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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
3年連続でベスト4以上を経験している関西の雄に、初出場の新鋭が挑む構図。東京国際大と阪南大が激突する2回戦は江東区夢の島競技場です。
部員はジャスト500人の大所帯。創部9年目ながら着々と成長を遂げ、今や関東リーグの常連校となった東京国際大。一昨年度は2部でも残留争いに巻き込まれましたが、昨シーズンの2部優勝で再び1部に返り咲くと、今シーズンは6位という結果で初めてのインカレ出場権を獲得。「インカレというせっかくのチャンスを最後にもらったので、何とか結果を出して、監督やスタッフに今までの恩を自分らも返さないといけない」と意気込むのは昨年からキャプテンを任されている楠本卓海(4年・大成)。初戦では北海道教育大岩見沢校に2-0で勝利して迎える2回戦。難敵相手にも臆さず挑む覚悟は整っています。
インカレはこれで6年連続出場。前述したようにここ3年はいずれもベスト4以上まで勝ち上がるなど、全国屈指の強豪校と言っていい阪南大。今シーズンはリーグ戦こそ3位に終わったものの、京都内定の重廣卓也(4年・広島皆実)、川崎内定の脇坂泰斗(4年・川崎フロンターレU-18)、鹿島内定の山口一真(4年・山梨学院大附属)と3人のJリーグ内定者を抱え、悲願のインカレ制覇に向けて意欲十分。まずは初戦となる90分間へ堂々と向かいます。夢の島のスタンドには1000人近い観衆が集結。楽しみな一戦は阪南のキックオフでスタートしました。
先にチャンスを掴んだのは阪南。2分には重廣のパスから町田蘭次郎(3年・アビスパ福岡U-18)が枠内シュート。ここは東京国際のGK古島圭人(4年・帝京)にキャッチされましたが、1つフィニッシュを取り切ると、5分にはまたも重廣の配球から山口一真が果敢なミドル。ここも古島がキャッチしたものの、まずは阪南が攻勢に打って出ます。
ところが、スコアを動かしたのは6分の東京国際。左サイドで獲得したCKを10番の安東輝(4年・浦和レッズユース)が蹴り込むと、進昂平(4年・浦和レッズユース)のシュートはDFにブロックされたものの、こぼれに右足を振り抜いた楠本のシュートが豪快にゴールネットを揺らします。「こんな早い時間帯で点を取れるのはこの後が楽だなと思いましたね」というキャプテンの先制弾。東京国際が1点のリードを奪いました。
ビハインドを負った阪南もすぐさま反撃。11分には右サイドから林雄飛(2年・野洲)がグラウンダーでクロスを送ると、町田が枠へ収めたシュートは古島がファインセーブで阻止。直後の左CKを重廣はショートで始め、山口一真のクロスからはシュートまで持ち込めませんでしたが、12分には町田蘭次郎が左足ミドルを枠の上へ外すなど、同点へ向けた積極的なシュートチャレンジが続きます。
ただ、その流れを断ち切るゴラッソが生まれたのは19分。左サイドバックの中村彰吾(3年・鹿島学園)がアーリークロスを放り込み、進と石田勇大(3年・水戸啓明)が粘って残すと、こぼれに反応した條洋介(4年・浦和レッズユース)はミドルレンジから右足一閃。素晴らしい弾道で一直線に飛んだボールは、あっという間にゴールネットへ突き刺さります。この一撃には前田秀樹監督も「あのロングシュートは久々に見ました(笑) いつもはふかしちゃうんだけど、今日は抑えて良いシュートでしたね」と破顔一笑。東京国際のリードは2点に広がりました。
以降もリズムは「あの2点でうまくゲームを運べました」と楠本も話した東京国際。28分に安東の右FKから、進が合わせたヘディングは阪南のGK渡邉健太郎(4年・愛媛FCユース)にキャッチされたものの、32分にも福島への加入が発表された川上翔平(4年・FC東京U-18)が縦に付け、町田ブライト(3年・成立学園)の落としに得意の左足ミドルを敢行。ボールは枠の右へ外れましたが、町田ブライトできっちり前線の基点も創れる東京国際の続くペース。
一方の阪南はセットプレーこそ得るものの、なかなかゴールには結び付かない中で。須佐徹太郎監督も早めの決断。40分には町田蘭次郎に替えて、ルーキーの山口拓真(1年・西武台)を前線へ送り込み、一真との兄弟2トップで反撃態勢に。ただ、直後の40分に真瀬拓海(1年・市立船橋)が粘って手にした右CKも、山口一真が蹴ったボールはDFが確実にクリア。楠本も「今日は気合が入っていましたね」と認める國井拓也(4年・昌平)と、その楠本で組むセンターバックコンビを中心に、守備陣も安定していた東京国際が2点のアドバンテージを携える格好で、最初の45分間は終了しました。
少しゆったりと立ち上がった後半は、52分に東京国際へアクシデントが。負傷でプレー続行が難しくなった中村に替えて、高橋和洋(3年・創価)をそのまま左サイドバックへ投入すると、55分に山口一真が蹴り込んだ右CKに、長谷川隼(2年・川崎フロンターレU-18)が当てたヘディングが枠を越えたのを見て、55分には阪南も2人目の交替。林を下げて、和田凌(4年・ジェフユナイテッド千葉U-18)を前線へ送り込み、山口拓真が右サイドハーフへ、重廣が左サイドハーフへそれぞれスライド。57分にはその阪南に決定機。山口一真の右CKにドンピシャで合わせた重廣のヘディングは、しかし古島が横っ飛びでビッグセーブ。「今日はキーパーが当たっていましたからね」と前田監督。4年生守護神が披露するハイパフォーマンス。
