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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
ディフェンディングチャンピオンに挑むのは、勢いのある"蒲田のオレンジ軍団"。関東第一と東京実業のベスト8を巡る80分間は駒沢第二球技場です。
昨シーズンのインターハイ予選、選手権予選、今シーズンの関東大会予選、インターハイ予選と、東京のトーナメントコンペティションを4大会続けて制している関東第一。3年連続で臨んだインターハイの全国舞台では、山形中央、神村学園、広島観音と難敵を相次いで撃破し、ベスト8まで進出したものの、最後はやはり3年連続で対峙した市立船橋の壁を超えることはできず、1-2で惜敗しましたが、「チームがもっと結束すればもう一段階上に行けると思う」と話すのは10番を背負う篠原友哉(3年・府ロクJY)。こちらも2年連続となる冬の全国を目指すための大事な初戦に挑みます。
近年は都内の各種大会でもベスト8の常連になりつつあり、確実にその実力と存在感を高め続けている東京実業。迎えた今シーズンは関東大会予選のベスト16で東京朝鮮に0-2で敗れ、インターハイ予選も暁星に1点差で屈するなど、なかなか芳しい結果が出なかった中で、二次予選からの登場となった今大会は、先週の初戦で都立国分寺を1-3で退け、このステージまで。4年前に経験した西が丘の舞台に返り咲くため、強豪相手のゲームでも負ける訳にはいきません。会場の駒沢へ朝から降りしきる雨に、止む気配はまったくなし。注目の2回戦は関東第一のキックオフでスタートしました。
立ち上がりから手数を繰り出したのは東実。5分に右サイドでCKを獲得すると、左ウイングバックのレフティ塩盛健太(2年・Forza'02)が正確なキックを蹴り込むも、関東第一のボランチに入った宮林庸太(2年・FCトリプレッタJY)が何とかクリア。11分にもフォワードの赤松正典(3年・プロメテウスEC)が残したボールを、10番を背負う鈴木大翔(2年・川崎フロンターレU-15)はゴールまで30m弱の距離からループミドルにトライ。ここは関東第一のGK北村海チデイ(2年・GRANDE FC)がキャッチしたものの、「入りで勢いを持っていかれた」とは篠原。東実が上回ったアグレッシブさ。
すると、先に歓喜の瞬間を迎えたのは"蒲田のオレンジ軍団"。15分に左のハイサイドに潜った塩盛から折り返しが入ると、赤松はエリア内でトラップしてから、余裕を持ってコントロールシュート。素晴らしい軌道を描いたボールは、ゴール右スミへ鮮やかに吸い込まれます。まさにゴラッソと言うべき、赤松が披露した完璧な一撃。東実が1点のアドバンテージを手にしました。
「結局ボランチもセンターバックも両方下がってしまって、あんなに置きに行ったシュートで、ファーに巻かれるというのは相当寄せが甘い」と小野貴裕監督も厳しく言及したように、ややルーズな対応が響いた格好で早くもビハインドを負った関東第一は、失点直後に円陣を作って気合を入れ直すと、20分にルーズボールを拾った小関陽星(2年・町田JFC)のシュートは、東実3バックのセンターを務める竹中健人(2年・ライオンズSC)に体でブロックされましたが、惜しいチャレンジを。21分にも左サイドバックの柳田直士(3年・S-P FUTE U-15)を起点に篠原がスルーパスを通し、池田健太(2年・VIVAIO船橋)のゴールはオフサイドで取り消されたものの、「失点した後に球離れが早くなった」と小野監督。失点をきっかけに盛り返したディフェンディングチャンピオン。
