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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2017年06月11日

インターハイ群馬準々決勝 前橋育英×高崎@敷島

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0611shikishima.JPG夏の全国を巡る群馬の戦いもいよいよクォーターファイナル。昨年のリベンジを誓う前橋育英と20年ぶりの県内制覇を狙う高崎の激突は敷島公園サッカー・ラグビー場です。
ここ3年の選手権で残した結果は全国準優勝、全国ベスト8、全国準優勝。初戴冠を懸けて臨んだ昨年度のファイナルでは青森山田に悔しい大敗を喫したものの、近年は今まで以上にその評価を高め続けている前橋育英。「今年は本当に負けたくないので」と言い切る角田涼太朗(3年・浦和レッズJY)、田部井涼(3年・前橋FC)、渡邊泰基(3年・アルビレックス新潟JY)など埼玉スタジアムを体感した選手を多数擁している今シーズンは、既に新人戦を圧倒的な力を見せ付けつつ制しており、今大会も昨年度はまさかの敗退を突き付けられたベスト16で伊勢崎商業を1-0で振り切ってベスト8まで。3年ぶりとなる夏の全国切符を獲得すべく、この一戦に挑みます。
最後に全国大会へ出場したのはちょうど20年前。その時のメンバーでもある吉田卓弥監督の下、県内では一定の結果こそ残しているものの、なかなか3強の壁は打ち破れない時期が続いている高崎。昨シーズンは新人戦の準決勝で惜敗したとはいえ、前橋育英を土壇場まで追い詰めましたが、以降の県総体、インターハイ予選、選手権予選はいずれもベスト8で敗退。迎えた今シーズンも新人戦、県総体とやはりベスト8で敗れているだけに、久々にその壁を打ち破るべく県内最強の相手と対峙します。聖地敷島は梅雨時にもかかわらず、青空が広がる快晴模様。楽しみな一戦は高崎のキックオフでスタートしました。


立ち上がりから押し込んだのは育英。6分に渡邊が入れた左ロングスローはDFのクリアに遭いましたが、そのスローインを再び渡邊がロングで投げ入れ、ニアで榎本樹(2年・東松山ペレーニア)が競り勝ったボールは高崎の左センターバックを務める瀬宮基(2年・高崎エヴォリスタ)がクリアしたものの、7分にも左から田部井悠(3年・前橋FC)がCKを蹴り込み、中央でオフェンスファウルを取られるも、セットプレーを中心に育英が攻勢を強めます。
すると、勢いそのままに先にスコアを動かしたのはタイガー軍団。10分に中盤で前を向いたキャプテンの田部井涼が裏へ絶妙のフィードを落とすと、斜めに走り込んだ飯島陸(3年・クマガヤSC)はそのままダイレクトボレーにトライ。角度のない位置から放たれた軌道は、GKの頭上を破って鮮やかにゴールネットへ吸い込まれます。「立ち上がりに点が取れたのは非常に大きかった」と話すキャプテンのアシストから、この日は左サイドハーフでスタートした10番が得意のラインブレイクから貴重な先制弾。早くも育英が1点のリードを奪いました。
さて、「いつもは4-2-3-1でやっているんですけど、このゲーム対策」(吉田監督)ということで、紋谷真輝(2年・上州FC高崎)を中央に、右へ日川優太(3年・高崎大類中)、左へ瀬宮を並べる中央の3枚と、さらに右ウイングバックへ佐藤哲(3年・前橋FC)、左ウイングバックに茂木兼太郎(3年・藤岡キッカーズ)を置いた5バック気味の布陣でスタートしたものの、追いかける展開を強いられた高崎は、時折10番の小林将也(3年・上州FC高崎)と1トップの小菅竣也(2年・渋川子持中)にボールが入った時にチャンスの芽は見え掛けますが、手数には至らず。なかなか攻撃の形を創り切れません。
19分は育英。前線の高橋尚紀(2年・クマガヤSC)を起点に、田部井悠がドリブルから放ったミドルはクロスバーの上へ。26分も育英。ここも渡邊の左ロングスローから、こぼれを叩いた塩澤隼人(3年・FC東京U-15むさし)のボレーはクロスバーにハードヒット。28分は高崎。瀬宮がラインの裏へフィードを蹴り込むと、3列目から左サイドへ飛び出した儘田樹(2年)が折り返し、小菅はわずかに届かなかったものの、1つ悪くないアタックを。32分は育英。田部井涼が右へ振り分け、後藤田亘輝(3年・横浜F・マリノスJY追浜)のクロスにファーで合わせた榎本のへディングはゴール左へ。「今日は前半から非常に自分たちのペースで、セカンドも拾えましたし、球際も勝てましたね」とは田部井涼。続く育英ペース。
そんな中で育英に訪れた2度目の歓喜はセットプレーから。35分にこの日4本目となる左ロングスローを渡邊が投げ入れると、ファーまで流れたボールを田部井悠はダイレクトボレー。ボールは確実にゴールネットへ到達します。「『0-1はOK』という感じでいたので、あのロングスローの失点はちょっと誤算でした」と吉田監督。再三好機に繋がっていた渡邊のロングスローがきっちり結果に。両者の点差は2点に広がります。
畳み掛けるタイガー軍団。38分も育英。田部井涼の右CKから、こぼれに反応した飯島の鋭いシュートはDFが体でブロック。直後の右CKも田部井涼が蹴り込み、今度は田部井悠が打ち切ったシュートは味方に当たって枠の左へ。39分も育英。飯島が丁寧にスルーパスを通し、田部井悠が枠へ収めたシュートは高崎のGK清水翔太(2年・藤岡キッカーズ)がファインセーブで回避。その左CKを田部井悠が放り込み、ファーで上原希(3年・三菱養和巣鴨JY)が合わせたヘディングは枠の上へ消えましたが、セットプレーはことごとくシュートまで。「昨日があまり良くなかったので、昨日と比べると今日の方が全然良いですね」とは山田耕介監督。育英が2点のリードを携える格好で最初の40分間は終了しました。


