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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
3年連続となるファイナル進出に王手を懸けたカナリア軍団と今シーズンのT1リーグを制した実力者の対峙。帝京と実践学園の準決勝は味の素フィールド西が丘です。
一昨年度は國學院久我山にPK戦で、昨年度は駒澤大学高に0-2で屈し、2年続けてファイナルでの敗退を強いられながら、確かな復権の手応えを掴みつつある帝京。今シーズンは関東大会予選で東海大菅生、修徳と難敵を続けて撃破し、ベスト8へ進出すると、都内屈指の実力を有した都立東久留米総合にPK戦で競り勝ったインターハイ予選も、最後は國學院久我山との撃ち合いに2-3で敗れるも、やはりきっちりベスト8まで。今大会も創価を2-0で退け、苦しんだ先週のクォーターファイナルは、延長の末に大森学園を4-1で振り切って西が丘まで。相手はT1王者。舞台は整っています。
関東大会予選で大成、成立学園、早稲田実業、國學院久我山と強豪ばかりをなぎ倒して本大会出場を勝ち取ると、シードとなったインターハイ予選でもきっちり駒澤大学高と東海大菅生を揃って2-0で下し、5年ぶりに夏の全国も経験した今シーズンの実践学園。同じく5年ぶりの戴冠を目指す今大会も、関東大会予選のリターンマッチとなった初戦の大成戦を1-0で潜り抜け、先週末は日大豊山を4-0で撃破し、このセミファイナルのステージへ。T1に続く東京二冠を手繰り寄せるべく、重要な80分間へ向かいます。西が丘のスタンドには3,591人の大観衆が。ファイナルへの最終関門は実践のキックオフでスタートしました。
先にチャンスを掴んだのは6分の帝京。自らのドリブルで獲得したFKのスポットに立ったのは三浦颯太(2年・FC東京U-15むさし)。左寄り、ゴールまで約25mの位置から直接狙ったキックは枠の左に逸れましたが、まずはカナリア軍団の司令塔が1つフィニッシュを。8分の実践は右FK。レフティの山内稔之(2年・AZ'86東京青梅)が蹴ったボールに、斎藤彰人(3年・FC多摩)と三澤健太(3年・昭島瑞雲中)が突っ込み、シュートには至らなかったものの、迫力あるアタックを。お互いにセットプレーから相手ゴールを窺います。
ただ、「前半は『自分たちでボールを動かそう』と言っていたんですけど、相手のプレッシャーが速かったり、思うようにボールを動かせなかった」と斎藤が話した通り、実践がなかなか効果的な攻撃を繰り出せない中で、少しずつゲームリズムは帝京に。11分には中田廉太郎(3年・横浜F・マリノスJY)のパスから、右へ流れた岡本良太(3年・FC明浜)のシュートは三澤が体を投げ出して何とかブロック。20分には実践も、山内の右CKに飛び込んだ斎藤のボレーはクロスバーの上へ。先制とは行きません。
すると、先に歓喜を迎えたのは帝京。21分に昨年から10番を託されている佐々木大貴(2年・FC東京U-15むさし)が鋭いドリブルで中央を切り裂きながら左へ。開いた岡本のクロスに、3列目から飛び出してきた中村怜央(2年・FC東京U-15深川)のシュートは当たり損ねたものの、拾った中田は冷静にマーカーを外して左足でフィニッシュ。ボールはゴールネットを確実に揺らします。15番の3年生レフティがこの重要なゲームで大仕事。帝京が1点のアドバンテージを手にしました。
以降もペースは完全に帝京。25分に中盤で松永悠希(3年・浦和レッズJY)と中村怜央が相手ボールを挟んで奪い切り、岡本がGKの位置を見て狙った40mミドルはクロスバーを越えるも、果敢なボール奪取からシュートまで。27分にも佐々木が巧みなドリブルで場内を沸かせ、中村怜央のスルーパスに岡本が走るも、ここは実践のGK成田雄聖(3年・S.T.FC)が飛び出してキャッチ。29分には突然のチャンス。独力でボールを奪い切った岡本は、左サイドから右足一閃。ボールは右のポストに当たって跳ね返りますが、「どうしても慌てて蹴り返すような前半になってしまったかな」とは実践の深町公一監督。漂う追加点の気配。
