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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
東京の選手権予選もいよいよ最後の1試合。2年ぶりの全国を目指す國學院久我山と、5年ぶりの戴冠に王手を懸けた実践学園のファイナルは引き続き駒沢陸上競技場です。
選手権で全国準優勝に輝いたのは2年前。以降はインターハイ、選手権共に都内の壁に阻まれ、全国の舞台から遠ざかっている國學院久我山。「今年タイトルを獲れなければ全国経験者がいなくなるので、ここでタイトルを獲れるか獲れないかは、今後の久我山にとっても大事だと思います」と清水恭孝監督も話した今大会は、初戦で都立府中東に敗戦寸前まで追い詰められたものの、驚異的な粘りで逆転勝ちを収めると、準々決勝の駿台学園戦、準決勝の国士舘戦とどちらも1-0で粘り強くモノにして、このステージまで。今シーズンで見れば、実践との対戦成績は3戦3敗。「もう最後ぐらいは勝たないと、このままじゃ終われないです」と口にしたのは"全国経験者"の上加世田達也(3年・Forza'02)。まとめて到来したリベンジの機会を逃す訳には行きません。
関東大会予選の出場権、インターハイ予選の出場権。T1リーグ制覇。シーズン初頭に掲げた"四冠"という大きな目標達成が目前に迫っている実践学園。その"四冠目"にトライしている今大会は、初戦で難敵の大成を1-0で沈めると、準々決勝では日大豊山を4-0で退け、先週の準決勝も延長の末に武田義臣(3年・FC Branco八王子)の決勝ゴールで帝京に2-1と競り勝って、堂々のファイナル進出。「自分たちはみんなの記憶に残るチームになれたらいいんじゃないかと思うので、決勝もどれだけプラスの声を掛けられるかだし、楽しむだけだなと思っています」と話すのはキャプテンの尾前祥奈(3年・江東深川第四中)。万全の状態でシーズン最後の東京制覇に挑みます。スタンドに詰めかけた観衆の数は7,579人。楽しみな決勝戦は久我山のキックオフでスタートしました。
静かに立ち上がったゲームのファーストシュートは11分の久我山。右CKを三富嵩大(3年・横河武蔵野FC JY)が蹴り込み、1年生センターバックの保野友裕(1年・東京武蔵野シティU-15)が合わせたヘディングは枠を越えましたが、まずはセットプレーから好機を創出。12分の実践は左サイドで得たFK。レフティの山内稔之(2年・AZ'86東京青梅)が蹴り込んだボールは、久我山のGK平田周(3年・FC東京U-15むさし)がパンチングで回避。お互いにセットプレーで相手ゴールを窺います。
17分は実践。中盤で前を向いた村上圭吾(3年・三菱養和調布JY)が、少し運んで打ったミドルは枠の左へ。18分も実践。左から武田が蹴り入れたCKは平田がきっちりパンチングすると、以降は双方のアタックがフィニッシュに結び付かない膠着状態に。久我山は右の北澤快(3年・東京ヴェルディユース)と左の内田祐紀弘(3年・Forza'02)、実践も右の石本耀介(3年・青山SC)と左の山内と、両ワイドを生かしたい流れの中で、手数を繰り出せません。
37分は実践。ボランチの北條滉太(3年・FC杉野)が左へ振り分け、山内が鋭いクロスを上げるも、上加世田がきっちりクリア。39分は久我山。三富を起点に高橋黎(2年・ジェファFC)が左へ付けるも、上がってきたサイドバックの竹浪良威(2年・FC東京U-15むさし)のドリブルには、戻った石本が確実に対応してゴールキックに。40分は実践。ミドルレンジから浦寛人(3年・GA FC)が思い切って打ったシュートは、竹浪が体でブロック。その左CKを武田が蹴ると、ファーに突っ込んだ三澤健太(3年・昭島瑞雲中)のヘディングはゴール右へ。前半の40分間はスコアレスでハーフタイムに入りました。
