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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
東京の高校選手権予選もこの一戦が正真正銘のラストマッチ。駒澤大学高と帝京が6年ぶりに全国を懸けて争うファイナルは駒沢陸上競技場です。
2年生中心で臨んだ昨年の選手権は大躍進。5年ぶりの全国にもかかわらず、並み居る強豪を相次いで撃破し、最後は絶対王者の東福岡に惜敗したものの、日本中にその名を知らしめることとなった駒澤大学高。「勝って当たり前のチームと見られたりとか、今年は本当にプレッシャーがあった」と大野祥司監督も苦笑いした今シーズンは、関東大会制覇という最高のスタートを切った中で、インターハイ予選では関東第一に0-1で敗れて全国出場には至らず。迎えた今大会も初戦は大成に苦しめられながらも、何とか1-0で切り抜けると、専修大附属を5-0で下し、先週の準決勝は難敵の東京朝鮮から4ゴールを奪う完勝で堂々ファイナルへ。「このチームには数が本当にたくさんいて、それがまとまれば怖いものはないと思うので、その数を力にして、決勝もしっかり勝っていけるようにやっていきたいです」と話すのは長井虎之介(3年・Forza'02)。一戦必勝の気持ちで帝京退治に向かいます。
最後に全国優勝を勝ち獲ったチームで主将を務めていた日比威監督も就任3年目。昨年の選手権予選では5年ぶりに決勝へと勝ち上がり、國學院久我山との激闘の末、PK戦で惜しくも涙を飲みましたが、確実に復権の狼煙を上げつつある帝京。今シーズンは関東大会予選、インターハイ予選となかなか結果が付いてこなかったものの、今大会は初戦で優勝候補の一角に挙げられていた國學院久我山を、中瀬大夢(3年・FCトリプレッタJY)の決勝ゴールで1-0と撃破。続けて修徳を4-1、インターハイ東京代表の東海大高輪台を1-0と倒し、準決勝では今年の東京に旋風を巻き起こした都立東大和南を3-0で退け、2年連続でのファイナルまで。「もう1つチャレンジできる機会を得たので、もう1回歯を食いしばってやるしかないですね」とは日比監督。7年ぶりの戴冠へ機は熟しています。スタンドには何と9148人の大観衆が集結。泣いても笑ってもラストマッチ。楽しみな80分間は駒澤のキックオフで幕が上がりました。
ファーストチャンスは駒澤。5分に高橋勇夢(3年・Forza'02)のクロスを、影山克明(3年・ヴェルディSSレスチ)が合わせたヘディングは枠の左へ外れましたが、直後に絶好の先制機。ルーズボールを収めた矢崎一輝(3年・大豆戸FC)がエリア内へ侵入すると、DFともつれて転倒。主審はペナルティスポットを指し示します。キッカーは高橋。「PKも自分で研究したりして、PKは運という人も結構多いんですけど、自分はForzaの時に『PKも運じゃなくて実力だ』とずっと教わってきたので、そこに関しては練習から意識してやってきています」というキャプテンは、GKの逆を突いて冷静に左スミのゴールネットへボールを流し込みます。「この1年間外したことがないので、信じて見守っていました」と指揮官も言及したPKキッカーの高橋は、これで脅威の選手権予選4戦連発。早くも駒澤が1点のリードを手にしました。
いきなり追い掛ける展開となった帝京。9分には準決勝でスーパーなキック精度を誇った萩原健太(3年・ザスパクサツ群馬U-15)が左FKを蹴り込むも、駒澤のGK鈴木怜(3年・S.T.FC)がしっかりキャッチ。16分にも萩原の左FKを菅原光義(2年・S.T.FC)が頭で繋ぎ、サントス・デ・オリベイラ・ランドリック(1年・Clube Andraus Brasil)の枠内ヘッドはここも鈴木がキャッチ。18分にも中瀬が右から蹴り入れたCKは、三たび鈴木にキャッチされたものの、カナリア軍団がセットプレーで窺う駒澤ゴール。
