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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年10月15日

高校選手権東京A準々決勝 関東第一×早稲田実業@清瀬内山

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1015kiyose1.JPG首都の選手権予選もいよいよクォーターファイナル。共に全国初出場を狙う関東第一と早稲田実業の一戦は清瀬内山グラウンドです。
インターハイは2年連続で全国切符を勝ち獲り、昨年度は全国ベスト4まで躍進したものの、不思議と選手権ではいまだに頂点へ立てていない関東第一。2大会続けてファイナルで涙を飲んだ第91回大会以降は、優勝候補の大本命として臨んだ昨年度も準々決勝で堀越に延長戦で屈するなど、3年連続で西が丘進出すらも阻まれており、「『絶対西が丘に行こう』という話はしていたので、この試合は絶対に勝とうという気持ちでした」とは守護神の内野将大(3年・ジェフユナイテッド千葉U‐15)。まずは"昨年超え"を果たすための80分間に向かいます。
過去2度のファイナルを経験しながら、都立三鷹と國學院久我山に揃って1点差で敗れ、まだ全国の舞台は未経験の早稲田実業。今シーズンは新人戦で地区制覇を達成し、挑んだ関東大会予選は初戦で東京実業に0‐2と敗退。やはり支部予選を勝ち抜いたインターハイ予選でも、一次トーナメントで実践学園に0‐2と、T1勢に行く手を阻まれてきましたが、三たび一次予選を勝ち上がってきた今大会は、都立狛江を1‐0、京華を7‐0で撃破してこのステージまで。さらなるステージへ到達すべく、優勝候補と対峙します。新座は夏の気候を思わせるポカポカ陽気。注目の一戦は10時にキックオフを迎えました。


ファーストシュートは4分の早実。キャプテンの荒巻洸介(3年・大宮アルディージャJY)が送ったフィードを奥野立己(3年・モンテディオ山形JY村山)が残すと、鈴木俊也(1年・FC東京U-15深川)のミドルは枠の右へ外れましたが、1年生が果敢なへトライ。関東第一もややシンプルに前へと蹴り出す立ち上がりを選択した中で、まずは早実がフィニッシュを1つ取り切ると、18分にも高い位置で宮脇有夢(2年・湘南ベルマーレJY)がボールを奪い、村上大和(3年・Forza'02)が右へ振り分け、小山修世(3年・横河武蔵野FC JY)のミドルはゴール右へ逸れるも、早実が先に2本のシュートを記録します。
一方、「相手がどう出てくるかの所で、引くのか出てくるのかがわからなかったんですけど、意外に中間で取ってそんなに下がらなかったですね」と小野貴裕監督も言及した関東第一は、10分過ぎから少し配置も入れ替えつつ、ボールを繋ぐ時間を増やしに掛かりますが、なかなかテンポアップのポイントを見つけ切れず。23分には立石爽馬(3年・フレンドリー)が右へ流すフェイクから中央に打ち込み、村井柊斗(2年・FC多摩)の落としを菅屋拓未(3年・POMBA立川FC)が叩いたミドルは枠の右へ。ボールをキープする時間の長さの割には、効果的なアタックを繰り出せません。
すると、24分に早実へ訪れた絶好の先制機。左サイドバックの農塚統太(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)を起点に、サイドへ開いた宮脇が右足でクロスを放り込むと、収めた小山のシュートはDFの手に当たったという判定で、主審はペナルティスポットを指し示し、早実にPKが与えられます。キッカーは小山自ら。短い助走から思い切り良く左スミを狙ったシュートはGKの逆。鮮やかに揺れたゴールネット。早実が先にスコアを動かしました。
一気呵成。27分にも早実は右から秋元浩希(2年・多摩大目黒中)がロングスローを投げ込み、山口剛輝(3年・クラブ与野)が高い打点で競り勝つと、小山のダイレクトボレーは内野がファインセーブで回避しましたが、直後にレフティの鈴木俊也が蹴り込んだ右CKから、ニアに飛び込んだ宮脇の完璧なヘディングはゴールネットへ吸い込まれます。あっという間の追加点。両者の点差は2点に開きました。
小さくないビハインドを追い掛ける展開となった関東第一。「相手が4-1-4-1みたいな感じで、あの2シャドーがセンターバックに対してストレスになっちゃっていて、やっぱり先に失点したりとか、リスクを負いたくないというのがあったので、どうしてもセンターバックも寄ってくる選手に付けるしかないという状態だった」とは小野監督。徐々に使うピッチ幅も狭くなり、アタックの停滞感は否めず。36分に根本が蹴った右FKも、早実のGK関口恵允(2年・レッドスター)ががっちりキャッチ。39分には堤優太(3年・FCトッカーノ)の仕掛けで左CKを獲得するも、冨山大輔(3年・FC習志野)のキックに鈴木友也(3年・VIVAIO船橋)が合わせたヘディングは枠の右へ。「2列目の所が確かに拾えていなくて、攻守が全然連続しなかった」と指揮官も口にしたように、なかなか関東第一の思惑通りに行かなかった前半は、早実が2点のアドバンテージを持ってハーフタイムへ入りました。


