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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年08月06日

クラ選決勝 FC東京U-18×清水ユース@西が丘

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0804nishigaoka.JPG真夏の群馬を潜り抜けてきた両者が、日本一のタイトルを巡って対峙するのはもちろんファイナル。FC東京U-18と清水エスパルスユースが激突する決勝戦の舞台は味の素フィールド西が丘です。
「普通のクラブチームのU-18のチームというよりは、よりトップに近い主体性や自覚を持ってやらないと成り立たなくなってきますし、責任は個々に掛かってくる部分もあると思いますけど、幸いにもそういうものを要求しても応えてくれそうな選手たちと今は仕事ができているので、実践力も含めて一緒になって楽しんで、ポジティブな方向に進めるように行こうぜというスタンスですけどね」と佐藤一樹監督が話したのは新チームになって初めての公式戦を迎えた1月のこと。それから約半年の時が経ち、まさにポジティブな方向にチームが進んでいる感のあるFC東京U-18。J3、高円宮杯プレミア、T1の"三輪"を回している今のチームを、「チームのチャレンジに対して僕らもしっかりとポジティブな意味で強化できているのかなと思います」と評価したのはその指揮官。だからこそ、その中でチームが成長してきたことを証明すべく、日本一を獲得するための90分間へ向かいます。
凋落を叫ばれている王国の牽引者であり、その証明を育成と結果の両面で継続し続けている清水エスパルスユース。神戸U-18を延長の末に振り切ったセミファイナルで生まれたゴールは、すべてサイドアタックからという結果を受けて、「もちろんテクニックというのもあると思うんですけど、やっぱりサイドからの攻撃というのが静岡のサッカー、エスパルスのサッカーだと思っていますし、そこは常々トレーニングでしているので、そういう所が結果として出たのは非常に良かったなと思っています」と言い切ったのは平岡宏章監督。言葉の端々に滲む牽引者としてのプライド。「『何かエスパルスらしいものを』ということで、育成の中でみんなで考えてやっています」と平岡監督が口にした"エスパルスらしさ"を深化させるために、間違いなく重要な結果、すなわち日本一へ堂々と挑みます。歴史の証人になるべく、平日ナイターの西が丘に詰めかけたのは2549人。青赤か。橙か。注目のファイナルは清水のキックオフで幕が上がりました。


勢いよく飛び出したのは「やっぱり決勝ということもあってみんなモチベーション高く入れた」とキャプテンの蓮川壮大(3年・FC東京U-15深川)が話したFC東京。2分に右サイドを運んだ半谷陽介(3年・FC東京U-15深川)の折り返しに、3列目から上がってきた鈴木喜丈(3年・FC東京U-15むさし)は果敢な枠越えミドル。4分にもCBの岡崎慎(3年・FC東京U-15深川)からボールを引き出した半谷は、エリア内で倒れるも松澤慶和主審はノーホイッスル。5分にも生地慶充(3年・FC東京U-15むさし)を起点に、岡庭愁人(2年・FC東京U-15深川)が右から最高のクロス。シュートも狙える位置に潜った内田宅哉(3年・FC東京U-15深川)は折り返しを選択し、清水のセンターバックを務める立田悠悟(3年・清水エスパルスJY)が何とかクリアしましたが、「一昨年も決勝まで行って、今年は本当に選手の優勝したいという強い想いがある」と指揮官も言及したFC東京が猛攻を仕掛けます。
さて、「前半10分くらいで2,3点取られていてもおかしくない所を何とか踏ん張ってやった」と平岡宏章監督も認めた清水も、7分にファーストシュート。アグレッシブさが際立つ平墳迅(2年・岐阜VAMOS)が強引に打ち切ったミドルはDFに当たって枠の右へ外れるも、その右CKを滝裕太(2年・清水エスパルスJY)が蹴り込むと、こぼれを拾った右サイドバックの吉田峻(2年・清水エスパルスJY)はミドルを枠の左へ。9分にも中野優太(3年・F.C.コーマラント)のパスから、10番を託された望月陸(3年・清水エスパルスJY)が左に流れながら枠へ収めたシュートは、FC東京のGK波多野豪(3年・FC東京U-15むさし)にキャッチされましたが、清水もミドルを中心に繰り出す手数。
