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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年11月14日

高校選手権新潟決勝 帝京長岡×新潟明訓@ビッグスワン

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1113bigswan.JPG近年の新潟における覇権を二分してきた頂上対決。インターハイ王者の帝京長岡とディフェンディングチャンピオンの新潟明訓が激突するファイナルは、もちろんデンカビッグスワンスタジアムです。
県勢最高成績タイの選手権全国ベスト8まで駆け上がったのは4年前。以降も各大会で上位進出を果たし、今や県内きっての強豪としてその名を知られる帝京長岡。今シーズンのインターハイ予選は、ファイナルで新潟明訓を1-0で下して、4年ぶりの全国切符を掴んだもののの、本大会では初戦で帝京大可児との"帝京"対決に屈する「不甲斐ない結果」(深谷圭佑・3年・豊橋デューミラン)に。迎えた今大会は新潟江南に2-0、新潟南に2-0、中越に1-0と接戦をモノにして勝ち上がってきましたが、準決勝の長岡向陵戦も大苦戦を強いられ、延長後半のラストプレーで野本太一(2年・長岡JY FC)が劇的な決勝ゴールを叩き込んでこのステージまで。相手は「ちょっと特別な相手なので、『ただ負けたくない』というライバル心も凄くある」と陶山勇磨(2年・長岡JY FC)も認める新潟明訓。舞台は整いました。
昨シーズンは加藤潤(筑波大)、中村亮太朗(中央大)など1年時から主力を務めてきたタレントを最高学年に頂き、堂々の夏冬新潟制覇を達成。その洗練されたスタイルも相まって、県外からも注目を集める存在となった新潟明訓。迎えた今シーズンは、前述したようにインターハイ予選こそ帝京長岡に苦杯を嘗めたものの、プリンスでは逆に2位の帝京長岡を抑えて北信越王者に。連覇の懸かる今大会は準々決勝で日本文理に2点を先制されながら、延長の末に逆転勝利を収めると、先週の準決勝も新潟西相手に苦しみながら、後半終了間際に榎並洸(3年・アルビレックス新潟JY)の決勝ゴールが飛び出し、何とかファイナルへ。「お互い北信越の1位2位としてプライドがあるので、新潟県のレベルを上げるためにも真っ向勝負をしたい」とは田中健二監督。最高の相手との決戦を制して、再び王座に返り咲きたい所です。2年連続となった同一カードの決勝に、ビッグスワンには5000人を超える観衆が。今シーズン最後のライバル対決は、帝京長岡のキックオフでスタートしました。


