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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2017年04月24日

関東大会予選東京準々決勝 早稲田実業×実践学園@駒沢第2

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0422koma2-2.JPG第2試合は今シーズンの注目校同士の対峙。2試合9得点の攻撃力で勝ち上がってきた早稲田実業と、優勝候補筆頭の呼び声も高い実践学園のクォーターファイナルは、引き続き駒沢第2球技場です。
昨年度の選手権予選は躍進の大会。準々決勝で結果的に優勝する関東第一を相手に、残り5分まで2点のリードを奪い、最後は驚異的な粘りの前に追い付かれ、延長戦で涙を飲んだものの、鮮烈な印象を残した早稲田実業。そのゲームに出場していた主力が4人残った今シーズンも、リーグ開幕戦を3-0でモノにすると、今大会は淑徳巣鴨を2-0、明大明治を7-0で下し、新チームの公式戦はいまだ無失点での3連勝。「少しでも自分たちの時間帯やボールのタメを創ってやろうということに関しては、ここ数年の中では良いかなと思っています」とは森泉武信監督。一定の自信を携えて強豪相手の一戦へ挑みます。
昨年12月の横山杯では、並み居る強豪を抑えて見事優勝を勝ち獲ると、迎えた今シーズンのT1リーグでも昨年度の選手権全国出場校の関東第一と駒澤大学高に加え、國學院久我山にも勝利を収め、ここまで5勝1分けで首位に立つなど、周囲からの評価も非常に高い実践学園。「去年T3でほぼ同じメンバーで戦ってきて、リーグ戦は結局去年も負けていないし、今年もそのまま負けていないので、勝ちグセみたいなものが付いていますね」と今年のチームを評するのは深町公一監督。今大会は初戦で大雨というコンディションの下、大成に延長戦で2-0と競り勝つと、2回戦は成立学園との大一番を2-1で制してこのステージへ。「Tリーグ、関東、インハイ、選手権、全部獲りに行くのが目標です」と言い切るのはキャプテンの尾前祥奈(3年・江東深川第四中)。"四冠"へ向けての第一歩を踏み出すべく、この準々決勝へ臨みます。まだ上空はかろうじて雨の落ちてこない曇天模様。楽しみな80分間は実践のキックオフでスタートしました。


まずボールをキープしながら攻撃の時間を長く創ったのは実践ですが、「スペースを消された時に、さらにそこに飛び込んで行ける選手がいなかったのかなと」と内田尊久ヘッドコーチが話した通り、際どいゾーンにはなかなか侵入できず。13分には浦寛人(3年・GA FC)がミドルを放つも、早実のGK関口恵允(3年・レッドスターJY)ががっちりキャッチ。20分にも山内稔之(2年・AZ'86東京青梅)、高須史弥(3年・ヴェルディS.S.AJUNT)と繋いだボールを、前原龍磨(3年・三菱養和調布JY)がさらってドリブルで突っかけるも、ボールは少し伸びて関口の元へ。決定的なシーンには至りません。
逆に22分は早実にチャンス。前線で宮脇有夢(3年・湘南ベルマーレU-15平塚)がタメを創り、今野駿(3年・横浜青葉台中)、木下悠人(2年・FC.GIUSTI世田谷)とスムーズに回ったボールを、ボランチの土居隆馬(3年・石川星稜中)がミドルまで。ここは実践のGK成田雄聖(3年・S.T.FC)がキャッチしたものの、小気味良いパスワークでフィニッシュを記録。実践も27分には右から山内がFKを、直後にも左から高須がCKを蹴り込むも、どちらもキャプテンマークを巻いた秋元浩希(3年・多摩大目黒中)が丁寧にクリア。攻守に出てきた早実のリズム。
29分は早実。秋元の右FKに宮脇が頭で落とすも、飛び込んだ木下には届かず。33分も早実。木下が粘って右クロスを送り、こぼれを叩いた今野のシュートは実践3バックの左に入った三澤健太(3年・昭島瑞雲中)が体でブロック。その右CKを今野が放り込むと、鈴木俊也(2年・FC東京U-15深川)のヘディングは成田がキャッチ。36分は実践にチャンス。石本耀介(3年・青山SC)のドリブルで獲得した右CKを山内が蹴り入れ、ファーで当て切った浦のヘディングは枠の左へ。38分は再び早実。今野、木下とボールを回し、宮脇が敢行したスライディングシュートは成田が何とかキャッチ。「展開的には互角の時間帯もあったかなと思います」とは森泉監督。やや早実が押し戻した感のある前半は、スコアレスで40分間が終了しました。