14分も清水。吉田のパスから中野が丁寧にラストパスを通し、走った滝はわずかに届きませんでしたが好トライ。15分も清水。「彼がああいう風に怖さを見せているから、周りが生きると私は思っている」と指揮官も評価する平墳の左足ミドルは枠の上へ。16分は東京。左サイドでボールを奪った生地は、少しGKのタイミングをずらしながらミドルを放つと、ボールはわずかにクロスバーの上へ。19分も清水。佐野皓平(3年・清水エスパルスJY)が右のハイサイドへ素晴らしいフィードを送り、走った望月の低いクロスは蓮川が懸命にクリア。直後も清水。左スローインから最後はエリア内へ潜った中野がシュート。ここは波多野がファインセーブで弾き出したものの、お互いにやり合う中で、少しずつ清水サイドに漂う"雰囲気"。
26分には東京も生地のパスを引き出した半谷がドリブルからシュートを打ち切るも、今度は清水のGK水谷駿介(3年・FC.フェルボール愛知)がファインセーブで応酬。直後には大会を通じてハイパフォーマンスを披露してきた岡庭がドリブルシュートを枠の左へ。29分は再び清水。高い位置でボールを奪った中野が左へ付け、縦に持ち出した平墳のシュートはわずかに枠の右へ。「2日前に神戸さんと死力を尽くした戦いで延長を戦いまして、そこから今日までどれだけ体力を回復できるかという所に努めて準備をしてきた」(平岡監督)という王国のオレンジも、日本一へ懸ける想いをピッチ上で隠しません。
魅せたのは「準決勝で怜や建英が活躍している中で、チームとしては勝ち上がれていましたけど、自分としては悔しい想いもしていた」という4番を背負ったレフティ。31分に左サイドでの連携から、生地のパスを受けた伊藤純也(3年・FC東京U-15むさし)がマイナス気味に折り返すと、駆け上がってきた鈴木喜丈は左足一閃。左のポストを叩いたボールはGKに当たりつつ、自らの着地点をゴールネットの中へ見い出します。やや流れを引き寄せきれない中でも、「J3でもそういう経験をして、守る時は守って、我慢する所は我慢してという大人のサッカーを意識してきていて、自分たちの流れになったらそれで良いですし、相手の流れになっても動じずにサッカーしようということは思っていました」と話した鈴木喜丈の今大会初ゴールは貴重な先制弾。FC東京が1点のリードを奪いました。
「もちろん清水さんも力のあるチームなので、自分たちの思い通りにゲームが運ばないというプランで考えると、そんなに僕はやられている感はなくて、むしろ締まった良いゲームなのかなという風に見ていました」という指揮官の言葉を「少し押されていたというのもあったんですけど、自分たちのサッカーを貫くというのは試合の始めから監督からも話があった」も蓮川が引き取った通り、やり過ごす所と勝負に出る所の使い分けもきっちりピッチ内で共有されているFC東京。ならば今は一気呵成の時。38分には相手のゴールキックを蓮川が跳ね返し、並走していた相手DFのバックパスが小さくなったところを見逃さず、内田が食らい付いて放ったシュートはわずかに枠の左へ外れましたが、一段階踏み込んだ追加点へのアクセル。
歓喜の主役は「3年になってから表情も取り組みも自分を表現できる時間がどんどん増えてきて、この大会に関しては『やってやるんだ』という想いがそのままダイレクトに表れている」と佐藤監督も高評価を与える11番。前半終了間際の45分に岡崎が1本のフィードで裏を狙うと、走った半谷は"神トラップ"で完全にボールをコントロール下に収め、GKを見極めながら左スミのゴールネットへボールをねじ込みます。「ここ2年間は悔しい想いをしてきて、期する想いがあっての全国大会だったと思うので、そういった想いが伝わってきて感動すら覚えると言いますか、本当にここに来て目覚ましい活躍をしてくれました」と佐藤監督。これで半谷は西が丘連発という役者ぶり。FC東京がリードを2点に広げて、ハーフタイムに入りました。