ハーフタイムにコーチングスタッフと選手で話し合いを持った高崎。「スタッフで『相手は前に2人いても1人は下がるので、後ろに3人いる必要がないよね』という話になったら、選手たちからも『紋谷を上げても全然いいと思うんですけど』という話が出てきたので、『ああ、確かにそうだよね』ということで、『もう0-2で点を取りに行くしかないんだから、いつものシステムに戻そう』という感じでやった」と吉田監督が明かしたように、普段の4-2-3-1の布陣に戻して、残された40分間へ向かいます。
迎えた後半の立ち上がりも攻勢は育英。43分に右から田部井悠が蹴ったCKは、ニアで佐藤が何とかクリア。47分にも右サイドを丁寧に崩し、ルーズボールを収めた田部井涼のボレーはクロスバーの上へ。50分にも渡邊と塩澤の連携で奪った左CKを田部井悠が蹴り入れると、角田のヘディングはわずかに枠を越えましたが、U-18日本代表の遠征で欠場している松田陸(3年・前橋FC)について、「彼が選ばれて嬉しい気持ちもありますけど、個人としては結構悔しいし、自分も目標にしている部分なので、一緒に入れたらいいなと思います」と言及したセンターバックが惜しい一撃を。漂う3点目の気配。
高崎ベンチの決断は53分。1人目の交替として儘田とスイッチしたのは、キャプテンの川岸和樹(3年・前橋FC)。「ケガもあってずっとやっていなかったんですけど、これが最後になる可能性もありますし、『やれるか?』と聞いたら『やりたい』ということだったので入れました」と吉田監督。その川岸が最前線に入ると、56分には清水のキックに天田雄也(3年・高崎中尾中)が競り勝ち、小菅が走ったアタックはDFのカットに阻まれましたが、57分にも紋谷が左へ振り分け、茂木のクロスはあと一歩でシュートに繋がる鋭さを。わずかに変わり始めたゲームリズム。
57分に高橋と五十嵐理人(3年・ともぞうSC)を入れ替えた育英1人目の交替を経て、59分に到来した高崎の決定機。左サイドに開いた小林のクロスを天田が粘って落とすと、篠原陸(3年・高崎FC)は右足一閃。枠へ向かったシュートにスタジアム中の視線が集まりますが、ボールの行く先は惜しくもクロスバー。「あそこを取れていたら1-2で面白かったですけどね」と吉田監督も悔しがるシーンは追撃弾にならなかったものの、その指揮官は「川岸を入れたことによってスイッチが変わったのかなっていう気はしました」とも。整いつつある高崎の反撃態勢。
60分も高崎。篠原のクサビを小菅が落とし、小林の縦パスに篠原が飛び出すも、ここは育英のGK湯沢拓也(3年・足利ユナイテッドFC)が丁寧にキャッチ。64分は育英。塩澤のパスを右サイドで受けた榎本が、カットインしながら左足で打ち切ったシュートは枠の右へ。65分は高崎。左から茂木が蹴り込んだFKは榎本がクリア。66分も高崎。佐藤のドリブルで獲得したFKを右から紋谷が蹴ると、ニアへ突っ込んだ茂木はシュートまで持ち込めず。67分も高崎。左サイドで相手の門を小林が巧みに通し、茂木が上げ切ったクロスに川岸が合わせたボレーは枠の左へ消えたものの、「運動量が落ちてきた時にサイドとか個人個人の勝負になっちゃって、チームとして守れなくなってしまう」(角田)「後半は出力が落ちてしまって、なかなか3点目が取れなかった」(田部井涼)と2人が声を揃えたように、この時間帯はやや高崎に勢いが。
68分は育英。田部井悠が左へ流し、五十嵐の思い切ったミドルは枠の上へ。69分は高崎に2人目の交替。篠原と福本雄己(1年)をスイッチして最後の勝負に。70分は育英。田部井悠がヒールで残すと、飯島のシュートは天田が体でブロック。直後に田部井涼が蹴った右CKから、ファーで合わせた五十嵐のヘディングは枠の左へ。72分は高崎。小菅が粘り強く左クロスを放り込み、ファーで拾った佐藤の再クロスは中央と合わず。74分は育英も塩澤と山﨑舜介(3年・浦和レッズJY)を入れ替える2人目の交替を敢行し、いよいよゲームはラスト5分間とアディショナルタイムへ。
輝いたのは「アイツも割にやりますよね」と指揮官も独特の表現で認めた、"関東大会組"のストライカー。75分に渡邊の鋭い左クロスをうまく頭に当てた榎本のシュートはわずかに枠の右へ逸れましたが、76分に五十嵐の突破から得た左CKを田部井悠が蹴り込むと、ここも頭で合わせた榎本の一撃は今度こそゴールネットへ収まります。関東大会での活躍が評価された27番のストライカーが、スタメン起用に応える一仕事。育英に大きな3点目が記録されました。
何とか1点を返したい高崎は77分、小菅のパスから小林が積極的にミドルを狙うも、ボールはゴール右へ。山田監督も77分には共にゴールを奪った2トップの飯島と榎本を下げて、宮崎鴻(3年・三菱養和巣鴨JY)と高田光輝(3年・FC東京U-15むさし)を投入する2枚替えで、狙う4点目と取り掛かるゲームクローズ。80+2分は高崎のラストチャンス。茂木を起点に紋谷がしっかり繋ぎ、小林のパスを引き出した川岸は何とか粘るもシュートには至らず、しばらくして吹き鳴らされたファイナルホイッスル。「自分たちの課題はずっと得点が取れないということで、それで苦しい試合を結構してきたので、この2日間はそれが改善できたのは良かったと思います」と角田も話した育英が、セミファイナルへと駒を進める結果となりました。


