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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
今大会唯一の聖地開催はセミファイナル。昨年は準々決勝で対峙した関東第一と堀越のリターンマッチはおなじみ味の素フィールド西が丘です。
3年連続で西が丘まで勝ち上がってきたのは4年前。その3度のチャンスで全国の扉をこじ開けることができず、以降はインターハイ予選でここ2年は続けて東京を制し、全国の経験を積んだものの、選手権予選ではベスト4にも届かず、早期敗退を強いられてきた関東第一。夏の全国で市立船橋に完敗を喫し、日本一の基準を見せ付けられて臨んだ今大会は、1回戦こそ昭和第一学園を5-0で退けましたが、準々決勝は後半の残り5分まで早稲田実業に2点のリードを許す展開に。最後は執念を見せて2点を追い付き、延長でエースの冨山大輔(3年・FC習志野)が決勝ゴールを叩き込んで何とかベスト4進出。昨年のチームが準々決勝で苦杯を嘗めさせられた堀越へのリベンジを果たすべく、聖地のピッチへ向かいます。
ここ2年の選手権予選は連続してファイナルまで進出したものの、あと1つの壁は厚く、どちらも準優勝という悔しい結果を突き付けられた堀越。迎えた今シーズンは、ベスト8まで勝ち進んだ関東大会予選を経て、インターハイ予選はT1所属の東京実業を一次トーナメントで退けましたが、二次トーナメント初戦で伏兵の都立東大和南に、最終的な点差は1-2ながら完敗を喫するなど、なかなか安定した成績は残せず。今大会も2回戦の都立野津田戦、準々決勝の学習院戦と共にウノゼロで制して何とかセミファイナルまで。前述したように、昨年度は優勝候補筆頭と目されていた関東第一にベスト8で競り勝っており、「自分たちの目標のためと先輩たちへの恩返しという意味で勝ちに行きたいと思います」と小磯雄大(3年・FCヴォセラーゴ津久井)も話した通り、返り討ちへ向けたモチベーションは十分です。西が丘には2400人を超える大観衆が集結。注目のセミファイナルは関東第一のキックオフでスタートしました。
ファーストシュートは4分の堀越。齊藤一輝(3年・青梅新町中)が粘って残し、ボランチの広瀬智也(3年・FC Consorte)が思い切って左足で狙ったミドルは枠の右へ外れたものの、先に積極的なフィニッシュを取り切ると、6分にもFKをクイックで広瀬が左サイドへ送り、小磯が切り返しから中へ送ったクロスは関東第一のGK内野将大(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)にキャッチされましたが、まずは堀越が前への意欲を打ち出します。
ところが、最初の歓喜を呼び込んだのは「前々から監督に『ミドルは狙えるようにしておけ』と言われていた」という2年生ボランチ。9分に左サイドを景山海斗(3年・FC.GLORIA)が運んだボールはDFのクリアに遭ったものの、このこぼれを拾った篠原友哉(2年・府ロクJY)はゴールまで30m近くはある位置にもかかわらず、「ちょっと浮いていたので『思い切り打てば入るかな』と」ミドルにトライ。少しスライス気味に枠を捉えたボールは、そのまま右スミのゴールネットへ吸い込まれます。「蹴った後はボールをよく見ていなくて、みんなが喜んでいたので『あ、入ったんだな』と思いました」と笑った篠原のスーペルゴラッソ。関東第一が1点のリードを奪いました。
以降もゲームリズムは関東第一。意外にもこの日は立石爽馬(3年・フレンドリー)、石島春輔(3年・JSC CHIBA)、鈴木友也(3年・VIVAIO船橋)の3枚を最終ラインに並べる3-4-3気味の布陣でスタートしましたが、「やりやすさは他の2人も感じていると思います」と立石が話したように、「ある程度場所を守れるように」(小野監督)という立ち位置を取りながら、全体も攻守の役割は明確に。11分には菅屋拓未(3年・POMBA立川FC)のパスから、冨山が巧みなステップで堀越のGK諏訪雅幸(3年・FC Branco八王子)にキャッチを強いるシュートまで。15分にも景山が右へ振り分け、新藤貴輝(3年・フレンドリー)のグラウンダークロスはわずかに冨山へ届かなかったものの好トライ。さらに21分にも右サイドを粘って抜け出した景山が中へ通し、粘り強いキープから林健太(3年・FC.VIDA)が狙ったシュートは右のポストにハードヒット。「今までウチにいなかった、サイズがあってしなやかなタイプ」と指揮官も評価する景山が、センターフォワード起用に応えて再三のチャンスメイク。続く関東第一の時間帯。