32分は実践。山内のパスを「初めてのピッチで少し緊張したんですけど、前半の途中からは自分のプレーが出せるようになりました」という北條滉太(3年・FC杉野)が繋ぎ、武田が切り返して枠へ収めた左足のシュートは帝京のGK白井貴之(3年・柏レイソルA.A.長生)ががっちりキャッチ。38分は帝京。自陣で前を向いた三浦は中央をグングンドリブルで運ぶと、右に流れながら利き足とは逆の右足でクロス。ボールは走り込んだ中田へわずかに合いませんでしたが、2年生レフティが確かな才能の一端を披露します。
ところが、帝京リードで後半へ折り返すかと思われた40+2分の同点弾。石本耀介(3年・青山SC)と前原龍磨(3年・三菱養和調布JY)の連係で獲得した左CK。武田のキックはファーまで届き、「相手が自分のマークプラスもう1枚来ていて、2対1みたいな感じになっていた」斎藤が競ったボールは中央にこぼれると、「ファーの人を信じてこぼれを狙っていたんですけど、それが自分の所に転がってきた」と振り返る北條のシュートが左スミのゴールネットへ到達します。「最後で絶対返して、前半は同点で折り返そうと思っていた」というボランチの一撃。実践がスコアを振り出しに引き戻して、ファーストハーフは終了しました。
後半はスタートから動いた実践ベンチ。「最後のT2の2,3試合を先発で体張って、ほぼフルでやっているので、努力の男かなと思います」と深町監督も評した通り、最前線で奮闘した西田輝(3年・FC CRECER)に替えて、村上圭吾(3年・三菱養和調布JY)をそのままセンターフォワードの位置へ投入すると、続けてセットプレーから繰り出す手数。44分は左CK。武田が蹴ったキックは、帝京の左サイドバック川戸亮輝(3年)が懸命にクリア。45分は右FK。山内が蹴り込んだボールは、白井がパンチングで回避。47分は右FK。山内のキックはファーまで伸び、突っ込んだ浦寛人(3年・GA FC)はわずかに届かずゴールキックになりましたが、「後半の開始10分は自分たちも今シーズンで一番点を取っているので、そこは自信を持って立ち上がりから行きました」と語ったのは斎藤。実践が一気に引き寄せたゲームリズム。
50分は実践に決定的なチャンス。前原が右へ振り分け、武田のクロスはファーまでピンポイントで届くも、浦のボレーはヒットせずに枠を越えてしまい、思わず天を仰ぐ実践ベンチ。52分は帝京。右サイドバックを任された中村祐隆(3年・西東京保谷中)のクロスへ、ニアに突っ込んだ岡本のヘディングは枠の右へ。56分は実践。前原が左から中へ戻し、浦が狙ったミドルは白井が懸命にキャッチ。57分は帝京。岡本、中村怜央とボールが回り、中村祐隆のクロスに飛び込んだ岡本は触り切れず。押し込まれていた帝京にも再びパワーが。白熱の展開。一進一退。
61分は帝京にビッグチャンス。右から松永がクロスを上げると、こぼれを拾った中村祐隆は思い切ってミドルを敢行。左スミへ向かったボールはわずかに枠を外れましたが、あわやというシーンに黄色の応援席のボルテージもさらに上昇。62分は実践に2人目の交替。石本と大関友貴(3年・FC多摩)を入れ替え、右サイドの推進力アップに着手。63分は帝京も1人目の交替。先制ゴールの中田を下げて、梅木遼(2年・ミラグロッソ海南)をそのまま右サイドハーフへ。66分は実践。武田の右FKに三澤がドンピシャへッドも、ボールは枠を越えると、直後に帝京は2人目の交替も。足の攣った岡本を諦め、スピードスターの萩原颯都(2年・FC東京U-15むさし)をピッチへ。残りは10分。果たして勝敗の行方は。
71分は帝京。三浦が右へ丁寧に回し、ドリブルで縦に運んだ梅木のシュートはゴール左へ。74分は実践。前原の縦パスを武田が落とし、北條が叩いたミドルはDFをかすめて枠の右へ。山内が蹴り込んだその右CKに、斎藤が競り勝ったヘディングはゴール左へ。75分に帝京は3枚目のカードとして、松永とレフティの吉田龍斗(3年)をスイッチすると、76分に中村祐隆が上げ切ったクロスへ、突っ込んだ吉田のへディングは枠を捉え切れませんでしたが、途中出場の吉田が纏う独特の存在感。
77分に実践も3人目の交替。前半に成田との接触でやや傷んでいた斎藤が下がり、同じポジションに人見隼斗(3年・フレンドリー)を。80分も実践。左サイドを得意のドリブルで運んだ前原のシュートはクロスバーの上へ。80+3分は帝京4人目の交替。負傷でプレー続行が難しくなった中村怜央に替えて、久保莞太(2年・横浜F・マリノスJY)をそのままボランチへ。そして、その直後に吹き鳴らされたのは80分間の終了を告げるホイッスル。両雄譲らず。ファイナルへの切符は前後半10分ずつの延長戦で奪い合うことになります。