先にベンチが動いたのは久我山。後半開始から北澤に替えて、松本雄太(3年・成立ゼブラFC)をそのまま右ウイングへ送り込み、サイドのアクセントに変化を加えると、44分には三富のパスを受けた内田が、左サイドからカットインシュートを枠の右へ。49分はビッグチャンス。内田のパスから鵜生川治臣(3年・前橋JY)が左足で放ったシュートは、実践のGK成田雄聖(3年・S.T.FC)にファインセーブで阻まれましたが、少しずつ傾き始めたゲームリズム。
55分は久我山に決定機。「14番を受け継いだ責任もあるので絶対勝ちたい」と意気込む三富の右CKは竹浪にドンピシャ。ヘディングは枠を捉えましたが、ここはライン上で武田がスーパークリア。58分も久我山。左サイドで内田が粘って残し、鵜生川が打ち切ったミドルは枠の上へ。59分も久我山。ここも左サイドを鵜生川とのワンツーで切り裂いた竹浪が中へ折り返すと、走り込んだ高橋のシュートはヒットしなかったものの、久我山が一段階踏み込んだアクセル。
61分の決断は実践ベンチ。1人目の交替として、右ウイングバックを石本から、「今のチームのジョーカーとしては信頼できる選手の1人」と深町公一監督も評価する大関友貴(3年・FC多摩)にスイッチする勝負の一手を。62分には早速その大関がクロスを敢行し、その流れから武田が蹴った左CKは平田のパンチングに遭うも、今度は右CKを山内がショートで始め、武田のリターンを叩いたミドルは北條に当たって枠の右へ外れましたが、実践もサイドの推進力を押し出しつつ、ペースを引き戻しに掛かります。
66分は実践。北條が短く付け、エリア外から前原龍磨(3年・三菱養和調布JY)が強烈なミドルを枠へ飛ばすも、ここは平田がファインセーブで応酬。直後の左CKは武田のボールが流れてしまいますが、68分にも流れの中からチャンス到来。右サイドへ張り出した浦のクロスへ、武田がニアに突っ込むと、間一髪で保野がカットしたものの、「フォワードをやっている以上は自分が点を取らないといけない」という10番が見せた鋭い動き出し。70分は久我山。右サイドで懸命にキープした鵜生川の折り返しに、ダイレクトで右足を振った内田のボレーは枠の上へ。スコアは依然として0-0。残りは10分間とアディショナルタイム。
71分に起こったアクシデント。ボールに足の裏で行ってしまった浦のキックが相手に当たると、主審は迷わずレッドカードを提示し、実践は1人少ない10人での戦いを強いられることに。ベンチもすぐさま対応。5-3-1気味の布陣で急場を凌ぎ、74分には村上と高須史弥(3年・VERDY S.S.AJUNT)を入れ替え、北條と高須をドイスボランチに、武田と前原を2トップにそれぞれ配し、3-4-2気味でバランス維持に着手する采配を振るいます。
ただ、76分に訪れたチャンスは実践。山内のパスから大関が狙ったシュートはDFのブロックに遭いましたが、こぼれを再び実践が収め、前原のショートパスを大関が思い切って叩いたミドルは、クロスバーに激しくクラッシュ。79分にも前原が右へ流し、大関は平田にキャッチを強いる豪快なミドルを枠内へ。14番の積極性で息を吹き返した実践。80+1分は久我山に2人目の交替。清水監督は「彼は残したかったですけど、完全に足が攣っていたので、もう替えざるを得なかった」という三富を下げて、10番を背負う宮本稜大(2年・東急SレイエスFC)を緊迫したピッチへ投入。80+2分は久我山の右CK。内田のキックをファーで上加世田が折り返すも、成田が丁寧にキャッチすると、聞こえたのは80分間の終わりを告げるホイッスル。スコアは動かず。前後半10分ずつの延長戦で雌雄を決することになりました。
実践のキックオフで開始された延長前半。82分には深町監督が「延長に入った時に『オマエの右サイドの所の突破しかないぞ』と。『もうオマエがやれるかやれないかしかないからね』という所でアドバイスをして行かせた」と言及した大関が縦への突破からCKを奪い、山内のキックはシュートには結び付きませんでしたが、際立つ大関の積極性。「退場してしまった選手の分まで勝たないといけないという気持ちもみんなあった」とは武田。結束する10人の実践。
