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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2017年10月24日

高校選手権東京A2回戦 都立東久留米総合×都立狛江@東久留米総合G

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都立校同士の2回戦はピッチに水の浮いてしまう豪雨の中で。都立東久留米総合と都立狛江のベスト8を懸けた一戦は東久留米総合高校グラウンドです。
今シーズンはT2リーグを圧倒的な成績で制して、T1リーグ復帰を決めるなど、その持てる実力を証明しつつある都立東久留米総合。ただ、トーナメントコンペティションでは関東大会予選の初戦で暁星にPK負けを喫すると、続くインターハイ予選でも二次トーナメントへの進出権を巡る帝京戦で、再びPK戦の末に敗退と、なかなか結果に恵まれず。迎えた今大会は先週の初戦で修徳相手に「相手が終始パワープレー的なプレーを続けてくる中で1点もぎ取って、あとを0点に抑えたというのは評価できる」と齋藤登監督も認める内容でこのステージへ。ここ3年はいずれも西が丘の準決勝で敗れているだけに、その先を見据えながら目の前の80分間へ向かいます。
昨年度の選手権予選は一次予選をきっちり勝ち抜き、二次予選の初戦で早稲田実業に0-1で惜敗しましたが、存在感を発揮した都立狛江。新チームになっても新人戦では地区予選で国士舘を撃破。最後は日本学園に延長で屈し、関東大会予選進出はならなかったものの、インターハイ予選もリターンマッチとなった支部予選の国士舘戦に、PK戦で勝ち切って一次トーナメント進出と確かな手応えを。今大会も一次予選の2試合を11得点1失点で抜け出し、先週のゲームも都立東に4-1で快勝。勢いを持って難敵相手の"アウェイゲーム"へ挑みます。会場の東久留米総合グラウンドは、試合前からピッチの至る所に水たまりのできる難しいコンディション。豪雨の中の2回戦は10時ジャストにキックオフされました。


3分に早くも決定機を掴んだのは久留総。ドリブルで運んだ渡辺倫太朗(3年・東京久留米FC U-15)は、そのままエリア内まで入って枠内シュート。ここは狛江のGK石崎雅也(3年・FC府中)がワンハンドのビッグセーブで凌ぎましたが、いきなり場内を沸かせると、9分にも左FKを小野寺竜也(3年・FC府中)が中央へ。ボールはゴール右へ流れましたが、まずは久留総が攻勢に打って出ます。
とはいえ、「ただ蹴って走る。で、もう何が起きるかわからない、くじを引いているかのようなサッカー」と齋藤監督も表現したように、蹴ったボールはほとんどが水たまりに落ちるコンディション下で、なかなか明確なチャンスは双方に訪れず。19分の久留総は左サイドで三浦聖(3年・東海大菅生中)が縦に付け、渡辺のフリックに小野寺が走るもシュートは打てず。直後の19分に狛江もセンターバックの大森直斗(3年・コンフィアール町田JY)がFKを蹴り込み、新井湧大(2年・調布FC)が残すもDFがクリア。ある意味でゲームは膠着状態に。
それでも少しずつ押し込み始めたのは久留総。20分に左へ開いた島村優志(3年・FC.VIDA)が早めにクロスを上げると、GKは掻き出し切れずに結城篤称(2年)がシュート。無人のゴールに向かったボールは、しかしラインの直前で水しぶきを上げて失速し、DFが何とかクリア。28分にも小野寺の左CKから、こぼれを拾った島村のシュートは新井が懸命に寄せて枠の左へ逸れるも、見えてきたゴールへの道筋。
すると、技ありの先制弾が生まれたのは31分。中央で前を向いたボランチの渡辺が、浮き球で縦にパスを入れると、走った小野寺は「とりあえず当てることと、枠に飛ばせばというのを意識して」左足一閃。ボレーで叩いたボールはゴールネットへ鮮やかに吸い込まれます。「彼はドライな良い環境だったら、もっともっと凄いプレーをするんですけどね」と齋藤監督も評価を口にするナンバー7が華麗なゴラッソ。久留総が1点のアドバンテージを手にしました。
ビハインドを背負った狛江も33分には左CKを獲得し、キャプテンマークを巻く米山龍成(3年・バディーJY)が鋭いボールを蹴り込みましたが、DFが確実にクリア。37分には久留総もレフティの三浦が左FKを蹴るも、狛江のインサイドハーフ横山颯大(3年・町田木曽中)がクリア。38分も久留総は小野寺が左CKを入れると、ここも横山が何とかクリア。前半は久留総がリードを奪って40分間が終了しました。