帝京のキックオフで始まった延長前半は運動量で勝る実践ペース。87分に山内の突破で獲得した左CK。武田が丁寧に蹴り込んだキックに人見が飛び付いたものの、DFも粘って競り合い、再びCKへ。今度は右から山内が放り込んだボールは、三澤が競り勝つもDFがかろうじてクリア。裏へのボールはほとんど完璧に対応していたキャプテンの菅原光義(3年・S.T.FC)とハイボールを跳ね返し続けた渡辺楓(3年・横河武蔵野FC JY)のセンターバックコンビを中心に、水際で凌ぎ続ける帝京ディフェンス。
実践の狂喜は88分。「あの子のクロスは浮き球が多かったので、『グラウンダーを意識して入れろ』と言う指示を出した」と深町監督も言及した大関は、右サイドから低く鋭いクロスを中央へ。「大関君のクロスには練習から合わせてきたので、ニアに来るかなと予測して」走り込んだ武田が、「足を伸ばして軽く当てようという感じで」放ったシュートはGKのニアサイドを破り、ゴールネットへ飛び込みます。「自分はTリーグとか年間通して全然点を取ってなくて、その分こういう舞台でしっかり結果を出さないといけないという責任もありますし、10番を付けさせてもらっているという責任もあるので、ああいう形で点が取れたので良かったと思います」という武田のゴラッソに、キャプテンの尾前祥奈(3年・江東深川第四中)も「もうメチャクチャ嬉しいですね。武田は本当にいいヤツで、サッカーの練習でも絶対サボらないし、そういう所がアイツのああいうプレーに繋がっているんじゃないかなと思いますね」と破顔一笑。10番のストライカーが見事結果を。実践がとうとう逆転に成功しました。
前半のリードから一転、ビハインドを背負った帝京。89分に三浦が蹴り込んだ右FKに、菅原が合わせたヘディングはゴール左へ。延長前半終了。泣いても笑っても残された時間は10分間。92分は実践4人目の交替。前原と重枝俊亮(3年・FC GABE)を入れ替え、攻守に前線の活性化を。96分は帝京に絶好の同点機。左サイドを駆け上がった三浦が執念のキープで残すと、佐々木のシュートは左スミを捉えましたが、ここは成田が素晴らしい反応から横っ飛びでビッグセーブ。交錯する歓声と悲鳴。実践のリードは変わりません。
96分に帝京はとうとう決断。5枚目のカードとして195センチの赤井裕貴(2年・FC東京U-15むさし)を最前線に送り込み、最後の勝負へ。直後には左CKを吉田が蹴り込み、ファーで三浦が折り返すも、DFが懸命にクリアすると、これがこのゲームのラストチャンス。97分に武田と赤坂元樹(3年・ソレイユ)をスイッチして、ゲームクローズに着手した実践に凱歌。「ここまで来れたのは自分たちが今まで練習からひたむきにやってきた結果だと思います」と斎藤も話した"高尾の野武士集団"が、3年ぶりのファイナルへと勝ち上がる結果となりました。
「彼らはまじめな子たちが多いので、常に崩れることなく安定して失点が少なく、あまり波のないチームで来られたかなと。その結果、トーナメントも最低限の所まで来たのかなと思っています」と深町監督も語った実践は、これで全国切符に王手という所まで。ただ、そのプレッシャーを問われた尾前は「俺は『みんなで楽しもう』ということしか言っていないし、プラスの声掛けということしか言っていないので、この時期どうこう言い合うとか、必要かもしれないんですけど、自分はそうじゃないかなと。どれだけみんなの気持ちを乗せられるかだし、どれだけプラスの声掛けをできるかどうかだと思うので、特にそのプレッシャーというのは感じていないですね」ときっぱり。決勝ゴールの武田も「ここまで来られたのは応援してくださる方々がいるからで、あとは応援に応えるというか結果を残すだけなので、次の土曜日に良い準備をして、自分がゴールを決めて、チームを勝利に導けたらいいなと思います」と控えめな口調ながら強い決意を。「『実践の歴史を創る』という意味でも俺たちの代しかできないこと」(尾前)を実現するためのファイナルは駒沢陸上競技場です。 土屋
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