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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年11月12日

高校選手権東京A決勝 関東第一×成立学園@駒沢陸上

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1112komazawa1.JPG悲願の初戴冠か。それとも11年ぶりの東京制覇か。首都の選手権予選もいよいよファイナル。関東第一と成立学園が激突する最後の一戦は駒沢陸上競技場です。
初めてのファイナルはPK戦での敗退。2度目のファイナルは後半終了間際に決勝点を許しての敗退。ここ数年は毎年のように優勝候補の一角にその名前を挙げられながら、1度も選手権予選の頂点には届いていない関東第一。インターハイでは2年連続で全国の舞台を経験し、満を持して臨んだ今大会は準々決勝で大苦戦。早稲田実業相手にラスト5分まで2点のリードを許す展開も、驚異的な粘りで大逆転勝ちを収めると、先週の準決勝は昨年度のこの大会で苦杯を嘗めた堀越に、3-1でリベンジを果たしてファイナルまで。3度目の正直を引き寄せるべく、重要な80分間へ向かいます。
こちらもインターハイでは全国へと駒を進めるものの、選手権予選ではファイナルで2度の敗退を突き付けられるなど、10年間に渡って東京王者から遠ざかっている成立学園。今シーズンは関東大会予選こそ本大会への出場権を獲得しましたが、インターハイ予選は全国の懸かった準決勝で東海大高輪台にPK戦で涙を飲んでおり、全国のラストチャンスとなるこの大会への意欲は十分。都立石神井を2-0で退けた初戦を経て、以降も実践学園に2-1、都立東久留米総合に1-0と接戦を制してこのステージまで。「決勝は彼らと3年間やってきたことを出すしかない」とは宮内聡監督。11年ぶりとなる晴れ舞台はもうすぐそこです。両者は今シーズンの公式戦で3度対戦しており、結果は1勝1分け1敗とまったくの五分。正真正銘、最終決着のファイナルバトルは成立のキックオフでスタートしました。


お互い少し慎重に立ち上がった序盤を経て、徐々にポゼッションで優位に立ったのは成立。センターバックの長草優之(3年・鹿島アントラーズつくばJY)と小山珠里(3年・成立ゼブラFC)がボールを回しながら、ポイントでボランチの大野泰成(3年・FCゼブラ)に入ると、長短のパスで左右前後に攻撃のスイッチを。7分にはその成立に決定機。ここも大野が縦へ流すと、鈴木亮祐(3年・AZ'86東京青梅)は思い切ってシュート。DFに当たったボールはGKの頭上を破りましたが、ここは懸命にカバーへ入っていた関東第一の左サイドバック佐藤大斗(3年・FC杉野)がライン上でスーパークリア。先制とは行きません。
以降も成立ペースで推移する中、「持たれることは決して怖くはなかったので想定内でした」とセンターバックの石島春輔(3年・JSC CHIBA)も話した関東第一は、縦方向に付けるパスがなかなか効果的に繋がらず。14分には冨山大輔(3年・FC習志野)の右FKがこぼれ、矢越隆晟(3年・三菱養和調布JY)が落としたボールを林健太(3年・FC.VIDA)がダイレクトで狙うもクロスバーの上へ。15分にも横パスをかっさらった菅屋拓未(3年・POMBA立川FC)がミドルを放つもゴール右へ。出てこないアタックのテンポ。
25分は成立。再三仕掛けていた左サイドでキャプテンの西羽開(3年・鹿島アントラーズつくばJY)が残し、鈴木龍之介(3年・成立ゼブラFC)が右足でクロスを送ると、エリア内で収めた森田裕也(3年・愛媛FC新居浜JY)が右へ持ち出しながら枠へ収めたシュートは、関東第一のGK内野将大(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)ががっちりキャッチ。27分は関東第一。冨山が左から蹴ったFKへ、走り込んだ石島はわずかに届かず。32分も関東第一。右CKを冨山が蹴り込み、DFのクリアを叩いた景山海斗(3年・FC.GLORIA)のシュートはクロスバーの上へ。「ある程度押し込まれた時のこともシステム的なこともやっていた」(小野貴裕監督)関東第一はセットプレーに活路を。
34分は成立。森田が右へ振り分け、中能健人(3年・成立ゼブラFC)の好クロスは石島が大きくクリア。35分も成立。鈴木龍之介のパスから萩原幹太(3年・成立ゼブラFC)がマーカーを外して右クロスを入れると、飛び付いた竹本大輝(3年・成立ゼブラFC)のヘディングは枠の左へ。37分も成立。大野の左CKがこぼれ、森田がそのまま打ち切ったボレーは枠の上へ。39分も成立。竹本からのリターンを受けた鈴木亮祐は右へ流し、萩原が枠へ飛ばしたシュートは内野がキャッチ。「なかなか絞り切れなくて、間をどんどん取られていたんですけど、ウチの後ろの4枚はあまりやられないとわかっていたので、想定内と言えば想定内でした」とは林。関東第一もある程度納得の成立ペースで推移した前半は、スコアレスでハーフタイムに入りました。