「自分の中でもこういう入りというのは1年間通してなかった」と田中監督も言及した通り、立ち上がりから勢いを持ってゲームに入ったのは新潟明訓。開始1分にいきなり榎並が左から狙ったミドルはDFにブロックされたものの、2トップの小竹直輝(3年・グランセナ新潟FC)と三富優介(3年・FC五十嵐)にもかなりボールが入り、十分な前への推進力を。9分にも右サイドで押し込んでCKを獲得すると、神蔵翼(3年・グランセナ新潟FC)のキックは帝京長岡のセンターバック石川悠(2年・FCトリプレッタJY)にクリアされたものの、「本当に5分から10分くらいの間はかなり押し込めた」と指揮官も認める新潟明訓ペースでゲームは推移していきます。
一方、「しっかり我慢する所はしっかりみんなで我慢しようという話はあった」と深谷も話した帝京長岡は、序盤の相手の勢いをうまく逃がすと10分過ぎからは悪くないリズムが。11分には安田光希(2年・P.S.T.C.LONDRINA U-15)の右FKを陶山が残すと、小林歩夢(2年・長岡JY FC)のミドルはDFのブロックに遭いますが、ようやくフィニッシュまで。15分にも中央を運んだ小林が左へ流し、楜澤健太(3年・長野パルセイロU-15)が枠へ収めたシュートは、新潟明訓のGK杉本陸(3年・アルビレックス新潟JY)にキャッチされたものの、帝京長岡にも先制の雰囲気が。
16分は新潟明訓。三富が左へ振り分けたボールを、小竹がグラウンダークロスに変えると、ニアにスライディングで突っ込んだ三富は、DFともつれながらスライディングシュートを放つも、当て切れずに深谷がキャッチ。22分は帝京長岡。左から安田が蹴ったCKを、ファーで澄川広大(2年・長岡JY FC)が折り返すもここは杉本がキャッチ。同じく22分も帝京長岡。陶山のパスから小林が打ち切ったシュートはDFがブロック。直後の右CKを安田が蹴り込み、このキックもDFにクリアされましたが、ジワジワと増加してきた帝京長岡のセットプレー。
すると、歓喜を呼び込んだのもやはり「普段はまったく練習していない」(古沢監督)というセットプレーから。24分にここも右から安田がチーム3本目のCKを蹴り込むと、ニア寄りに潜っていた楜澤はドンピシャヘッド。「『左の方に行けばいいかな』と思っていたら思い通りに行った」ボールは綺麗な弧を描いて、左スミのゴールネットへ吸い込まれます。「あんなシュートが入るんですね」と指揮官も笑った先制弾に、「昨日から『絶対に俺が点を取るから』と言っていたので、スタンドに行って喜びを爆発させました」という10番は応援団の陣取るスタンドまで全力疾走。帝京長岡がスコアを動かしました。
畳み掛けた長岡のグリーン。先制から2分後の26分。右サイドバックの小泉善人(1年・長岡JY FC)がヒールで繋ぎ、木村勇登(3年・Desenvolver.FUT)が高速クロスを入れると、「右サイドにボールが入った時に『来い』と思ってニアに入って行ったら、本当に良いボールが来た」という陶山が合わせたヘディングは杉本も弾き切れず、左スミのゴールネットへ飛び込みます。「2点目は敵ながら上手だったと思います」と敵将の田中監督も脱帽した一撃は、「フォワードなので、点を取るというのが結果的にチームに一番恩返しできると思う」と語る陶山の頭から。あっという間に点差が2点に広がります。
止まらない攻勢。28分には齋藤日向(3年・長岡ビルボード)を起点に楜澤が左へラストパスを送り、陶山が狙ったシュートは枠の左へ消えたものの、3度目の歓喜は31分。右サイドの攻防で手にしたFK。「安田のプレースキックは非凡なものがあるので、そこでチャンスは創れるかなという勝算は持っていた」と古沢監督が明かした通り、安田が丁寧に蹴り込んだボールを木村が頭で叩くと、ボールは右スミのゴールネットを確実に揺らします。「3-0というのは誰も予想していなかった」と正直に話したのは深谷。大きな3点目が帝京長岡に記録されました。
「かなりフロントコ-トでアタッキングサードまで侵入できていた」と田中監督も一定の手応えを得ていた中で、まさかの3失点を喫してしまった新潟明訓。33分にはキャプテンの関口正大(3年・FC五十嵐)がFKを蹴り込むと、こぼれを拾った三富のシュートは枠の上へ。38分にも小竹がミドルレンジから放ったミドルは枠の右へ。40分は帝京長岡。楜澤が頭で残し、安田が右足で狙ったミドルは枠の左へ。40+1分は新潟明訓。小竹の右クロスに榎並が走り込むも、飛び出した深谷が冷静にキャッチ。「前半に3つ取れたことは上出来ですし、3-1で帰ってこなかったという所が一番良かったなと思います」とは古沢監督。帝京長岡が3点のアドバンテージを握って、最初の40分間は終了しました。