「後半の頭から吹っ切らせちゃおうと思って、迷わず切ったという感じですね」と話す小野監督はハーフタイムに決断。「立石の個人的なパフォーマンスは悪くなかったと思うんですけど、今日の試合で行くと立石の仕事がなくなっちゃったので」とその立石に替えて、重田快(2年・バンデリージャ横浜)を左サイドハーフへ送り込み、冨山を中央1.5列目の位置にスライドさせつつ、関東第一が整える追撃態勢。
42分は関東第一。村井と重田の連携でCKを奪うと、左からショートで出した冨山は菅屋のリターンからクロスを上げるも、DFがきっちりクリア。その右CKをレフティの根本佑(3年・シュートJY)が蹴り込み、ファーで篠原友哉(2年・府ロクJY)が折り返すも、再びDFが大きくクリア。48分は関東第一に2人目の交替。村井と林健太(3年・FC.VIDA)を入れ替え、林は左サイドハーフに入り、重田を最前線に配してさらなる変化を。52分は早実。宮脇がきっちり収め、鈴木俊也の左アーリーに内野が飛び出して頭でクリアすると、小山のボレーは無人のゴールの右脇へ。あわやというシーンにどよめく場内。
56分に関東第一が切った3枚目のカード。堤と新藤貴輝(3年・フレンドリー)をスイッチさせ、右の新藤と左の林を「ちょっと張りっぱなしにさせて、そこまでボールを1回広げさせる」(小野監督)狙いをピッチ上へ。60分には篠原が繋ぎ、右サイドバックの佐藤大斗(3年・FC杉野)が放ったミドルは枠の右へ。62分にも佐藤のスローインから、冨山の反転シュートはクロスバーの上へ。直後にもエリア内へ潜った篠原がマイナスに折り返すも、ダイレクトで狙った冨山のシュートはゴール右へ。「後半は正直押せ押せのゲームだった」(内野)ものの、スコアはなかなか縮まりません。
少しずつ押し込まれながらも荒巻と金田佑耶(3年・FC東京U-15深川)のセンターバックコンビを中心に、高い集中力で決定機は創らせない早実。65分には1人目の交替として先制PKを沈めた小山を下げ、10番を背負った木戸健太(3年・さいたま岸中)を送り込むと、67分にはその木戸が完璧なスルーパスを左へ。奥野が単騎で抜け出しましたが、ここは「3点目を取られたら厳しくなるというのはわかっていた」という内野がファインセーブで何とか回避。69分に奥野が放ったミドルもゴール左へ外れましたが、早実が2点のリードを保ったままで、いよいよゲームは最後の10分間へ。
71分に小野監督は4枚目のラストカードとして、1年生ドリブラーの小関陽星(1年・町田JFC)をピッチヘ解き放ち、変則の3バック気味に前目の枚数を増やして最後の勝負へ。73分には林が粘って取ったFKを左から冨山が蹴るも、ボールは中と合わずゴールキックに。74分に右から冨山が蹴ったFKも秋元が大きくクリア。焦りの色も見え始めた夏の東京王者。ちらつき出す昨年の悪夢。
この状況を打破したのは「何とかしたいという想いの一心でした。今までで一番熱くなったと思います」と、立石からキャプテンマークを引き継いだナンバー10。75分に右サイドで2人に囲まれながら粘って残した冨山が左足でクロスを送り、重田も中央で粘って何とか繋ぐと、大外に走り込んだ林が左足で叩いたシュートはゴールネットに収まります。エースと交替で入った2人が絡む追撃弾。スコアはたちまち1点差に。
絶叫の同点弾はその2分後。林が左で残し、回った新藤の折り返しは山口にクリアされたものの、この日4本目のCKを獲得すると、これまで蹴っていた冨山ではなく菅屋が左のスポットへ。その菅屋がストレートの好キックで送り込んだボールに、ファーサイドで高い打点から打ち下ろしたのはセンターバックの石島春輔(3年・JSC CHIBA)。バウンドしたボールはゴールネットへ弾み込みます。「最悪の状態としてこういう想定は頭の中に入れておきましたけど、最悪がちゃんと選手権で出るというのも面白いなと思いますよね」と苦笑した小野監督も思わずガッツポーズ。土壇場で意地を見せた関東第一がラスト5分で2点差を追い付き、ゲームは前後半10分ずつの延長戦へともつれ込むことになりました。


