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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
昨年も2度のファイナルで激突した両者によるビッグマッチが夏休みに実現。國學院久我山と関東第一の一戦は、引き続き大井ふ頭中央海浜公園スポーツの森第二球技場です。
全国準優勝まで上り詰めた今年初頭の選手権から一転、関東大会予選は2回戦で関東第一に、インターハイ予選は1次トーナメントで都立駒場にそれぞれ敗退を突き付けられた國學院久我山。ただ、「準優勝した瞬間に『今年は苦しいだろうな』と選手たちには言っていて、『今年を獲るのは難しいぞ。その腹を括って1年間しっかりやろう』とも言っていた」とは清水恭孝監督。10番を背負う澁谷雅也(3年・ジェファFC)の復帰に、中野英寿(2年・ジェファFC)や高橋黎(1年・ジェファFC)といった下級生の台頭など、ここに来て好材料も揃いつつ、目指すのは当然選手権の東京制覇。現在地を測るには格好の相手と対峙します。
2年連続で全国へと躍進したインターハイでは、結果的に日本一に輝いた市立船橋に0-1というスコア以上の完敗を喫し、改めて全国トップレベルとの距離感を身をもって体感してきた関東第一。「僕が監督になってから一番走りましたね。コンディション的には結構追い込んだので、今は負荷も掛かっている状態です」とこの夏を振り返った小野監督ですが、続けて「このチームとやる時には自然と気持ちが高いし、良いサッカーをしない訳にはいかないので、久我山とやる時に情けないゲームはやりたくないですからね」とこの一戦に懸ける想いも十分。フルモチベーションでこの90分間に挑みます。注目のゲームにスタンドもかなりの大入り。16時ジャスト。久我山のキックオフで好カードの幕が上がりました。
いきなりの決定機は久我山。4分に高い位置でボールを奪い切ると、名倉巧(3年・FC東京U-15深川)は左へスルーパス。抜け出した金田直輝(3年・ジェファFC)が左足で狙ったシュートはわずかに枠の右へ外れましたが、まずは中央の縦関係で決定的なシーンを創出すると、6分には右からサイドバックの内田祐紀弘(2年・Forza'02)が蹴ったFKに知久航介(3年・浦和レッズJY)が飛び込み、ヘディングはゴール左へ外れたものの、久我山がハイテンションで立ち上がります。
ところが、先制点を記録したのは劣勢の関東第一。9分に相手のバックパスを鋭い出足でかっさらった堤優太(3年・FCトッカーノ)は、そのままドリブルで縦に持ち出しながら得意の左足一閃。ゴールまで25m近い位置から放たれたミドルは右スミのネットへ飛び込みます。「去年も公式戦ではあまり点が取れなかったので、点は取りに行きたいと強く思っています」と話すレフティのゴラッソが飛び出し、関東第一が1点のリードを手にしました。
ただ、以降もゲームリズムはそのまま。15分にはサイドバックの山口隼介(2年・東急SレイエスFC)を起点に、左へ開いた金田が中へ折り返し、名倉のシュートは間一髪でディフェンスにブロックされましたが、「元々は右サイドバックだったんですけど、キックは持っているので」(清水監督)コンバートされた中野と上加世田達也(2年・Forza'02)のCBコンビでボールを動かしながら、テンポアップを狙う久我山の続く攻勢。
同点弾は「ここに来てアイツが台頭してくるとは思わなかったんですけどね」と清水監督も笑うストライカー。22分にここも久我山は高い位置で回収した流れから名倉が右へ振り分け、澁谷はすかさずクロス。ニアに走り込んだ金田のボレーは、そのままゴールネットへ弾み込みます。「アイツはチームのための献身性だとか、味方を生かしてくれるようなプレーができるので、雅也や名倉や謙生が生きると思います」と清水監督もその持ち味を評価する金田が、ここは自らきっちり一仕事。たちまち両者の点差は霧散しました。