すると、勢いそのままにゴールを記録したのは関東第一。24分に篠崎源太(2年・大宮アルディージャJY)が左へ付けると、柳田はすかさずピンポイントクロスをニアへ。「練習から柳田はクロスがうまくて、そこに入れば合うかなと思って」走り込んだ篠原が、「ゴール方向に飛ばせばどうにかなるかなと思って」当てたヘディングは右スミのゴールネットへ吸い込まれます。「自分がやらなきゃいけないというのは、いつも試合前に気持ちとして持ってやっている」という10番の同点弾。すぐさま関東第一がスコアを振り出しに引き戻しました。
追い付かれた東実もきっちり反撃態勢を。32分には鈴木が左サイドで粘って残し、このボールを拾った赤松の枠内シュートは戻ったDFが体でブロック。直後にも裏へのボールに飛び出した北村のキックは小さく、収めた山田大地(3年・東急SレイエスFC)が無人のゴールへ飛ばしたシュートは、きっちりカバーに戻った関東第一のセンターバック関口聖人(2年・フレンドリー)が大きくクリア。東実も右から泰大樹(3年・北区赤羽岩淵中)、竹中、森野正太郎(3年・FC駒沢)で組んだ3バックを中心にディフェンス陣が奮闘する中で、「微妙な空気感に自分たちの修正が効いていなかっただけでしたね」と前半を振り返ったのは小野監督。1-1で最初の40分間は終了しました。
後半はスタートから関東第一に2枚替え。既に前半から配置は変えていましたが、このタイミングで篠崎と柳田の左サイドコンビを下げて、そこに村井柊斗(3年・FC多摩)と嶋林昂生(3年・町田JFC)を投入することで、左でのアクセント増加に着手。一方の東実も後半が始まって45分に1人目の交替。山田に替えて、勝呂宣宏(3年・INAC多摩川)を前線に送り込み、さらなる推進力アップを狙います。
そんな中で次の得点を手繰り寄せたのは関東第一。46分に村井のドリブルで左CKを得ると、ボランチから右サイドバックにスライドした田中大生(1年・横浜FC JY)のキックはいったんファーに流れるも、ここには「たまたま外に残っていたらボールが来た」篠原が。「中を見たら3人いて、宮林の方がフリーだったので、そこらへんに入れればスクランブルになって何か起きるかなと思って」上げたクロスを、「呼んだらちょうど来てくれた」という宮林は「これは絶対胸トラしてすぐ打とうと思って」右足でプッシュ。ボールはゴールネットを確実に揺らします。「試合前に『ゴールを決めた時は応援席かベンチに滑りに行こうかな』と思っていたんですけど、何か点を取った瞬間は"無"になってしまったんです。喜びというか『入った!』みたいな」と振り返った宮林は控えめなガッツポーズを1つ。2年生ボランチの一撃で関東第一が一歩前に出ました。
追い付きたい東実もすぐさま反撃。47分に中央をドリブルで運んだ鈴木が左へ流し、塩盛のカットインシュートはわずかにゴール左へ。49分は関東第一。左サイドで嶋林のパスから、村井が中へ潜りながら枠へ収めたシュートは東実のGK鈴木颯太(3年・大田東調布中)が丁寧にキャッチ。49分は東実に2人目の交替。阿部清志(2年・淀橋FC)と関戸優(3年・川崎チャンプ)を入れ替え、狙う同点弾とその先。
52分は関東第一。サイドバックからサイドハーフに上がった加藤陽介(2年・VIVAIO船橋)の突破で右CKを得ると、小関のキックに池田が頭で飛び付くもボールは枠の右へ。53分は東実に3人目の交替。先制弾の赤松を下げて、中村有来(2年・東京ベイFC U-15)をピッチへ解き放ち、前線の顔ぶれに化学変化を。54分は東実。入ったばかりの中村がさっそくスルーパスを送り、走った勝呂はわずかに届きませんでしたが、中村がファーストプレーに滲ませる同点への意欲。
54分は関東第一。左サイドを抜け出した池田がシュートまで持ち込むも、ここは飛び出した鈴木颯太がファインセーブで仁王立ち。62分も関東第一。中央のミドルレンジから、篠原がワンステップで枠内へ打ち込んだシュートは、鈴木颯太が横っ飛びでファインセーブ。62分は関東第一に3人目の交替が。池田と佐藤誠也(1年・VIVAIO船橋)をスイッチして、篠原を最前線にスライドさせ、佐藤をその下に置いて整える攻守のバランス。
