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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年07月29日

インターハイ2回戦 関東第一×市立船橋@呉市総合スポーツセンター

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0728kure.JPG昨年のセミファイナルで激突した両者が早くも対峙。これが初戦となる関東第一と、1回戦で秋田商業を3-0で下した市立船橋のリターンマッチは呉市総合スポーツセンター多目的グラウンドです。
ちょうど1年前のインターハイは躍進のステージ。夏の兵庫を颯爽と駆け抜け、全国4強まで駆け上がり、そのスタイルと共に多くの人の知る所となった関東第一。鈴木友也(3年・VIVAIO船橋)、冨山大輔(3年・FC習志野)とその全国を知る攻守のキーマンが中心となる今シーズンも、関東大会予選こそ準決勝で敗れたものの、今大会の予選は準々決勝で都立東久留米総合をPK戦で振り切り、準決勝では選手権で全国ベスト8を経験した駒澤大学高も冨山の一撃で下して、2年連続で真夏の晴れ舞台へ。相手は1年前に苦杯を嘗めた市立船橋ということもあって、「自分たちの現在地を測るという意味でも『臆せずに自分たちのやるべきことをしっかりやろう』と言っていた」とは石井賢哉(3年・Wings U-15)。3回戦進出と昨年のリベンジという"二兎"を手に入れるための70分間へ挑みます。
過去10年で4度の全国制覇。昨年も東福岡に屈したとはいえ、きっちりファイナルまで勝ち上がってくるなど、間違いなく日本で最もこのインターハイで結果を残し続けている市立船橋。昨シーズンは4位でフィニッシュした高円宮杯プレミアEASTでも、前半戦に当たる9試合消化時点で、Jクラブ勢も含めた並み居る強豪を抑えて堂々の首位ターン。前述した昨日の1回戦も、秋田商業相手に1年生の郡司篤也(1年・JSC CHIBA)が衝撃のハットトリックで華麗な全国デビューを飾るなど、新戦力も台頭してきているイチフナに死角なし。「ここに点取り屋がもう1人いたら90パーセントくらいです」と朝岡隆蔵監督も自信を隠さない完成度を誇っているチームが、昨年の返り討ちを狙います。真夏の呉は28.9度という公式記録の気温に、異議を申し立てたくなるほどの灼熱模様。楽しみな一戦は関東第一のキックオフでスタートしました。


キックオフ直後からすぐさま明確になったゲームの構図。ボールを握るのは杉岡大暉(3年・FC東京U-15深川)と原輝綺(3年・AZ'86東京青梅)で組んだCBの間に、ボランチの金子大毅(3年・FCトッカーノ)が降りて、守備時の4-2-3-1から3-4-2-1気味へスムーズに移行しながら、サイドからも中央からも崩す形を窺う市船。2分には西羽拓(3年・鹿島アントラーズつくばJY)の右クロスに、郡司が合わせたヘディングは枠を越え、9分にも杉岡が右へ高精度フィードを送り、真瀬拓海(3年・JSC CHIBA)が裏へ落としたボールへ走った西羽のシュートはわずかに枠の左へ外れましたが、「攻撃のパワーと人数をどこで使うかというのを、今はこの夏のテーマにしてやっている」と朝岡監督も話した市船が、一気に主導権を強奪します。
一方、「リトリートしてそこから守備位置を決めて守るということだったので、相手がボールを持って攻めてという時間が長いというのはわかっていたこと」と鈴木が話したように、ある程度は想定通りの展開の中で守備に軸足を置いた関東第一でしたが、「あれぐらいは持たれると思っていたんですけど、自分たちは持てな過ぎたと思います」と石島春輔(3年・JSC CHIBA)も認めた通り、マイボールになっても早々のロストですぐさま守備を強いられる状況に。12分は市船。野本幸太(3年・大宮アルディージャJY)の右CKに、高宇洋(3年・川崎フロンターレU-15)が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。15分も市船。右サイドで真瀬が粘ってクロスを上げ切り、野本が叩いた左足ボレーは枠の右へ。関東第一も16分には左サイドバックの佐藤大斗(3年・FC杉野JY)のパスから、新藤貴輝(3年・フレンドリー)が強引に狙ったミドルは、市船のGK井岡海都(3年・千葉SC JY)が確実にキャッチ。変わらないゲームリズム。
17分は市船。高のパスから杉岡が狙ったミドルは枠の左へ。20分も市船。野本の右CKは冨山が掻き出し、菅屋拓未(3年・POMBA立川FC)が大きくクリア。27分も市船。阿久津諒(3年・FC KASUKABE)、高、西羽と細かく繋ぎ、軍事が放ったシュートは鈴木がブロック。31分も市船。オーバーラップした原が右へ振り分け、サイドをえぐり切った真瀬のクロスはここも鈴木が体でブロック。「守れる所はしっかり守れていた」と石島が話せば、「相手の攻撃に対する守備もしっかりできていた」と鈴木。関東第一が耐え続ける中で生まれていく守備のリズム。
32分は市船。野本が蹴り込んだ右CKは、関東第一の右サイドバックを託された矢越隆晟(3年・三菱養和調布JY)が懸命にクリア。35分も市船。原が右へ展開したボールを真瀬が中へ放り込み、こぼれを叩いた阿久津のミドルは難しいバウンドも、関東第一のGK内野将大(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)がしっかりキャッチ。35+1分は関東第一にセットプレーのチャンス。石井が倒されて獲得した右FK。スポットに立った冨山が鋭いボールを蹴り入れるも、飛び込んだ鈴木と石島は触り切れず、ここで池内明彦主審が鳴らした前半終了のホイッスル。「得点を取れそうな機会は創ったし、前半もそんなに嫌な感じはしなかった」と朝岡監督が話せば、「前半の間に石井や菅屋と話していたら、まだやれる意識は持っていたので、そんなに疲弊し切ってはいなかった」と小野監督。圧倒的に市船が攻め続けた35分間は、それでもスコアレスでハーフタイムを迎えました。


