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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2017年06月26日

インターハイ埼玉決勝 昌平×浦和西@NACK5

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20170625NACK2.JPG既に全国切符を掴んだ両チームが埼玉の覇権を巡って対峙する一戦。昌平と浦和西のファイナルはNACK5スタジアム大宮です。
昨年の広島は躍進の舞台。2回戦で3連覇を狙った東福岡に3-2で競り勝つと、前橋商業と静岡学園も倒してセミファイナルへ。最後は優勝した市立船橋に敗れたものの、全国4強という成果を手に入れた昌平。守備陣を中心に主力が多く残った今シーズンも新人戦の優勝を皮切りに、関東大会予選も制したチームはそのまま関東大会でも優勝カップを獲得。今大会も埼玉平成を3-0、埼玉栄を3-2で退け、前日の準決勝は浦和学院を6-0の大差で下して、2年連続の全国出場が決定。それでも守護神の緑川光希(3年・FC古河)が新人戦時に「ここから全部のタイトルを獲りに行く気持ちでやっています」と宣言した通り、県内3冠目を譲る気持ちは毛頭ありません。
1950年代には高校選手権で3度の全国出場を誇り、第35回大会では日本一も経験。メキシコ五輪で銅メダルを獲得した鈴木良三氏や元日本代表の川上信夫氏に加え、現在はJFAの技術委員長を務める西野朗氏を輩出するなど、"サッカーどころ"として浦和が名を知られるようになった黎明期を支えていたと言っても過言ではない浦和西。近年はなかなか目立った結果は残せていなかった中で、今シーズンは新人戦でベスト8、関東大会予選でベスト4と着実に結果を叩き出し、迎えた今大会も大宮東、立教新座、浦和東と次々に立ちはだかる難敵をすべて1点差で退けると、準決勝でも西武台を1-0で撃破し、30年ぶりとなる全国切符獲得に成功。次は埼玉制覇を目指し、ファイナルの80分間に向かいます。会場となったNACK5のスタンドには、サッカー少年を含めた少なくない観衆が。埼玉頂上対決は昌平のキックオフでスタートしました。


立ち上がりからやり合う両雄。5分は昌平。相手のミスを突いてGKと1対1になった佐相壱明(3年・緑山SC)のシュートは枠の左へ外れましたが、いきなりの決定機を創出すると、7分は浦和西。唐牛七海(2年)と加藤淳志(3年)の連携で完全に右サイドを崩し、フリーで放った10番を背負う遠藤寛紀(3年)のシュートは緑川がさすがのファインセーブで応酬。その左CKを遠藤が蹴り込み、こぼれを拾った唐牛のシュートは昌平のキャプテンを任された石井優輝(3年・C.A.ALEGRE)が体でブロックしましたが、お互いにフルスロットルでゲームに入ります。
8分は浦和西。左から再び遠藤がCKを蹴り込み、こぼれを叩いた加藤のミドルは枠の上へ。13分は昌平。渋屋航平(2年・FC LAVIDA JY)とのワンツーから、原田虹都(2年・クラブ与野)が枠へ収めたシュートは浦和西のGK森田柊也(3年)がキャッチ。15分も昌平。原田、山下勇希(3年・浦和レッズJY)、佐相と細かく繋ぎ、渋屋が左足で狙ったミドルは森田がキャッチ。手数はやや昌平も、「立ち上がりは自分たちが完全に流れが悪かった」と話したのは昌平のセンターバックに入った関根浩平(2年・栃木SC JY)。浦和西に漂う"やれる感"。
すると、17分に鮮やかな先制点を奪ったのは浦和西。左でサイドハーフの萩原悠樹(3年)が粘って中へ入れると、森喜紀(2年)はきっちり繋ぎ、エリア内に潜った加藤は右足で丁寧にシュート。ボールは左スミのゴールネットへ飛び込みます。「このトーナメントに入ってからは長いボールが目立って、大雑把なサッカーと思われているかもしれないですけど、基本は技術を生かしたサッカーをやりたいなと思っているので」と市原雄心監督も笑った浦和西が、華麗なパスワークで生み出したゴラッソ。早くもスコアは動きました。
「技術的に高い選手がいるというのはわかっていて、そこで押し込まれてしまう状況を作ってしまった所がウチのまだまだな部分」とは昌平を率いる藤島崇之監督ですが、同点弾は失点のわずかに2分後。右サイドバックの塩野碧人(3年・1FC川越水上公園)を起点に山下が股抜きスルーパスを通し、高見勇太(3年・成立ゼブラFC)がゴールラインギリギリで残すと、山下はすかさず中へ。「あそこにいれば絶対にアイツは見ているなと思った」という佐相が絶妙のポジショニングから右足で合わせたボールは、ゴール左スミギリギリに吸い込まれます。「うまく当てて蹴ったら良いコースに飛んでくれました」という9番の一撃。両者の点差は一瞬で霧散しました。
追い付かれた浦和西も20分にすかさず反撃。唐牛が右サイドで縦に付け、巧みなトラップで収めた森のシュートは緑川がキャッチしたものの、「9もキープできるし、10も収まるとあまりボールを取れない」と関根も話した通り、前線の森と遠藤はまったく異なるタイプながら、きっちり前線で起点を創り、そこに2列目の唐牛、加藤、萩原が絡んでいくアタックは迫力十分。「今日はいつも以上に声が出ていましたね」と市原監督も認める応援団の声援も後押しに、浦和西も果敢に勝ち越しゴールを狙います。
ところが、32分に生まれたゴールは逆転弾。昌平が右サイドで奪ったFK。スポットに立った原田が鋭いボールを蹴り入れると、「だいたいボールが来る位置はわかっていたので、相手を引っ張ってタイミングで外せた」という関根は完全にマーカーを振り切ってフリーでヘディング。ボールは豪快にゴールネットを揺らします。「先に失点してしまったので、取り返したい気持ちはあって、セットプレーの時は狙っていました」というセンターバックがきっちり一仕事。「あまりセットプレーでやられたことはなかったんですけどね」と悔やんだのは市原監督。昌平が1点のリードを手にして、最初の40分間は終了しました。


