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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
都内最高峰の"学園"対決がクォーターファイナルで実現。共に2度の全国を経験している実践学園と成立学園の激突は実践学園高尾グラウンドです。
ここ4年間は選手権予選で2度のファイナルへ。加えて夏の全国出場やT1リーグ優勝も経験するなど、都内有数の強豪として存在感を示してきた実践学園。主力の大半が入れ替わった今シーズンは、関東大会予選で最後は駒澤大学高に惜敗したものの、ベスト4まできっちり勝ち上がりましたが、インターハイ予選は一次トーナメント決勝で東海大高輪台に0-3と完敗。覚悟を持って臨んだ今大会は初戦で大東文化第一に2-1で競り勝つと、2回戦では国士舘をPK戦の末に辛くも下して準々決勝へ。4年ぶりの全国を引き寄せるべく、まずは難敵をホームに迎える一戦へ向かいます。
夏の東京はコンスタントに勝ち抜いているものの、選手権に関してはここ10年で6度もベスト4以上に顔を出しながら、ことごとく西が丘で涙を飲んでいる成立学園。今シーズンの関東大会予選はセミファイナルで関東第一を2-0で撃破し、堂々と本大会へ出場しましたが、インターハイ予選は全国を懸けた準決勝で東海大高輪台を相手にPK戦で敗退。11年ぶりの戴冠を目指して臨む今大会は、初戦で都立石神井を2-0で振り切ってこのステージへ。リーグ戦での好調も追い風に重要な80分間を戦います。注目のゲームということもあってスタンドはほぼ満席。待ったなしのクォーターファイナルは成立学園のキックオフでスタートしました。
立ち上がりから前への勢いを打ち出したのは実践。全体的に中央へ選手を集めつつ、荒川耀士(3年・FC.GONA)と坂井啓希(3年・FC府中)の2トップに早く放り込みながら、セカンドに殺到する姿勢を見せましたが、ファーストシュートは成立。7分に右から大野泰成(3年・FCゼブラ)が蹴ったFKに、小山珠里(3年・成立ゼブラ)が合わせたボレーは枠の右へ逸れたものの、惜しいシーンを。8分にも中能健人(3年・成立ゼブラFC)を起点に、大野が放ったミドルはDFに当たり、鈴木龍之介(3年・成立ゼブラFC)が枠へ収めたシュートは実践のGK中村寛之(3年・立川第四中)がキャッチしたものの、徐々に成立も押し返します。
「実践はダイレクトにサッカーをやってくるので、それにまず慣れるというか、弾き返してセカンドボールを拾って我々のマイボールにしよう」という指揮官の狙いを実行し始めた成立に続く手数。15分にはキャプテンの西羽開(3年・鹿島アントラーズつくばJY)、鈴木皓(2年・柏レイソルU-15)とボールを回し、鈴木亮祐(3年・AZ'86東京青梅)が落としたボールを鈴木皓が狙ったミドルはクロスバーを越えましたが、「どことやっても臆さずにボールを受ける」と指揮官も評価する2年生ボランチが積極的なチャレンジを。17分にも鈴木皓が左へ振り分け、鈴木亮祐がクロスを上げると、鈴木龍之介が続けて放ったシュートは続けてDFのブロックに遭い、三たび鈴木龍之介が叩いたシュートは実践のセンターバックに入った佐々木良和(3年・稲城第六中)が気合いのブロック。「アレは決めなきゃいけなかったですね」とは鈴木龍之介ですが、ゼブラ軍団に漂う先制の気配。
やや劣勢の時間を強いられた実践も18分にチャンス。武田義臣(2年・FC Branco八王子)のスルーパスに荒川が走り、果敢に飛び出した成立のGK伊藤快(3年・東松山ペレーニアFC)と激突し、こぼれはDFがクリアしたものの、あわやと言う場面を創り出すと、スタンドが沸騰したのはその3分後。右サイドを駆け上がった窪園流星(3年・成瀬台中)がマーカーを切り返しで外してクロスを上げ切り、ニアで坂井が潰れた先には3列目から走り込んだ境大空(3年・FC府中)が。丁寧に右スミを狙ったシュートはゴールネットへ転がり込みます。チームのファーストシュートがそのまま先制弾に。実践が1点のリードを手にしました。