後半も続く同様の構図。37分には金子のパスに郡司が抜け出し掛けるも、佐藤が懸命に寄せてオフェンスファウル。39分には原、金子と回したボールを杉岡が思い切って狙ったミドルはクロスバーの上へ。41分にも杉岡が強引に前へと持ち出し、その流れからまたも郡司がシュート体勢に入り掛けましたが、ここは矢越が郡司とボールの間に体をねじ込み、飛び出した内野がキャッチ。水際での対応の続く現状を見て、「あのままじゃ時間の問題だと思っていて、どこかで何かを変えなきゃいけないなと思っていた」という小野監督は1人目の交替を決断。左サイドハーフで守備に追われた林健太(3年・FC.VIDA)に替えて、景山海斗(3年・FC.GLORIA)をドイスボランチの一角に送り込み、菅屋を右サイドに出す一手を投じます。
44分の主役は「アイツもかわいがられるタイプだから、色々なことを先輩に教わりながらやれているので、周りに恵まれていますよ」と朝岡監督も言及した1年生アタッカー。ここもサイドを上がっていた原を起点に高がスルーパスを通すと、西羽は丁寧にマイナスへクロス。ファーから突っ込んできた郡司のシュートは、鮮やかにゴールネットを揺らします。2試合連続弾となる大会4ゴール目を上げたルーキーは一目散に応援席へ駆け出し、そこで広がる大きな青い歓喜の輪。市船がとうとうスコアを動かしました。
「相手は後半はどんどん縦パスを入れるようになってきて、その対応がちょっと遅れました。後半相手がやることを変えてきたことに関して、ウチが対応するのが一歩遅れていたと思います」と鈴木も話した関東第一は1点を追い掛ける展開を強いられましたが、それでも頼みの冨山にもボールが収まらず、攻め手を見い出し切れず。47分は市船。左から野本が入れたCKは、ゴール前に混戦を生み出すも佐藤が間一髪でクリア。52分も市船。阿久津、真瀬と回し、西羽が右へダイレクトで付けたボールを原がクロスに変えると、ニアで鈴木が力強くクリア。直後に野本が蹴った右CKは石島が何とかクリア。反発し切れないカナリア軍団。
ここで勝負に出たのは小野監督。55分に新藤を下げて、レフティドリブラーの堤優太(3年・FCトッカーノ)をピッチヘ解き放つと、56分に村上弘有(3年・Wings U-15)のスルーパスに郡司が抜け出し掛けるも、鈴木が果敢なタックルで回避し、57分にCKのこぼれから真瀬が放った枠の左へ外れるミドルを経て、59分には篠原友哉(2年・府ロクJY)と重田快(2年・バンデリージャ岡山)をスイッチ。「ボールと人ごとグッと持ち出せるのが原と杉岡だったので、一番厄介だったのはアイツらの所の前進を止めちゃおうと」(小野監督)、システムを4-3-3にして、重田を中央に、右が冨山、左が堤という3トップに、中盤は菅屋、石井、影山をトレスボランチ気味に配し、何とか打開を図ります。
60分には関東第一にも久々のチャンス到来。左サイドをドリブルで運んだ堤は、重田とのパス交換を経て、利き足とは逆の右足でクロスを上げるも、ここはきっちり市船ディフェンスがクリアすると、以降は再びなかなかチャンスを創り切れません。この時間帯は「相手も4-3-3にして少し立とうとした意識は見えたけど、取りに来る訳じゃなかったのでゲームが動かなかった」と朝岡監督は表現し、「あの原と杉岡の2人をもうちょっと引っ張り出して、引っ掛けてという風にしたかったんですけど、慌てずに突っ込まなかったので、あそこは非常に高性能で『Jに行く力があるよな』と思いました」と小野監督。関東第一の狙いをきっちり把握した上で、「後ろはレベルが高いと思います」と朝岡監督も言い切る原と杉岡を含めた市船守備陣の強固さは驚異的。
さらに63分に殊勲の郡司と太田貴也(3年・JSC CHIBA)を、70+1分には村上と桧山悠也(2年・栃木SC JY)を入れ替え、クローズに掛かった市船の徹底さは「最後の時間稼ぎの所なんかも『なかなかやり込んでるな』という感じだった」と小野監督も認めざるを得ないクオリティ。「今年のチームは言ったことに対する反応や理解が早いです。試合の運び方とか、どういう相手に対してはどうするとか、どうなったらどうするということをずっと問答しながらやってきたことを理解している子が多くて、それを広げていくこともできる子たちだからストレスは少ないです」と指揮官も言及した市船が、右サイドでパーフェクトに時間を潰し切って聞いたファイナルホイッスル。"大人のサッカー"を貫徹した前回のファイナリストが、3回戦へと勝ち上がる結果となりました。


