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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
同校史上初の東京4強に入った都立校が全国優勝6度の名門に挑む構図。都立東大和南と帝京が対峙する一戦は、東京高校サッカーの聖地・味の素フィールド西が丘です。
今シーズンの東京高校サッカー界で最大のサプライズとも言うべきは、この都立東大和南の大躍進。ここ数年のトーナメントコンペティションではなかなか支部予選や地区予選も勝ち上がることはできなかった中で、この春のインターハイ予選では支部予選から怒涛の5連勝で二次トーナメントまで駆け上がると、堀越を内容でも上回るゲームで2-1と撃破。最後は駒澤大学高に屈したものの、一気に注目を集めます。勢いそのままに挑んだ今大会も、初戦で都立日野台を7-0で退け、準々決勝では東京実業と3-3という壮絶な打ち合いの末に、PK戦を制して東京4強まで。「チームには信頼があるので、誰かミスしたら違う人がカバーしてという所をしっかり集中して、次も自信を持ってみんなの分まで戦います」と力強く語ったのは、東京実業戦でドッピエッタの活躍を見せた宮尾慧吾(3年・東村山第四中)。究極の下克上、すなわち全国切符の強奪を真剣に狙います。
あえてその名前を出すまでもなく、高校サッカー界で知らない者はいないと言っても過言ではない、帝京が見せる復権の萌芽。昨年度の選手権予選も粘り強くファイナルまで勝ち進み、國學院久我山にPK戦で敗れたものの、改めてその"帝京魂"を都下に見せ付けた格好に。迎えた今シーズンは関東大会予選、インターハイ予選と共に早期敗退を強いられた中で、シーズン最後の今大会は昨年のファイナルと同カードとなった國學院久我山戦に1-0で競り勝つと、修徳に4-1、東海大高輪台に1-0と、東京制覇を知る難敵をなぎ倒してこのステージへ。「一戦必勝の気持ちで次もチャレンジャーとしてやるだけです」と語ったのは久我山戦と高輪台戦で共に決勝ゴールをマークした中瀬大夢(3年・FCトリプレッタJY)。まずは目の前の80分間へ全力で挑みます。フレッシュな顔合わせのセミファイナルに、駆け付けた観衆は4,289人。注目のゲームは帝京のキックオフでスタートしました。
5分のファーストチャンスは東大和南。斜めの動きで宮尾がFKを獲得すると、左から広瀬将一(3年・西東京保谷中)が蹴り込んだFKに阿部文哉(3年・JACPA東京FC)が飛び込むも、シュートには至らず。6分は帝京。右から萩原健太(3年・ザスパクサツ群馬U-15)が蹴り込んだFKはそのままゴール左へ。7分は東大和南。広瀬のパスから司令塔の平塚真史(3年・POMBA立川FC)が左へスルーパスを送り、田中大地(3年・東京久留米FC U-15)のクロスはラインを割ってしまったものの、得意のパスワークから悪くないアタックを。8分は帝京。左から市川雅(3年・ジュビロSS浜松)が蹴り入れたFKは、東大和南の右サイドバック池谷大地(2年・あきる野FC)がきっちりクリア。まずはセットプレーを中心に双方が探り合いながら立ち上がります。
12分は東大和南。平塚を起点に宮尾がスルーパスを通し、柿崎拓真(3年・羽村第一中)が懸命に走るもわずかに届かず、帝京のGK和田侑大(2年・FC東京U-15むさし)が丁寧にキャッチ。直後の12分は帝京。相手のクリアを拾った五十嵐陸(3年・FCトッカーノ)のミドルはゴール右へ。15分も帝京。市川の左FKに原田祐次郎(3年・SP.FUTE)が飛び付いたヘディングは、頭に当たり切らずに枠の右へ。16分も帝京。三浦颯太(1年・FC東京U-15むさし)が右から低いボールでFKを入れると、こぼれをさらった五十嵐のシュートはわずかにクロスバーの上へ。少しずつ目立ち始めた帝京の圧力。
さて、10分を少し回ったあたりから、いつも通りに岸本真輝(3年・JACPA東京FC)と飯島彪貴(3年・青梅霞台中)のセンターバックコンビに、GKの山本浩也(3年・日野第四中)を加えた3人で最後方からボールを動かし、テンポアップのポイントを探すいつものスタイルに舵を切った東大和南でしたが、「東大和南としては初めてですし、全くの初めての人も結構いて、意外と近くで見るとボコボコだった」と岸本も話した通り、慣れない"天然芝"のピッチにいつもより弱めのパスが散見。22分には右から広瀬がマイナスに入れた右CKに宮尾が飛び越えるスルーも、中央でDFがクリア。このこぼれを池谷が拾って縦に蹴り込み、飛び出した柿崎はオフサイドを取られましたが、1つ良い形を創出してみせます。