ハーフタイムに決断したのは田中監督。「もう"飛び道具"を使うしかなかったので、そうするとウチの良さはあれしかなくなってくるのもあるんですけど、やらないとダメだと思った」と神蔵に替えて、ルーキーの稲見直也(1年・新潟小針中)を送り込むと、41分に荒井太樹(3年・東松山ペレーニア)の鋭いスルーパスを、新潟明訓のセンターバックを務める三膳元暉(3年・新潟木戸中)が素晴らしいタックルでカットしたシーンを挟み、ベールを脱いだ"飛び道具"。左サイドでボールがタッチを割った直後、稲見は凄まじい軌道のロングスローを中央へ。ここはシュートまで至らなかったものの、その一連にスタンドもどよめきに包まれます。
42分は帝京長岡。深谷がレーザービームパントを繰り出し、楜澤のヒールに荒井が反応して打ち切ったシュートは枠の右へ。44分は新潟明訓。中盤アンカーの今井真平(3年・FC五十嵐)が繋ぎ、マーカーを外した三富のシュートは深谷がキャッチ。47分は新潟明訓の決定機。今度は右から稲見のロングスローが発動され、こぼれを関口が拾い、白沢雅人(3年・FC五十嵐)の左クロスを小竹がヘディングで枠に収めるも、「ボールが来たら止めようということだけ考えていていたので、反応というよりは反射的に体が動いた感じ」という深谷がビッグセーブ。さらに関口の右CKが生んだ混戦から、再び小竹が至近距離から狙ったシュートは深谷が体で執念のブロック。「片手で止めたシーンの後だったので、『次のプレーで決められたら意味がないぞ』というのはみんなに言っていた」という守護神の連続セーブ。スコアは変わりません。
52分に新潟明訓は2人目の交替。今井と皆川侑也(3年・グランセナ新潟FC)をスイッチして、中盤もより攻撃的にシフト。52分は新潟明訓のカウンター。相手のCKを弾き返すと、関口が独力で40m近く運んだものの、やや押し上げが間に合わずにシュートまで行けず。53分も新潟明訓。稲見のパスから関口が左足で狙ったシュートはクロスバーの上へ。55分は帝京長岡の決定的なチャンス。バイタルで前を向いた楜澤が完璧なスルーパスを通し、ラインブレイクした荒井のシュートは杉本がファインセーブで応酬。57分は新潟明訓。皆川がトライしたミドルがこぼれると、いち早く反応した榎並のシュートは枠の左へ外れましたが、三膳と坂井雄大(3年・FC五十嵐)のセンターバックコンビを中心に守備も安定し始め、手数を繰り出すのは新潟明訓。
ところが、61分の咆哮はまたも帝京長岡。左サイドで奪った後半1本目のCKを安田が丁寧に入れると、小泉の折り返しをニアに突っ込んだ小林がヘッド。ボールはゴールネットへ飛び込みます。「替えの利かない選手。1年間使い続けて良くなってきた」と古沢監督も評する安田が3ゴールに絡む大活躍を見せれば、小林は昨年の決勝でゴールを記録した兄の小林拓夢(東洋大)に続いて、2年続けての"兄弟ゴール"。両者の点差は4点に開きました。
お互いに切り合うカード。62分は帝京長岡。ゴールを決めたばかりの小林に替えて、小塚祐基(3年・長岡JY FC)を中盤へ。63分は新潟明訓。右サイドバックで奮闘した小林将真(3年・FC五十嵐)と入山慶斗(2年・新潟上山中)をスイッチして、何とか1点ずつ返していきたい所ですが、65分には楜澤、70分には再び楜澤のスルーパスから荒井と、続けて杉本がファインセーブで回避したものの、チャンスは帝京長岡に。残された時間は10分間とアディショナルタイム。意地を見せたい新潟明訓。やり過ごしたい帝京長岡。
71分に榎並と落合毅人(1年・アルビレックス新潟JY)を、74分に小竹と内藤和輝(3年・FC五十嵐)を相次いで入れ替えた新潟明訓は、76分に絶好のチャンス到来。関口の右クロスから、エリア内で粘った三富が倒されると、主審はPKを指示します。キッカーはキャプテンの関口。左スミを狙ったキックは、しかし「谷口(哲朗)先生がこれまでのプリンスの試合とかを見て、関口選手はあそこに蹴るということを伝えて下さったので、こっちに飛んでくるなというのはわかった」という深谷が完璧なセーブで仁王立ち。「『キター!』って感じでした。止めた後にみんな寄ってきてくれて、キーパーの醍醐味なのかなと思いました」と笑う守護神のビッグプレー。続く帝京長岡の大会無失点。
77分に古沢監督は2枚替え。木村と荒井の3年生コンビを下げて、安井嶺芽(3年・長岡JY FC)と中林三汰(3年・FC CEDAC)のこちらも3年生コンビをピッチヘ解き放つと、79分には楜澤と野本も入れ替え、ゲームクローズに着手。何とか1点が欲しい新潟明訓も、80+1分に稲見が2回続けて左ロングスローを投げ込むも、シュートには至らず。そして、80+4分に皆川が直接FKをクロスバーの上へ外した直後に、吹き鳴らされたのはファイナルホイッスル。「本当にこの良いスタジアムで、あの応援がある中で最高の経験ができて、そこで勝てて良かったなと思います。あの応援には鳥肌が立ちました」と楜澤も言及した応援の一体感も含めて、ビッグスワンを支配した帝京長岡に凱歌。インターハイ予選に続く大会無失点の勲章も手にしつつ、3年ぶりの全国切符を奪い取る結果となりました。


