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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
駒沢陸上競技場への最後のイスを懸けたセミファイナルは都内屈指の強豪対決。駒澤大学高と東京朝鮮のガチバトルは味の素フィールド西が丘です。
初めて冬の全国への扉を開いた第88回大会以降、実に4度の西が丘を経験し、昨年度は全国ベスト8まで進出するなど、近年で都内におけるその地位を完全に確立した感のある駒澤大学高。迎えた今シーズンは、関東大会予選でT1勢を4校撃破して東京を制すると、そのまま関東大会でも優勝を勝ち獲り、上々のスタート。ただ、インターハイ予選は準決勝で関東第一に0-1で惜敗し、全国出場には届かず。連覇を狙う今大会は初戦で大成を1-0と何とか振り切り、準々決勝は専修大附属に5-0と完勝を収めて、この西が丘まで。「ここからは上手いのは当たり前の世界で、"責任感"とか"戦う"とか、"チームのための犠牲心"とか、そういうのが最後に紙一重を決めると思うんですよね」と話すのは大野祥司監督。まずはこの難敵とぶつかるセミファイナルへ全力で臨みます。
高体連加盟直後の第76回大会でいきなり準優勝に輝いて以降、例年のように好チームを創り上げては来ているものの、なかなかファイナル進出に届いていない東京朝鮮。昨年度もインターハイ予選、選手権予選と共にベスト4まで勝ち上がりましたが、あと一歩の所で全国への扉をこじ開けるまでには至らず。今シーズンは関東大会予選、インターハイ予選と揃ってベスト8で敗退。悲願の初タイトルを目指す今大会は多摩大目黒、東亜学園を続けて1-0で退けて2年連続の西が丘へ。リャン・ヒョンジュ(3年・大宮アルディージャJY)、キム・テウ(3年・西東京朝鮮第一中)とU-19北朝鮮代表でアジアの舞台を経験してきた2人も帰還し、「東京朝鮮念願の全国」(高隆志監督)にはあと2勝まで迫っています。楽しみな一戦に西が丘のスタンドは5433人の大入り満員。注目のセミファイナルは東京朝鮮のキックオフでスタートしました。
「最初はハイサイドを徹底して、前からプレスして拾ったら動かせでやっていた」と大野監督も話したように、立ち上がりは長いボールが行き交う展開に。10分は駒澤。ピッチ右寄り、ゴールまで約25mの位置から村上哲(3年・FC府中)が直接狙ったFKは枠の右へ。13分は東京朝鮮。リャン・ヒョンジュが右へ振り分け、リ・トンソン(3年・東京朝鮮第五中)のクロスをチョン・リョンホ(3年・埼玉朝鮮中)が頭で折り返し、パク・チャンフン(3年・第一学院高)のボレーはクロスバーを越えましたが、形は違えどお互いにフィニッシュを取り合います。
すると、先にスコアを動かしたのはディフェンディングチャンピオン。14分に村上が蹴ったCKの流れから、左へ流れたルーズボールを村上が頭で中央へ押し返すと、西田直也(2年・横浜F・マリノスJY追浜)が左足で狙ったループは、GKの頭上を破ってゴールネットへ吸い込まれます。「1個ポジションが上がったということもあって、シュートチャンスが多いのでゴールを狙ってはいます」と話す、昨年の全国をセンターバックで経験したボランチはこれで2戦連発。早くも駒澤が1点のリードを手にしました。
追い掛ける展開となった東京朝鮮。「前半は良い流れだったと思う」と高監督も話した通り、以降もアタックの流れはむしろ彼らに。19分にはリ・トンソン、カン・ガンホン(3年・東京朝鮮中)とボールを回し、チョン・リョンホが上げたクロスは駒澤のGK鈴木怜(3年・S.T.FC)にキャッチされたものの、迫力あるサイドアタックを。21分にもリャン・ヒョンジュの左CKは鈴木がパンチングで掻き出し、こぼれを拾ったムン・インジュ(2年・埼玉朝鮮中)のパスから、ニアを狙ったリャン・ヒョンジュのシュートは鈴木がキャッチ。25分にも右からリャン・ヒョンジュがFKを蹴り込み、ここは村上が大きくクリアしましたが、リャン・ヒョンジュの推進力を生かしつつ、リズムはやや東京朝鮮へ。
28分は駒澤。右サイドバックの高橋勇夢(3年・Forza'02)が、強引に放ったミドルは枠の右へ。29分も駒澤。左から村上が丁寧に入れたクロスへ、飛び込んだ栗原信一郎(3年・FC多摩)のヘディングは東京朝鮮のGKチュウ・サンホン(2年・神奈川朝鮮中)が丁寧にキャッチ。36分は東京朝鮮。レフティのリ・トンソンが蹴り込んだFKは、駒澤のセンターバックに入った佐藤瑶大(3年・FC多摩)が大きくクリア。38分も東京朝鮮。プ・チウ(2年・東京朝鮮第五中)の絡んだアタックから、リ・トンソンの巧みなスルーを経て、カン・ガンホンがエリア内へ潜るも、フィニッシュは佐藤がきっちり間合いを詰めて体でブロック。「今までも準決勝はゼロに抑えないと勝ち上がれなかったですからね」と大野監督。最後の局面は佐藤と齋藤我空(1年・Forza'02)のセンターバックコンビを軸に、しっかり抑えてやらせない駒澤。
そんな中で赤黒軍団2度目の歓喜は前半終了間際の40分。左サイドを駆け上がった長井虎之介(3年・Forza'02)は、中央を見据えるとピンポイントクロス。ここに飛び込んだ影山克明(3年・ヴェルディSSレスチ)のボレーは、鮮やかにゴールネットを揺らします。「影山からは試合前にも『ボールを持ったら中を見てくれ』と言われていたので、そこでうまく合ったという感じですね。練習でもクロスシュートを多くやっているんですけど、その良い形がそのまま出た感じです」と長井も手応え十分の一撃は貴重な追加点。駒澤がリードを2点に広げて、最初の40分間は終了しました。