それでも「セットプレーの強さを感じた」と岸本が話したように、東大和南を押し込む帝京のセットプレー。25分に右から中瀬が入れたCKに、五十嵐が頭に当てたヘディングは枠の右へ。26分にも中瀬が蹴った右CKの流れから、三浦の左クロスをファーで原田が折り返すと、混戦からこぼれてゴールラインを割りそうになったボールは阿部が決死のクリア。31分にも中瀬の左CKは山本がパンチングで掻き出し、三浦が左へ繋いで中瀬が上げたクロスにファーで小田楓大(3年・足立第四中)が頭に当てるも、山本がキャッチ。押し込む帝京。耐える東大和南。
32分も帝京。右から三浦が蹴ったFKの流れから、サントス・デ・オリベイラ・ランドリック(1年・Clube Andraus Brasil)がエリア内へ侵入するも、ここは田中が決死のタックルで回避。直後の右CKを中瀬が蹴り込み、飯島のクリアをそのまま三浦が狙ったミドルは枠の右へ。39分は東大和南。クサビのボールに柿崎が潰れ、平塚が1つタメてスルーパスを送ると、3列目から飛び出した嘉規泰雅(3年・FC.VIGORE)のシュートは、良く戻ったDFが懸命にカット。「前半はああいう流れの中で、やられていてもおかしくないような展開ではあった」とは日比監督ですが、帝京がセットプレーを中心に押し込む時間の長かった前半は、スコアレスのままで40分間が終了しました。
「内容的には全然話になっていなかった前半だったので、ハーフタイムにはロッカーで『オマエらあり得ないだろ』ぐらいの感じで相当喝を入れました」という日比監督に気合いを入れ直されて、ピッチヘ飛び出してきた帝京が後半もまずは手数。42分には右サイドを中瀬がドリブルで運び、ルーズボールに反応したランドリックのシュートは岸本が体でブロック。直後には山本の繋ぐパスが乱れ、かっさらった中瀬のシュートは山本が自ら責任を取ってセーブしたものの、「アイツらも少し力が抜けたというか、何ができていないのかという部分が明確になって後半は入れたかな」と日比監督。ペースは依然として帝京に。
44分の歓喜を呼び込んだのは衝撃の軌道。右サイドで帝京が獲得したFKのスポットには萩原が。短い助走から蹴り込んだキックはまさにレーザービームのように空気を切り裂きながら、突っ込んだ原田の頭にドンピシャ。高い打点のヘディングはゴールネットへ吸い込まれます。「もっとファーに入れて折り返してというのは見ていたんですけど、アレは『オッ!』って感じでビックリしました」と和田も言及するほどの、萩原の驚異的なキックから3年生センターバックが一仕事。帝京が1点のリードを手にしました。
畳み掛けるカナリア軍団。48分は萩原が果敢なインターセプトから、縦に仕掛けて奪ったCK。右から中瀬がストレートに入れたキックに、ここもフリーになっていた小田がドンピシャヘッドで叩いたボールは、ゴールネットを力強く揺らします。「2発はセットプレーで入ったから、練習していた形なのかもしれないですけどね」と日比監督もニヤリ。あっという間に両者の点者は2点に広がります。
「相手のセットプレーは本当にどうしようもできないなと思った」と岸本も口にした"飛び道具"を披露され、2点のビハインドを負うこととなった東大和南は、50分に2枚替えを決断。広瀬と柿崎に替えて、上野零史(2年・FC.GONA)とジョーカーの住谷大輝(3年・清瀬第五中)を送り込み、中盤の構成力と最前線のスピードを生かす並びにシフトすると、直後の53分には決定機。平塚が左へ流したボールを田中はピンポイントでファーヘ。走り込んだ宮尾がボレーで叩いたシュートは、しかしゴール左へ。55分にも阿部が中央へ侵入し、住谷が右へ展開したボールを池谷が上げたクロスは和田がキャッチ。その和田とセンターバックの菅原光義(2年・S.T.FC)を中心とした帝京守備陣に崩れる気配はまったくなく、0-2というスコアは変わりません。
57分は帝京に1人目の交替。ランドリックを下げて、青木涼(3年・FCトッカーノ)をそのまま右サイドハーフへ投入すると、60分には中瀬の右FKにフリーで合わせたのは青木。頭に当てたボールは枠の左へ逸れたものの、あわやというシーンを投入されたばかりの14番が。さらに67分には2人目の交替として小田と山﨑大煕(3年・S.T.FC)をスイッチして、三浦と青木を中央に配し、右に山﨑、左に中瀬という布陣で攻守のバランス向上に着手。東大和南も68分には阿部と田中の連携で左CKを奪うも、平塚のキックを阿部がフリックしたボールはDFがクリア。直後の69分は帝京。青木が頭で残し、五十嵐のミドルは山本がファインセーブで回避。東大和南3人目の交替は69分。田中と服部凌大(2年・小平花小金井南中)を入れ替え、いよいよゲームはラスト10分間とアディショナルタイムへ。
