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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年10月18日

高校選手権東京B準々決勝 都立東大和南×東京実業@清瀬内山

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1015kiyose4.JPG第4試合は初めての西が丘を狙う"グリーンのサザンクロス"と3年ぶりの西が丘を目指す"蒲田のデンマーク"の対峙。都立東大和南と東京実業が激突するクォーターファイナルはもちろん清瀬内山グラウンドです。
一昨シーズンの新人戦以降にあったトーナメントコンペティションはすべてファーストラウンドでの敗退を余儀なくされていたものの、この夏のインターハイ予選は大躍進。支部予選から5連勝で二次トーナメント進出を果たすと、難敵の堀越を2-1で沈めて同校初の東京8強まで駆け上がった都立東大和南。都大会からの登場となった今大会も初戦で都立日野台を7-0の大差で退け、夏に続いて首都のベスト8まで。「選手権でもやってやりたいですね」と意気込むのは司令塔の平塚真史(3年・POMBA立川FC)。モチベーションも十分に東京4強を懸けた80分間へ挑みます。
2010年と2013年に2度の西が丘進出を果たし、昨年度はT2リーグを制して初となるT1のステージへ。近年は東京の中でも上位進出の常連校になりつつある東京実業。今シーズンの関東大会予選はベスト16で駒澤大学高に、インターハイ予選は一次トーナメント決勝で堀越にそれぞれ敗れ、強豪ひしめくT1リーグでもここまで未勝利と苦しい戦いを強いられてはいますが、今大会は都立葛飾商業に6-0、桐朋に1-0と連続完封で2年連続となるこのステージへ。悲願とも言うべきファイナル進出を見据えつつ、大事な一戦に臨みます。第4試合ということもあって新座の夕刻はすっかり秋の気配。この日のラストマッチは16時30分にキックオフを迎えました。


ゲームが動いたのは12分。東京実業が左から放り込んだクロスを、東大和南のDFが頭で処理しようとしたボールは前に出ていたGKの頭上を越えてしまい、そのままゴールへ飛び込みます。東京実業からすれば望外の先制点が転がり込んだ格好に。まずは意外な形でスコアが動きました。
17分も東京実業のチャンス。中央右寄り、ゴールまで約20mの位置で獲得したFKを久留和己(3年・フレンドリー)が直接狙うも、東大和南の左サイドバックを務める阿部文哉(3年・JACPA東京FC)が体でブロックすると、3分後に飛び出した同点弾。バイタルで前を向いた平塚はすかさずスルーパスを中央へ。「真史に入ったら斜めに、斜めにという練習はしていた」という宮尾慧吾(3年・東村山第四中)はGKとの1対1も冷静に制し、右スミのゴールネットへボールを送り届けます。「僕は右サイドなので、左で回している時に斜めに入って1対1という場面を狙っていた」と話す宮尾が貴重な一撃。20分に両者の点差は霧散します。
追い付かれた東京実業も23分には森翔太(3年・横浜FC鶴見JY)のパスから、久留が枠の右へ外れるミドルを放ちましたが、徐々に「ポゼッションして自分たちが優位に立ってということでサッカーをやってきた」(宮尾)東大和南も、岸本真輝(3年・JACPA東京FC)と飯島彪貴(3年・青梅霞台中)のセンターバックコンビに、「キーパーというよりはフィールドの1人」と大原康裕監督も評するGKの山本浩也(3年・日野第四中)も加えた3人がじっくりボールを動かしながら、テンポアップを狙うタイミングを落ち着いて画策。30分には右サイドバックの池谷大地(2年・あきる野FC)がCKを獲得すると、右から広瀬将一(3年・西東京保谷中)が蹴ったキックに岸本が頭で合わせ、ここは東京実業のGK増田大輝(3年・フレンドリー)がキャッチしましたが、東大和南が打ち出す自らのスタイル。
35分は東京実業。サイドバックの今津駿(3年・K.Z.ヴェルメリオ)を起点に、右サイドからエリア内へ潜った久留のシュートは、阿部がこの日2度目のシュートブロックを敢行。39分は東大和南。「インハイが終わってから"斜め"の選択肢を増やしてあげて、よりプレーの幅が広がったのかなと思います」と大原監督も認める田中大地(3年・東京久留米FC U-15)が絡んで獲得したFKを、左から平塚が蹴り込むも、ニアでDFがきっちりクリア。直後の39分も東大和南。飯島のパスを受けた柿崎拓真(3年・羽村第一中)のミドルはクロスバーの上へ。40分は東京実業。久留が蹴った左CKはDFが大きくクリア。中盤以降はやや東大和南ペースで進んだ前半は、1-1のままでハーフタイムに入りました。


