最近のエントリー
カテゴリー
アーカイブ
このブログについて
J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
3年前も全国舞台の初戦で激突した両雄が再会する一戦。新潟王者の帝京長岡と徳島王者の徳島市立が対峙する1回戦は浦和駒場スタジアムです。
小塚和季(新潟)を擁し、県勢最高成績に並ぶ全国ベスト8まで躍進したのは4年前。以降は新潟明訓と共に県勢を牽引する強豪として、存在感を高めてきた帝京長岡。昨シーズンはインターハイ、選手権予選と共に新潟明訓の後塵を拝したものの、今シーズンはインターハイ予選を勝ち抜き、久々に夏の全国を経験すると、選手権予選もやはり新潟明訓をファイナルで4-0と下して、3年ぶりとなる冬の全国へ。「小塚さんの代のベスト8という記録を塗り替えて、歴史に自分たちの名をしっかりと刻みたい」と意気込むのはキャプテンの深谷圭佑(3年・FC豊橋デューミラン)。頂点を目指す覚悟は整っています。
高校時代に全日本ユースとインターハイで全国制覇を経験している河野博幸監督が母校に復帰した2013年以降は、再び夏冬共に全国の舞台まで勝ち上がってくる回数が劇的に増えた徳島市立。昨シーズンの選手権予選では鳴門に敗れ、県代表の座を明け渡す格好となりましたが、インターハイで全国を経験した今シーズンは、ファイナルで再会した鳴門に6-1という大勝でのリベンジを達成して、2年ぶりに冬の全国へ。センターラインに郡紘平(3年・徳島ヴォルティスJY)、山本史弥(3年・徳島FCリベリモ)、上野謙太朗(3年・板野郡藍住中)など昨年からの主力を据えて、まずは初戦突破を狙う80分間に挑みます。会場の浦和駒場スタジアムは11.8度と発表された気温以上にポカポカ陽気。注目の初戦は徳島市立のキックオフでスタートしました。
ファーストシュートは5分の徳島市立。ボランチを務める吉田顕生(3年・板野郡板野中)のパスから、郡が右スミを狙ったシュートは帝京長岡のGK深谷にキャッチされましたが、まずはエースが果敢な姿勢を打ち出すと、11分には決定機。DFのクリアが味方に当たってハイサイドに落ちたルーズボールに、全速力で追い付いた水田智(3年・徳島川内中)が左からクロス。ニアに突っ込んだ山本のシュートは左のポストを叩いたものの、「思い切ってやり切るとか行き切るとか、そういう部分の気持ちがちょっとでも出たら結構点は取る」と河野監督も自信を持つアタッカー陣が、早くもチャンスを続けて創出します。
さて、中盤のキーマン安田光希(2年・P.S.T.C.LONDORINA)を体調不良で欠く帝京長岡は、「チーム全体として長いボールが多くなった」と10番を背負う楜澤健太(3年・AC長野パルセイロU-15)も振り返ったように、なかなか自分たちでボールを握る時間を持てない展開に。16分には左サイドで獲得したFKを荒井太樹(3年・東松山ペレーニア)が蹴り込むも、DFが大きくクリア。流れの中から繰り出せない手数。
16分は徳島市立。左サイドバックに入った1年生の原田隼佑(1年・ヴィッセル神戸伊丹U-15)がアーリークロスを上げ切り、山本の落としを郡が叩いたシュートは深谷がキャッチ。18分も徳島市立。右からのCKを高畑勇人(3年・徳島ヴォルティスJY)がグラウンダーで蹴り込み、最後は橋本日向(3年・徳島ヴォルティスJY)が左足を強振したシュートは、DFに当たって枠の右へ。19分は帝京長岡。木村勇登(3年・Desenvolver F.U.T)を起点にカウンターから中央を運んだ楜澤は左へ流し、走り込んだ荒井のシュートはゴール右へ。最初の20分間は「ちょっと相手は後ろの4枚と中盤の子が後ろに重たかったなという印象が凄くあって、後ろであまり組み立てるということがなかったので、ウチとしてはちょっと予想外だった」と河野監督も口にしながら、サイドアタックも含めて徳島市立が奪った主導権。
24分は徳島市立。山本の落としを受け、小延将大(2年・プルミエール徳島)が放ったシュートはクロスバーの上へ。25分は帝京長岡。左サイドで得たFKを新井が蹴るも、DFが大きくクリア。29分は再び徳島市立。カウンターから右サイドを山本が飛び出してクロスを上げるも、ここはよく戻った帝京長岡のセンターバック石川悠(2年・FCトリプレッタJY)が懸命にクリア。33分は帝京長岡。左サイドから齋藤日向(3年・長岡ビルボード)が入れたロングスローも徳島市立のGK佐野雄亮(3年・徳島川内中)がっちりキャッチ。ただ、右から中林三汰(3年・FC CEDAC)、澄川広大(2年・長岡FC JY)、石川、齋藤で組んだ帝京長岡のディフェンスラインにも安定感が出始め、この時間帯はやや膠着状態に。