27分も久我山。澁谷、名倉とボールが回り、金田の落としたボールを知久が左足で叩いたミドルは、ゴール右へ外れるも好トライ。すると、関東第一を率いる小野貴裕監督は早くも35分で決断。工藤誉史(3年・FCトッカーノ)と新藤貴輝(3年・フレンドリー)を入れ替え、「今日は普段のポジションでサッカーをやっていた選手は林とCBぐらいだったので、そうするとみんなが普段やっているような所をやるしかないなと」、全体のポジションをいつも通りの配置に並び替え、ピッチ上のバランスを整え直します。
43分は久我山。安藤謙生(3年・横浜F・マリノスJY)が左から送り込んだクロスを、ダイレクトで合わせた内田のボレーはゴール右へ。44分も久我山。名倉が右へ展開すると、澁谷はダイレクトで中へ折り返すも、粘った金田はシュートまで持ち込めず、関東第一のGK内野将大(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)にキャッチされましたが、「ワイドに置いてもサイドアタックができると思います」と清水監督も言及する安藤と澁谷の両ワイドがきっちりチャンスメイク。「あまりにも不安定過ぎちゃって、このままどうなるんだろうという感じでしたね」とは小野監督。久我山ペースで推移した前半は、タイスコアでハーフタイムに入りました。
後半はスタートから関東第一に交替が。佐藤大斗(3年・FC杉野)と入れ替えた柳田直士(2年・フッチFC)を左サイドバックへ送り込み、その位置にいた菅屋拓未(3年・POMBA立川FC)を右サイドバックへスライドさせて、サイドの安定感向上に着手しましたが、47分のチャンスも久我山。澁谷のパスに3列目から飛び出した高橋が中へ折り返し、反転しながら打ち切った金田のシュートはクロスバーを越えるも、1年生の積極的な攻撃参加で後半も勢いはまず久我山に。
関東第一がようやく"らしい"形を創ったのは52分。少し下がった位置から冨山大輔(3年・FC習志野)が右へ振り分け、開いた篠原友哉(2年・FC府中)がグラウンダーでクロス。ニアへ入った新藤のシュートは右ポストにヒットし、結局は新藤がオフサイドを取られたものの、流れの中からチャンスを手にすると、57分に飛び出したのはまたもゴラッソ。右サイドから新藤がクロスを送り、こぼれを拾った石井賢哉(3年・Wings U-15)はミドルレンジから躊躇なくフィニッシュ。ボールは20m近くあったゴールまでの距離を一瞬で縮め、そのまま左スミのネットへ突き刺さります。インターハイの敗戦直後に「全国で強いチームとやれた感覚は自分の中に残っているし、そこは絶対に忘れないで冬までの時間を過ごしていきたいと思っています」とすぐに前を向いていた8番のスーパーな一撃。再び関東第一が一歩前に出ました。
またも追い掛ける展開となった久我山。清水監督は62分に1人目の交替を決断。高橋に替えて西條颯(3年・FC東京U-15むさし)を送り込むと、采配ズバリ。直後の63分にここも高い位置でボールを奪い切り、ボールを持った西條は右へスルーパス。受けた澁谷が切り返しつつ、マーカーを外しながら左足で蹴ったシュートは、DFをかすめてゴールネットを揺らします。3年生の連携からすぐさまやり返した反撃の一手。あっという間にゲームは振り出しへ引き戻されました。
澁谷が強烈な無回転ミドルを打ち込み、内野が確実に弾き出した65分のシーンを経て、小野監督が相次いで切ったカード。65分に堤と池田健太(1年・VIVAIO船橋)を、66分に篠原と斉藤成希(1年・VIVAIO船橋)をそれぞれ入れ替え、「個の良さとか、臆病にならない所とかを持っている」(小野監督)1年生コンビが公式戦のピッチヘ。68分には左から中へ潜った林健太(3年・FC.VIDA)のミドルは枠の右へ外れましたが、「後半は意外と前半のストレスはなくなりましたね」と小野監督。やり合う両者のガチバトルは残り20分間とアディショナルタイムへ。
