビレックス新潟JY)。まずは1冠目を手繰り寄せるためにも、負けられない80分間に向かいます。
新人戦のベスト4進出を皮切りに、続く県総体でも桐生第一を倒してベスト4まで。インターハイ予選と選手権予選では、その桐生第一の前に揃って惜敗を強いられたものの、確実に県内での存在感を高めた昨シーズンの高崎健康福祉大高崎。さらなるブレイクスルーを狙う今大会は、初戦で前橋工業を3-1と振り切り、3回戦では難敵の伊勢崎商業も2-0と撃破して、県内のトーナメントコンペティションでは5大会連続での進出となるクォーターファイナルへ。迎えるのは日本一のタイガー軍団。相手にとって不足はありません。育英グラウンドには肌を刺すような冷たい風が。注目の一戦は10時半にキックオフされました。
先にペースを掴んだのは「立ち上がりはチームで統一してやろうと決めていたことができていた」(若月)育英。7分に西山蓮平(1年・名古屋グランパスU15)の果敢なシュートがDFに当たってこぼれ、拾った高橋尚紀(2年・クマガヤSC)のシュートは健大のGK斉藤歩夢(2年・前橋エコー)にキャッチされるも好トライ。9分は健大。キャプテンの新井海斗(2年・前橋FC)が左へ振り分けるも、青木星英(1年・前橋FC)のクロスは育英のGK山口瞬(2年・FC小松)にキャッチされると、10分は育英。若月のドリブルで得た右CKを須田晃輝(2年・クラブドラゴンズ柏)が蹴り込み、ニアで西山が合わせたヘディングは枠の左へ。11分も育英。須田のパスから「警戒されても点を取り続けられる選手になりたい」という高橋が抜け出し、放ったシュートは斉藤がワンハンドでビッグセーブを見せましたが、勢いは完全に育英へ。
すると、スコアが動いたのはその直後。11分にバイタルで前を向いた高橋は丁寧なスルーパスを右へ。走った須田の冷静なシュートは、GKを破って左スミのゴールネットへ転がり込みます。パスも良ければ、シュートも良し。「いろいろ練習を見ながら、いろいろな選手を試したりしてやっているような感じ」と山田耕介監督も現状に言及した育英が、見事な形で先制点を手にしました。
畳み掛けるタイガー軍団。12分にも高橋がドリブルで運び、ルーズボールを収めた塚原舜介(2年・坂戸ディプロマッツ)のシュートは枠の右へ消えましたが、14分に魅せたのはこの日が復帰戦となった全国優勝弾ストライカー。左サイドでドリブルを開始した榎本樹(2年・東松山ペレーニア)はそのまま縦へ力強く運び、グラウンダーで中へ。ここに飛び込んだ塚原がボールをきっちりゴールネットへ。電光石火。点差は2点に広がります。
さて、小さくないビハインドを負った健大。21分には3列目から飛び出してきた木内唯斗(2年・藤岡キッカーズ)が粘って残し、荒井が打ち切ったボレーは枠の左へ外れたものの、ようやくファーストシュートまで。ただ、24分は再び育英。こぼれを叩いた高橋のミドルは枠の上へ。27分は育英のロングスロー。右から塚原が飛距離十分のボールを投げ込み、ニアで榎本がフリックしたボールに、西山が何とか当てたヘディングはヒットしませんでしたが、漂うのは追加点の気配。
32分は健大にチャンス。良いアプローチから中盤でボールを奪うと、ボランチの橋爪悟(1年・藤岡キッカーズ)はすかさずスルーパス。町田開(2年・前橋ジュニア)はオフサイドを取られてしまいましたが、悪くないチャレンジを。37分は育英。榎本を起点に塚原が低いクロスを中央へ送り込み、ニアに飛び込んだ高橋のシュートはゴール右へ。39分にも育英に決定機。最終ラインでボールを持ったレフティのセンターバック相原大輝(1年・クマガヤSC)が、相手最終ラインの裏へフィードを送ると、「キーパーが出ていたのは見えたので、ちょっと浮かそうかなと思った」高橋はループを選択。ボールは左のポストを叩いて3点目とは行かなかったものの、高橋も「角田(涼太朗)さんみたいなロングボール」と評した相原のキックも十分な脅威に。最初の40分間は育英が2点をリードして、ハーフタイムに入りました。
後半はスタートから健大に1人目の交替が。センターバックで奮闘した東涼太(2年・藤岡キッカーズ)に替えて、新谷昇真(2年・藤岡キッカーズ)送り込んで最終ラインの安定に着手すると、45分の後半ファーストチャンスは健大。右サイドバックの山田健登(2年・藤岡キッカーズ)が新井とのワンツーで右サイドを抜け出し、上げたクロスはDFにクリアされたものの、いきなり創り出したチャンスの一歩手前。
それでも、再び押し返す全国王者。46分には塚原の右ロングスローからCKを奪うと、須田のキックは健大の平井亨(1年・前橋FC)に跳ね返されるも、こぼれに反応した千葉剛大(1年・前橋FC)の強烈な左足ボレーはクロスバーの上へ。49分にも榎本が溜めて落とし、千葉を経由して須田が放ったミドルはGKがファンブルしてCKへ。その左CKを須田が蹴り入れると、飛び込んだ山原康太郎(2年・坂戸ディプロマッツ)のヘディングは枠の上に外れ、「アレは決めたかったですね。スダコウが良いボールを上げてくれたので」とは山原本人ですが、貪欲に3点目を強奪しに掛かります。