45分の先制弾は「あのシュートなんかはまったく想定外」と小野監督も驚くゴラッソ。関東第一の左CKを菅屋がストレートボールで蹴り込み、石島が競り勝って生まれたエリア内のルーズボールを篠原が頭で押し返すと、ゴールに背を向けていた林は「練習でもたまにボールが逸れたりしたらチャレンジしている」オーバーヘッドを敢行。綺麗な弧を描いた軌道はゴールネットへ吸い込まれます。「あんなのは見たことがないので、思わずこっちも『それ、やったことねえだろ』って(笑)」と指揮官も破顔一笑の一撃に、「最初は見えなかったので、キーパーが飛んで『越えたな』と思ったら入っていて、歓声があったので『入った』と思ったんですけど、ベンチかスタンドかどっちに行くか迷って、中途半端になっちゃいました」という林は結局「ちょっとスタンドに寄ってガッツポーズしました」とこちらも笑顔。押し込まれていた関東第一がスコアを動かしました。
ピンチらしいピンチはほとんどなかった中で、1点のビハインドを追い掛ける展開となった成立。47分には右から中能がクロスを入れるも、中央の混戦は石島が懸命にクリア。55分にも左サイドをドリブルで運んだ鈴木亮祐がマイナスに折り返すと、竹本のシュートは関東第一のセンターバックを務める鈴木友也(3年・VIVAIO船橋)が体でブロック。直後の左CKを大野が蹴るも、鈴木友也が跳ね返し、拾った大野のクロスも三たび鈴木友也が執念のクリア。56分には関東第一に1人目の交替。新藤貴輝(3年・フレンドリー)に替えて、重田快(2年・バンデリージャ横浜)を左サイドハーフへ送り込み、「相手の左サイドは嫌だったので、林がそこで攻撃に行けば今まで押し込まれていた所がちょっと相手も脅威に感じて1,2歩スタートが遅れるかなという感じ」(小野監督)で右サイドハーフに林をスライドさせ、攻撃性をもって相手の左サイドへの抑止力に。
58分は成立。小山が左のハイサイドへフィードを通し、抜け出した西羽のクロスは内野が丁寧にキャッチ。59分も成立。西羽のパスから鈴木亮祐が右足で入れた左クロスは、中央と合わずにゴール右へ。60分は成立に1人目の交替が。萩原を下げて、関東大会予選で関東第一を沈める先制弾を叩き込んだ高橋恒樹(3年・成立ゼブラFC)を送り込み、着手する裏への機動力アップ。68分は関東第一。左から景山が上げたクロスはファーまで届き、ワントラップした林のシュートは枠の右へ。スコアは1-0のままで差し掛かる熱戦のクライマックス。
69分は成立の狙う形。中央でボールを持った大野は、巧みなノールックで右へ素晴らしいパスを落とし、走った高橋がクロスまで持ち込むも、ここはこの一連を読んでいた鈴木友也が完璧にクリア。「関東大会は裏でやられてしまったので、そこを一番頭に入れて試合に臨みました」と話したのは鈴木友也と最終ラインでパートナーを組む石島。「子供たちの感覚としてはやられ方がわからないとか、思考が完全に止まっちゃうとかいう感じではなかったので、最後まで子供たちがしゃべり続けることができたというのは、思考の部分はちゃんと残せていたのかなと。そこはミーティングで整理ができていたので、そんなに慌てていなかったように見えました」と小野監督。関東第一が築く強固な堅牢。
74分に宮内監督が切ったのはゼブラ軍団のジョーカー。鈴木亮祐に替えて、町田ジェフリー(3年・浦和レッズJY)を森田と並べる最前線へ解き放ち、竹本を左サイドハーフへスライドさせて最後の勝負に。すると、いきなりその1分後の75分にはチャンス到来。「相当走れるので是非カフーみたいになってもらいたい」と宮内監督も期待を掛けてきた中能が右サイドを駆け上がってクロスを上げ切ると、ニアに突っ込んだ町田のヘディングは、しかし枠の右へ。掲示されたアディショナルタイムは3分。首都最強バトルも残された時間はわずかに180秒。
80+2分には右サイドをうまくラインブレイクした林が抜け出し、1対1の局面を迎えたものの、ここは成立のGK園田悠太(3年・横浜F・マリノスJY追浜)がファインセーブで仁王立ち。80+3分には足を痛めた中能のプレー続行が難しくなり、矢田部竜汰(3年・横浜F・マリノスJY)が交替でピッチへ。もう長身センターバックの小山も最前線に上げてスクランブルで攻める中、鈴木龍之介が大きく蹴り込んだフィードを、「本当にもう強気で勇気を持って、我慢するということをテーマに戦いました」と言い切った石島が確実に跳ね返すと、程なくして駒沢の青空に吸い込まれたファイナルホイッスル。「電光掲示板の数字が消えてからは大丈夫だと思いました」と話す小野監督の信頼に応えた黄色の勇者たち。関東第一が3度目の正直で大願成就。初めての全国切符を勝ち獲る結果となりました。


