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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
セミファイナルの第2試合はタイガー軍団に高崎の実力派が挑む構図。高崎経済大附属と前橋育英が顔を合わせる一戦は、引き続き敷島公園サッカー・ラグビー場です。
新人戦や県総体での戴冠は経験しているものの、不思議と全国に繋がる夏と冬の群馬は一度も制したことのない高崎経済大附属。今シーズンは新人戦こそベスト8で敗退したものの、県総体では堂々と準優勝まで駆け上がり、関東大会でもその後のインターハイで全国4強となった昌平に敗れたものの好ゲームを。さらに、インターハイ予選でもベスト4まで勝ち進むなど、着実に経験値を積み重ねており、今大会も準々決勝で優勝候補の一角に挙げられていた桐生第一をPK戦の末に撃破。悲願の全国出場をその視野に捉えつつ、チーム状態も上々の中で最大の難敵に立ち向かいます。
現在は選手権予選連覇中。過去に19度の全国出場を誇り、その内の5度はベスト4以上まで勝ち上がるなど、国内有数の強豪としてその名を知られる前橋育英。一昨年度はとうとう全国4強の壁を突破したものの、決勝では星稜に屈し、昨年度は準々決勝で対戦した國學院久我山に0-1でやはり惜敗と、こちらは全国制覇が宿願に。ただ、今シーズンはここまで県内3タイトルのすべてを逃しており、インターハイ予選はまさかの初戦敗退。チャレンジャーの意識で臨んだ今大会も、初戦で健大高崎を延長戦で何とか振り切ると、準々決勝の伊勢崎商業戦も2-0で抜け出し、このステージまで。「今大会も接戦をものにしているという意味では、良い経験をさせてもらっていると思いますよ」と話すのはおなじみ山田耕介監督。まずは県内を制するために、目の前の80分間へ全力で向かいます。敷島は徐々に冷たい風が吹き始める秋の装い。楽しみなセミフィナルは育英のキックオフでスタートしました。
開始早々から主導権を握ったのは育英。開始わずかに1分。左FKをレフティの田部井涼(2年・前橋FC)が蹴り込むと、突っ込んだ大塚諒(3年・横浜F・マリノスJY)も後藤田亘輝(2年・横浜F・マリノスJY追浜)もシュートには持ち込めなかったものの、迫力のあるシーンを創出。7分にもセンターバックの角田涼太朗(2年・浦和レッズJY)が素晴らしいフィードを送り、走った飯島陸(2年・クマガヤSSC)のシュートは、高経のセンターバックを務める蛭間育朗(3年・高崎エヴォリスタ)が体でブロックして、GKの小渕祐次郎(2年・図南SC群馬)が何とかキャッチしましたが、タイガー軍団が高い意欲を携えてゲームが立ち上がります。
15分も育英。飯島が左へラストパスを送り、走り込んだ吾妻怜(3年・クラブレジェンド熊谷)のシュートは枠の左へ。18分も育英。田部井の左CKに吾妻が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。19分も育英。ルーズボールを拾った大塚のミドルは枠の上へ。劣勢の高経も19分には自陣から間山涼也(3年・榛名中)がFKを蹴り込むも、角田がきっちりクリア。24分には1トップの飯塚大海(3年・高崎FC)が前線でタメを創り、中嶋佳生(3年・高崎FC)がスルーパスを送るも、走った飯塚には届かずに育英のGK月田啓(3年・前橋FC)がキャッチ。高経はシュートも遠い展開に。
圧力を掛け続けるタイガー軍団。25分には右から大塚がCKを蹴り入れ、飛び込んだ塩澤隼人(2年・FC東京U-15むさし)はシュートまで至らず。直後の右CKは大塚がショートで蹴り出し、渡邊泰基(2年・アルビレックス新潟JY)のリターンを大塚がクロスに変えるも、ここは猿渡壮磨(3年・高崎FC)が大きくクリア。26分にも田部井を起点に飯島がドリブルで仕掛け、大塚の好クロスは飯島とわずかに合わず。「チャンスが多い中で、自分たちはそれが点になっていないというのがある」とは育英のボランチを託された長澤昂輝(3年・サンフレッチェ広島JY)。育英が攻め続けるものの、スコアに変化はありません。