「関一さんも『どこから来るのかな』と思ったら、去年の反省もあるのか、がっちりカウンターっぽく入られて、人を置き去りにして失点をしないという我々も想定をしていないコンセプトで始まったので、ちょっと最初は面食らった部分があった」と佐藤実監督も語ったように、相手の意外な布陣に少し戸惑った雰囲気もあった堀越。23分には荒井友星(3年・SCUDETTO)のパスから右サイドを運んだ小磯がクロスを上げるも、ボールは飛び込んだ照井基也(3年・足立第十四中)の遥か上へ。頼みの小磯と齊藤の2枚看板にボールが入らず、攻め切れない時間が続きます。
28分は関東第一。新藤の右クロスに、ニアで枠へ収めた林のダイレクトシュートは諏訪がキャッチ。32分も関東第一。佐藤大斗(3年・FC杉野)を起点に、左へ開いた林が右足で斜めにアーリークロス。走った新藤はわずかに触れず、諏訪にキャッチされるも、関東第一らしさの生きる展開が続く中で生まれた追加点は32分。篠原が左のハイサイドへうまくボールを落とすと、走った新藤は1人外してマイナス気味にクロス。ここに走り込んだ冨山が左足で合わせたシュートは、確実にゴールネットへ転がり込みます。「良い時間帯に前半で2点取れたのは大きかった」と立石。関東第一が2点のリードを手にして、最初の40分間は終了しました。
後半はスタートから堀越に交替が。小野監督が「照井の周りをグルグル回って、結構オフも良かったので嫌だった」と言及した中込侑(3年・VERDY SS AJUNT)に替えて、田中柊(3年・TACサルヴァトーレ)を左サイドハーフへ送り込み、齊藤が中央へ入るオプションの布陣へ移行。42分に左から広瀬が放り込んだFKは内野にキャッチされましたが、「前半は本当にボールが横にも斜めにも動かずという所で、後半はちょっと落ち着いてやろうということを話した」と佐藤監督も明かした堀越が整える反撃態勢。
43分は関東第一。右CKを菅屋が蹴り込むと、GKがややファンブルしたボールに林が突っ込むも、ここはDFが間一髪でクリア。44分も関東第一。左サイドで立石が素晴らしいカットを敢行し、冨山が中へ入れた低いクロスに新藤がダイレクトで合わせたシュートは、クロスバーをかすめて枠の上へ。47分は堀越。照井が右へ振り分け、齊藤が枠へ収めたシュートは内野がキャッチ。49分は再び関東第一。菅屋の左CKに、高い打点から放った石島のヘディングはクロスバーの上へ。変わらないゲームリズム。
52分に加藤悠矢(3年・アローレはちきたFC)がクロスバーの上へ外したミドルを経て、54分には堀越に2人目の交替。前半から足を気にしていた小磯を諦め、水流大輔(2年・FC.GONA)をピッチヘ送り込み、後ろは右から市村知大(3年・所沢JY)、大村栄大(3年・FC Consorte)、水流で構成する3バックを採用し、関東第一と同じ3-4-3へシフトすると、57分には右から広瀬が上げたCKがファーヘこぼれ、齊藤が枠へ飛ばしたシュートは内野が懸命にファインセーブ。直後の左CKを加藤が蹴り込み、飛び込んだ田中のヘディングは枠の右へ。さらに60分にも加藤がヘディングで残したボールを、齊藤は枠越えミドルまで。増えてきたフィニッシュ。漂う反撃ムード。
そんな流れを一瞬で断ち切ったのは関東第一のスーパールーキー。60分に小野監督は1人目の交替として、新藤と小関陽星(1年・町田JFC)を入れ替えると、そのわずか3分後の63分に冨山が左サイドの裏へボールを届け、走った景山は粘り強いキープから中央へグラウンダーでクロス。ここに走り込んできた小関は得意の左足で、ボールをゴールネットへ送り届けます。「アイツは本当に凄いパッションのある子」と指揮官も認める1年生が、この西が丘でも大仕事。両者の点差は3点に広がりました。
小さくないビハインドを背負った堀越。67分には中央から強引に持ち込んだ田中のシュートは、関東第一3バックのセンターに入った石島が体できっちりブロック。68分には3人目の交替として、市村と橋本漱太(3年・SCUDETTO)をスイッチして、何とか上げたい反撃の狼煙。71分には左サイドバックの松尾叶音(3年・ARTE八王子)、齊藤とボールが回り、照井がヒールで落としたボールを加藤が打ち切ったミドルは大きく枠の上へ外れましたが、繰り返すアタックに出てきた躍動感。