以降は「サイドは変わっているのに、そこからスピードダウンしちゃった」と宮内聡監督も嘆いたように、成立はボールを左右に動かす意識はあるものの、テンポアップするタイミングを探り切れずに展開は膠着。33分は実践。右からレフティの川村彰良(3年・ARTE八王子)がCKを蹴り込むと、武田が合わせたヘディングは枠の右へ。40分は成立。西羽、大野と回った流れから、受けた鈴木皓は1人外してミドルを打ち切るも、ボールはクロスバーの上へ。「実践もかなり気合いを入れてきて、自分たちのグラウンドで最後にならないようにというモチベーションは非常に高かった」と宮内監督。前半は実践が1点のアドバンテージを奪って、ハーフタイムに入りました。
後半スタートから動いたのは宮内監督。「実践はこういう1点を守り切るというのは得意なチームだと思うので、後半からリズムを変えたくて」鈴木皓に替えて、森田裕也(3年・愛媛FC新居浜JY)を最前線に送り込み、鈴木龍之介をボランチに下げて、ゴールへの意欲をピッチヘ落とし込むと、41分にはレフティの萩原幹太(3年・成立ゼブラFC)が右カットインから枠へ収めたシュートは、中村が丁寧にキャッチしましたが、42分にも中能のスローインから竹本大輝(3年・成立ゼブラFC)がエリア内へ潜り込み、最後は中村がボールに飛び付いて押さえたものの、明らかに攻撃のスイッチが入ったゼブラ軍団。
すると45分には大野、鈴木亮祐、森田と流れるようなパスワークからFKを獲得すると、中央やや左、ゴールまで約25mのスポットに立ったのは鈴木龍之介とレフティの大野。「アレは一発来るかなという角度」と指揮官も口にした角度を任されたのは鈴木龍之介。「最初はニアに蹴ろうと思っていたんですけど、結構ニアに寄っていたので、ファーの方が自分的に得意」とファーサイドを狙ったキックは、綺麗な放物線を描いてゴールネットへ吸い込まれます。「こういう選手権みたいな一発勝負の時に、セットプレーはかなり大きな武器になってくると思うので、結構練習してきました」という9番の鮮やかな直接FK。スコアはたちまち振り出しに戻りました。
追い付かれた実践も46分に1人目の交替。先制ゴールを決めた境を下げて、大村俊輔(3年・FC府中)をピッチヘ送り込むも、流れは完全に成立へ。47分に右から大野が入れたCKは、実践のキャプテンマークを託された浅貝崇裕(3年・VIVAIO船橋)が掻き出し、混戦の行方はオフェンスファウル。49分にも中能が右から入れた素晴らしいクロスは、鈴木亮祐もわずかに届かず、ファーで拾った竹本のフィニッシュはクロスバーの上へ。流れは成立。耐えたい実践。
ホームで負けられない実践も反撃の一手。50分に武田が右クロスを送り込み、ルーズボールを収めた藤尾圭悟(3年・VIVAIO船橋)がシュートまで持ち込むと、DFに当たったボールは枠の左へ。51分にも藤尾が左からCKを蹴り込むと、跳ね返されても押し返し、波状攻撃でボールを回収しながら、佐々木が残したボールをボランチの清水喜一(3年・フレンドリー)が打ち切ったシュートは、それでもこの日が今シーズンの公式戦は3試合目の出場となったGKの伊藤ががっちりキャッチ。やり合う両者。ヒートアップする応援席。
逆転弾は2トップで。52分に右サイドで前を向いた中能は縦に速いボールを。マーカーを巧みなボディアングルで置き去った森田は、そのままサイドを駆け上がると中央を確認して低いボールをニアへ。ここに突っ込んだ竹本はダイレクトでGKのニアサイドを破り、ボールをゴールネットへ滑り込ませます。途中出場となったジョーカーのアシストから、10番を背負うエースが一仕事。成立がスコアを引っ繰り返しました。