すると、29分には高経にビッグチャンス。中盤で前を向いた間山がスルーパスを送ると、加速した飯塚はマーカーより一歩前へ。放ったシュートは枠を捉え切れませんでしたが、あわやというシーンに意気上がる応援席。32分にもバイタルで粘った猿渡が強引なミドルを枠の上へ。33分にも相模純平(3年・高崎FC)のパスを、中嶋はダイレクトで裏へはたき、飯塚はここもわずかに触れず、月田がキャッチしましたが、「元々高崎経済大さんは粘り強く頑張る物凄く良いチーム」と山田監督も評価した高経にも、わずかに漂い出す先制の可能性。
37分は育英にセットプレーのチャンス。ピッチ右寄り、ゴールまで約25mの位置から、田部井が直接狙ったFKはクロスバーの上へ。40分にも田部井の右FKがファーヘ流れ、拾った大塚のクロスに長澤が当て切ったヘディングは枠の右へ。「前半のチャンスの所を決め切れなかったというのが、彼らのモチベーションを保たせてしまった感じがしましたよね」と山田監督。育英が優勢に進めた前半は、スコアレスのままで40分間が終了しました。
後半はスタートから双方に交替が。高経は右サイドバックで奮闘していた南雲凱斗(3年・FC KRILO)に替えて、坂本海京(3年・吉岡中)を最前線に送り込み、飯塚が右サイドハーフへ、猿渡が右サイドバックへそれぞれスライド。育英は吾妻を下げて、「足をやっていたんですよ。本当はもちろんスタートなんですけど、前半から使って途中で交替するよりも、途中から使って最後まで持たせた方がね」と山田監督も言及した高沢颯(3年・前橋FC)をそのまま左サイドハーフへ投入。共にアタッカーの顔触れに変化を加えて、残された40分間に向かいます。
すぐさま期待に応えたのは育英のナンバー9。42分にドリブルで運んだ高沢は、中島からのリターンを受けると、エリア外から躊躇なくミドルにトライ。ボールは絶妙な軌道を描いて、左スミギリギリのゴールネットへ滑り込みます。「最後の最後に仕事をしてくれるんじゃないかなと思って送り出した」とは指揮官ですが、良い意味で思惑の外れた投入直後の先制弾。育英が1点のリードを奪いました。
追い掛ける展開となった高経。43分には塩澤のスルーパスに飯島が抜け出し、GKの出鼻を浮かせたループはわずかに枠の右へ外れ、応援席からも安堵のため息が。ただ、45分には間山の左CKが混戦を生み出し。最後は長澤が懸命にクリア。直後にも猿渡が左からロングスローを投げ込み、DFのクリアに遭ったとは言え、「ロングスローで、またそのこぼれ球を拾って、またガーンと入れて、また競ってロングスローになってと、結構アレは圧力が掛かりますよね」と山田監督。見え始めた反撃の萌芽。
緑の歓喜は47分。ここも猿渡のロングスローに坂本が競って獲得した右CK。間山が丁寧に蹴り込んだボールを、ニアで猿渡がフリックすると、中嶋が必死に反応したシュートはそのまま左スミのゴールネットへ吸い込まれます。セットプレーのコンボから強奪した同点弾に狂喜するピッチとベンチと応援席。先制からわずかに5分。高経がスコアを振り出しに引き戻しました。
「やられるとしたらリスタートか、ボランチに預けたボールをかっさらわれてか、ミスパスしてトントンとやられるよと。その通りだったですね」と山田監督も嘆いたように、リスタートから失点を喫した育英。49分には田部井の左CKから、こぼれを狙った飯島のシュートはDFが弾き、小渕のクリアを角田が叩いたボレーは枠の左へ。52分には2人目の交替として、塩澤と長身FWの人見大地(3年・ヴェルディSS小山)をスイッチ。53分は高経。間山の左FKから飯塚と相模が残し、池田悠真(3年・高崎FC)のミドルは月田がキャッチ。一進一退。白熱の展開。
54分は育英。後藤田の右アーリーに、人見が力強く合わせたヘディングはゴール右へ。56分は育英のビッグチャンス。人見が強引に仕掛け、ルーズボールを拾った飯島が少し運んで枠へ収めたシュートは、小渕がファインセーブで仁王立ち。逆に63分には高経に千載一遇の逆転機。相模が左へスルーパスを通すと、完全にフリーで抜け出した坂本はGKと1対1に。それでも、「ファーストタッチである程度距離を詰めようと思ったので、そこがポイントだなと」感じた月田は距離を積め、坂本のシュートを左手一本で掻き出す超ビッグセーブ。「あそこで決められたら、相手も流れに乗って勢い付いてしまって、こっちも厳しくなるかなと思ったので、出られないメンバーとかベンチに入れていないメンバーとかの顔とかが浮かんできて、『止めてやろう』と思いました」という守護神の好守。スコアは変わりません。
