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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
東の王と西の王がさいたまの地で対峙するファイナルバトル。日本一を懸けた青森山田と広島ユースのチャンピオンシップは埼玉スタジアム2002です。
最終節で優勝を逃したのは昨年のプレミアEAST。「それから1年間通して去年の屈辱的な状況というものを彼らにずっと浸透させても来た」と黒田剛監督も語ったように、あと一歩で届かなかった東の覇権を追い求め、今シーズンを戦い続けてきた青森山田。インターハイ全国ベスト4、20年連続の選手権県優勝と、確かなトーナメントコンペティションでの結果も後ろ盾に、先週のリーグ戦最終節ではFC東京U-18との、勝った方が戴冠という最終決戦に高橋壱晟(3年・青森山田中)のPKで蹴りをつけ、とうとうEAST制覇を達成。勢いそのままに「東日本の代表、それから高体連の代表として」(黒田監督)日本一へ挑みます。
2011年のプレミアリーグ創設から、2年続けてのWEST制覇に、やはり2年続けてのチャンピオンシップ制覇という結果を残したものの、以降はどちらもタイトルから遠ざかっていたサンフレッチェ広島ユース。昨シーズンのリーグ戦は残留争いに巻き込まれる苦しい時間でしたが、一転して今シーズンは開幕4連勝でスタートダッシュに成功。チームを率いる沢田謙太郎監督も「負けてもおかしくないような、引き分けてもおかしくないような試合を、何とか良い形で勝ち上がってここに来たんですけど、昨年はハッキリ言って残留争いをした中で、凄い成長だなと思います」と認める通り、リーグ最少失点を記録した高い守備力をベースに、4年ぶりにWESTの頂点へ。準優勝となったJユースカップのリベンジも含め、堂々と日本一を目指します。子供たちの目立つスタジアムには12503人の観衆が。楽しみな一戦は広島のキックオフでスタートしました。
タイトルを巡るゲームらしく、お互い慎重に入った試合は「身体能力の高い鳴海を競らせて、セカンドボールを拾っていく」(黒田監督)青森山田と、3バック中央のイヨハ理ヘンリー(3年・FC.フェルボール愛知)とボランチの位置から最後尾に落ちる川村拓夢(2年・サンフレッチェ広島JY)のパス交換を中心にボールを動かす広島の睨み合いという展開に。最初の15分はほとんどチャンスらしいチャンスのないままに、時間が経過していきます。
15分は広島。満田誠(2年・ソレッソ熊本)が裏へ落とすと、WEST得点王の山根永遠(3年・サンフレッチェ広島JY)が走るも、青森山田のセンターバックを任されている橋本恭輔(3年・クリアージュFC)がきっちりカバーし、GKの廣末陸(3年・FC東京U-15深川)がキャッチ。16分は青森山田。右サイドを突破した小山新(3年・青森山田中)のクロスにDFが処理を誤り、鳴海彰人(3年・新ひだか静内中)がシュートを放つも、懸命に戻った東野広太郎(3年・エスポワール白山FC)が体でブロック。動き出したゲーム。漂う好ゲームの予感。
18分は青森山田に決定機。アンカーの住永翔(3年・コンサドーレ札幌U-15)を起点に、スムーズなパスワークから右に持ち出した鳴海はエリア内から強烈なシュートを対角に放つも、ここは広島のGK大迫敬介(2年・FELICIDOD FC)が片手を伸ばすファインセーブでストップ。逆に広島も18分に川村がミドルレンジから廣末にキャッチを強いるファーストシュートを放つと、20分には決定機。右サイドに開いた満田のクロスへ、ニアに突っ込んだ仙波大志(2年・サンフレッチェ広島JY)が巧みなヘディング。「あれはよくやる形」と沢田監督も言及したシュートはわずかに枠の左へ。やり合った両者にようやく上がり始めるスタンドのボルテージ。
22分は再び広島にビッグチャンス。右から川井歩(2年・サンフレッチェ広島JY)が蹴ったCKに、藤原慶人(3年・サンフレッチェ広島JY)がドンピシャヘッドで合わせるも、「守備だけは絶対に失点はしない、絶対に体を張る」(黒田監督)というコンセプトを体現する青森山田の人壁が何とかライン上で弾き出し、こぼれを枠に収めた川井のシュートは廣末がファインセーブで対処。スコアは動きません。
