mas o menos

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

最近のエントリー

カテゴリー

アーカイブ

2016/08

S M T W T F S
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年08月01日

クラ選準々決勝 FC東京U-18×横浜FCユース@宮城総合

mas o menos
  • Line

0731miyagi.JPG関東大会では3-3と壮絶に撃ち合い、PK戦までもつれ込んで決着を付けた両者のリターンマッチ。FC東京U-18と横浜FCユースのクォーターファイイナルは前橋市宮城総合運動場陸上競技場です。
過去4度のファイナリストに輝くなど、夏の全国でも確かな存在感を打ち出してきたFC東京U-18。ただ、最後に頂点に立ったのは三田啓貴(仙台)や畑尾大翔(甲府)らを擁した8年前。一昨年も三菱養和SCユースに決勝で敗れており、あと一歩がなかなか届きません。迎えた今シーズンはU-23がJ3に参入していることもあって、プレミアEAST、T1と3つのカテゴリーに選手を供給する新たな試みに着手していますが、「純粋に僕は目の前のゲームに最高の準備をするだけ」と佐藤一樹監督は相変わらずの平常心。今大会も2つのプレミア勢と同居した「なかなかタフなグループ」(佐藤監督)を首位で通過すると、ラウンド16では浦和ユースを2-0で下して、このステージまで。半年ぶりの西が丘へ戻るべく、重要な90分間に向かいます。
2008年に初めて全国の舞台を踏んでから、ここ9年で6度目の関東突破とすっかり"真夏の群馬"の常連になりつつある横浜FCユース。2012年と昨年は決勝トーナメントまで進出するなど、全国でも十分な成果を残せる実力を証明しつつあるチームは、6月の関東大会でも甲府U-18、FC東京U-18、柏U-18、横浜FMユースと強豪を相次いで撃破し、堂々たる関東制覇を達成。迎えた今大会のグループステージは初戦で浦和ユースと引き分けると、新潟U-18と愛媛ユース相手の連勝で圧巻の首位通過。ラウンド16ではプレミアWEST所属の京都U-18を飯澤良介(2年・東急SレイエスFC)の一発で沈め、4年前と並ぶクォーターファイナルへ。「凄く良い子たちが多くて、どんな時も一生懸命マジメに頑張るというのが、ウチの子たちの一番の良さ」と話すのは小野信義監督。クラブの新たな歴史を築くための90分間に挑みます。宮城総合は9時キックオフにもかかわらず、既に34度と灼熱模様。2か月ぶりの再会はFC東京のキックオフでスタートしました。


ファーストシュートは8分のFC東京。右サイドからカットインした生地慶充(3年・FC東京U-15むさし)のミドルはクロスバーの上へ外れましたが、J3でも経験を重ねているレフティが積極的な好トライ。9分は横浜FC。右から山本凌太郎(3年・横浜FC JY)が蹴ったFKは、FC東京のGK波多野豪(3年・FC東京U-15むさし)がキャッチ。10分はFC東京。生地が入れた右FKは、横浜FCのアンカーに入った小澤知也(3年・横浜FC JY)が大きくクリア。まずはお互いにピッチコンディションも含めて、探り合うような展開で立ち上がります。
構図としては「相手は縦に速い攻撃、ウチは横に遅い攻撃で、そこがどう噛み合うか」と小野監督が話したように、FC東京は前線の半谷陽介(3年・FC東京U-15深川)と内田宅哉(3年・FC東京U-15深川)に早くボールを入れつつ、そこに周囲が関わっていくアタックを。一方の横浜FCは「テンポを落としながら、その中でどうやって攻めるかという所」(小野監督)の中で、アンカーの小澤とインサイドハーフの西条正輝(3年・横浜FC JY)と山本の3枚を中心にボールを動かしながら、サイドで勝負する狙いを明確に。ある意味で両者がある程度噛み合いながら、窺うテンポアップのタイミング。
18分は東京。伊藤純也(3年・FC東京U-15むさし)のパスから、鈴木喜丈(3年・FC東京U-15むさし)がアウトで狙ったミドルは横浜FCのGK杉本将哉(3年・横浜FC JY)がキャッチ。23分も東京。鈴木の縦パスを内田が落とし、半谷が枠へ収めたミドルはここも杉本がキャッチ。27分も東京。半谷がミドルレンジから放ったシュートは枠の右へ。やや攻勢は東京もフィニッシュはミドルが大半。エリア内へは侵入し切れません。
すると、31分には横浜FCに決定的なチャンス。相手のパスミスを高い位置で拾ったキャプテンの服部剛大(3年・横浜FC JY)はすかさず右へ。受けた1トップの瀬長直亮(3年・横浜FC JY)は切り返しで1人外して、左足で丁寧にシュートを打ち切りましたが、ボールはクロスバーの上へ外れてしまうと、以降の流れは一層東京サイドへ。34分には鋭い出足のパスカットから荒川滉貴(2年・FC東京U-15深川)が縦に付け、反転した伊藤の左足シュートは枠を超えたものの、惜しいシーンを創出します。
37分の主役は「自分が急に出ることになってちょっと緊張したんですけど、出るって決まったからにはやるしかなかったので、頑張りました」という伏兵。右サイドでのスローインの流れから、伊藤が繋いだボールを「サッカー知能が高いので、こういうゲームでも彼のおかげでチームが慌てないし、90分変わらず高いアベレージでプレーできる」と指揮官も高評価を口にする平川怜(1年・FC東京U-15むさし)が丁寧にクロスを上げると、ファーサイドへ突っ込んだのは荒川。「ゴールに絡みたいなと思っていたら、ちょうど良い所にボールが来ました」と振り返る左サイドバックのヘディングは、そのままゴールネットへ吸い込まれます。「自分は守備が得意で、攻撃での上がり方はわからなかったんですけど、チュウさんは『メッチャ上がれ』と凄く言ってくるので、それで意識が出てきて、こういうゴールに繋がったのかなと思います」と中村忠・前コーチからのアドバイスを生かした荒川の貴重な先制弾。FC東京が先にスコアを動かしました。
「その前からもどちらかというとFC東京のゲームになってきているなという所で一瞬抜けてしまった」(小野監督)隙を突かれる格好で、追い掛ける展開となった横浜FCも41分に反撃。服部を起点に山本が左へスルーパスを通すと、マーカーに走り勝ったサイドバックの橋本健人(2年・横浜FC JY)は中へ。服部のシュートは波多野がキャッチしたものの、サイドを崩した好アタック。45+1分はFC東京に追加点のチャンス。鈴木、内田、伊藤とスムーズにパスが繋がり、半谷がシュートモーションから決定的なパスを送るも、走り込んだ伊藤は歩幅が合わず、飛び出した杉本へのオフェンスファウル。前半はFC東京が1点のリードを手にして、45分間が終了しました。


