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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年10月17日

高校選手権東京B準々決勝 帝京×東海大高輪台@清瀬内山

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1015kiyose3.JPG第3試合はクォーターファイナル屈指の好カード。7年ぶりの全国を目指すカナリア軍団と夏の全国を経験したタイガー軍団の激突は引き続き清瀬内山グラウンドです。
昨年度の選手権予選は5年ぶりにファイナルまで辿り着き、最後は結果的に全国準優勝を経験する國學院久我山にPK戦で敗れたものの、古豪復活の狼煙は確実に上がり始めている帝京。今シーズンは関東大会予選、インターハイ予選となかなか思うような結果は残せなかったものの、今大会は初戦から久我山とのリターンマッチが実現する中、「変に気負う必要もないし、自分たちはチャレンジャーだという意識でやりました」という中瀬大夢(3年・FCトリプレッタJY)の決勝弾でその久我山を沈めると、難敵の修徳も4-1という快勝で打ち破ってクォーターファイナルまで。次なるターゲットは夏の東京代表です。
昨年度のシビアな選手権予選を経験した選手が、とりわけ中盤より前にはほとんど残り、今シーズンの飛躍が期待されていた東海大高輪台。関東大会予選で初戦敗退した影響から、インターハイ予選は支部予選からの登場となりましたが、その支部予選をやや苦しみながらも3連勝で突破すると、一次トーナメントも国士舘、創価、実践学園と曲者ばかりを撃破して6連勝。勢いそのままに二次トーナメントも都立駒場を2-0で退け、セミファイナルでも成立学園を相手にPK戦で競り勝って、見事8連勝で全国切符を獲得。「強いメンタルというか考え方ができるようになりましたよね」とチームを評価するのは川島純一監督。まずは3年ぶりの西が丘を手繰り寄せるべく、名門相手の80分間へ向かいます。注目の一戦にピッチの周囲には少なくない観衆の姿が。ゲームは帝京のキックオフでその幕が上がりました。


明確に対照的なスタイルを打ち出す中で、少し静かな立ち上がりを経てから手数は高輪台。13分に小杉康太(3年・ACアスミ)がミドルシュートをクロスバーの上へ外すと、16分にもルーズボールを収めた本藤悟(3年・横浜FC JY)がやはりミドルを枠の上へ。まずは遠めの位置からのシュートチャレンジでリズムを掴みに掛かります。
一方、「わざと縦に速く蹴らせて、そういうリスクのない所で今は良いと」(日比威監督)いうスタンスで、早めに前へボールを入れていた帝京も、15分を過ぎると徐々にチャンス到来。17分には右から中瀬が蹴ったCKに、原田祐次郎(3年・SP FUTE)が合わせたボレーはゴール左へ。21分にも原田が右へ流すと、上がってきたサイドバックの青柳寛己(3年・ESA)はミドルを枠の右へ。27分にも高橋心(3年・A.N.FORTE)、市川雅(3年・ジュビロSS浜松)とテンポ良くボールが回り、フリーで遠藤巧(3年・横浜FC JY)が放ったシュートは中瀬に当たってしまいましたが、青いカナリア軍団に記録される積極的な手数。
28分は帝京。市川のパスから高橋がラフに上げたボールはクロスバーを直撃してしまい、高輪台のGK角田篤生(3年・FC PROUD)が何とかキャッチ。31分も帝京。市川の左FKが混戦を生み出し、収めた五十嵐陸(3年・FCトッカーノ)のシュートは角田が冷静にキャッチ。33分は高輪台。右から小杉が入れたCKに、小林陸玖(2年・VERDY.SS.AJUNT)が飛び付いたヘディングは枠の上へ。39分も高輪台。ルーズボールに反応した武井成豪(3年・GRANDE FC)のミドルはゴール右へ。少しずつ高輪台にアタックのスムーズさは出始めてきたものの、局面での圧力は帝京に分があり、トータルで考えればほぼフィフティで睨み合った前半は、スコアレスで40分間が終了しました。


