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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2017年08月21日

高校選手権東京1次予選決勝 都立駒場×都立三鷹中等@駒沢補助

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0821koma2.JPG全国出場経験を有する都立の雄同士が都大会進出を懸けて激突する一戦。都立駒場と都立三鷹の1次予選ファイナルは駒沢補助競技場です。
昨シーズンは関東大会予選でベスト8まで勝ち上がり、インターハイ予選でも半年前の高校選手権で全国準優勝を達成した國學院久我山を倒して、やはりベスト8へ進出したものの、選手権予選では都大会初戦で学習院に0-1で敗れ、悔しい終戦となった都立駒場。迎えた今シーズンは新人戦で地区予選を制し、関東大会予選では優勝した関東第一に敗れたものの、1-2と好ゲームを披露。インターハイ予選でも一次トーナメントで成立学園と熱戦を展開した上で屈するなど、一定以上のチーム力は証明済み。チームを率いる山下正人監督にとっても、三鷹は前任校だけあって「運命あるよね。還暦でそろそろ終わるタイミングに、それも都大会を懸けてやるなんて」と感慨を口に。そういう意味でも楽しみなゲームです。
選手権で都内の強豪を相次いでなぎ倒し、全国大会に出場したのは3年前。そのチームのメンバーと入れ替わりで"後期課程"に入ってきた学年が、今年で最高学年になった都立三鷹中等。全国後はなかなかチームとして結果が出ず、苦しい時期を過ごしてきましたが、「僕らは自分たちがヘタだってわかっているので、挑戦者だという意識でやってきました」と話すのは相田直人(3年・三鷹中等教育学校)。新チームになって新人戦、インターハイ予選と共に2試合目で敗れてきた中で、今大会は都立松原を6-1、都立青梅総合を9-0で倒してブロック決勝へ。"4試合目"、すなわち都大会を目指して難敵相手の一戦へ挑みます。会場の駒沢補助には両チーム共に少なくない応援団が集結。注目の好カードは駒場のキックオフでスタートしました。


4分のファーストシュートは三鷹。左サイドでボールを持った近藤直輝(3年・三鷹中等教育学校)は、カットインからそのままミドル。DFに当たったボールは駒場のGK藤本和輝(3年・FC.PROUD)がキャッチしましたが、まずは三鷹がフィニッシュを。7分は駒場。増田慶斗(3年・AZ'86東京青梅)が収めたボールを右へ流し、鳥山凌佑(2年)が狙ったシュートは枠の左へ。お互いに1つずつチャンスを創り合って、ゲームはスタートします。
ただ、駒場が攻撃の時間は長く持つ中でも、ボランチの宇田川翔平(3年・三鷹中等教育学校)と奥村耕成(3年・三鷹中等教育学校)を中心に、セカンドを拾う回数の多かった三鷹は、ボールアプローチで徐々に上回り始めると、18分に迎えた歓喜。右CKをレフティの増田が蹴り込み、加地修大(3年・三鷹中等教育学校)のシュートから奥村が粘って残したボールを、浦和史哉(3年・三鷹中等教育学校)が左足一閃。右スミへ向かった軌道はそのままゴールネットへ吸い込まれます。「正直、先制点が取れると思っていなかったので『ヨッシャー』と思いました」とは守護神の堀切健吾(3年・三鷹中等教育学校)。三鷹が先にスコアを動かしました。
さて、ビハインドを追い掛ける展開となった駒場は「浮き球がものすごく多くて、それだとウチも思った所にパスを出せないし、良い所でボールを持てない」と山下監督。23分には増田が枠の左へ外れるミドルを放ちましたが、27分には三鷹も浦和の浮き球パスから宇田川が左足ミドルをゴール右へ。少し焦りもあってか縦へのボールが多くなり、なかなか決定的なシーンを創れません。
31分は駒場。右から増田が蹴ったCKは奥村がクリア。36分も駒場。左寄り、ゴールまで約30mの位置から岡村直輝(3年・FC駒沢U-15)が直接狙ったFKはわずかにクロスバーの上へ。38分も駒場。岡村がピンポイントで入れた右FKから、飛び込んだ大海航輝(3年・Forza'02)のヘディングはゴールネットを揺らすも、副審のフラッグが上がり、オフサイドでノーゴール。40+1分も駒場。土屋諒輔(3年・三鷹F.A.)、村田明飛(3年・東京ベイFC U-15)とボールを繋ぎ、大海のクロスに増田が突っ込むもへディングはヒットせず。「最初から押されることはわかっていた」(堀切)三鷹が、ワンチャンスをモノにする格好で1点のリードを手にしたまま、最初の40分間は終了しました。