後半も攻勢はFC東京。開始早々の46分には内田が反転ミドルを枠内へ飛ばすも、杉本が丁寧にキャッチ。49分に伊藤が左から蹴り込んだCKは、横浜FCのセンターバックを務める神山京右(2年・東急SレイエスFC)にクリアされ、53分に再び伊藤が入れた左CKもニアで小澤のクリアに遭いましたが、セカンドハーフも立ち上がりから青赤軍団が追加点への意欲を隠しません。
横浜FCにとって千載一遇の同点機は57分。その2分前にも右からカットインしつつ、枠の左へ逸れるミドルを放っていた西条が、ここも右からスルスルと中央に潜ってスルーパス。斜めに走り込んだ服部は、右に持ち出しながら巧みにワンテンポずらしてシュートを打ち切ると、ここは波多野が体に当てるファインセーブで応酬。横浜FCからすれば、まさに狙い通りの幅を使ったアタックもゴールには結び付かず。
ピンチの後にチャンスあり。波多野のビッグプレーからわずかに1分後の58分。伊藤が左へ付けたボールを、開いて受けた内田はそのまま中央へ猛進。あっさりマーカーを外し、中央を見据えてグラウンダーで蹴り入れたクロスは、懸命にクリアしようとした相手ディフェンダーも外に蹴り出せず、ボールはゴールネットへ飛び込んでしまいます。内田の果敢な仕掛ける姿勢が呼び込んだオウンゴール。FC東京のリードは2点に広がりました。
関東王者の反発力。60分に1人目の交替として、飯澤と金澤隆太(3年・BANFF横浜ベイ)を入れ替え、その金澤を1トップへ、瀬長を右ウイングにスライドさせた横浜FCは、62分にセットプレーのチャンス。このゲームで初めて獲得したCKを左から山本が蹴り込むと、一際高い打点から打ち下ろした菅原道人(3年・横浜FC JY)のヘディングは、右スミのゴールネットを確実に揺らします。点差はたちまち1点に。俄かに活気付くスカイブルーのイレブンとベンチ。
66分は横浜FCの同点機。小澤、山本とテンポ良くボールが動き、左からカットインしながら服部が放ったミドルは、DFに当たって枠の左へ。そのCKを右から山本が蹴り込んだボールは、ニアで鈴木喜丈がクリアしたものの、「相手の左サイドのトライアングルで、関東予選も遊ばれてしまった所がある」と佐藤監督も言及したように、山本と服部に後方の橋本も絡んだ左からの攻撃に漂う可能性。FC東京も68分に1人目の交替を決断。半谷を下げて、ここまで3ゴールを記録している久保建英(中学3年・FC東京U-15むさし)を送り込み、一段階引き上げたいテンポ。73分にはその久保がエリア内で左へ持ち出し、短い振り足で狙ったシュートはわずかに枠の右へ外れると、77分に佐藤監督は内田に替えて、小林真鷹(2年・FC東京U-15むさし)を解き放ち、中盤の強度向上にも着手。残された時間はいよいよ10分間とアディショナルタイムへ。
81分は横浜FC。橋本、西条、金澤、服部と丁寧にボールを回し、こぼれに反応した山本のシュートはクロスバーの上へ。82分は双方に交替が。FC東京は伊藤を品田愛斗(2年・FC東京U-15深川)へ、横浜FCは西条を平松功輝(1年・横浜FC JY)へそれぞれ入れ替え、共に中盤のテコ入れを。84分に久保が左サイドをえぐって中へ送り、生地が枠の左へ外したシュートを経て、FC東京は生地と鈴木郁也(3年・FC東京U-15深川)をスイッチすると、86分には小野監督も「ウチは前に行かないといけないという所で」瀬長と中村拓貴(3年・横浜FC JY)を入れ替え、後ろは神山、菅原、藤富涼南(3年・横浜FC JY)の3バックに移行し、左利きの橋本を右へスライドさせ、「『後ろはもう同数でもいいや』という感じでリスクを冒して、トーナメントだから同点に追い付ければという形」(小野監督)で最後の勝負に打って出ます。
87分に鈴木郁也が打ったシュートはDFが体で弾き、89分に中央から品田が狙ったシュートは3人のDFが体を投げ出し、決死のブロック。3分間のアディショナルタイムが掲示された直後の90+1分には横浜FCも、らしいパスワークから山本が枠を越えるミドルを放つなど、最終盤まで双方が勝利を目指してやり合い続けた一戦に終止符を打ったのは、やはり15歳のレフティ。90+1分に相手の焦りを見逃さず、やや乱れたパスをかっさらった久保はそのまま縦に持ち出しながら、飛び出したGKを左へかわすと、無人のゴールへボールを送り届けます。「あのへんの決定力は稀有なものがあるので、本当に毎試合点を取っているような形になっていますね」と佐藤監督も話した久保のダメ押しゴールで勝負あり。最後は平川と松岡瑠夢(3年・FC東京U-15むさし)も入れ替える慎重なクローズも見せたFC東京が、「しっかり落ち着いたゲーム運びをしてくれたのかなと思います」と指揮官も認める勝負強さを発揮して、セミファイナルへと勝ち上がる結果となりました。