70分は帝京。三浦、青木と繋いで五十嵐のミドルはクロスバーの上へ。75分は東大和南。服部、平塚とボールが回り、宮尾が左へ付けたボールは上野も触れず。77分には東大和南に最後の交替。岸本と都立最強センターバックコンビを形成してきた飯島に替えて、石川啓吾(3年・武蔵村山第四中)をそのままセンターバックへ。帝京も79分に佐々木大貴(1年・FC東京U-15むさし)、80+1分に桐生慶太郎(2年・クリアージュ)を相次いで送り込むと、最後に魅せたのは10番を背負った1年生。
80+2分に左サイドでボールを持った佐々木は、少し中に潜りながらそのままミドルレンジからループを選択。フワリと浮かせたボールはGKの頭上を破り、ゴールネットをゆっくりと揺らします。「今は壁にぶち当たっているけど、モノは多分持っていると思うし、アイツも想いはいっぱいあるだろうしね」と日比監督も言及した、今大会に入ってから定位置を失った1年生がゴラッソで存在感を大きくアピールし、ファイナルスコアは0-3。「どう考えてもこの土俵には立てないようなスタートのレベルだったので、少しずつ何かのキッカケで変わってきたのは事実かもしれないですね」と指揮官も確かな手応えを感じつつある帝京が、2年連続となるファイナルへの切符を力強く勝ち獲る結果となりました。
「久我山とやって、修徳とやって、高輪台とやって、東大和南とやって、1つずつ色々なチームとやれて本当にラッキーだなと。この東京大会を通じてチームが成長できるのは、僕たちにとっても良いことですし、そこは本当に感謝ですよね」と日比監督が言及したように、ここまで初戦から難敵ばかりを相次いで倒し、とうとう7年ぶりの全国に王手を懸けた帝京。この大会は3年生の活躍が目立っていますが、2年生守護神の和田も大きな存在感を放っています。特に80分間出し続けられる"声"は特筆すべき武器。「中学の時に練習試合で、1回自分の声でシュートゼロに抑えた時があって、それで『声でも十分守れるんだな』というのがわかったので、そこから声を出すようにしていた」中で、今年から名門のゴールマウスを任されることに。ただ「Tリーグの最初の方は、僕の声を聞いているフィールドの選手も『ちょっと嫌だな』と思うようなこともあって、それを指摘してくれた人もいた」とのこと。それを知ってからは「『こういう時にはもっと優しく言ったりしよう』とか、そういうのがわかったので、コーチングの質とかに関しては春先より上がっているのかなと自分の中では思います」と自身の成長を実感している様子。彼の"声"は今のチームにとって大きな武器になっていることは間違いありません。カナリア軍団が当然1週間後に狙うのは、1年前のリベンジと全国切符。「『次に勝たなければ何も意味ないよ』というのは言われていて、決勝に勝った時にやっと初めて『1つ通過できた』ということになるので、決勝で勝つということが一番の目標です」ときっぱり語ったのは和田。帝京復権の瞬間はすぐそこまで迫っています。
「向こうの方の子たちはやられようが何しようが、GKから繋いでポゼッションしようという努力を見てしまうと、帝京の方が逆にラッキーだったのかなと思います」と敵将の日比監督も評価を口にしたように、ある程度のスタイルは西が丘のピッチでも表現できた東大和南。それでも、岸本は「凄い負け惜しみになるから嫌なんですけど」と繰り返しながら、天然芝にアジャストし切れなかったニュアンスを言外に滲ませており、その"慣れ"の部分で少しボールを繋ぐことへの怖さが出てしまっていたようにも見えました。とはいえ、このボールを大切にするコンセプトに舵を切ってわずかに数ヶ月で、土のグラウンドでトレーニングを積みながら、スタイルの表現と東京4強という結果の両方を示してみせたのは大いに称賛されて然るべき。「本当にみんなが応援してくれて、最高の雰囲気が出来上がっていて、『凄く楽しかった』と選手のみんなも言っていました」と岸本。グリーンのサザンクロスがインターハイ予選から続けてきた大いなる冒険の終着駅は西が丘という最高の舞台。東京の聖地まで辿り着いた"普通の高校生たち"の今後に幸多からんことを。 土屋
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