後半の立ち上がりは早実ペース。いきなり41分。木下が左へ展開し、ドリブルで持ち出した亀井英志(2年・早稲田実業中)のクロスは成田にキャッチされたものの、鋭いサイドアタックを。45分にも鈴木が左へフィードを送り、収めた左サイドバックの市橋宗一郎(3年・練馬大泉中)のクロスに今野が飛び込むも、成田が何とかキャッチ。48分にも今野の右CKを亀井がヒールで残すと、ゴール前は混戦に。ここもシュートには至らなかったものの、「入りの所がいつものウチの流れじゃなかったのかなというような気はします」と内田ヘッドコーチも認めたように、早実に漂うゴールの雰囲気。
そんな流れを一掃したのは「成立の時に点を取ったこともあって、周りの応援してくれているみんなにも『今日も頼むよ』と言われていたので、『決めてやろう』という強い気持ちを持ってできた」というナンバー10。52分に齋藤彰人(3年・FC多摩)が後方から丁寧なピンポイントフィードを蹴り込むと、一度は空振りした武田義臣(3年・FC.Branco八王子)は体勢を立て直してインサイドでシュート。GKに当たってゴールへ向かったボールは、懸命に戻ったDFのクリアも一歩及ばず、ゴールネットへ飛び込みます。武田はゴール直後、「本当に嬉しくて、応援してくれているみんなの元に走っていきました」と大応援団の元へ一直線。実践が先にスコアを動かしました。
畳み掛けたい実践は58分にもチャンス。山内の右CKをファーで齋藤が折り返し、三沢が合わせたヘディングはDFが体でブロック。直後の右CKも山内が蹴り込み、反応した北條滉太(3年・FC杉野)はシュートまで持ち込めず。61分は早実にチャンス。右に開いた宮脇のクロスにへ、走り込んだ今野はわずかに届かず。実践ベンチも61分に交替を決断。石本に替えて、大関友貴(3年・FC多摩)を送り込むと、2度目の歓喜もすぐさま。
62分。前原を起点に北條が左へラストパスを送ると、山内は得意の左足で強烈な枠内シュート。関口もファインセーブで応酬しましたが、ここに誰よりも速く反応した武田が丁寧にボールをゴールネットへ押し込みます。「打った山内は自主練でよくああいう形をやっていたので、僕が『打て!』って言ったんですけど、本人は打つか迷っていたらしくて。こぼれ球に上手く反応できたので良かったです」と明かしてくれた武田はこれでドッピエッタ。両者の点差は2点に開きました。
2点のビハインドを追いかける展開となった早実も、失点直後の62分に1人目の交替を。亀井を下げて、大森悠平(3年・さいたま尾間木中)を投入し、サイドの推進力向上を図りますが、次に得点を記録したのも実践。66分に前原が右へ振り分けたパスから、受けた大関はサイドをぶっちぎって中へクロス。ニアに全力で突っ込んできた高須のボレーは、鮮やかにゴールネットを揺らします。「固められた時にサイドを有効に使えなかった」(内田ヘッドコーチ)前半から一転して、見事なサイドアタックで追加点。スコアは3-0に変わります。
反撃の一手は69分。折れない早実は土居が左へ素晴らしいスルーパスを通し切り、上がってきた市橋は丁寧にクロス。これをエリア内で待っていた宮脇は確実に右スミのゴールネットへ送り届けます。「彼がラクできるような形で、もう少し前目にいればいいんですけどね」と話したのは森泉監督ですが、勘所を押さえたポジショニングとシュート技術はまさにゴラッソ。10番の追撃弾。再び点差は2点に縮まりました。