以降は膠着した展開が戻ってくる中で、手数は青森山田。28分に右から高橋がショートで始めたCKは、郷家友太(2年・ベガルタ仙台JY)と少し呼吸が合わず。36分に鳴海、郷家と繋いで住永がトライしたミドルは枠の左へ。39分にも小山の突破で獲得した右CKを高橋が蹴り込むも、大迫ががっちりキャッチ。45+1分は広島。右から川井がグラウンダーでクロスを送り込み、ニアに潜った山根がマーカーを制して打ち切ったシュートは、ここも廣末が抜群の反応で足に当て、川井のシュートはサイドネットの外側にグサリ。双方に決定的なシーンもあった最初の45分間は、スコアレスでハーフタイムに入りました。
後半早々のアクシデントは青森山田。49分に「後半15分頃で交替させようとは思っていたんですけど、ちょっと早く交替せざるを得なくなった」と黒田監督も認めるように、ルーキーながら定位置を掴んでいた檀崎竜孔(1年・青森山田中)が負傷でプレー続行が難しくなり、堀脩大(2年・FC東京U-15深川)が早くもピッチヘ。51分は広島にチャンス。高い位置で相手ボールを奪い、山根が右へ振り分けたボールを満田が狙うもクロスバーの上へ。この時間帯はやや広島に勢いが出てくるも、小山内慎一郎(2年・青森山田中)と橋本を中心に揺るがない青森山田のディフェンス陣。
ただ、ここからはセットプレーのみが双方のチャンスに。54分は青森山田。郷家の右ロングスローに鳴海が競り合うも、大迫が丁寧にキャッチ。64分は広島。中央やや右寄り、ゴールまで約25mの位置で奪ったFK。右利きの川井と左利きの川村がスポットに並び、前者が直接狙ったキックは枠の上へ。68分も広島。川井の左FKは高橋が大きくクリア。72分に黒田監督は2枚目の交替として、前線で奮闘した鳴海と佐々木快(3年・リベロ津軽SC U-15)を入れ替えると、74分に左サイドバックの三国スティビアエブス(3年・青森山田中)の仕掛けで得た左CKも、ショートへのチャレンジは高橋と嵯峨理久(3年・ウインズFC U-15)の呼吸が合わず。残りは15分。スコアボードに表示された数字はなかなか変わりません。
75分は青森山田。郷家の左ロングスローはオフェンスファウルに。76分は広島。満田のパスから左足で上げた川井のクロスは、橋本が確実にクリア。80分は青森山田。小山がDFラインの裏へ落とし、走った佐々木快は頭で前につつきましたが、飛び出した大迫が少しDFと交錯しながらも慎重にキャッチ。82分に青森山田は3枚目のカードとして佐々木友(2年・青森山田中)をピッチヘ解き放つと、83分は広島にセットプレーのチャンス。右から川井が入れたCKへ、藤原がフリーで走り込むもヘディングはゴール左へ。残り5分。土壇場でのドラマは起きるのか。
86分は青森山田。高橋が蹴り込んだ左FKはエリア内で混戦を生み出すも、最後は東野が懸命にクリア。直後のスローインを郷家がロングスローで投げ入れ、こぼれを拾った高橋の右クロスはイヨハがきっちりクリア。88分は広島。川井が左から蹴ったこの日5本目のCKに、突っ込んだ里岡龍斗(3年・サンフレッチェ広島JY)はわずかに届かず。90+3分も広島。ボランチの力安祥伍(3年・サンフレッチェ広島JY)が仕掛けて取った左CKを川井が蹴るも、廣末がフィスティングで弾き出すと、これが90分間でのラストチャンス。「ある程度どちらにでも試合が転ぶような状況」(沢田監督)の中でも両雄譲らず。勝敗の行方は前後半10分ずつの延長戦へと持ち越されることになりました。
エクストラタイムもゴールの匂いはやはりリスタート。広島は93分に川井の右CKをファーで里岡が折り返すも、DFがクリア。95分にフリーで抜け出した高橋がシュートを打ち切れずに流れた左CKを、その高橋が蹴り込むも東野がクリアすると一転、広島のカウンター。そのまま東野は駆け上がり、山根のパスを受けたものの、少し右へ出したラストパスが大きくなり、拾った山根のクロスは廣末ががっちりキャッチ。97分は青森山田にビッグチャンス。高橋の右FKにフリーの郷家が合わせるも、頭へしっかり当て切れずに枠の上へ。惜しいシーンのリプレイがビジョンに流れると、場内からも大きなため息が。
98分は広島に流れの中から好機到来。ギャップで受けた満田が右へ流し、川井のクロスに飛び込んだ仙波のヘディングはゴール左へ。99分に青森山田は4人目の交替として嵯峨と住川鳳章(3年・FCバイエルン ツネイシ)をスイッチすると、100+1分には左から住永が長いFKを放り込むも、イヨハが的確にクリア。直後の右CKは再び高橋が蹴りましたが、今度は力安がクリア。両チームの堅陣は揺るがず。残された時間は延長後半の10分間のみ。