育英3枚目の交替はアクシデント。64分に接触プレーで負傷し、プレー続行が難しくなった大塚が下がり、ルーキーの室井彗佑(1年・横河武蔵野FC JY)が右サイドハーフへ入って、大塚のいたボランチには田部井がスライドしましたが、「キャプテンですからね。精神的な柱なので」と指揮官も信頼を寄せる大塚をタイガー軍団は失うことになります。
それでもここからは育英のラッシュ。65分にこちらは渡邉がロングスローを投げ込み、こぼれを叩いた田部井のシュートは枠の右へ。67分に田部井がマーカーを外してミドルを打ち込むも、クロスバーの上へ。72分と73分に田部井が続けて蹴ったCKも、前者は小渕がパンチングで、後者は猿渡がクリアで確実に回避。74分に田部井の浮き球を人見が落とし、高沢が打ち切ったシュートは高経の左サイドバックを務める川野史暉(3年・高崎FC)が決死のブロック。77分に長澤のパスに高沢が走るも、カバーに入った高経のセンターバック高橋慶伍(2年・前橋FC)が確実にクリア。直後に人見が打ったミドルも枠の上へ。80+3分のラストプレー。角田のFKを人見が残すも、高橋が大きくクリアすると、しばらくして吹き鳴らされた80分間の終わりを告げるホイッスル。「あれだけ入らなくて、向こうも絶対に行けるという雰囲気にしちゃったという感じですよね」とは山田監督。セミファイナルは前後半10分ずつの延長戦へともつれ込むことになりました。
延長前半も攻勢は育英。82分に飯島が左から中央へ潜り込み、そのまま放ったシュートはゴール右へ、84分にも前を向いた飯島はミドルレンジからフィニッシュにチャレンジすると、ブラインドになったボールに小渕は懸命に食らい付いてファインセーブ。85分にも高沢が左CKを蹴り込み、ここも高橋が必死にクリアしましたが、「延長に入る前にみんなで「大地をターゲットにするのは良いけど、もう1回自分たちでパスを繋ぎながらゴールを目指そう』という話になってから、良い形が出てきた」と長澤。ジワジワと高経を侵食する育英の圧力。
86分の主役は「サンフレッチェのユースに行けなくて、高校サッカー選手権に出たいなという気持ちでここに入ってきた」という広島からの刺客。右サイドから後藤田の入れたクロスがこぼれると、ゴールまで30m近い距離でボールを収めた長澤は「シュートが少なかったので、打てば何か起こるかなと思って『もう打っちゃえばいいかな』と」右足一閃。無回転気味に左スミを襲ったボールは、鮮やかにゴールネットへ突き刺さります。「一瞬僕も『打つな!』という感じだったんですけど、思い切った良いシュートでしたね」と山田監督が笑えば、「弾道は蹴った瞬間に『あ、入った』みたいな感じでしたね」とやはり笑顔は殊勲の長澤。凄まじいゴラッソが飛び出し、タイガー軍団が再び1点のリードを手にしました。
苦しくなった高経は89分に、ロングスローで相手を苦しめた猿渡と海老沼竣(2年・高崎並榎中)をスイッチして、何とか推進力の回復を狙いますが、手数を繰り出すまでにはなかなか至らず。96分には人見のパスに抜け出した室井のシュートを小渕が必死に触り、こぼれたボールを高橋がライン上でクリアするものの、押し返し切れない厳しい流れ。97分に川野と杉本昌太(2年・高崎FC)を3人目の交替として入れ替えるも、延長は1本のシュートも記録されず。99分にセンターバック起用の多い浅賀祐太(3年・浦和レッズJY)を4人目の交替としてピッチヘ解き放つ手堅い采配で、松田陸(2年・前橋FC)と角田のCBコンビを軸にゲームをクローズしたタイガー軍団に凱歌。「逆にこっちの方がオタオタ慌てちゃって、こういうゲームになるよなと思いますよね。まあ最後にちゃんと決めてくれたのでね」と山田監督も苦笑を浮かべた育英が延長戦を制し、3連覇に王手を懸ける結果となりました。 土屋
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