後半はスタートから駒場に2枚替え。増田と鳥山に替えて、奥谷友哉(3年・FC町田ゼルビアJY)と菊池陽(2年・ジェファFC)を送り込み、「ドリブラー2人」(山下監督)で攻撃のギアを上げに掛かると、いきなりの同点機は42分。木下航介(3年・三菱養和調布JY)、大海とボールが回り、岡村のクロスに村田がヒールで合わせたシュートは堀切がファインセーブで凌ぐも、ルーズボールの接触で三鷹ディフェンスにファウルがあったというジャッジを主審が下し、駒場にPKが与えられます。キッカーは入ったばかりの奥村。短い助走から思い切り中央に蹴り込んだボールが、激しく揺らしたゴールネット。後半開始早々にスコアは振り出しへ引き戻されました。
駒場に入ったスイッチ。44分には収めた奥谷のスルーパスに村田が走るも、飛び出した堀切が何とかクリア。47分には三鷹も1人目の交替として浦和と吉田翔馬(1年・FC町田ゼルビアJY)をスイッチしましたが、48分には岡村のパスを受けた奥谷が、1人外して堀切にキャッチを強いるシュートまで。53分には奥村の右CKから、高い打点で叩き付けた村田のヘディングは堀切がファインセーブで回避。54分にも奥谷がゴールまで25m弱の距離から、枠を越えるFKにトライ。押し込む駒場の続く攻勢。
「僕らにはセットプレーしかない」(堀切)、その"唯一"で突き付ける鋭い脅威。56分は三鷹の右スローイン。丸山雄大(3年・BOMBA立川FC)が投げ入れたロングスローを村田がニアですらすと、木原博光(2年・三鷹中等教育学校)が至近距離から放ったシュートは、藤本がファインセーブで仁王立ち。直後の右CKを木原が蹴り込み、近藤が打ったシュートはDFが体でブロック。少ない手数に忍ばせる三鷹の"可能性"。
63分は駒場。今川雄太(2年・鹿嶋鹿島中)が右へ流し、大海のクロスに菊池が当てたヘディングはヒットせず、堀切が落ち着いてキャッチ。直後の63分は三鷹。近藤が左へスルーパスを送り、抜け出した木原のシュートは藤本がキャッチ。64分は駒場。増田が右サイドをドリブルで運び、木下のシュートは枠の左へ。65分も駒場。キャプテンの高木晴(3年・府中浅間中)が左のハイサイドへ落とし、菊池がえぐって中へ折り返すも、大海のシュートはヒットせず。66分は駒場の決定機。村田がワンテンポためて右へ送り、走った奥谷のシュートは堀切が躊躇なく飛び出してファインセーブ。ペースは駒場にある中で、「やっぱり三鷹の伝統だよな。ゴール前は厳しい。あそこでよくみんな頑張ってるよ」と敵将の山下監督も認める三鷹のディフェンスが、確実に潰すピンチの芽。
71分は駒場。右から菊池が蹴ったFKは、三鷹のセンターバックに入った岡本大輝(3年・三鷹中等教育学校)がきっちりクリア。直後も駒場。岡村のパスから菊池のカットインミドルはゴール右へ。73分も駒場。今川を起点に菊池がドリブルで仕掛け、大海が打ち切ったシュートはクロスバーの上へ。74分も駒場。左から岡村がクロスを上げ切り、ファーで合わせた大海のボレーは枠の右へ。75分は三鷹に2人目の交替。木原と水口優太(1年・三鷹中等教育学校)をスイッチして、攻守に渡るサイドの強度向上に着手。80+1分は三鷹。吉田の右CKへニアに宮嵜拓郎(3年・FCトッカーノ)が突っ込むも、藤本ががっちりキャッチ。80+2分は駒場。今川、奥谷と回ったボールを、大海が枠へ収めるも相田が決死のブロック。「凄く頼りがいがあります」と堀切も評した三鷹守備陣の堅陣は揺るがず。80分間では決着付かず。勝敗の行方は前後半10分ずつの延長戦へともつれ込むことになりました。


