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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年06月20日

インターハイ群馬決勝 伊勢崎商業×前橋商業@敷島

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0619shikishima2.JPG夏の全国切符を巡る群馬ファイナルはフレッシュな顔合わせ。6年ぶりの全国を狙う伊勢崎商業と、4年ぶりの県制覇に燃える前橋商業の"商業対決"はもちろん県立敷島公園サッカー・ラグビー場です。
インターハイ、選手権共に全国出場経験を持ち、県内のコンペティションでは上位の常連校として存在感を発揮している伊勢崎商業。昨年度はインターハイ予選、選手権予選、新人戦といずれもベスト16での敗退を強いられ、県総体では初戦で伊勢崎工業との"伊勢崎ダービー"にPK戦で屈するなど、なかなか結果の出ない時期が続いていましたが、今大会は2回戦で前橋東をPK戦の末に振り切ると、準々決勝では新島学園を2-0で、準決勝では前橋育英を破るジャイアントキリングを演じた常磐を3-0で破り、怒涛の6連勝でこのファイナルまで。6年ぶりの全国へ向けてムードは最高潮です。
インターハイ予選は16回、選手権予選は 回の県内制覇を成し遂げており、上州のゼブラ軍団としてその名を知られている前橋商業。近年はやや前橋育英と桐生第一に押され気味ではあるものの、同校のOBでもある笠原恵太監督の就任以降は、昨年の関東大会で日大藤沢と好勝負を繰り広げると、選手権予選でも前橋育英をあと一歩まで追い詰めるなど、着実にチーム力もアップ。迎えた今大会は初戦で共愛学園に2-1で競り勝ち、準々決勝では桐生第一を風間朝陽(3年・図南SC群馬)のゴールで1-0と撃破。昨日の準決勝も高崎経済大附属を3-1で下して、堂々の決勝進出。全国16強に入った長野インターハイ以来、4年ぶりの全国へ王手を懸けています。注目のファイナルに敷島のスタンドには例年通り大観衆が。楽しみな一戦は伊商のキックオフで幕が上がりました。


開始早々のチャンスは伊商。1分に右サイドでスローインを獲得すると、阿久津智輝(2年・ザスパクサツ群馬U-15)はロングでエリア内へ投げ込み、ルーズボールは前商のGK田村健太朗(2年・前橋ジュニア)がキャッチしたものの、かなりの飛距離で投げ込まれたロングスローにどよめくスタンド。5分は前商。右FKを金枝晃平(3年・北群馬郡吉岡中)が蹴り込み、ファーで風間が折り返したボールはDFのクリアに遭いますが、まずはお互いにセットプレーからチャンスを探り合います。
9分は伊商。レフティのアルタミラノ・ケンゾ(2年・伊勢崎第四中)が裏へフィードを送り、走った富川ダニエルたけし(3年・FC伊勢崎境)はシュートまで持ち込めなかったものの、可能性のあるアタックを。15分は伊商の決定機。左サイドの深い位置から追川恵聖(3年)が蹴ったFKはボールが伸び、フリーになった阿久津のヘディングはクロスバーを越えましたが、惜しいシーンを創出。17分は前商。右から大?洸紀(2年・図南SC群馬)が中央へ折り返すも、金枝のシュートはDFに当たって枠の右へ。直後に金枝が右から2本続けて蹴り込んだCKもDFがきっちりクリア。スコアを動かすまでには至りません。
以降もペースは前商が握るものの、「やっぱり68メートルを5枚で守られるというのは難しいですよね」と笠原監督が話したように、藤生愛基(2年・前橋ジュニア)をスイーパー気味に、右にキャプテンの本澤凌(3年)、左に宮城立聖(3年・FC伊勢崎境)と中央は3枚で固め、右ワイドに追川、左ワイドにアルタミラノを配した伊商の5バックは集中力も高く、なかなか前商も崩し切れず。逆に伊商は右サイドハーフの阿久津と1トップに入った富川の個人技を生かす形で、守備をベースに時計の針を進めていきます。
32分は前商。左から金枝がCKを短く蹴り出すも、大?はクロスを上げ切れず。35分は伊商。左から阿久津がロングスローを投げ入れるも、ここは田村が確実にキャッチ。35分は前商。ボランチを務める信澤蓮(3年・FCトッカーノ)の展開から、「相手がスイーパーみたいに1人残っていたので、その選手をどうやって引き付けて中を空けるかで、サイドから攻撃するのはチームの作戦としてやっていました」と話すキャプテンの木村海斗(3年・伊勢崎第三中)が右クロスを上げ切り、DFのクリアをダイレクトで叩いた金枝のボレーは伊商のGK須藤和希(3年・前橋エコー)がキャッチ。「前半は緊張もあったので、多少硬かったですね」とは木村。やや動きの少ない前半はスコアレスでハーフタイムに入りました。