ハーフタイムに狛江は1人目の交替を決断。右ウイングの松林大斗(3年・稲城第二中)に替えて、187センチの齋藤寛凪(3年・町田忠生中)をセンターフォワードへ送り込み、その位置にいた米山を右ウイングへスライドさせて、前線に高さと強さをプラス。42分には右から大森がここも長いFKを蹴り入れ、米山が競り勝ったボールは久留総3バックを統率する上山泰生(3年・三菱養和調布JY)が大きくクリアしましたが、狛江も前面に押し出すゴールへの意欲。
46分は久留総。右から三浦が蹴り込んだCKを、最後は島村がシュートまで持ち込むも、DFが体でブロック。直後の右CKも三浦が蹴ると、ここは狛江の左ウイング鈴木凛(3年・横河武蔵野FC JY)がクリア。49分は狛江に良い形。齋藤寛凪が競ったボールは左へ流れ、鈴木は丁寧に中央へ。米山はわずかに届かず、久留総のGK澤田亜藍(3年・AMBICIONE松本)にキャッチされましたが、この日一番のスムーズなアタックを。50分にも米山の右FKに、横山が合わせたヘディングは枠を越えるも、ここに来て一段階アップした狛江の出足。
52分は久留総。右サイドから矢野良輔(3年・府ロクJY)が左へ振り分け、小野寺が放ったシュートはDFに当たって石崎がキャッチ。54分は久留総も1人目の交替を。結城を下げて、日下部京吾(3年・FC Consorte)をアタッカーの位置に投入。57分は狛江。左サイドバックの安藤貴大(3年・東京小山FC)と齋藤寛凪の連係で獲得した左CKを米山が蹴り込み、齋藤寛凪が落としたボールは島村がクリア。65分は久留総。小野寺が左へ流し、島村のシュートはゴール左スミを襲うも、石崎が懸命のファインセーブで仁王立ち。やり合う両者。木原直輝(3年・コンフィアール町田JY)、大森、嶋田泰志(3年・FC多摩)、安藤で構成された4バックも安定感が高まり、追加点を許さない狛江ディフェンス。残された時間は15分。
66分に2人目の交替として鈴木凛と10番の鈴木怜児(3年・FC町田ゼルビアJY)をスイッチした狛江は、70分にも中盤で奮闘した廣瀬秀太(3年・FC府中)と上山颯大(3年・三菱養和調布JY)を入れ替え、最後の勝負に。71分には大森のロングFKを鈴木怜児と米山が粘って残すも、渡辺が必死にクリア。72分は久留総。小野寺が30mクラスのミドルにトライも、石崎が丁寧にキャッチ。73分は狛江。大森の右FKは矢野がクリア。75分も狛江。ここも大森が入れた左FKは、久留総のキャプテンを託されている下川晴(3年・FC府中)が決死のクリア。右から齋藤巧(3年・FC.GIUSTI世田谷)、三浦竜太朗(3年・練馬中)、上山で組んだ3バックを中心に、集中力を保つ久留総ディフェンス。残された時間は5分とアディショナルタイム。
狛江に到来した千載一遇の同点機は76分。右から木原が上げたクロスはエリア内にこぼれ、収めた横山がDFとの接触で転倒すると、ホイッスルを吹いた主審はペナルティスポットを指し示します。キッカーはキャプテンの米山。短い助走から右スミへ打ち込んだボールは、ラインギリギリにあった水たまりでいったん止まり掛けるも、米山の執念の分だけ回転して、ラインの内側へ転がり込みます。土壇場で得たPKによる同点劇。スコアは振り出しに引き戻されました。
折れなかったメンタル。その時は所定の時間も終わろうとしていた80分。左サイドで齋藤巧が奪ったFK。スポットに立った小野寺が「『何か事故が起これば』じゃないですけど、『ゴール前に放り込めればいいな』と思って、ミスキックだけしないように、しっかり丁寧に」蹴り込んだキックに突っ込んだのは、「自分でもらったファウルだったので、もう絶対自分の所に来ると信じて、中に全力で入って行きました」という齋藤巧。高い打点で当て切ったヘディングはゴールネットへ突き刺さります。殊勲のセンターバックは「正直何が起こってるかわからなくて、みんながワッて来て、そこでやっと『決めたんだ』という感じでした」とその時を振り返って満面の笑顔。「PKで追い付かれてからの彼らのリバウンドメンタリティというか、へこまずに『これからなんだ』という想いでやり続けたのは良かったし、それが結果に結び付いたんだと思いますけどね」と齋藤監督も語った久留総が劇的な勝利を収め、準々決勝へと駒を進める結果となりました。


久留総で特筆すべきは、PKで失点してから勝ち越すまでの時間帯。やや微妙な判定でのPKだけあって、非常にメンタル的に難しい状況下でも、「あそこで折れたら負けなので、全員で『しっかり時間内に点を入れるぞ』という意識は強かったと思います」と小野寺が話せば、「負けたら終わりの最後の大会ですし、『ここで心が折れたら、この先後悔するな』と思ったので、『もうやってやろう』と思ってやりました」とはこの日の主役の齋藤巧。折れずにやり続けたメンタルの強さが、この凄まじい接戦を制した最大の要因だったのかなと。決勝ゴールのシーンに関しても指揮官は「時間の流れと点数の動きと相手のやり方と、そういった中で一番の選択肢を持ってやっていくということを言っている中で、あのFKをああいう形でゴールに結び付く形を選択したのは、彼らがサッカーがわかってきた1つの証じゃないかなと。ゴールに向かうあのボールが一番ディフェンスは嫌なので、ちょっと触るだけでコースを変えればキーパーは反応できないし、そういう中でああいう選択をしたというのは、『ここでは点の取り方がこうなんだな』というのがわかっている証拠かなと思いますね」と納得の表情。「こういう難しい試合をみんなで戦って、最後は劇的に勝ったので、来週に勢いが付いたかなと思います」という齋藤巧の言葉を証明するための準々決勝は、もうすぐ1週間後に迫っています。       土屋

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