63分は関東第一。佐藤の右CKがエリア内で混戦を生み、篠原が頭で残すと、キャプテンの小野凌弥(3年・Wings U-15)のヘディングシュートはゴール左へ。64分も関東第一。ピッチ中央、ゴールまで約30mの位置から佐藤が直接狙ったFKはやや弱く、鈴木颯太ががっちりキャッチ。65分は東実。ミドルゾーンで前を向いた勝呂のフィニッシュは、北村が確実にキャッチ。67分は関東第一。エリア付近まで運んだ加藤のシュートはDFに当たり、ディフレクションをそのまま叩いた篠原のボレーはヒットせず、鈴木颯太がキャッチ。68分は東実に4人目の交替が。右ウイングバックの宇野新(2年・東京ベイFC U-15)を下げて、斉藤育(3年・1FC ELDER)がピッチへ。残された時間は10分。依然として両者の点差はわずかに1点。
70分の関東第一は、ルーズボールに突っ込んだ小野がそのまま枠を越えるミドルまで。72分に東実は最後の交替カードを。ルーキーの初田来音(1年・FC町田ゼルビアJY)をジョーカーとして投入し、何とか見せたい意地の反撃。そして、77分にはその東実に決定機。ロングフィードに中村が競り勝ち、ボールは鈴木大翔の足元へ。少し左に持ち出して右スミへ放ったシュートは枠を捉えるも、北村は抜群の反応と跳躍力で軌道を掻き出すビッグセーブ。その右CKを塩盛が蹴り込むも、シュートまで持ち込めず。どうしても東実は1点が奪えません。
次の得点を奪ってゲームを終わらせたい関東第一にも79分に決定的なシーン。加藤を起点に篠原が打ったシュートはDFに跳ね返るも、素早くこぼれに反応した小関が粘って残すと、篠原は「ニア上を狙って蹴ったらちょっと上に行っちゃいました」という強烈なシュートをクロスバーへ。こちらも追加点とはいかず。1点差のままで、いよいよゲームは最終盤へ。
80分は東実。塩盛が果敢な仕掛けで獲得した左CK。キッカーの初田が丁寧に蹴り入れたキックがファーへ流れると、以降の掲示されたアディショナルタイムの3分は、2年前のインターハイで市立船橋に見せ付けられたコーナー付近でのボールキープで、関東第一が確実に時間を潰し切り、聞いたファイナルホイッスル。「自分たちは初戦だったので、ちょっと苦しい所はあるけど、そこを我慢して、みたいにやりました」と宮林も話した関東第一が、ベスト8へと勝ち上がる結果となりました。
前半の失点直後にすぐさま円陣を作った関東第一。その輪の中での話を聞くと、「シノくんと凌弥くんを中心に『絶対いけるぞ。慌てないでいこう』という話がありましたし、自分たちは2年が多いので、『2年でもできるように』と言い聞かせていました」と宮林が明かせば、篠原は「『全然大丈夫だ』と。1点入っちゃうのは想定内だったので、『全然大丈夫だから行こうぜ』みたいな感じで話していました」とさらり。その背景には「慣れてきたのかわからないですけど、今日はいろいろと想定した上で村井とかをスタメンから外していたので、『先に取られるかもな』という考えはあって、先に点を取られても、システムも変えられるし、人も替えられる状態にはしてあったんです」と語った小野監督の、成功体験に基づく引き出しの多さがあったのかなと。ディフェンディングチャンピオンであり、インターハイ全国8強という注目される状況にも、「選手権はやっぱり選手権で、みんな最後はがっつり来るので、それに飲み込まれないようにしっかりできれば、次も勝てるんじゃないかなと思います」と宮林は確かな自信を口に。連覇へ向けて、関東第一がまずは確かな一歩を踏み出しています。 土屋
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