ハーフタイムに動いたのは東京朝鮮。カン・ガンホンに替えて、ピョン・ヨンジュ(3年・西東京朝鮮第一中)を最前線に送り込み、右サイドバックのキム・ソンホ(3年・東京朝鮮第五中)とボランチのパク・チャンフンのポジションも入れ替えて、残された40分間へ臨む反撃態勢を。49分には右サイドでマーカーを外したリャン・ヒョンジュがマイナスに折り返すと、ピョン・ヨンジュのボレーはの上へ。56分にもキム・ソンホが右クロスを放り込み、粘ったムン・インジュのシュートは鈴木がキャッチ。追撃弾への意欲を滲ませます。
一気に双方が切り合ったカード。57分は駒澤。栗原を下げて米田泰盛(3年・VIVAIO船橋)をそのまま右サイドハーフへ。58分は東京朝鮮。キム・ソンホとケガを抱えたクォン・ジュンソク(3年・山梨学院高)を入れ替え、クォン・ジュンソクとチョン・リョンホの2トップに移行。60分は駒澤。こちらは直前にイエローカードをもらった武智と小池浩然(3年・大豆戸FC)をスイッチさせる、少し先を見据えた采配も。62分は駒澤のアタック。西田、影山、菊地雄介(3年・VIVAIO船橋)と細かく繋ぐと、米田の右クロスをファーで西田が残し、長井のシュートは枠の左へ逸れましたが、徐々にペースを取り戻す駒澤の力強さ。
3点目の主役は右サイドバックの"点取り屋"。66分に右CKを長井が蹴り込み、一旦は東京朝鮮のセンターバックに入ったチョン・ユギョン(1年)がクリアしましたが、村上が押し戻したボールを西田が繋ぐと、高橋が右足で振り抜いたボールはGKも弾き切れずに、左スミのゴールネットへ転がり込みます。これで高橋は初戦から何と3戦連発。「結構去年も選手権の都予選ではゴールを取っていて、ゴールに対する強い想いがある」と話すキャプテンの追加点。大きな3点目が駒澤に記録されました。
苦しくなった東京朝鮮は67分に3枚目の交替。チョン・ユギョンに替えて、ハン・チュンヒョン(3年・東京朝鮮中)を投入し、何とか1点ずつ返していきたい所ですが、69分も駒澤は長井がわずかにクロスバーを越える約20mのFKを打ち込むと、70分にも影山のヒールを収めた小池がクロスを送り、長井のヘディングはクロスバーの上へ。さらに72分には菊地と矢崎一輝(3年・大豆戸FC)を入れ替え、全体の運動量向上を意図しながら取り掛かるゲームクローズ。
76分には意外な男の"右足"が。村上が丁寧にフィードを送り、走った矢崎が粘って残したボールから、「自分自身あまり右足で狙うこともないんですけど」という長井が利き足とは逆の右足で打ち切ったシュートは、右スミのゴールネットへ飛び込みます。「後ろから凄い応援があったので、その波に乗って入ったような感じですね」という長井の右足シュートで勝負あり。78分には東京朝鮮がカン・ユジュン(3年・東京朝鮮第五中)、駒澤が服部正也(3年・S.T.FC)をそれぞれ4枚目のカードとして切りましたが、そのままのスコアで吹き鳴らされたファイナルホイッスル。「凄い人数のチームメイトが応援してくれているので、そういう所を意識してチームのために頑張ろうという想いで頑張りました」と長井も一体感を強調した駒澤が、2年連続となるファイナルへと駒を進める結果となりました。
「スコアは4点決められましたけど、相手を苦しめた試合だったと思います」と高監督が話した東京朝鮮も、特に前半は互角以上の時間帯を創り出すなど、実力の一端は確実に披露。ただ、指揮官も「さすが駒澤さんで、2点目がなかったら面白かったんですけどね」と振り返ったように、前半終了間際に喫した2失点目が結果的には大きく勝敗に響いた印象を受けました。それでも2年連続のベスト4は大いに誇っていい成果。「2年連続で西が丘に連れてきてくれた、今の3年生には感謝しています」と口にした高監督は、「まだTリーグの最終試合があるので引退もさせませんし、Bの昇格戦もあるので、それまで頑張らせます。今日で終わりじゃないので」ときっぱり。我々ももう少しだけ彼ら3年生のプレーを見ることができそうです。
駒澤の3年生は全員が坊主頭でこの日のゲームに臨んでいました。そのことを長井に聞くと、「選手権に向けて全員でまとまらないといけないので、そういう意味で『3年生全員でまとまろう』と2週間ぐらい前に気合いを入れました」とのこと。これで遠目にはややそれぞれの区別が付きにくくなったものの、長井も「全員で気持ちを切り替えるという部分でも、まとまるという部分でも大事だと思います」と効果を口に。この日も凄まじい声援を送っていたスタンドとピッチの選手の一体感が、この勝利の追い風になっていたことは疑いようがありません。連覇を懸けたファイナルの相手は、駒澤が初めての全国出場を決めた時と同じ帝京。「帝京さんも今は勢いがあって強いと思いますけど、このチームには部員が本当にたくさんいて、それがまとまれば怖いものはないと思うので、その数を力にして、次の試合もしっかり勝っていけるようにやっていきたいです」と言い切ったのは長井。11月12日。駒沢陸上競技場。13時15分に決戦の火蓋は切って落とされます。 土屋
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