104分は青森山田。郷家の右ロングスローを受けようと、ニアへ潜った佐々木快がマーカーともつれて転倒するも、上田益也主審のホイッスルは鳴らず。107分は広島。力安が右へスルーパスを繰り出し、裏を取った川井がグラウンダーでクロスを送ると、満田がニアへ飛び込むもシュートには至らず。110分のラストチャンスは青森山田。佐々木友が粘って獲得した右CKを高橋が蹴りましたが、空中でラインを割ってしまい、ゴールキックという判定が下されると、程なくしてピッチヘ鳴り響いたファイナルホイッスル。「最後の最後まで決定機を創らせずに、体を張り続けたという所は最低でもやらなくてはいけないという所はキチッとやれたのかなと思います」と黒田監督が話せば、「凄くウチらしい試合はできたかなと思っています」と沢田監督。日本一の称号は11mのロシアンルーレットに委ねられます。
先攻は広島。1人目のキッカーは藤原。短い助走から左スミを狙うと、完全に読み切った廣末がファインセーブ。突き上げた両手に沸騰する緑の応援団。後攻の青森山田1人目は高橋。1週間前にも大事なPKを決め切った10番は、ほぼど真ん中へグサリ。明暗の分かれたファーストキッカー。一歩前に出たEAST王者。
広島2人目は川村。左足で右スミへコントロールしたキックは、GKの逆を突いて成功。青森山田2人目は住永。チームを牽引し続けてきたキャプテンも、GKを右へ飛ばして左スミのゴールネットへ沈めます。広島3人目は川井。チームのセットプレーを託されているプレースキッカーは左スミへ確実に成功。青森山田3人目は郷家。左を狙ったキックは大迫も方向こそ合っていたものの、絶対に届かない高さへ飛び込み成功。2-3で次は4人目の攻防へ。
広島4人目は里岡。左上を狙ったキックの軌道は無情にもクロスバーの上へ。決めれば終わりの青森山田4人目。センターサークルから白いユニフォームを纏った選手は歩み出て来ず、キッカーはそのままゴールからスポットに向かった廣末。守護神同士の対峙。力強い助走から蹴り込んだ廣末のキックが左スミのゴールネットへ突き刺さり、熱戦にもここで終止符。「気持ちを1つにして最後の最後まで粘り強く戦ってくれたなという所で、選手を褒めてあげたいと思っています」と黒田監督。青森山田がリーグ戦での日本一という、文字通り"高校年代最強"の称号を力強く手繰り寄せる結果となりました。
「色々な意味でJユースにだいぶ押されながら、我々高体連が奮起していかなければならないということで、責任を持って結果を出していかなければならないということを選手たちも十分理解して、ピッチ内で証明してくれたなと凄く嬉しく思います」と黒田監督が話した通り、EAST王者という立場に加えて、"高体連代表"という側面も持ち合わせて、この大会に臨んでいた青森山田。スタメンの前所属をメンバー表で見ると、廣末はFC東京、住永はコンサドーレ札幌、郷家はベガルタ仙台と、絶対に欠かせない主力3人もJクラブの下部組織出身。「クラブと高体連という所でもちろんお互いに切磋琢磨して日本のサッカーを発展させていかないといけないという責任はあるんですけど、まだまだ技術的なスキルで言うと、クラブの方が凄く上手でという所はある中で、サッカーというのはそこだけじゃなくて、チーム力だったり、みんなのモチベーションであったり、24時間365日をどのように過ごしてきたか、どのように取り組んできたかということによって、ピッチ外の所の勝負に勝つことで、ピッチ内での勝負の明暗を凄く左右すると思っているので、我々はそこを信じてずっとやってきているチーム」と黒田監督も語った、『24時間365日』にピッチ内でもピッチ外でもこだわってきた"高体連"の青森山田が日本一に立ったというのは、非常に大きな意味があったように感じました。「雪国の辛い想いも持ちながら、それがピッチの中で表現される、そんな想いのあるチームとして、この高体連をリードしていかなくてはならないという責任を感じてやっているので、このタイミングで高体連が優勝できたというのは、全国の高体連にとっても凄く励みになると思う」と指揮官は話しましたが、そんな彼らの活躍を励みに、今度は彼らを何が何でも倒してやろうと、強豪校が手ぐすねを引いて待っている晴れ舞台まではもうわずかに2週間余り。これから来たる選手権が一層楽しみになるような、そんな青森山田の戴冠でした。 土屋
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