60分には川上の速い寄せでボールがこぼれ、古川雅人(4年・佐賀東)がニアを狙ったシュートは渡邉のセーブに阻まれるも、直後に2人目の交替として安東と宇高魁人(1年・長崎総合科学大附属)を入れ替えた東京国際へ、62分に訪れた3度目の歓喜。古島のキックに進が競り勝つと、自らの頭に当たったボールを収めた町田ブライトは、寄せるマーカーをハンドオフで弾きながらそのままエリア内へ侵入し、「打っても良かったんですけど、余裕があったので」冷静にGKをかわしながら無人のゴールへボールを流し込みます。「フィジカル的に勝てる所は自分の長所でもあるので、決められて良かったです」と話した町田ブライトの圧倒的な一発にスタンドからも小さくないどよめきが。「アレは彼の一番の良さですよ。イージーボールというか、どちらかという所は必ず勝ちますから」と指揮官も認めるエースの追加点。スコアは3-0に変わりました。
さすがに阪南も苦しい展開を強いられる中、63分には意外なシーンが。途中出場の高橋が2枚目のイエローカードをもらってしまい、主審はレッドカードを提示。東京国際は残りの30分近い時間を10人で戦うことになると、直後の65分には阪南に決定機。山口拓真の右クロスをファーで脇坂が折り返し、飛び込んだ重廣のシュートは枠を捉えるも、古島はまたもスーパーキャッチで仁王立ち。前田監督も66分に進と小木曽佑太(2年・浦和レッズユース)をスイッチして、4-4-1で守備バランスを整えに掛かります。
72分は東京国際にゲームを終わらせる絶好機。右サイドを町田ブライトが独力で抜け出し、中央へ丁寧にラストパス。走り込んだ宇高が流し込んだボールは、わずかに枠の左へ外れ、頭を抱えるイレブンとベンチ。73分は東京国際に4人目の交替。川上と池添勘太郎(3年・山梨学院大附属)を入れ替え、サイドの守備強度向上へ着手。73分は阪南。CKのこぼれから脇坂の左クロスに、飛んだ長谷川のヘディングは枠の右へ。74分に真瀬と岡部拓実(4年・正智深谷)もスイッチした阪南は、77分にも脇坂が左へ流すと、吹ヶ徳喜(2年・名古屋グランパスU18)のクロスはゴール方向へ向かうも、カバーに入った古川がライン上でスーパークリア。「押し込まれる展開は退場してから覚悟していた」と楠本。押し切りたい阪南。粘る東京国際。
78分に形で現れた阪南の執念。センターバックの長谷川が右へ振り分け、受けた山口一真のアーリークロスに飛び込んだのは途中出場の岡部。ヘディングは右のポストに跳ね返しましたが、そのこぼれを再び岡部が足で押し込み、ボールはゴールネットへ転がり込みます。3-1。残り時間は10分余り。「1人退場になる前まではうまく行っていたんだけどね」と前田監督。ゲームはいよいよ最終盤へ。
83分は阪南。山口一真のクロスを左サイドで残した脇坂が右足で上げたボールから、山口一真が打ち切ったボレーはクロスバーをかすめて枠の上へ。84分も阪南。吹ヶの左クロスから藤原奏哉(4年・ルーテル学院)が丁寧に落とし、脇坂の強烈なミドルが枠を襲うも、古島は丁寧にキャッチ。88分も阪南。山口一真の右CKは一旦跳ね返され、再び山口一真が上げたクロスも小木曽がきっちりクリア。89分に東京国際は最後の交替。町田ブライトと浅利航大(3年・水戸ホーリーホックユース)を入れ替えて、ゲームクローズに取り掛かります。
5分が掲示されたアディショナルタイムにも諦めない須佐軍団。90+1分。渡邉のキックのこぼれを岡部は冷静に右へ浮き球でラストパス。走った重廣が対角線に打ち込んだシュートは、グラウンダーでゴール左スミへ飛び込みます。3-2。残り時間は3分余り。阪南の驚異的な粘りがスタンドを沸かせますが、90+6分に阪南のセンターバックとして奮闘した大塚勇気(3年・真岡)のフィードを小木曽が跳ね返すと、直後に夢の島に鳴り響いたのはタイムアップを告げるホイッスル。「退場になってからはかなりの時間が(笑) 30分以上ありましたから、『これは追い付かれるだろうな』という気持ちもちょっとありましたけど、何とか凌いでくれましたね」と前田監督も笑った東京国際が何とか逃げ切り、準々決勝へ駒を進める結果となりました。
「5分って出た時は『長いな』と思ったんですけど、ロスタイムになってから結構ボールが外に切れることが多くて、自分も結構休める時間ができたので、頭もクールにできていましたし、こういう試合を勝ち切れるというのは次の試合に繋がるのかなと思います」と楠本も話した通り、2点は取られたものの、10人になってからも落ち着いてゲームを進めながら、しっかり勝利を手繰り寄せた東京国際。とりわけ「ウチの中盤は技術はないですけど、彼らは『陸上に行った方が良いのかな』というぐらいに運動量は凄くあるのでね」と前田監督も冗談交じりに称賛した、條と石田のドイスボランチはとにかくセカンド奪取にプレスにと大車輪の活躍。そこに楠本を軸にした最終ラインの粘り強さが加わり、「ウチはもう守備のチーム」と指揮官も言及したスタイルを貫く姿勢は見事の一言でした。次の相手は関東王者の筑波大。「次の筑波を倒さなきゃこの2勝の意味がなくなってしまいますし、4-0でボコられた前期の借りがあるので返さないといけないですよね」と気合を表現したのは楠本。今の東京国際の勢いを考えると、非常に楽しみなクォーターファイナルは18日。11時に柏の葉でキックオフを迎えます。 土屋
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