73分は久我山。西條がドリブルで潰れ、金田が右へ繋いだボールを澁谷が枠へ飛ばすも、ここは内野がファインキャッチ。77分も久我山。澁谷の右CKがこぼれると、内田のボレーはクロスバーの上へ。80分も久我山。澁谷、西條とボールを回し、名倉が左足で打ち切ったミドルも内野がキャッチ。84分も久我山。安藤と名倉の連携から、澁谷が放ったミドルはやはり内野がキャッチ。「関東大会、インターハイと負けて、その後で一生懸命頑張ってくれたので、それはゲームに出ていたと思います」と清水監督。粘る鈴木友也(3年・VIVAIO船橋)と石島の関東第一CBコンビ。久我山が押し切るか、関東第一が耐え切るか。
双方が同時に交替カードを切り合ったのは84分。関東第一は新藤と小関陽星(1年・町田JFC)をスイッチすれば、久我山は安藤と三富嵩大(2年・横河武蔵野FC JY)をスイッチ。87分は久我山。横パスをかっさらった西條がドリブルで持ち込み、そのまま打ったシュートはわずかに枠の右へ。90+1分に澁谷と西條がパスの流れを創り、澁谷が流し込んだクロスは関東第一のセンターバックを務める石島春輔(3年・JSC CHIBA)が懸命にクリア。90+2分は関東第一。冨山が左へスルーパスを通し、林が打ち切ったシュートは中野が体できっちりブロック。90+3分は久我山に3人目の交替。最前線で奮闘した金田と鵜生川治臣(3年・前橋JY)を入れ替えて最後の勝負へ。熱戦も最終盤。ヒートアップする両応援団。
決着の時は唐突に。その瞬間は90+4分。右サイドで前を向いたレフティの小関は、それまで同様に独特のタッチで中へ切れ込みながら、エリア外から突然ミドルを敢行。巻いたボールは美しい軌道を描くと、左スミギリギリの信じられないコースへ吸い込まれます。「アイツはどこをやってもあんな感じで、ただのサッカー小僧ですから」と小野監督も笑った1年生のスーペルゴラッソに、敵将の清水監督も「最後のスーパーゴールは本当に素晴らしいゴールだったのでしょうがないと思います」と称賛の言葉を。最後に三橋智哉(3年・大宮アルディージャJY)を送り込んだ久我山も一歩及ばず。1年生の劇的な決勝ゴールで、関東第一が勝ち点3を強奪する結果となりました。
「決して全然ダメだとも思わないし、勝たないといけなかったゲームだと思います」と開口一番、ゲームを振り返った清水監督。終始ゲームを優位に進めながらも、ミドルシュート3発で沈んだ格好になりましたが、指揮官は「結果は残念だったんですけど、パフォーマンス自体にそんなに不満はないので、彼らの今後に期待したいなと思っています」とポジティブな言葉を。確かに内容を考えれば、そこまでこの敗戦自体のダメージは大きくなさそうな印象を受けました。今年はここまで目に見える結果が付いてきていないことについても「これを逆にモチベーションにしないといけないと思っています。ちょっと野心のようなものに火を付けて、最後に選手権を獲れれば良いと思っていますし、その手応えはあります」と言い切った清水監督。逆襲の久我山が選手権予選4連覇へ着々と歩みを進めているのは間違いありません。
「夏は3年と一緒に1か月ぐらい過ごしていて、1,2年のAはずっと別で動かしていたんですよ。でも、まだ3年と1,2年という感じになっているので、今は40人で動いているんです」と現状のチーム編成を明かした小野監督。その中で1年をベンチに4人も入れた意図については、「使えるタイミングは残す所として、ここと駒大のゲームしかなくて、使わないと意味がないので入れました」とのこと。その1年の小関がゴールという結果を残したことで、より競争が激化するのは確実であり、「これで3年が何か感じ取ってやってくれたらいいと思いますね」と指揮官もその部分に期待を寄せていました。昨年はインターハイで全国4強を経験し、絶対的な優勝候補として慎重に臨んだ選手権予選だったにもかかわらず、準々決勝敗退を強いられたこともあって、小野監督も色々なアプローチで最後かつ最大のコンペティションに向かっている様子。「本当に日本一にチャレンジするんだったら、本当に何かを変えないといけない」と市立船橋戦後に語った小野監督のチームマネジメントにも注目が集まります。 土屋
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