25分は駒澤。レフティの村上哲(3年・FC府中)が入れた右FKに高橋が飛び込むも、判定はオフェンスファウル。31分も駒澤。影山が粘って残し、西田直也(2年・横浜F・マリノス)が左足で狙ったシュートは枠の右へ。33分も駒澤。村上の左CKは鋭くゴール前を襲うも、帝京のセンターバックを務める五十嵐陸(3年・FCトッカーノ)が大きくクリア。「前線で影山もボールが収まって、矢崎も前を向いて仕掛けるシーンが多かった」とは高橋。変化しないゲームリズム。
38分も駒澤。村上のフィードに影山が走るも、懸命に戻った萩原がきっちりカット。40分も駒澤。高橋が投げ入れた右ロングスローから、エリア内で粘って収めた矢崎のシュートはわずかにゴール右へ。直後も駒澤。栗原信一郎(3年・FC多摩)のパスを受けた高橋は、シュート気味のクロスを送るもクロスバーの上へ。「立ち上がりに良い形で入れて、ああいう形で点も取れて、そこでもう1個ギアを上げると同時に、もう1回締め直そうというのをピッチ内で多く言っていた」とは駒澤のセンターバックを任されている佐藤瑶大(3年・FC多摩)。ペースを手放さなかった駒澤が1点をリードして、最初の40分間は終了しました。
ハーフタイムを挟むと、いきなり後半開始早々の決定機はカナリア軍団。42分に左から五十嵐が蹴り込んだFKは、密集を越えてファーサイドまで。走り込んだ萩原のヘディングはわずかに枠の右へ逸れ、思わずベンチも頭を抱えましたが、いきなりの決定的なシーンにどよめくスタンド。48分にも中瀬が右CKを蹴り込み、この一連ではシュートまで持ち込めなかったものの、53分にはランドリックと中瀬の連携から再びCKを奪い、左から中瀬が入れたキックはDFにクリアされるも、前半より明らかに見えてきた同点への道筋。
54分は帝京に1人目の交替。前線で奮闘した小田楓大(3年・足立第四中)に替えて、遠藤巧(3年・横浜FC JY)の投入でサイドアタックへの推進力向上へ着手するも、57分の決定機は駒澤。高橋の右ロングスローを影山がフリックすると、矢崎は中央でフリーに。左足で右スミを狙ったシュートは、至近距離にもかかわらず、準決勝後に「決勝で勝つということが一番の目標で、これまでの4試合は過程」と言い切った帝京のGK和田侑大(2年・FC東京U-15むさし)が左手一本で超ファインセーブ。原田祐次郎(3年・S-P.FUTE)と五十嵐のセンターバックコンビと和田を中心に追加点は許さない帝京ディフェンス。1点差は変わりません。
すると、59分に帝京へ訪れた絶好の同点機。ランドリックが右へ付けると、上がってきたサイドバックの関口海(3年・FC.VIDA)はニアの山を越える好クロスを供給。しかし、フリーで飛び込んだ遠藤のヘディングは鈴木ががっちりキャッチ。これを見た日比監督は一気に2枚替えを決断。インテリオールで効いていた高橋心(3年・A.N.FORTE)と萩原を下げて、三浦颯太(1年・FC東京U-15むさし)と佐々木大貴(1年・FC東京U-15むさし)をピッチヘ解き放ち、ルーキーコンビをアンカーの前に並べる形で勝負に打って出ます。
67分は帝京。中瀬の右クロスに、ニアへ突っ込んだ遠藤のシュートはヒットせずに鈴木が丁寧にキャッチ。69分は駒澤。矢崎がミドルレンジから狙ったシュートは和田がキャッチ。同じく69分は帝京。遠藤の思い切ったミドルはゴール左へ。ここからお互いに切り合うカード。71分は駒澤。「交替をしないであのまま粘ろうかなと思ったんですけど、村上がイエローをもらってしまったので、2枚目が出て10人になると厳しいかなと思った」という大野監督は、その村上と菊地雄介(3年・VIVAIO船橋)を入れ替え、長井を左サイドバックに下げて、菊地は左サイドハーフへ。74分は帝京にとってラストカード。アンカーで存在感を発揮し続けた菅原と市川雅(3年・ジュビロSS浜松)をスイッチして、最後の勝負へ。76分の駒澤は矢崎に替えて、米田泰盛(3年・VIVAIO船橋)を右サイドハーフに送り込み、取り掛かるゲームクローズ。
77分は駒澤。右サイドから米田がクロスを上げ切ると、ファーに突っ込んだ菊地のダイレクトシュートは枠の左へ外れましたが、「菊地も米田も悪くないですからね」と大野監督も名指しした交替出場の2人でチャンスを創出。78分に駒澤は3人目の交替。影山と入れ替えた服部正也(3年・S.T.FC)をボランチに送り込み、強化させた中盤の安定感。79分にも長井が右から入れたCKは、中央と合わずにそのままファーヘ。直後にも米田のパスから菊地が打ち切ったシュートは、DFに当たって和田がキャッチ。いよいよファイナルもクライマックスへ向かう最終盤に。