後半はスタートから東京実業に勢い。43分には高田裕斗(3年・東京ベイFC U-15)、赤松正典(2年・プロメテウスEC)とボールを繋ぎ、久留が放ったシュートはDFがブロック。48分にも森が長いFKを放り込み、萩原陸(3年・LARGO.FC)のヘディングは枠を捉えるも、山本が丁寧にキャッチ。さらに49分には赤松と日名悠太(3年・東急SレイエスFC)をスイッチする1人目の交替を施すと、55分には森、日名とパスが回り、朝日凱大(3年・LARGO.FC)がトーキックで狙ったシュートは山本がキャッチするも、センターバックの渡辺巧輝(3年・大田糀谷中)を中心に、守備の安定感も出てきた東京実業が続けて繰り出す手数。
「普段は横、斜めを選んでやり直すので、もっと動かして落ち着いてというように指示は出したんですけど、縦に急ぎ過ぎていましたね」と大原監督も振り返ったように、なかなかボールを動かせなくなった東大和南は、57分に1人目の交替を決断。柿崎に替えて、「ここぞと言う時はやってくれる選手」と指揮官も信頼を寄せる住谷大輝(3年・清瀬第五中)がピッチヘ。さらに62分にもボランチを広瀬から上野零史(2年・FC.GONA)に入れ替え、もう一度中盤の構成力と前への推進力向上に着手します。
68分は東京実業。中央から萩原が絶妙のスルーパスを通すも、走った日名はフリーで抜け出したもののオフサイドの判定。69分は東大和南。宮尾のパスを受けた平塚はスルーパスを狙い、住谷も懸命に飛び出しましたが増田がキャッチ。「自分たちがペースを掴めたり、相手のペースになったりと凄く難しい試合でした」とは岸本。いよいよ残り時間は10分とアディショナルタイムへ。
74分に起きたアクシデント。平塚が右へ展開したボールを、池谷は速いクロスで中央へ。これを処理しようとしたDFがブロックしましたが、副審がフラッグを上げると、駆け寄った主審はペナルティスポットを指し示します。この対応がハンドというジャッジで東大和南にPKが与えられ、DFにはこの日2枚目のイエローカードも提示されて退場処分に。土壇場で試合を左右する大きな判定が下されます。キッカーは岸本。「いつもPKはキーパーを見ながら蹴っているんですけど、今日は右にズドンと打とうと思って、まったく緊張しなかったです」とキャプテンが蹴ったキックは、増田も触ってはいましたがゴールネットへ到達。残り5分で東大和南が1点のリードを奪いました。
追い込まれた東京実業でしたが、彼らを地獄から引き上げるジェットコースターのような展開は失点から1分後。キックオフ直後にそこまでもしきりにスピード勝負を挑んでいた日名がエリア内へ侵入すると、マーカーと接触して転倒。主審はすぐさま笛を吹き、今度は東京実業にPKがもたらされます。こちらもキッカーはキャプテンの萩原。右スミを狙ったキックはゴールネットを確実に揺らし、またもスコアは振り出しに。終了間際の80+3分には森のミドルループが左ポストを直撃し、あわや逆転というシーンもありましたが、2-2で双方が聞いたタイムアップの笛。決着は付かず。勝敗の行方は前後半10分ずつの延長戦へ委ねられることとなりました。


81分の決定機は1人少ない東京実業。久留が丁寧にスルーパスを送ると、反応した日名がシュートまで持ち込むも、ここは岸本が決死のタックルで何とか回避。直後の右FKは高田が蹴り込み、萩原が競り勝ったボールはここも岸本がクリアしましたが、中盤アンカーを務めていた竹中健人(1年・ライオンズSC)を佐野百元(3年・世田谷FC)とセンターバックに並べ、4-4-1気味の布陣ながらアタックの迫力を押し出す東京実業。86分には2人目の交替として朝日と赤井優太(3年・インテリオールFC)も入れ替え、チーム全体の運動量へテコ入れを図ります。
輝いたのは「気持ちが優った方が勝つと思ったので、気持ちだけは最後まで切らさずに頑張ろうと思いました」と笑ったナンバーセブン。89分にボランチの嘉規泰雅(3年・FC.VIGORE)がらボールを受けた平塚は渾身のスルーパス。斜めに入ってきた宮尾が打ち切ったシュートは、ゆっくりと右スミのゴールネットへ転がり込みます。「何が起こったか自分もわからなかったです」という宮尾はこの大事な一戦でドッピエッタの大活躍。「完全に東大和南がやりたいことの1つが出た」と大原監督。再び東大和南が1点のリードをもぎ取りました。
東京実業はまたもや追い掛ける展開に。延長前半終了間際の90+1分には、森が左から蹴り込んだFKでエリア内がスクランブルになったものの、日名のシュートも久留のシュートもDFが体から飛び込んで連続ブロック。99分にも赤井がファウルをもらい、久留が右から蹴り入れたFKはDFが決死のクリアを見せ、GKの増田が蹴り出したキックに日名が抜け出し掛けるも、ここはオフサイドというジャッジ。命運尽き掛けた土壇場の土壇場で、それでも執念を見せたのは1年生からチーム牽引し続けてきた10番。
延長後半アディショナルタイムの100+1分。右サイドで何とか掴んだラストプレーのFK。森が丁寧に丁寧に蹴り込んだキックがファーまで届くと、萩原はそれまで同様に高い打点からヘディング。ボールはゴールネットへ突き刺さります。「最後の最後にそう甘くはないなという形で、同点にされてしまった所はまだ足りなかった所でしたね」と大原監督。萩原もこれで圧巻のドッピエッタ。直後にタイムアップの笛が鳴り、西が丘への進出権獲得はPK戦で争うことになりました。