38分は徳島市立にFKのチャンス。右寄り、ゴールまで約25mの位置から郡が直接枠に収めたキックは、深谷も冷静にパンチングで回避。39分、40分、40+2分と3本続けて獲得したCKもゴールには繋がらなかったものの、「相手もだいぶ硬かったと思うし、ウチはそれなりにはやっていたと思う」と河野監督が言及した前半は、徳島市立がペースを掴みながらも、「一生懸命守備を頑張ってくれていた」と古沢監督も評価する中盤アンカーに入った安井嶺芽(3年・長岡FC JY)を軸に帝京長岡が凌ぐ格好のスコアレスで、40分間が終了しました。
ハーフタイムを挟むといきなりスコアが動いたのは44分。「僕が見てきた中でも一番のプレーをしたのかなと。1枚であれだけのプレーができたら大したものだなと思います」と指揮官も言及したように、前半からキープに突破に獅子奮迅の活躍を披露していた楜澤は「『今日は調子が良いな』というのは自分で感じていたので、ここも抜けるなと思って」左サイドを体の強さで崩し切ってクロス。ニアに突っ込んだ荒井が潰れると、ファーで待っていた陶山勇磨(2年・長岡FC JY)は無人のゴールへボールを流し込みます。「サイド攻撃を自分たちは得意にしていて、クロスを上げれば何かしら起こるので上げようと思った」10番のアシストで、チーム伝統のエースナンバー14を託された陶山が一仕事。劣勢の帝京長岡が1点のリードを奪いました。
「前に出なくてはいけなくなった状態」(河野監督)で徳島市立に生まれた同点弾は2分後。46分に右サイドから崩しに掛かり、山本のパスを小延が足裏で流すと、ボールを受けた郡は左に流れながら左足一閃。左スミへ飛んだ軌道はGKのニアサイドを破り、ゴールネットへ突き刺さります。「『プロになりたいんだったら点を取れ』とずっと言っている」と指揮官も明かした9番がきっちり得点という結果を。「双方が落ち着かない時間帯でポンポンと入ってしまった」(河野監督)ことで、たちまち両者の点差は霧散しました。
あっという間に追い付かれてしまった帝京長岡。47分に荒井が蹴った左FKはクリアされるも、澄川が頭で押し返し、陶山がバックヘッドで狙ったシュートが枠の上に外れると、ベンチは1枚目の交替を決断。2トップ下の小塚祐基(3年・長岡FC JY)に替えて、長身フォワードの青山翔吾(3年・ヘミニス金沢FC)を最前線に送り込み、陶山を2トップ下にスライド。「1つ飛ばしてパワーを持ってという中で青山を使い、そこで少し押し込んでいってセカンドボールを拾えれば」(古沢監督)という狙いをピッチヘ落とし込みます。
50分は徳島市立。左サイドに開いた郡のミドルはゴール右へ。52分も徳島市立。小延が思い切りよく狙ったミドルは枠の上へ。直後に帝京長岡が切った2枚目のカード。荒井を下げて小林歩夢(2年・長岡FC JY)をそのまま左サイドハーフへ投入し、着手するサイドの推進力向上。57分は帝京長岡。センターサークル付近で相手ボールを奪った陶山は、35mミドルにトライも枠の左へ。わずかに帝京長岡へ覗き掛ける勝ち越しへの糸口。
58分は徳島市立。右CKを短く蹴り出した郡は、山本のリターンをそのままシュートへ持ち込むも、ここは読んでいた深谷が横っ飛びでファインセーブ。その右CKを郡が蹴り込み、ファーで拾った橋本のクロスに山本が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。60分は帝京長岡にビッグチャンス。相手の縦パスを最高の出足でカットしたセンターバックの石川が、そのまま相手陣内までドリブルで駆け上がり、後方へ流したボールを小林がダイレクトで打ったシュートはわずかに枠の右へ逸れ、ピッチとベンチが同時に頭を抱えましたが、ようやく出てきたらしいアタック。
67分は徳島市立。高畑、山本と繋いだボールをミドルレンジから吉田が枠へ飛ばした強烈なシュートは、深谷がファインセーブで何とか回避。その流れの左CKを郡が放り込み、こぼれを拾った吉田の右クロスは飛び出した深谷がキャッチ。相次いで切り合うカード。74分は徳島市立。ボランチで奮闘した山田晟司(3年・三好池田中)と小原一真(3年・板野郡北島中)を入れ替え、中盤の強度にテコ入れを。75分は帝京長岡。アジリティの高い江島唯人(2年・長岡FC JY)をピッチヘ解き放ち、期すのは築き上げてきた本来のスタイル。ゲームもいよいよ最終盤。残り時間は5分とアディショナルタイムのみ。