延長の前半は三鷹に強度が復活。83分はその三鷹のチャンス。右から吉田が蹴り込んだFKに、ファーで合わせた奥村のヘディングは藤本がキャッチ。86分には駒場も菊池のドリブルから左CKを得るも、奥村のキックは堀切がパンチングで回避。エンドの変わった後半は91分の三鷹。丸山の右CKがこぼれると、宇田川のボレーはDFをかすめて枠を捉えるも、藤本が丁寧にキャッチ。93分は駒場。村田のパスを受けた奥谷のシュートがゴールネットを揺らすも、オフサイドの判定。両者譲らず。勝負はラスト5分間へ。
94分に訪れた千載一遇の逆転機。駒場は村田、奥谷と回ったボールが左サイドに繋がり、鋭い突破を見せた菊池がDFともつれて転倒すると、主審はペナルティスポットを指し示します。この日2本目となるPKのキッカーはまたしても奥谷。静まり返るピッチ。今度のキックは左。GKは右。「よくPKを取りましたよ。交替で入れた2人だからね」とは山下監督。土壇場で駒場がとうとうスコアを引っ繰り返しました。
最終盤で1点のリードを許した三鷹。96分に村田と小松優介(3年・江戸川西葛西中)を入れ替えた駒場3人目の交替を挟み、97分には丸山の右ロングスローからニアで近藤が競り勝つも、シュートには至らず。いよいよ苦しい状況に追い込まれていく中で、「このチームだったら絶対に行けると思っていたので、仲間を信じていたというか、根拠のない自信ですけど、行けると思っていた」(奥村)「最後は決めてくれると思った」(堀切)という2人の想いが結実したのは100分のこと。右サイドで獲得したFK。キッカーの岡本が蹴り込んだボールは、「抜けてきたら触れるんじゃないかなと思って入っていった」相田へ。肩に当たったボールはGKもよく反応したものの、左のポストを叩いてゴールラインの内側へ転がり込みます。何と相田はこれが3年間で公式戦初ゴール。ゴールの瞬間に足が攣り、細貝航大(3年・三鷹中等教育学校)との交替を余儀なくされるも、殊勲の同点ゴールにベンチも応援団も瞬時に沸騰。ファイナルスコアは2-2。都大会へと進むための切符はPK戦で奪い合うことになりました。


先攻は駒場。1人目の高木は左スミへグサリ。後攻は三鷹。1人目が左へ蹴ったキックは、藤本が素晴らしい反応でストップ。駒場2人目の柴田遼空(3年・VIVAIO船橋)は左スミへ成功。三鷹2人目の宇田川は右上にきっちり成功。駒場3人目の木下は左を狙い、堀切も触ったもののボールはゴールネットへ。三鷹3人目の近藤は右スミギリギリにコントロールショットで成功。3人目を終わって3-2。駒場が一歩前へ。
駒場の4人目。右下を狙ったキックは1本前のタッチで「『これだったらこの後も行けるな』という気持ちになった」堀切が見事なストップを見せましたが、三鷹4人目のキックはクロスバーに嫌われてしまいます。決めれば勝ちの駒場5人目。左スミへ蹴り込んだキックは、「実は5本目ということを僕がわかっていなくて、それが良かったかもしれないです」という堀切がスーパーセーブで繋いだ勝利への糸。三鷹5人目の宮嵜は右上にきっちり成功。5人が終わって3-3。サドンデス。PK戦でも両雄はまったく譲りません。
駒場6人目の奥谷は、この日3本目となるキックを左のゴールネットへ。三鷹6人目の岡本はGKの逆を突いて成功。駒場7人目の土屋は左スミに収めてガッツポーズ。そして三鷹の7人目。短い助走から右を狙ったキックは、藤本が横っ飛びで掻き出して熱戦に終止符。PK戦のスコアは5-4。「本当に壮絶だったね。東京都の決勝じゃなくて地区大会の決勝というのがいいよね。ドラマがあって」と山下監督も安堵の笑顔。真夏の激闘を制した駒場が都大会へと駒を進める結果となりました。


「本当にヘタクソなヤツばっかりなんですよ。正直な所よくぞここまで来たなという感じですよね」とは佐々木監督。三鷹の健闘が光ったゲームでした。「悔しかったんですけど、先輩たちも終わるまでは絶対泣かないようにしていましたし、僕らもそこで取り乱したら三鷹らしくないので、最後までやってからということは考えていました」とキャプテンの奥村が話した通り、試合後の挨拶まで気丈な態度を続けていた選手たち。「すがすがしくてやりきったという感じで、そういう面ではやってきたことが最後にしっかりできたかなというのがあります」という言葉に続けて、「ちょっとまだ気持ちの整理ができていないんですけど、これで終わっちゃったなと思うと寂しいですね」と語った堀切の2つの言葉が、三鷹の最上級生たちの共通の想いだったのかなと。三鷹は中等教育学校という性質もあって、6年間に渡って一緒にボールを追い掛けてきた仲間との日々もここで一区切り。「最後は6年間の集大成なので、今日はサッカーを楽しもうと。最後はサッカーを6年間楽しめて終わったかなと。駒場とは結構差があったと思うんですけど、粘っこく"らしさ"を出してくれたかなというふうに思います」と佐々木監督。それぞれの持ち場を全うした「何でも言い合えるし、みんな親友みたいな感じ」(堀切)の6年生15人に大きな拍手を送りたいと思います。      土屋

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