先攻の東京実業1人目は試合中にもPKを蹴っている萩原。前回と逆の左を狙ったキックは、しかしクロスバーを直撃してしまいます。後攻の東大和南1人目もやはり後半にPKを沈めている岸本。「今日は感情がないというか、無で何も考えなかったです」というキャプテンはここも右を選択し、読んでいた増田もわずかに及ばず成功。トップバッターは明暗が分かれます。
東京実業2人目は久留。思い切って右を狙ったキックはきっちり成功。東大和南2人目は「普段から強気な子」(大原監督)だという2年生の池谷。ところが左へ蹴ったボールはクロスバーを直撃してしまい、これでスコアは1-1に。東京実業3人目は赤井。久留に続いて右へ蹴ったキックは、読み切った山本がビッグセーブで大きなガッツポーズ。東大和南3人目の阿部はGKの逆を突いて右スミへグサリ。1-2。一歩前に出た東大和南。
東京実業4人目は森。セットプレーから何度も良いボールを蹴っていただけあって、冷静に右スミへ成功。東大和南4人目は平塚。「ベスト8以上から個人の力も必要になってくると思うので、そこでは絶対負けたくないですし、頼られる存在になりたい」と話していた2アシストの8番はあっさり左スミへ成功。外せば終わりの東京実業5人目は日名。右スミギリギリを狙ったキックは山本もわずかに届かず。3-3。次は後攻。決めれば終わりの東大和南5人目。
スポットに向かったのはGKの山本。「1人目がキャプテンで、浩也も副キャプテンなので、締め括るというあの感じはいつも通りと言えばいつも通り」と大原監督。全てを託された守護神は渾身のキックをど真ん中に突き刺します。11mのロシアンルーレットを制したのは東大和南。「ただただ自分がやるべきことをしっかりやれば勝てると思っていた」と岸本も話したグリーンのサザンクロスが創部以来初めてとなる首都4強を達成。西が丘へと勝ち上がる結果となりました。


2度のリードを共に終了間際で追い付かれ、何とかPK戦をモノにした格好ではあったものの、快挙と言っていいベスト4進出を決めた東大和南でしたが、「結果的に勝てましたけど、内容はまだまだベストではなかったかなと思います。相手が1人いなくなっても全然繋げなくて、まだまだ精神的に優位に立てていなかったというか、ちょっとビビっていたのかなと。相手のプレッシャーの圧力というよりは、自分たちのサポートの遅さの方が気になりました」と岸本が語り、「次までにもう1回自分たちのやりたいことをしっかり見直して、今日は勝ったから良かったですけど、自分たちでポゼッションして優位に立って、相手を崩して、そこで勝ち切るという所をもっと精度を上げて練習しないとなと思いました」と宮尾も口にするなど、試合直後こそ喜びを爆発させていた彼らからは次々と反省の弁が。それもおそらくはチームのスタイルや完成度に手応えを感じているからこそ。周囲の目線より当人たちはかなり冷静な自分たちの尺度を持ち合わせているようです。準決勝は名門・帝京と西が丘で激突するビッグマッチ。「今までみんなでずっとやってきて、そこへの信頼があるので、誰かミスしたら違う人がカバーしてという所をしっかり集中して、次も自信を持ってみんなの分まで戦います」と言い切ったのは宮尾。土のグラウンドで研鑚を積んできた都立校の力強い行進はまだまだ止まりません。       土屋

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