この試合初めてビハインドを負った実践は直後に2人目の交替。荒川と浦寛人(2年・GA FC)をスイッチして、前へのパワーを高めに掛かりますが、54分は成立にチャンス。鈴木亮祐の左クロスに、飛び出した中村がパンチングで回避すると、拾った鈴木龍之介がGKのいないゴールを狙ったループは枠を越えるも好トライ。57分には実践も左から浅貝がロングスローを投げ込むも、中能がきっちりクリア。59分は成立。萩原のパスから竹本が左足で打ち切ったミドルは枠の右へ。成立が手放さないゲームリズム。
60分は成立。西羽のパスを引き出した大野が左クロスを放り込み、萩原が飛び込むもDFが何とかクリア。その左CKを鈴木龍之介が蹴り入れ、萩原が残したボールをセンターバックの長草優之(3年・鹿島アントラーズつくばJY)が打ったシュートは、DFが体に当てて中村がキャッチ。62分も成立のカウンター。竹本が中央をドリブルで運び、右で受けた萩原のカットインシュートは中村に収められたものの、ピッチに漂うのは追加点の香り。
65分は実践。左サイドで奪ったCKを藤尾がショートで蹴り出し、浅貝が上げたクロスはDFがクリア。67分は成立。竹本が左へ展開し、鈴木亮祐がタイミング良く中へ戻したボールを、萩原がダイレクトで叩くも枠の左へ。70分は実践に決定的なチャンス。佐々木が最終ラインからスルーパスを通すと、抜け出した川村へ伊藤も悪くないタイミングで飛び出すも、もつれたボールを残した川村は粘り強くグラウンダーでクロスを送りましたが、中に詰めていた坂井はわずかに届かず。同点とは行きません。
何とか追い付きたい実践は、71分に藤尾と内藤和也(3年・ARTE八王子)を入れ替え、清水をアンカー気味に配し、前に人数を掛ける布陣で最後の勝負へ。72分は成立に決定機。右サイドの裏へ鈴木龍之介が落とし、走った竹本の枠内シュートは中村が懸命にファインセーブ。76分は実践。浅貝が渾身の左ロングスローを投げ入れるも、再び中能が大きくクリア。79分は双方に選手交替。実践は4枚目のカードとして辻ヶ堂稜(3年・目黒東山中)を、成立は2枚目のカードとして高橋恒樹(3年・成立ゼブラFC)をそれぞれピッチヘ解き放ち、いよいよゲームはクライマックスへ。
80+1分に飛び出したビッグプレー。「自分はキックをずっとこの3年間意識してやってきて、パントキックだったら誰にも負けないという自信があった」という伊藤がこの大事な局面で繰り出したキックは、右のハイサイドギリギリに落ちながら、ラインを割らずに森田へ届く最高の軌道。「あそこにうまく行ってくれて自分でもちょっとホッとしました」という守護神の"神業"に沸き立つベンチと応援席。そして80+3分に大野と岡崎直紀(3年・成立ゼブラFC)も入れ替え、時間を潰し切ったゼブラ軍団が聞く勝利のファイナルホイッスル。力強い逆転勝利を収めた成立がセミファイナルへと勝ち上がる結果となりました。
前への圧力に強みを持つ実践という難敵を相手に、「自分たちのサッカーを出してというバランスが非常に難しかったですね」と話した宮内監督。それでも「せっかく自分たちのサッカーをやってきたので、自分たちのサッカーを見失うというのもね。マイボールにして動かすということを一緒にやり合ったら、絶対ウチには敵わないです。そのあたりは3年間やってきたことだと思いますね」と、トレーニングから積み上げてきたボールを動かすスタイルを完遂しての逆転勝利は、チームに大きな自信をもたらしたはずです。次は昨年度の大会で國學院久我山に屈したセミファイナルの西が丘。この日の勝利に大きく貢献したGKの伊藤も「練習1つ1つに気持ちが入っていますし、パス1つとっても厳しく言い合ったり、対人の所では激しく行って、その後で謝ったりしているんですけど、全員が気持ちを1つに頑張っています」と手応えを感じているトレーニングの雰囲気も、結果が出ている大きな要因。ゼブラ軍団が11年ぶりの東京制覇へまた1つ歩みを進めています。 土屋
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