「ハーフタイムにもみんなで考えたんだけど、『前半は合格じゃないけど悪くない』と。じゃあこのまま行っちゃうのかという所で、ただ『ウチのペースにするには中盤ともう1個後ろでもボールを持たないと変わらないよ』と言うのはアイツらと話したんだけど、『でも、俺もわからないから、それは今日はオマエらが決めろ』と言いました。肌で感じる部分もあるだろうしね」と川島監督。41分の後半ファーストチャンスは高輪台。小杉が左へ流し、サイドバックの木次悠(3年・オンテリオールFC)が打ち切った無回転ミドルは、帝京のGK和田侑大(2年・FC東京U-15むさし)が懸命にキャッチしましたが、ワンプレーに滲ませる残り40分間への決意。
43分は帝京。青柳が頭で残したボールから、市川が狙ったシュートは小林が何とかクリアしたものの、両サイドバックが絡んでのフィニッシュも。直後の右CKを中瀬が蹴り込み、高橋が粘って繋ぐも、サントス・デ・オリベイラ・ランドリック(1年・Clube Andraus Brasil)はシュートまで持ち込めず。46分は高輪台。右から小杉が蹴り込んだCKは和田ががっちりキャッチ。川島監督が「アタッカーの子たちもいつもらしくなかったので、『そこはちゃんとやれ』というのはハーフタイムに言いました」と語った高輪台にも、徐々に出始めたアタックの幅。
先制弾は唐突に。46分に相手CKを収めた和田が飛距離のあるキックを前方に蹴り出すと、ランドリックが残したボールは中瀬の足下へ。「トラップでうまく相手を剥がせた」という中瀬は、マーカーを外すとそのまま左足一閃。軌道は右スミギリギリのゴールネットへ吸い込まれます。「相手に自分たちの良い所を消されていて、小田に当てても相手のセンターバックが跳ね返していた」と中瀬が話したように、高輪台の木下勇樹(3年・インテリオールFC)と佐々木駿(3年・三鷹F.A.)のセンターバックコンビがことごとく長いボールにも対応できていた状況で、ここは小田楓大(3年・足立第四中)ではなく、ランドリックの強さが生きた格好に。「試合前から苦しい所で自分が点を取れたらみんな楽になるなと思っていた」という11番の一撃で、帝京がスコアを動かしました。
ペースを引き寄せたカナリア軍団。48分に五十嵐がトライした枠越えミドルを経て、49分には追加点のチャンス。高橋、小田、中瀬とテンポ良くパスが繋がり、左から遠藤が枠に飛ばしたシュートは角田がファインセーブで応酬し、こぼれに反応したランドリックのシュートは右ポストを掠めて枠を外れましたが、あと一歩という場面を帝京が創出すると、川島監督の決断は55分。本藤に替えて、「今回の切り札」というスピードスターの太田将希(3年・品川大崎中)を送り込み、前への推進力を打ち出しに掛かります。
それでも手数は帝京。57分に五十嵐が粘って左へ送り、遠藤のシュートはDFに当たってゴール左へ。このCKをランドリックは3連続で蹴り込み、3連続でDFのクリアに遭ったものの、掛け続ける圧力。59分には日比監督もランドリックを下げて、「調子が良くて先発でもと思ったんだけど、途中から流れを変えられるのはアイツしかいない」という荻原健太(3年・ザスパクサツ群馬U-15)を1枚目のカードとしてそのまま右サイドハーフへ投入し、整える攻守のバランス。
63分は高輪台。下がった位置でボールを引き出し続けていた小杉が、ここも低い位置から持ち出して鋭いスルーパス。太田はスピードに乗って抜け出すも、副審のフラッグが上がりオフサイドの判定。64分は帝京。高橋と共にドイスボランチで高さでもルーズボールの回収でも抜群の存在感を見せ付けた五十嵐が、ここも積極的なミドルを枠の上へ。65分も帝京。「思った以上に今日は良かったですね」と指揮官も認める切れ味を披露していた遠藤が、左から狙ったシュートはわずかにゴール右へ。69分には帝京に2人目の交替。小田と山崎翔太(3年・プレジール入間)をスイッチして、前線からのプレスも増強。気付けばもはや最終盤。残された時間は10分間とアディショナルタイムのみ。
76分は同時交替。帝京は期待のルーキーで「ボールも収まるしキープできるし、キックもある」と日比監督も高い評価を口にする三浦颯太(1年・FC東京U-15むさし)をピッチヘ解き放ち、託すゲームクローズ。高輪台は右サイドバックの小林と永野颯人(3年・横浜F・マリノスJY追浜)をそのままスイッチする交替で最後の勝負へ出ると、78分には決定的なチャンス。佐々木が左サイドでうまく裏に流し、走った太田が懸命に粘ったボールは武井の目の前に。武井も粘って叩いたシュートは、しかしわずかにクロスバーの上へ。同点弾とは行きません。
アディショナルタイムは5分。300秒のラストバトル。80+1分に帝京は最後の交替。フルパワーでやり切った高橋を下げて、山﨑大煕(3年・S.T.FC)を緊迫したピッチヘ。80+1分は高輪台。左から小杉が丁寧に蹴ったFKは中瀬がきっちりクリア。80+3分も高輪台。チームを牽引し続けてきたキャプテンの袖山翼(3年・インテリオールFC)が枠へ飛ばしたミドルは、和田が冷静にキャッチすると、これがこのゲームのラストシュート。指揮官も「火消しとしてカバーの意識も高いし、インターセプトは一番狙えている」と評価する菅原光義(2年・S.T.FC)と原田のセンターバックコンビで組む帝京の堅陣は最後まで揺るがず。中瀬も「相手が強いおかげで僕たちもチャレンジャー精神で向かってこれたので、逆にチームもまとまったかなと思います」と話したカナリア軍団が、今年も西が丘へと勝ち進む結果となりました。