悲願の選手権予選制覇を達成した関東第一。インターハイ全国4強を経験した昨年のチームを筆頭に、今年のチーム以上にいわゆる"関東第一らしい"チームは、過去にもたくさんあったと思います。ただ、おそらくそんな過去のチームとの一番の違いは「今までだと目の前の勝敗よりも、自分の思い描いているビジョンとか、自分の思い描いているものに近付きたいということの方が強かったんですけど、今年とか去年の1年間は『目の前に来ているゲームをどう戦おう』かなと。『近い所の大会をどう戦わせて、どう成長させていこうかな』というのをやれていた」という小野監督の割り切った勝利への執念かなと。チームのエースであり、昨年も今年も夏の全国舞台を経験したエースの冨山も「"勝つ"ということを前提にしてやっていたので、良いサッカーにはあまりこだわっていなかったです。『良いサッカーをするのは当たり前で、勝たないと意味がない』というのは監督も言っていましたし、この試合は勝たないと先がなくなってしまうので、『絶対勝とう』という気持ちでやっていました」ときっぱり。天才肌でややもすればスマートなプレーを身上としてきた10番から、この強い言葉が出てくるあたりに今年の"関東第一らしさ"を見た気がしました。「『凄く良いサッカーをしたい』と思ってずっとやってきた時間があって、『絶対勝ちたい』と思ったここ何年があって、どっちをとっても、良いサッカーを選んでも、勝ちにこだわっても、こだわるって凄く苦しいことだなって。苦しかったですね」と少し言葉を詰まらせた小野監督。創部35年目。とうとう関東第一が冬の全国切符を手にしました。      土屋

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