52分は健大に2人目の交替。山田を下げて倉浪迅都(1年・tonan SC北本)を投入すると、大胆なシフトチェンジを。倉浪は右サイドハーフに入り、その位置にいた新井がボランチへ。ボランチの木内は左サイドバックへ、左サイドバックの有村樹(1年・tonan前橋JY)はセンターバックへ、センターバックの新谷は右サイドバックへそれぞれスライドし、整理すると右から新谷、今野祥吾(1年・前橋FC)、有村、木内が4バックに並ぶ配置転換で一気に勝負へ。
育英も55分に最初の交替。ロングスローでスタンドを沸かせた塚原に替えて、森隼平(2年・浦和レッズJY)をそのまま右サイドハーフへ入れると、60分には千葉を起点に高橋が粘って残し、森のシュートはゴール右へ外れましたが、「今は競争が激しい時期で、それはチームとして良いことだと思う」と若月も話したように、替わったばかりの森がいきなりフィニッシュまで。63分に健大は平井と黒田彪(1年・藤岡キッカーズ)を、65分に育英は西山と岡本悠作(2年・ホペイロ刈谷)をそれぞれ交替させ、試合はいよいよ最終盤へ。
70分は健大。左サイドで青木が好フィードを送り、黒田が抜け出すもオフサイドの判定。71分は育英。「みんなでやろうとしていたことができなくなって、全部が中途半端になってしまった」と若月が話し、「後半は疲れも見えてきて、相手ペースになってしまった時間もあった」と高橋も同調したように、なかなか攻撃の手数を繰り出せなくなってきた中で、ロングボールを須田が流し、榎本が左足で強引に打ったシュートはDFが体で弾き、斉藤がキャッチ。追加点とは行きません。
健大も73分には佐俣歩夢(2年・高崎エヴォリスタU-15)と渡辺晴信(2年・高崎FC)を同時投入して、何とか1点を返そうという姿勢を滲ませるものの、育英の最終ラインでは「年末の遠征で頭をケガしていて、新人戦もここまで試合に出れなくて悔しい想いをしていたので、今日は絶対にやってやろうと思っていた」というヘアバンドを巻いた山原が、とりわけ空中戦で無双状態。「高校に入ってから、自分の長所は何かと考えた時にヘディングの競り合いを考えたんです」と語る、そのヘディングに関しては山田監督が「あのヘディングは強いね」と笑えば、「頭をケガしていて危ないかなと思っていたんですけど、本人はそういうの関係なくやるってタイプなので、そこはやってくれましたね(笑)」(若月)「今、頭を縫ってるんですよ。それでもやってて(笑) マツリクさんみたいな感じで、落下地点に入るのもうまいし、ヘディングは康太郎の1つの特徴だと思います」(高橋)とチームメイトも笑い交じりの称賛を口に。山原が守護神の山口と相方の相原で組むトライアングルを中心に、ゴールへ鍵を掛け続けます。
74分には右サイドに開いた新井が中へ付け、黒田が抜け出し掛けるも、ここは育英の左サイドバックを務める塩田直輝(2年・横浜F・マリノスJY追浜)がきっちりカバーに入ってシュートを打たせず。「最後の最後でみんな体を張っていたので、それが無失点で終われた要因だと思います」と若月も話した育英がシャットアウトでのゲームクローズに成功。準決勝へと駒を進める結果となりました。
やや後半はもたついた部分もあったものの、終わってみればきっちり勝利を手にした育英。日本一を経験した次の代ということで、モチベーションとプレッシャーとが入り混じる新チームの立ち上げ期に「『俺たちも頑張ろう』というのはあると思いますけど、まだまだそれがチームとしては全然ですね」と語った山田監督は、「やっぱり優勝は本当に良かったんですけど、優勝という成功もそうだけど、成長と進化が絶対必要だからね。選手たちも我々も。それが目的でしょ。それを止めちゃったら、指導も止めた方がいいから(笑) だから我々も成長しなくてはいけないし、進化しなくてはいけないし、選手たちもそうだと思いますよね。だから、『もっともっと』というイメージですよね」と続けて。当然"日本一のチーム"と比較されるのは覚悟の上。「去年に比べたら劣るかもしれないですけど、今年は今年で自分たちの良さがあると思うので、そこは出していきたいかなというのはありますね」と若月も話した通り、「オラオラ系だってよく言われます(笑)」と自ら語る山原のような"ヤンチャ系"のニューカマーも台頭しつつある今年のチームも、面白いチームになっていきそうな印象を受けました。最後に山田監督へ日本一の"その先"を尋ねると、「終わりはないよ。だって、小嶺先生とか本田先生とかまだバリバリやってんだから。俺たちが『もういいよ』って言ったら怒られちゃうよ(笑) 本田先生とか小嶺先生を見ちゃうと恐縮しちゃうし、背中なんてまだ見えてないですよ」と笑顔でキッパリ。この指揮官兼校長先生のサッカーに対する情熱には敬服する他にありません。 土屋
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