徹底したキックアンドラッシュを貫徹し、きっちり結果を残して見せた帝京。日比監督は「元々キックアンドラッシュのサッカーはしたくないんですよ、本当は。リーグ戦はここまで蹴るかと言ったら蹴らないですから。動かしている訳で」と話しながら、「でも、負けないサッカーということで、やっぱりトーナメントの勝ち方はこういうやり方なんだというのは、僕も学生時代はそういうことでやってきた部分もあるし、そうじゃない時もあったので、そのあたりは相手を見ながらなんて偉そうなことは言えないですけど、分析しながらやらないとダメなのかなと思いますね」と続けて。高輪台のスタイルと実力を考慮して貫いた戦い方が、この日は十分に機能した印象を受けました。「よく荒谷先生も言われると思うんですけど、『3年全国に出られなかったら初出場と同じだ』と。その通りだと思いますし、僕らは指導者としては全国大会に出ていないんで、何も言える立場ではないのでね。本当に死に物狂いでやるしかないのかなと思っています」と日比監督。名門にとって7年ぶりの戴冠がいよいよ現実味を帯びてきています。
「完敗です。やりたいことが一番やれなかったゲームでしたね」と川島監督も認めた通り、なかなか自分たちのスタイルを出し切れずに大会を去ることになった高輪台。それでも前述したようにインターハイは怒涛の8連勝で全国切符を掴み取るなど、ハマった時の"高輪台らしさ"はしっかり持ちつつ、指揮官も「後ろの4バックが今年は強かったです」と言及した守備の強度も高く、バランスの取れた好チームだったのは間違いありません。今シーズンのチームを「僕自身はいつも言うけど楽しかったですね。勝負強さもあるし、後ろも今日は跳ね返していたと思うので、うまく自分たちらしさが表現できたチームだったと思います。ただ、この大会に勝つためにやってきているので、まだまだやらなきゃいけない部分はあるのかなと思いますね」と振り返ってくれたのは川島監督。今年の東京高校サッカー界に確かな彩りを加えた"16'高輪台"にも大きな拍手を。        土屋

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