勝負の一手は得点直後の69分。森泉監督は右サイドバックで奮闘した吉岡直輝(2年・浦和レッズJY)に替えて、宮本潤(3年・練馬石神井中)をセンターバックに投入し、ボランチの高橋一真(2年・Forza'02)が宮本と最終ラインの中央を組み、秋元が右サイドバックにスライド。センターバックを務めていた鈴木を宮脇と最前線に並べ、狙う同点とその先。69分には3人をぶち抜いた前原のシュートも関口が執念のファインセーブ。2点差のままでゲームは残り10分とアディショナルタイムへ。
71分には実践に2枚替え。殊勲の武田と前原を、そのまま重枝俊亮(3年・FC GABE)と浅野遙輝(3年・FC多摩)とスイッチして、前からの圧力を再び。73分は早実に決定機。時間を創った鈴木が右へ流し、宮脇の枠内シュートは成田がファインセーブで回避。73分は実践にもビッグチャンス。ミドルレンジから北條がトライしたシュートはクロスバーを直撃し、跳ね返りを浅野が当てたヘディングは枠の上へ。76分は早実にまたも決定機。エリア内で2人をかわした鈴木が、利き足とは逆の右足で打ったシュートは成田がここもファインセーブで凌ぎましたが、「もともとミッドフィルダーやフォワードの子」(森泉監督)という鈴木の際立つ"個"。双方が繰り出し合うチャンス。尾前を中心に集中を保つ実践ディフェンス。
76分は実践。マーカーを引き付けた浅野のラストパスから、抜け出した重枝のループはクロスバーの上へ。78分は早実。左サイドを抜け出してエリア内へ入った土居のドリブルは、最後のタッチが大きくなってしまい成田がキャッチ。直後も早実。秋元のFKを今野が残し、鈴木のミドルはクロスバーの上へ。80分は実践に4人目の交替。山内と川口大輝(3年・足立千寿桜堤中)を入れ替えて、取り掛かるゲームクロ-ズ。80+2分は早実のラストチャンス。中央左寄り、ゴールまで約25mの位置から鈴木が直接狙ったFKはクロスバーの上に消え、程なくして吹き鳴らされたファイナルホイッスル。見応え十分の80分間は早実も一歩及ばず。「本当に苦しいゲームの時に失点をしないチームだなと。集中が切れないですし、最後まで泥臭い所までやり切れるようになってきているのかなという気はします」と内田ヘッドコーチも評価を口にした実践が、國學院久我山の待つセミファイナルへ駒を進める結果となりました。


早実の健闘が光ったゲームでした。「子供たちはやってきたことをフルに出したとは思いますが、ゴールを奪う、ゴールを守るという部分での差が大きな差になったかなと思います」と森泉監督。特にこの80分間では『ゴールを守る』という部分で相手に1枚上回られた面は否めませんが、鈴木や木下、宮脇など個性豊かなタレントを随所に擁し、ここからチームとしてどこまで伸びていくのかは非常に楽しみです。ただ、もちろんその早実をきっちり退けた実践の勝負強さもまた本物。「チームに手応えはありますけど、今は結果が出ているということに甘んじることなく、自分たちは他のチームに比べたら個人としては上手くない思うので、チーム一丸となって戦っていきたいと思います」と話した武田の言葉をおそらくはチーム全体が共有している実践は、やはり今シーズンの東京高校サッカー界を牽引していく有力候補だと思います。        土屋

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