「チームで『こうやろうよ』と言ってきたことができる場面もあったし、いつもだったらセンタリングでアウトみたいなことが多い中でも、中へ入ることもできていたので、『自分たちがやってきたことは間違ってなかったんじゃないの?』という話は今日できました」と吉田監督も語った高崎は、少し守備的に入った前半の2失点が試合を通じて重く圧し掛かった部分は否めません。それでも途中出場となったキャプテンの川岸投入以降は、攻撃に迫力が出てきた部分も見逃せないポイント。「育英が強いことは間違いないですけど、『やれなくはない』ということを彼らも言っていた」と指揮官も言及したように、敗戦の中にも一定の手応えを掴んだことは間違いないようです。ただ、学校の特性上、この日は12人の3年生がメンバー入りしていたものの、「3年が全員残るというのは厳しいと思う」と吉田監督も話した通り、ここからの半年はおそらくまた新たなチーム創りを進めていく中で戦うことに。「この夏でとにかく1,2年生を強化して、3年生の経験を融合して戦いたいなと思っている」(吉田監督)選手権予選に向けて、この負けを経験した高崎がどういう進化を遂げていくかにも是非注目したいと思います。
少し前述したように育英はブロック優勝を達成した関東大会のメンバーから、今日は「関東大会で使って良かった2人」と山田監督も評価を口にした2トップの榎本と高橋の2トップに加えて、センターバックの上原がスタメン出場を果たして勝利に貢献。「どんどん競争し合っていますし、誰が出てもいい感じになっていますね」と指揮官が語れば、キャプテンの田部井涼も「1つのキーポイントは関東大会で、あそこの舞台でトップで出れなかったメンバーが本当に結果を残してくれたことで、そこで満足しないで、そのままインターハイでもしっかり活躍してくれているので、そこは本当に嬉しいですね。今は本当に競争が激しくて、全員誰が出られるかわからないので、そういう状況にあるのは練習をやっていて本当に刺激的ですし、本当に気の抜けない練習がずっと続いているので、それは良い環境だと思います」ときっぱり。ただでさえタレントの居並ぶタイガー軍団は関東大会を経て、さらに競争意識が高まった好循環の中に身を置いているようです。準決勝の相手は近年の県内覇権を二分してきた桐生第一。「ここ2年は出ていないので、夏の宮城には是非行きたいですけどね」と山田監督も意気込む3年ぶりの全国出場まではあと2勝に迫っています。      土屋

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