執念を見せたい帝京の意地。80分に青柳寛巳(3年・ESA)のFKをGKがファンブルしてCKを得ると、右から中瀬が蹴り込んだキックはDFが大きくクリア。80+2分にも左から中瀬がCKを放り込み、佐藤が掻き出したボールを青柳が押し戻すも最後はオフェンスファウルの判定。鈴木、佐藤、齋藤我空(1年・Forza'02)のトライアングルを中心に、駒澤が築き上げてきた守備陣に破綻の色なし。
大トリは「リーグ戦は1点も取っていないんですけど、こういう大舞台は好きみたいですね」と指揮官も笑って評した男の『3戦連発』。80+3分、ボランチで存在感を発揮した武智悠人(3年・Forza'02)がヘディングで前へ押し返したボールを、左に開いた米田が体を張って収めながら中へ送ると、待っていた西田の左足シュートは右スミのゴールネットへ吸い込まれます。「西田が足を攣っている素振りを見せていたので、影山を残そうか西田を残そうか迷ったんですけど、神様が西田って言ってくれて、そうしたら点を取ってくれたので、運も味方に付いてくれたのかなと思います」と大野監督も口にした西田の追加点で勝負あり。「失点しそうで失点しなかったのは、最近の自分たちが改善できているのかなと思います」と佐藤も話したように、4試合連続完封という盤石の強さで勝ち獲った優勝旗。駒澤が同校初の東京連覇を達成する結果となりました。
2年連続で決勝敗退となった帝京ですが、彼らの健闘を見逃す訳にはいきません。事あるごとに「どう考えてもこの土俵には立てないようなスタートのレベルだった」と話してきた日比監督も、準決勝終了後には「3年生が少しずつ何かのキッカケで変わってきたのは事実かもしれないですね」と成長の手応えも口に。キャプテンマークを託され、2年続けて決勝のピッチに立った中瀬は「決勝で負けたら1回戦で負けたのと一緒。素直に悔しいです」と赤い目で話してくれましたが、今大会初戦の國學院久我山戦まではなかなか出場機会を得られなかった3年生が、その初戦での勝利を自信に、このシーズン最終盤に来てパフォーマンスを明らかに向上させながらここまで来たことは、大いに誇って欲しいと思います。今シーズンの東京高校サッカー界を最後まで盛り上げてくれたカナリア軍団の3年生に、大きな拍手を送らせて下さい。
「何とか全国の切符を獲れたので、今日だけは褒めてきましたけどね」と大野監督も笑った駒澤は、圧倒的な実力を見せ付けての大会連覇。「私も19年目ですけど、これだけ戦力があったのは初めてですね」と指揮官が続けて語った通り、ケガ人続出で多くの選手に出場機会が巡ってきた中で、その選手たちが代役以上の活躍を披露してきたことで、気付けば選手層は都内随一の陣容に。この日も替わって入った選手が揃いも揃って躍動し、米田はアシストという目に見える結果で勝利に貢献。このサイクルは非常に理想的なものであり、全国までの2ヶ月弱の期間でもさらなる激しいポジション争いが繰り広げられるのは間違いありません。試合後、80分間途切れることなく声援を送り続けてくれたスタンドと選手たちが"ラインダンス"で喜びを共有していましたが、これに関して大野監督は「昨日約束したんです。『もし優勝したら胴上げなんかいらないから、一緒にラインダンスしよう』って。アイツらが関東大会で優勝した時にやっていたんですよ。僕はここで満足したらダメだと思って、サッとロッカールームに行ったんですけど、ビデオを見たら『コレいいなあ』と思って(笑) それで今日はあの流れになったんですけどね」と事の顛末を。「楽しかったですか?」という問いに、少し恥ずかしそうに「いいですよね」と笑った指揮官。さらなる一体感を手に入れた駒澤が目指すのは「全国に出ることだけではなくて全国制覇」(高橋)です。 土屋
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