2点のビハインドを追い掛ける展開となった清水は、ハーフタイムに2枚替え。佐野と平墳に替えて、準決勝で2ゴールをマークして決勝進出に大きく貢献した鈴木魁人(2年・清水エスパルスJY)と宮本優(2年・UKI-C.FC)を送り込み、宮本はドイスボランチの一角に、鈴木魁人は2トップの一角にそれぞれ配され、「後半は自分たちのサッカーをやろうということで」(平岡監督)残された45分間へと赴きます。
それでもゲームリズムは東京。47分には内田のドリブルで獲得したFK。ピッチ中央、ゴールまで約25mの位置から岡庭が直接狙ったFKはわずかにゴール右へ。50分には一度ボールをロストした内田が、再び自ら奪い返して枠の右へ外れるシュートまで。52分にFKは左から、CKは右から共に伊藤純也が蹴り入れたボールは、共にDFのクリアに遭いましたが、54分にここも伊藤純也が左から蹴り込んだCKへ、ニアに突っ込んだ鈴木喜丈のヘディングは枠の右へ外れるも、「2点前半で取れたという、プランからすると非常にポジティブな形」(佐藤監督)を生かしつつ、手放さないゲームリズム。
なかなか手数を繰り出せない清水も、59分には鈴木魁人が仕掛けて奪ったFKを右から滝が放り込み、ファーサイドで立田が折り返すも、シュートまでは持ち込めず。60分にも左から斜めに宮本がスルーパスを狙うも、走った滝は一歩及ばずに波多野がキャッチ。62分にはスタンドからひときわ大きな歓声が。先制点のアシストを記録するなど、確かな存在感を放っていた伊藤純也を下げて、ここまで得点ランキングトップタイの5ゴールを決めている久保建英(中学3年・FC東京U-15むさし)を佐藤監督はピッチヘ解き放ち、追加点を狙う意欲を打ち出します。
67分には圧巻のプレーも。素晴らしいプレスを掛けていた半谷はエリア内で相手ボールを奪い、そのままシュートまで。水谷も懸命のファインセーブでゴールとは行かなかったものの、「本当に身を粉にして、ここまで失点が2というのは半谷の献身的な前からの守備というのもありましたし、裏に抜けまくって相手にジャブや脅威を与え続けるという意味では、本当に頭が下がるくらい」と佐藤監督も絶賛に近い言葉を並べた半谷の姿勢で、さらに全体の士気も上がるFC東京。「まったく焦りもなくやれていたかなと思います」と蓮川。残された時間は20分とアディショナルタイムのみ。
まずは1点ずつ返していきたい清水。72分には左サイドバックの伊藤研太(2年・清水エスパルスJY)、宮本とボールを繋ぎ、梅村豪(3年・清水エスパルスJY)が思い切って打ち込んだミドルはクロスバーの上へ。74分には右から滝が蹴ったFKをGKがファンブルしましたが、すぐにボールへ駆け寄った内田がきっちりクリア。76分にも梅村と中野のパス交換から右へ展開すると、望月が丁寧に上げたクロスは、しかし誰にも合わずにゴールキックへ。ようやく攻勢の時間を引き寄せたものの、どうしてもその勢いがゴールまで届きません。
双方が切り合うカード。77分に内田と小林真鷹(2年・FC東京U-15むさし)、79分に殊勲の追加点を奪った半谷と松岡瑠夢(3年・FC東京U-15むさし)を相次いで入れ替えた東京に対し、清水も81分には滝と平松昇(3年・清水エスパルスJY)、82分には伊藤研太と中島杏輔(3年・清水エスパルスJY)をスイッチして最後の勝負へ。すかさず東京も83分に4人目の交替を。「ここに入ってきた時ももちろんクオリティはありましたけど、やっぱりボールを奪いに行く所だったり、ハードワークをいとわないことを自ら必要性を感じてできるようになってきている」と佐藤監督もその成長に太鼓判を推す平川に替えて、品田愛斗(2年・FC東京U-15深川)を送り込んで取り掛かるゲームクローズ。悲願達成へ始まるカウントダウン。
アディショナルタイムの掲示は4分。残された時間は240秒のみ。90+1分には清水も左サイドから圧力を持って仕掛けるも、岡庭がきっちりタックルで回避。90+3分にも平松が右から蹴り込んだFKはオフェンスファウル。時計の針が93分を回った頃、ふと佐藤監督を見ると、首から下げていたパスの絡まった紐をクルクルと直す冷静さ。「苦しくなっちゃったんです。『苦しいな、このパス。付けなきゃいけないのかな?』みたいな(笑)」とその指揮官。一瞬頭によぎったのは「よく『日本で2位の監督』と言われ続けてきたので、やっと1位になれるのかな」ということ。いよいよ迫り来る栄光の瞬間。