74分の絶叫は紫の応援席。ここも広瀬、田中、橋本と細かいパス交換が続き。前を向いた齊藤は強引にシュート。DFに当たってこぼれたルーズボールへいち早く反応した田中のシュートは。GKのニアサイドを破ってゴールネットを揺らします。「もう少し早い時間帯で、スコアも1点差ぐらいの中で動いていると、より良かったのかなと思いますけど」とは佐藤監督ですが、途中出場の3年生が見せた執念の一撃。再び点差は2点に縮まりました。
関東第一は75分に2枚目のカードを。林と重田快(2年・バンデリージャ横浜)をスイッチして、もう一度前からのプレスに重点を。76分は堀越。橋本が右へ流し、齊藤が打ち切ったシュートは内野が指先で触り、ボールはわずかにクロスバーの上へ。77分は関東第一。相手CKの流れから重田が独走態勢に。中央をドリブルでゴリゴリ運んで行きましたが、諏訪は最高のタイミングで飛び出してきっちりカット。これ以上の追加点を許す訳にはいかない守護神の鬼気迫るファインプレー。
79分に迎えたのは堀越のチャンス。田中を起点に加藤が右へ送り、橋本がグラウンダーで中央へクロスを送るも、スライディングで飛び付いた照井には届かずに内野がキャッチすると、80分に立石と矢越隆晟(3年・三菱養和調布JY)を入れ替えた関東第一3人目の交替を挟み、アディショナルタイムの2分を消化してから、吹き鳴らされたファイナルホイッスル。「最後はちょっと押されちゃって苦しかったんですけど、あそこが次の課題になってくるんだと思います」と立石も反省の弁を口にしたものの、しっかり昨年のリベンジを果たした関東第一が、4年ぶりのファイナルへと駒を進める結果となりました。
東京の高体連ではただ一校だけ、3年連続で西が丘のピッチを踏むことになった堀越。特に小磯は個人でも3年連続で聖地でプレーすることになった都内唯一の"3年生"であり、この日は悔しい途中交替を強いられることになりましたが、その偉業はしっかりと記しておきたいと思います。改めて佐藤監督にこの西が丘での経験の意味を問うと、「先輩が置いて行ってくれているものや、伝えていってくれているものが大きくて、僕らが何か『一生懸命やれ』とか言っている訳じゃなくて、それはもう脈々と受け継がれているものですからね。選手として試合に選ばれるのはどうしたらいいかとか、そういう気持ちの定着は少しずつしてきているのかなと。ただ、オン・ザ・ピッチの部分では今年の水準はちょっと良かったのかなという部分はあったんですけど、まだまだその先はあるのかなということを感じたゲームでもありましたね」と収穫と課題を同時に感じられた様子。この日もテクニカルエリアに"リーダー"の姿があったことが象徴するように、自らで考え、自らが動くことを3年間貫き続けてきた堀越の3年生に大きな拍手を送らせて下さい。
終盤こそややバタバタする時間帯もあったものの、終わってみれば完勝に近い内容でファイナルへの切符を勝ち獲った関東第一。ここに来て「試合に出られなかった期間が長かったので、試合に出られるということが嬉しい」と語る立石がようやくチームの軸として戦線へ復帰し、そのことで冨山や鈴木の負担が軽減されつつあることは、チームにとっても非常にポジティブな要素であることは疑いようがありません。特に堀越は前述したように本命視されていた昨年度の選手権予選で、いわば"まさかの"敗退を強いられた相手であり、チームにとっても超えなくてはいけない1つのハードルだったはず。それ故にこの勝利は、ただの1勝以上に大きな活力となることでしょう。1週間後の決戦に向けて「去年もインターハイで全国に出ていて、選手権は予選で負けていて、その時に先輩たちも『選手権を獲らないと意味がない』と言って卒業していったので、僕らもここに懸けるしかないですし、監督やスタッフの皆さんを本当に全国に連れていってあげたいです」と力強く言い切ったのは立石。悲願達成の扉に再び手を掛けた関東第一を待っている結末は果たしていかに。 土屋
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