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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
2試合目は野心を隠さない都立校同士の対戦。都立日野台と都立府中東が激突する注目の80分間は、引き続き堀越学園総合グラウンドです。
一昨年度はベスト8、昨年度はベスト16と、選手権予選においても都大会進出の"その先"を明確に目指すだけの成果を積み重ね始めている都立日野台。新チーム初の公式戦となった新人戦では、地区予選で都立松が谷にPK負けを突き付けられ、関東大会予選進出とは行きませんでしたが、インターハイ予選では0-1で敗れたものの、駒澤大学高と接戦を演じるなど、その実力は証明済み。今大会の1次予選でも2試合で25ゴールを奪って、このステージまで。國學院久我山への挑戦権を得るための大事な一戦に挑みます。
一昨年度と昨年度の選手権予選は、一次予選をきっちり勝ち上がって都大会を経験。その他のトーナメントコンペティションでも地区予選や支部予選を潜り抜ける回数が増え、その名前を聞くことも多くなってきた都立府中東。昨年末の新人戦では準決勝で大成に敗れ、関東大会予選進出を逃した中で、インターハイ予選では一次トーナメント進出を果たすと、今大会でも一次予選決勝で都立墨田川を延長の末に5-1で下して、3年連続となる二次予選へ。地区トップリーグでは全勝でグループ優勝を勝ち獲るなど、さらなる躍進を狙うだけの要素は揃っています。高尾の空から降り続く雨は一向に止む気配なし。12時。日野台のキックオフでゲームはスタートしました。
先にシュートを放ったのは2分の日野台。ミドルレンジから山田響(3年・コンフィアール町田)が狙ったシュートはクロスバーを越えましたが、10番が積極的なトライを。一方の府中東は「ちょっと緊張していたのかなというのと、いつもの攻撃の良さが今日は出ていなかったなという感じはありましたね」と本宿博史監督が振り返ったように、なかなか効果的なアタックを繰り出せず。「最初はバタつきましたね」とは林田諒太(3年・FC多摩)。ややうまく行かない時間が続きます
ところが、先にスコアを動かしたのは府中東。25分、左サイドを抜け出した林田がGKをかわして中央へ折り返すと、飛び込んできたのは地区トップリーグでダントツの得点王に輝いた鈴木涼雅(3年・FCトレーロス)。丁寧なシュートが確実にゴールネットを揺らします。「相当走ってますね。もう自由にやっています」という林田のアシストでエースがきっちり一仕事。府中東が1点のアドバンテージを手にしました。
ビハインドを負った日野台も、28分には右から山田がCKを蹴り込みましたが、DFが冷静にクリア。33分は逆に府中東のセットプレー。左サイドで斉藤琉嘉(3年・八王子上柚木中)がショートコーナーを蹴り込み、重久洋輝(3年・府ロクJY)、林田と繋ぎ、鈴木が浮き球で裏を取るも、宗形春希(3年・三鷹F.A.)にはわずかに届かず。36分は日野台。ルーズボールにいち早く反応した山田のシュートは、DFが体でブロック。「キツい時間もあったんですけど、先制点が大きかったですね」とは林田。府中東が1点をリードして、ハーフタイムに入りました
後半はスタートから日野台に交替が。右サイドハーフの笹沼李空(3年・多摩落合中)に替えて、宮本開(2年・FC府中)を送り込み、サイドのバランスを整えに掛かると、43分には同点のチャンス。ピッチ左寄り、ゴールまで約25mの位置から、山田が直接狙ったFKは強烈な弾道で枠を捉え、府中東のGK道本勝太(3年・田無第四中)がわずかに触って方向の変わった軌道はクロスバーにハードヒット。こぼれを拾った、キャプテンマークを巻く橋本晃輔(3年・町田鶴川第二中)のミドルは枠を越えましたが、あわやというシーンにどよめく場内。
44分も日野台。宮本が右サイドを運んで折り返し、3列目から飛び出した松永祐太郎(3年・FC多摩)のシュートは枠の左へ。47分は府中東。右サイドで得たのは、ゴールまで25m強のFK。林田が蹴ったキックは壁がブロック。49分も府中東。工藤琢斗(2年・FC Branco八王子)のパスを受け、左サイドを切り裂いた斉藤が中へ送り、ニアに入った鈴木のスライディングシュートは日野台のGK勝又祐樹(3年・日野七生中)ががっちりキャッチ。右から岸井雄佑(3年・FC.VIDA)、西谷惇(3年・FUNフットサルクラブ)、小山翔葵(3年・JACPA東京FC)、小田寛樹(3年・稲城第五中)で構成された日野台4バックも、何とか1失点で踏みとどまります。