「立ち上がりはウチの方が良かったと思うんですよね。なかなかこういう試合もなくて、逆に危ないなと思った所もありました。あそこで点が取れていれば面白かったんですけど、良過ぎたのにシュートで終われなかった部分とか、そういう所はまだ未熟だなと思いました」と語った田中監督。その立ち上がりの良い流れを掴んでいた10分で先制していれば、まったく違う展開になっていたかもしれませんが、「自分は『0-2まではOKだよ』と常に言っているんですよね。今年は常に追い付けていたので。ただ、組織として戦うチームだったので、慌てさせたくなかったんです」と指揮官が続けたように、あの7分間での3失点は想定外。そのビハインドが最後まで重くのしかかる格好になってしまいました。それでも彼らには、12月に北信越王者として臨むプレミア参入戦が残されており、3年生にとっては後輩に大きなプレゼントを残すチャンスがまだ。広島の地での健闘を祈りたいと思います。
帝京長岡には決勝の前日に、チームの結束をより強くする出来事がありました。それはミーティング時の"サプライズ"。「3年生のメンバーに入らなかった人がビデオを作ってくれて、昨日はそれを見て全員泣きました。3年生のメンバーに入らなかった人たちの気持ちというか、そういうものが1人1人入っていて、『まだサッカーをしたいから絶対勝ってくれ』ということで、それを見て『絶対に負けられないな』と思いました」と楜澤が明かせば。「それを見る前にも『出られない3年生の冬を終わらせないためにも頑張ろう』という気持ちはあったんですけど、そのモチベーションビデオを見て、『本当にコイツらとまだサッカーをやりたいな』という気持ちが全員に出て、全員で泣いて、『より頑張ろう』という気持ちになりました」とはキャプテンの深谷。実際に楜澤は先制点を挙げると、前述したように一目散にスタンドへダッシュ。「アイツらがいないと自分たちはここまで来れていなかったので、アイツらのおかげです」と感謝を口にした応援団と喜びを分かち合うシーンが印象的でした。3年ぶりの全国へ向けて、「毎年毎年勝つつもりでやっていて、今年のインターハイも含めて初戦敗退が多い中で、それでは発展はしていかないと思うので、今年の選手権はがむしゃらに、一つ一つどんな相手であろうとやれるだけの準備はしてきて、おごらずに一生懸命ウチらしくやって来たいと思います」と古沢監督。深谷も「県大会を通過しただけでは自分たちの代も歴史に残らないので、小塚さんの代のベスト8という記録を塗り替えて全国優勝して、帝京長岡の歴史に自分たちの名をしっかりと刻みたいです」と言い切った通り、狙うは頂点のみ。真剣に日本一を目指す新たな戦いが彼らを待っています。
1113bigswan2.JPG


土屋

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