「ビハインドの状況でも慌てず、そこでしっかりと1つ取ったら冷静な判断ができるという状況になったと思う」と藤島監督が振り返った前半を経て、後半はスタートから昌平に勢い。43分には原田、山下、渋屋とスムーズにパスが回り、山下が左から放ったシュートはゴール左へ。44分にも原田が裏へ落すと、DFと入れ替わった佐相のシュートは枠の右へ外れるも、シンプルなアタックでフィニッシュまで。45分には浦和西もセンターバックの福世航大(3年)がフィードを送り、ドリブルで1人外した森のシュートは「シュートブロックとかは体を投げ出して行くことは意識しています」という関根がきっちりブロック。同点とはいきません。
49分は昌平。左サイドバックの堀江貴大(2年・大宮アルディージャJY)と佐相の連携で獲得したFK。ピッチ左寄り、ゴールまで約20mの位置から塩野が直接狙ったキックはクロスバーの上へ。57分には浦和西も1人目の交替として、前線で体を張った森と、西武台戦で全国を手繰り寄せるPKを決めた高橋岬生(3年)をスイッチしましたが、58分も昌平のチャンス。左サイドをドリブルで運んだ渋屋が右へ流し、高見のシュートは福世がブロックしたものの、流れは完全にディフェンディングチャンピオンへ。
64分の主役は「点を取ることが一番フォワードの仕事だと思っている」と言い切るストライカー。「相手のクリアボールを前で触れたのと、あとは前線に佐相くんがいたので、強くヘディングを飛ばそうと思った」という関根が鋭いインターセプトから頭で繋ぐと、受けた佐相は完璧な反転から右足一閃。ボールは右スミのゴールネットへ一直線に突き刺さります。「本当に練習通りで、ゴールの瞬間は見ていなかったんですけど、打って「コレ入る!」と思ったら歓声が湧いたので良かったです」と笑顔を見せた佐相はこれでドッピエッタ。昌平のリードは2点に広がりました。
市原監督が68分に下した決断は2枚替え。確かな存在感を放った唐牛と遠藤を下げて、朝見海斗(3年)と田村優人(3年)を同時に送り込む格好で反撃体制を整えますが、69分は昌平のチャンス。原田、高見と回ったボールを左足で枠へ収めた佐相のシュートは、森田が気合のファインセーブ。残された時間は10分間。埼玉の覇権の行方も最終盤へ。
浦和西の執念はセットプレーに。72分に田村が投げた右ロングスローは、塩野がクリアしたものの飛距離十分。再び田村が投げ入れた右ロングスローは石井が何とかクリア。75分には加藤が左CKを蹴り込み、こぼれを拾った佐藤功大(3年)は野口智弘(3年)とのワンツーからクロスを上げるも、ここは中央でオフェンスファウルの判定。76分にも加藤の右CKがゴール前で混戦を生み出し、オージ・ヴィクター・シラタ(2年)が頭で残したボールは原田が懸命にクリア。田村のロングスロー連発は、スタンドを大いに沸かせます。
76分は浦和西。田村の右ロングスローは塩野がクリア。77分も浦和西。ここも右から田村がロングスローを投げ込み、ルーズボールに反応した加藤のミドルは大きくバーの上へ。78分は昌平。原田の縦パスを佐相がきっちり落とし、渋屋が裏へ入れたボールに原田がボレーで飛び付くも、軌道はゴール左へ。79分には右から、80+1分には左から、同じく80+1分には右から、田村が3連続で投げたロングスローもシュートには至らず。80+2分には右から加藤がCKを蹴り入れ、高橋がヘディングで合わせるも、後半初の枠内シュートを緑川は冷静にキャッチ。「最後の方は押し込まれたシーンがあったんですけど、粘り強く対応できたのかなと思っています」と関根。途切れない昌平ディフェンスの集中力。
「いつもは『何点決める』とか決めてきてはいないんですけど、今日は3点決めようと思ってきた」という男の有言実行は終了間際の80+3分。渋屋のパスを左サイドで受けた古川勇輝(2年・大宮アルディージャJY)は、「スピードを殺さないように、流れに乗れるボールを意識して」さらに外へ。ここにオーバーラップしてきた堀江がクロスを上げると、「イメージ通りにニアで合わせれば入るなという感じ」で突っ込んだ佐相のシュートはゴールネットへ到達します。「本人も自信を持ってやっていると思うので、その自信が成功に繋がっているかなと思いますし、その部分は評価してあげられるかなと思います」と指揮官も高評価を口にした佐相は、これで圧巻のハットトリック。終わってみれば4ゴールを挙げた昌平が埼玉制覇を達成。県内3冠目を力強く引き寄せる結果となりました。