徳島市立は79分に切り札投入。「身体能力の高い1年生の中でも物凄く足が速い」という岡健太(1年・阿南那賀川中)を小延に替えて投入し、最後の勝負へ。80+2分は帝京長岡にチャンス。左サイドで楜澤が粘って残し、小林のクロスに江島が突っ込むもわずかに届かず。80+4分は徳島市立。右サイドでフィードを引き出した岡は果敢に仕掛け、こぼれを拾った水田のシュートは帝京長岡のDF3枚が体を投げ出して決死のブロック。郡が蹴った左CKをDFがクリアすると、吹き鳴らされたファイナルホイッスル。両者譲らず。勝敗の行方はPK戦へ委ねられることになりました。
先攻は帝京長岡。1人目の楜澤はゆっくりした助走から完全にGKの逆を突いて左スミへ成功。後攻の徳島市立。1人目は吉田。左上を狙ったキックもGKの逆を突いて成功。帝京長岡2人目は齋藤。左スミへ蹴り込むイメージのキックは、しかしゴールポストの左側へ。徳島市立2人目の高畑は、冷静に中央へ蹴り込んで成功。2人目にして両者の均衡が崩れます。
帝京長岡3人目は石川。右へ蹴ったボールは佐野も反応しましたが、きっちりゴールネットへ到達。徳島市立3人目は上野。右スミを狙うと、GKは逆に飛んで成功。帝京長岡4人目の木村は、GKが飛んだ逆の右スミにきっちり成功。徳島市立4人目は橋本。インステップで思い切り叩いたキックは、読んでいた深谷もわずかに及ばず。いよいよキッカーは運命の5人目へ。
帝京長岡は14番の陶山。外せば終わりというシチュエーションに関わらず、あっさりGKの逆を取って左スミへグサリ。徳島市立の5人目はエースの郡。左スミへ打ち込んだキックに深谷も飛び付きましたが、ボールはゴールネットへ突き刺さって熱戦に決着。「外していない子を並べただけなので。ウチはPKの練習をほとんどしないので、2日前にこっちに来てやった時に外さなかった子を入れただけです」と河野監督も笑った徳島市立が、PK戦を制して2回戦へ駒を進める結果となりました。
「ここに来て4年目ですけど、今まで出てきた全国大会の中では一番できていた方ですね。今まで初戦で『そんな蹴ったことないのに』というぐらいお互い蹴り合いになったり、緊張してしまって何もできないままに終わってしまったというのがほとんどだったので」と試合後に明かした河野監督。続けて「今年の子らはそういう部分で、ある意味やる気があるのかないのかわからないですけど(笑)、そういう意味で力が抜けた所ができているので、普段やっていることがだいぶ出せたかなと。そこは収穫ですね」と手応えを口に。確かにアタッカー陣は個でもコンビネーションでもやり切れる選手が揃っており、「化ける可能性はあります」という指揮官の言葉にも頷けるような内容だったのではないでしょうか。「この子たちは全国大会で勝って行くという経験が今までないので、そういう未知の経験を積み上げていけば、どこかでポンと抜けていく時があると思うので、できるだけその次へと続けていきたいですね。1つでも2つでも多く勝って次に繋げていきたいです」とは河野監督ですが、その可能性は決して低くなさそうです。
「本当に自分たちが今やれるベストをやった結果なので、純粋に力負けです。たらればのない世界でやっているので、現段階のベストメンバーで挑んで粉砕されたというだけですよね」と古沢監督が話したように、劣勢の時間が長い中で何とかPK戦まで持ち込んだものの、最後は力尽きた帝京長岡。深谷も「前半後半通して全然自分たちのサッカーができなくて、結果から見たら1-1なんですけど、自分たちのディフェンスが良くなかったらもっと点差の開いていたゲームだったので、内容はダメだったと思います」とキッパリ。シーズンラストゲームは悔しい課題を突き付けられる格好になりました。それでも冬は雪掻きしてもなかなかピッチが出てこないような長岡の地から、継続してこれだけのチームを創り上げてきていることは大いに誇っていい立派な成果。「メッチャ成長できたと思いますね。帝京長岡のプレースタイルも凄く好きですし、帝京長岡に入ってサッカーの面もサッカー以外の面も、本当に鍛えられたなというのは感じています。入って良かったと思います。本当に3年間楽しかったです」と楜澤が話せば、「すべてにおいて一回りも二回りも大きくさせてもらった3年間でした。辛いこともあったんですけど、こうやって仲間と切磋琢磨して、3年間練習してきたことというのは、終わってみれば楽しかったなという想いですね」と最後は深谷も笑顔。2人も含めた帝京長岡の最上級生が過ごしてきた3年間に敬意を表して、大きな拍手を送りたいと思います。 土屋
J SPORTS フットボール公式Twitterをフォローしてフットボールの最新情報をチェック!