まさかの同点劇に巻き込まれた早実は、延長のスタートから2人目の交替。秋元に替えて永瀬涼(3年・早稲田実業中)をそのまま右サイドバックへ投入すると、82分のチャンスも早実。「『ケアしなさい』と言っていた」(小野監督)と関東第一も警戒していた鈴木俊也を起点に、村上を経由したボールを奥野が狙ったシュートは枠の左へ逸れましたが、早実も延長のファーストシュートへ滲ませる勝利への気概。
千両役者の大仕事は85分。「アイツの場合はあそこに入るとあのテンポになる」と指揮官も評した小関が、ここもショートドリブルから縦に付け、重田が落としたボールを「最初は左足で打とうと思った」冨山は瞬時に判断を変え、マルセイユルーレットで右へ持ち出すと、「ファーじゃなくて絶対にニアに打とうと思っていました」と右足を強振。左スミへ向かったボールはそのままゴールネットへ突き刺さります。「あそこまではうまく行くんですけど、あそこから決め切れないというのが1年からの課題だったので、こういう所で決められて良かったと思います」と笑った10番は一目散に大応援団の元へ。悲願の全国切符に懸ける執念の逆転弾。とうとう関東第一がスコアを引っ繰り返しました。
この試合で初めてビハインドを背負った早実。87分には「フラフラっとしながらボールが入る所はきっちり収めるから、あれは凄くやりづらかったですね」と小野監督も認めた宮脇を下げて、高瀬司(3年・早稲田実業中)を3枚目のカードとして投入。89分には左から鈴木俊也が蹴り入れたFKも、関東第一のセンターバックを務め続けてきた鈴木友也(3年・VIVAIO船橋)が決死のクリア。泣いても笑っても残された時間はあと10分間。
91分は早実。中盤で弾んだボールを鈴木俊也がボレーで枠に収めるも、「応援も含めて絶対に点を取るんだという気持ちはありましたし、後半2点取ってベンチに帰ってきた時に『絶対行けるぞ』という話をしていたので、気持ち的に行ける感じはありました」と語る内野が冷静にキャッチ。95分には早実も最後の交替として古井林太郎(3年・大田東調布中)を送り込み、セットプレーも含めて高さが際立っていた山口を前線に上げて勝負を掛けましたが、「去年を超えるには選手権に行くしかないので、ここは絶対に勝ちたいという気持ちでみんなを鼓舞したつもりです」と言い切った冨山も球際でいつも以上の執念を見せるなど、延長は勝ちたい意欲を前面に出し続けたインターハイチャンピオンが、1分のアディショナルタイムも消し去って耳にした勝利の凱歌。大逆転劇を披露した関東第一がセミファイナルへ勝ち上がる結果となりました。  


「去年は堀越さんに負けましたけど、自分が関一に入ってあと1回勝てば西が丘に行けるという所で僅差のゲームで負けていたので、今日も『もしかしたら今年もあるんじゃないか』と一瞬思いましたけど、仲間を信じて戦いました」と内野が話したように、"鬼門"になりつつあった準々決勝を、苦しみながらも4年ぶりに突破した関東第一。「ルーズボールなんかは早実の気持ちがグッと出ていましたよね」と小野監督も口にした早実の健闘も光ったものの、最後は昨年の悔しさをピッチで体感していた冨山が珍しく気持ちを露わにして戦っていた姿勢に象徴されていたように、"執念"や"気迫"といった言葉では明確に説明し難い部分が、奇跡的な逆転劇を呼び込んだ最大の要因だったと思います。「本当に今日みたいな状況を乗り越えて強くなるというのがあるんだったら、今日を通してこの後のチームがどういう風になるのかというのを見ていていただければと思います」と話したのは小野監督。悲願達成までに必要な勝利はあと2つです。       土屋

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