「FC東京の個の強さや力強さにやられましたね。自分たちのやろうとしたことがやれなかったというか、させてもらえなかった感じのゲームでした」と90分間を振り返った小野監督。特にやれなかった所を問うと、「中盤は相手が4枚で、ウチは5枚に近い形なので支配したいという所で、中央も3対2を上手く生かしたいなと思っていたんですけど、相手の圧力とグラウンドと、こういう大会での焦りがあったのか、展開を変えられなかったし、ゲームを創り切れなかったというのが今日一番思った所でした」とのこと。続けて「もっとできるかなと思っていたんですけどね」と語った言葉に、指揮官の悔しさが滲んでいました。試合後には泣いている選手も多数見受けられ、この一戦に懸けていた想いは明らか。「関東予選に勝って、グループ1位で上がって、もう1個プレミアのチームを破ってという所では、選手たちも多少自信になったのかなと。でも、このもう1個先に行くためには、まだ差があるんだなと感じました」と話した小野監督が、最後に「でも、もうちょっとやらせてあげたかったなと思いますね」と呟いた姿が印象的でした。
やや苦しんだ時間帯もありながら、終わってみれば盤石に近いゲーム運びで、きっちり白星を挙げ切ったカズ・トーキョー。この日も直後に開催されるJ3に出場予定だった主力選手を多数ベンチに置きながら、とりわけ岡庭愁人(2年・FC東京U-15深川)、蓮川壮大(3年・FC東京U-15深川)、坂口祥尉(2年・FC東京U-15むさし)に荒川で組んだ4バックも安定感は抜群。「(岡崎)慎はずっとJ3で活躍してくれているので、その間は坂口がセンターで"アラコー"が左でずっとやってきているし、僕たちの中では別に普通というか、自信を持って戦えるメンバーでした」と佐藤監督も話したように、出場したメンバーがその目の前の試合で全力を尽くし、結果も付いてくるという好循環が生まれていることは間違いありません。これで2年ぶりのセミファイナル進出となった佐藤監督に今のチーム状況を尋ねると、「基本的には目の前の試合をどうやって勝っていくかということにエネルギーを注ぎながら、J3に行ったことによってタフになった選手もいるし、T1で鍛えられたことによってここで躍動してくれる選手もいますし、そういった中でもブレずにしっかりと同じ方向を向いて行けるような組織、集団になっていくことの方が難しいことなので、今の所はそういうベクトルが日本一というものに向いてくれているのかなと思いますね。今日もビデオを取りに行ってくれた選手もいますし、Bチームは水戸の遠征にも行っていますし、それぞれの場所でそれぞれが"フォア・ザ・チーム"の精神でやってくれていることが、こういう風に勝ちが転がってここまで来ている原動力なのかなと思います」とおなじみの笑顔。8年ぶりの戴冠へ必要な勝利はあと2つです。      土屋

  • Line