94分13秒。メインスタンドサイド。相手のパスにしっかり寄せた久保のカットでボールがタッチラインを割ると、西が丘の夜空を切り裂いたファイナルホイッスル。「少し泣いてしまったんですけど、素直に嬉しいというか、それが一番でした」(蓮川)「素直に嬉しかったのと、その時はあまり実感がなくて、みんなと喜んでいる間にという感じでしたけどね」(鈴木喜丈)「僕自身は『ベンチにドロンパの人形を置いておいても勝てるようなチームになってくれ』と言ってきたという意味では、本当に今日は僕も必要ないようなゲームをしてくれたんじゃないかなと思います」(佐藤監督)。8年ぶりの戴冠。FC東京U-18が堂々と、そして力強く夏の全国を制して、日本一へ輝く結果となりました。


結果としては準優勝という形になりましたが、その実力を全国に示す格好となった清水。トップチームは初めてのJ2を戦う厳しいシーズンを過ごしている中で、「育成の方はジュニアユースも5月のプレミアカップで優勝しましたし、明るいニュースを少しでも届けていこうという想いもありますし、やはりユースからトップで活躍できる選手を育てていこうということで、その中で結果がこういう風にたまたま今回決勝まで行くことができました」と平岡監督。特に劣勢を強いられる時間の長かった準決勝の神戸戦を、延長で勝ち切った勝負強さには際立ったものがありました。「本当に選手たちはこの大会を通じて1人1人が大きく成長してくれたので、この悔しさをばねにもう1つ成長して欲しいなと思います」と最後に選手たちを労った指揮官。王国の気概を見せた清水の今後にも是非注目したいと思います。
優勝が決まった瞬間、小さくガッツポーズをして静かにコーチ陣と抱き合った佐藤監督。「逆にワーってなっても良かったんですけど、自分の中で嬉しさをかみ殺してしまったという感じですね」とその時を振り返った指揮官は、「もっともっと突き抜けた存在というか、チームになっていかないといけないと思いますし、日本一は凄いことだと思いますし、彼らは本当に良くやってくれたと思いますけど、色々なポテンシャルを考えたら、もっとやれるのかなという部分もありましたので、あまりここでワッとなっちゃうと、満足かみたいに思われちゃいますからね」とニコリ。鈴木喜丈も「ここで終わりじゃないですし、ここからが大変だと思うので、今後も優勝チームに恥じないプレーをしたいなと思います」と話すなど、2人の先を見据える共通した視点が印象的でした。とはいえ、「ハーフタイムに監督が少し目が潤むシーンもあったので、そこでみんなも『またやろう』という気持ちが凄く入って、監督が色々な苦労をされていたのもわかっていたので、全員で掴み取った勝利かなと思います」と蓮川の口から新事実も。そのハーフタイムについて佐藤監督は「8年間優勝できていなくて、ましてや一昨年の悔しい想いをした先輩たちが応援に来てくれていましたし、三ツ沢で養和に負けた悔しさというのはずっと付きまとっていたので、2-0で折り返してきて、あと45分本当に死ぬ気で戦えれば、優勝できるんだなと。僕がどうこうというよりは、応援してくれているサポーターも本当に凄く多いですし、育成普及のコーチに対してもそうですし、このJ3に参戦した年に、ましてや会場が西が丘になったこのタイミングで、『優勝をしたい』というよりは、『優勝を届けてあげたい』という風に思ったんですよね」と話しており、やはりこの日本一に対する想いが相当強かったことは言葉の端々に窺えました。蓮川が「今日も兄は来ていましたし、『借りを返してくれ』というLINEが来ていたので、後で話したいと思っています」と言及した、2年前の悔しさを知る蓮川雄大(早稲田大)を筆頭に、OBも数多く駆け付けた西が丘で4度宙を舞った"カズキさん"。FC東京U-18の根幹とも言うべき"球際主義"に回帰した中で、『プロを目指す』という明確かつシビアなカテゴリーを率いてきたにもかかわらず、コーチ時代も含めてOBたちが後輩の試合を見に来たくなるような組織を創ってきた佐藤監督の手腕に、改めて最大限の敬意を。     土屋

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