53分も府中東。右センターバックの高橋了悟(2年・三鷹F.A.)が短く付けると、「『右に来たらもう勝負』とみんなに言われている」という佐藤葵士(3年・JACPA東京FC)はサイドをちぎってシュートを放つも、ボールは枠の左へ。54分は日野台に2人目の交替。効いていた山田を下げ、185センチの長身フォワード高橋幹也(3年・FC府中)を投入し、前線に明確なターゲットを。
ところが、次の得点を記録したのも府中東。57分に相手ディフェンスラインのビルドアップを、「もうこれは絶対来るなと」狙っていた林田がボールを奪うと、「もうかわしたら1点だなと思ったので」冷静にゴールキーパーを外し、無人のゴールへボールを流し込みます。「想定内だったので、アレをずっと狙っていて『来たな』と思いました」という林田の抜け目ない一撃は貴重な追加点。両者の点差は2点に開きました。
苦しくなった日野台は59分、古川竜太郎(3年・FC.VIDA)を起点に高橋幹也がドリブルからシュートを放つも、重久が体でブロック。逆に60分は府中東。鈴木が右へ振り分け、佐藤の枠内シュートは勝又がファインセーブ。日野台は60分に大竹康平(3年・アローレはちきた)、63分に柳沢直哉(3年・東京ウエストFC)と最上級生を相次いでピッチへ送り込み、打ち出したい反発力。65分には宮本のパスから大渕詩音(3年・立川第九中)が打ち切ったシュートは、DFをかすめてわずかにゴール左へ。反撃弾とは行きません。
68分は府中東。右サイドを抜け出した佐藤のクロスに、突っ込んだ斉藤のシュートは勝又がキャッチ。71分も府中東。ここも右サイドをぶっちぎった佐藤が丁寧にクロスを放り込み、ファーに飛び込んだ斉藤のシュートは枠を外れますが、「スピードには自信があります」と言い切る佐藤と斉藤の両サイドアタッカーは、本宿監督も「どことやっても十分通用する子たちかなと思います」ときっぱり。終盤になってもワイドを切り裂き続けます。
まずは1点を返したい日野台。74分には柳沢が左CKを蹴り込むも、林田が確実にクリア。75分に今度は中央から柳沢が放り込んだFKは道本が丁寧にキャッチ。76分にも高橋幹也のパスから宮本が狙ったミドルは、宗形が果敢に顔面ブロック。池田豊嗣(3年・調布中)と児玉尚也(3年・調布神代中)で組むセンターバックを中心に、「結構失点が多いので、ゼロで抑えたい」(佐藤)府中東守備陣の続く高い集中力。
トドメの一撃は福田龍生(2年・調布神代中)が1枚目の交替カードとしてピッチへ解き放たれた直後の78分。自らのドリブルに対するファウルでFKを獲得した林田は、「笛が鳴ってなくて、キーパーがポストで壁の設定をやっていたので、これは打つしかないと思って」すかさず直接ゴールを狙うと、ボールは素晴らしい弾道で左スミのゴールネットへ豪快に飛び込みます。「無回転的なブレ球はずっと練習していたので」という林田の技術と判断力が融合したゴラッソには、本宿監督も「3点目のFKは定石というか、必然性のある彼のこの3年間の努力の賜物で、この夏を過ぎてからパンチのあるシュートを打てるようになったので」と納得の表情。最後は柴田凌雅(3年・FC多摩)を送り込み、ゲームクローズにも成功した府中東に凱歌。優勝候補に挙げられる久我山への挑戦権をもぎ取る結果となりました。
府中東は前述したように、今シーズンの地区トップリーグで46得点を挙げての7戦全勝という結果を出したのもうなずけるような好チームでした。「基本的には自分のサッカーのイメージは"ハンドボール"」という本宿監督の下、ワイドに佐藤と斉藤というスピード豊かなアタッカーを置きながら、「ゴール前にリトリートされた時の崩し方で、両サイドを余らせると。両サイドに引き付けられれば、今度は中を使う、というコンビネーションや調和がうまくいくという」(本宿監督)アグレッシブなスタイルは非常に魅力的。9月には清水桜が丘に出向いたり、先週は三浦学苑に出向いたりと、他県の強豪とも肌を合わせてきたことが、ここに来てチーム力を一段階引き上げているそうで、指揮官は「今日久々に都大会で結果が出せたというのは、お世話になったいろいろなチームに感謝ですよね」と笑顔を見せました。次の相手は強豪・久我山。「楽しみですね。ずっと強いチームとやってみたかったので」(佐藤)「久我山とは本当にやりたかったです。僕たちの手本となるサッカーをやってくれるので、それにどれだけできるかという所ですね。でも、チャレンジャーなのでやりやすいですよ」(林田)と両選手が期待を口にすれば、「ウチは自分たちでアクションしていくサッカーなので、10点取られても自分たちのサッカーで3点取れるようにというふうには考えていますね。その方が自分たちもやっていて楽しいと思いますし、結果がどうなるかはやってみないとわからないですけど、自分たちのスタイルを通すしかないかなと思います」と本宿監督も力強い決意を。都立府中東。注目しておいて損はなさそうです。 土屋
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