市船のチーム力が際立ったゲームだったと思います。とりわけ印象に残ったのが金子、高、阿久津で組んだ中盤の高いインテリジェンス。「去年からこのスタイルをやり始めて、そこで試合に出ていた子たちなので、理解力は早かったですし、シーズンが始まる前にある程度そこはできていました。その前に彼らが1年生の頃にもそういうことをやりながらやってきたので、積み上げの中でそんなに違和感なくやれているかなと。繰り返す中でその質を上げてきているので」と朝岡監督もあのトライアングルには大きな信頼を口に。もちろん原や杉岡のタレント力や、郡司の勢いなど注目するポイントだらけのチームの中で、彼ら3人のゲームを読む力も大いに特筆されるべきクオリティだったように感じました。「勘違いではなくて謙虚にしっかりやろうという姿勢がチームとして出てきたので、それは良かったです。やっぱり杉岡やヤン(高宇洋)のように、こちらが考えていることを共有できる選手がいるというのは大きいですよ。こっちの言っていることを『わかんねえよ』と言って、そっぽを向くヤツは限りなくゼロに近いから。そういう子たちに対して教えられる、経験値のある力のある上級生たちが本当に多くなっているので助かりますね」とチーム力の向上にも手応えを感じている様子の朝岡監督。市船、強いです。
「ずっと守備に追われる時間が多かったので苦しい試合でした」(石島)「1回のチャンスを1回で決めてくるあたりはチームのレベルの差を感じました」(石井)「やっぱり凄かったです。日本一のチームというのはこういうレベルなんだなと思いました」(鈴木)と三者三様にゲームを振り返ってくれた中で、全国トップレベルの強烈な実力を目の当たりにした関東第一。小野監督も「相手にとってやりづらさを感じさせる方法が、ウチに対してどうしていいかわからないということではなくて、自分たちがうまく行かないということでしか彼らにストレスを与えられなかった」という言葉を口にしつつ、「総合力は今年の方が高いんじゃないですか。どこも隙もないですし、良いチームだなと思いました」と素直に相手の実力を認めていました。ただ、「去年と今年のどちらも全然無理だという感じは正直なくて、守れる所はしっかり守れていたので『勝てたかもしれない』とは思いました」と昨年の市船戦にも出場していた石島が話し、「僕自身もやっていた感覚の中では『行けないことはない』と思っていました」(石井)「守備に関しては相手にひけは取らないとは思っています」(鈴木)と2人も語ったように、現時点で高体連最強クラスの相手と対峙したことで、"やれそうな"感覚は確かに掴んだ様子。「必ず借りを返したいです」と言い切った石島の覚悟を叶えるためには、少なくともいまだに辿り着いたことのない、悲願とも言うべき"冬の東京王者"になることが必須条件です。     土屋

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