昌平の強さが際立ったゲームだったと思います。「失点してしまったという所で、また自分たちでスイッチを入れられたのは良かったと思うんですけど、それがインターハイのような短い勝負だと引きずって負けということにもなるので、そういう意味では悪い所は出せたという意味で、課題として次に行けるかなと思います」とは藤島監督ですが、自分たちでスイッチを入れられるのはやはり強者の証。華麗なアタックを誇る攻撃陣に注目が集まる中で、「石井と関根のコンビは間違いなく大崩れはしないというか、そこが崩れた時に緑川がいるので、信頼関係を持ってやれているのかなと思います」と指揮官も話す、昨年の全国を経験しているGKとセンターバックのトライアングルも間違いなく全国クラス。「去年よりもチーム力は上だと思っています」と藤島監督も手応えを掴んでいるようです。昨年度は全国ベスト4まで駆け上がっているだけに、目標を問われても「関東大会でも勝てる自信は付けたので、全国でも優勝を目指して頑張りたいと思います」(関根)「もちろん日本一を掲げてやってきているので、個人でも毎試合2得点以上狙って、得点王争いに絡めるように頑張っていきたいです」(佐相)と明確な答えが。「彼らが今モチベーション高くやれているのは去年のベスト4があったからですし、上を目指してくれるスタンスはあると思うので、そこは僕らスタッフとしてもそこを目指してやらないといけないと思います」と藤島監督も控えめな表現ながら、やはり目指す所は選手と同じ様子。昌平が宮城の地で昨年を超える躍進を果たせるのか否かにも、大いに注目したいと思います。       
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土屋

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