89分は久我山。松本のパスから高橋がアーリークロスを蹴り入れ、宮本がニアへ飛び込むも、準決勝での負傷交替に「次は絶対自分がやるという気持ちは持っています」と意気込んでいた齋藤彰人(3年・FC多摩)が執念のクリア。直後に1年生アンカーの福井寿俊(1年・東急SレイエスFC)が蹴った右CKに、鵜生川が当てたヘディングはクロスバーの上へ。さらに90分の内田と永藤楓(3年・Forza'02)の交替を挟み、同じく90分に松本が右から上げ切ったクロスに、体を投げ出した宮本のダイビングヘッドはわずかに届かず。延長前半もスコアレス。泣いても笑っても、あとは延長後半の10分間のみ。
92分は久我山。高橋が果敢なボール奪取から縦に付け、反転した鵜生川のシュートは枠の上へ。93分は久我山に4人目の交替。右サイドバックで奮闘した井上翔太(2年・ジェファFC)に替えて、澤田雄大(3年・FC多摩)がそのままの位置に。94分も久我山。鵜生川の右ロングスローから、松本が放ったシュートは齋藤が体で弾き、鵜生川の枠内シュートは成田がファインセーブで仁王立ち。94分は実践も3人目の交替。北條と人見隼斗(3年・フレンドリー)のスイッチで中盤の強度向上を。98分は久我山。左サイドで竹浪が外へ流し、永藤の右足クロスに宮本が合わせたヘディングは枠の右へ。消えた電光掲示板の時計表示。久我山は松本と加納直樹(1年・ジェファFC)が、実践は前原と浅野遥輝(3年・FC多摩)が相次いで交替。すると、誰もがPK戦での決着を予期していたであろう、100+2分に待っていたのは劇的なドラマ。
武田が左のコーナースポットから蹴ったボールを平田がフィスティングで掻き出し、逆サイドで得た連続でのCK。キッカーはもちろんレフティの山内。丁寧な軌道がファーサイドまで伸びると、延長後半から登場した人見のヘディングはクロスバーにヒットしたものの、このこぼれ球に誰よりも速く反応したのは「10番を付けさせてもらってる部分でも、自分が決めてチームを勝利に導きたいという強い気持ちを持って、いつもプレーしていました」という武田。頭で押し込んだボールはゴールネットを力強く揺らします。「彼が一番走っている選手だと思うので、神様がいるのかどうかわからないですけど、あのゴールは最後に待っていた彼へのご褒美だったのかなと思います」と深町監督が話せば、「本当にアイツは普段がちゃんとしているので、最後にああやって決まったのは、ちゃんと神様が見てくれていたんじゃないかなと思いますね」と尾前も同調。「本当に最高でしたね。自分のゴールなんですけど、チームで取ったゴールだと思いますし、こういうツラい状況でも応援してくださる方々がいて、そういう人たちの想いも背負って自分たちはプレーしているので、チームが1つになって取れたゴールだと思います」と語った武田のゴールはそのまま決勝点。歴史に残るであろう激闘は、10人の実践が土壇場で恐ろしいまでの勝負強さを発揮して、5年ぶりの全国切符を手にする結果となりました。
壮絶な100分間でした。「最後は必ずどちらかが勝って、どちらかが負けるという意味で言えば、私たちに少し力もなかったし、運もなかったかなというのはあると思います」と話した清水監督は、「いえ。運のせいにすると相手に失礼なので、力がなかったんだと思います」と言い直しましたが、この勝敗に関しては"運"の部分が多分に影響したのは間違いありません。故に何か結果を左右したものを無理やりにでも見つけ出すとすれば、試合後に尾前が語った言葉をご紹介したいなと。「この試合は命を懸けてやっていたので、本当に人生で最後の経験になるし、ここでキツいから走らなくて、後悔したら絶対一生残るじゃないですか。だったら、今は攣ってもいいから走って、後悔しないようにやろうというのは、試合中にずっと自分も含めてコーチングしていたので、『絶対やってやろう』という気持ちにはなったと思います」。忘れたくない好勝負。心から両チームの選手たちに惜しみない拍手を送っていただきたいと思います。 土屋
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