伊商は後半のスタートから1人目の交替を。1トップで雰囲気のあった富川を下げて、星魁馬(2年・前橋エコー)を投入。阿久津が1トップの位置に移り、中盤は右が星、左が多々木秀(2年・太田休泊中)で、アンカー気味の金塚次郎(2年・上州FC)とやや前に位置する竹部海未(3年)が中央に入る4枚で再び整える5-4-1のバランス。開始早々の41分は前商。櫻井優希(2年・FCクリロ)のミドルは須藤にキャッチされましたが、14番を背負うボランチの積極的なチャレンジで後半は立ち上がります。
先制点は意外な形で。46分に伊商が右サイドで獲得したFK。キッカーの追川はニアサイドへ速いボールを蹴り入れると、懸命に食らい付いたDFのクリアは体勢も悪く、そのままゴール右スミへ吸い込まれてしまいます。思わぬ格好でのゴールに沸き上がる赤白の大応援団。「向こうはそれも含めてのああいうボールなので、やられた感じです。余計なファウルをするなと言っていたんですけど」と笠原監督。予期せぬオウンゴールで伊商が1点のリードを手にしました。
追い掛ける展開となった前商は47分に1人目の交替。大?と大塚優人(3年・図南SC群馬)を入れ替えて、サイドの推進力に変化を加えると、53分に飛び出したのは「ここで負けることはできないので、自分が何かやってやろうと思っていた」というレフティ。左から金枝の蹴ったFKはDFにクリアされたものの、右サイドでこぼれを拾った星野周哉(3年・渋川子持中)は巧みなステップでマーカーを外し、そのままの流れでループを選択。GKの頭上を鮮やかに破ったボールは、ゆっくりと左のサイドネットへ吸い込まれます。「蹴った瞬間にベンチから『入った』と思いましたけど、あんな凄いシュートは見たことないですね(笑)」と笠原監督も笑った一撃は、「いつも予選中は打っても全然決まらなくて悩んでいたので、自分でもビックリしました」と本人も驚くゴラッソ。前商がすぐさまスコアを振り出しに引き戻しました。
均衡の戻ったゲームはやはりお互いにセットプレーがチャンスの柱。55分は伊商のCK。右から竹部が蹴ったキックはDFが掻き出し、再び竹部が入れた右クロスもDFがきっちりクリア。56分は前商のFK。右から金枝が入れたボールに、藤生春樹(2年・FCおおた)がヘディングで合わせるも、ここは須藤が丁寧にキャッチ。59分は伊商のロングスロー。左から阿久津が投げ入れたボールは、ゴール前で混戦を生み出すもDFが何とかクリア。全体のゲームリズムはやや前商も、伊商が忍ばせるワンチャンスの脅威。
61分は伊商。中央で前を向いた阿久津は、星からのリターンをそのままダイレクトでミドル。巻いたボールはわずかに枠の右へ逸れましたが、果敢なシュートチャレンジを。さらに竹部と田島快輝(3年・伊勢崎あずま中)の交替を経て、63分も伊商。左から阿久津がロングスローを投げ込み、こぼれをアルタミラノが残すと、阿久津が思い切って狙ったミドルは枠の上へ。65分も伊商。ここも阿久津の左ロングスローが前商ゴール前を襲い、DFのクリアをダイレクトで打ち切った星のボレーはわずかにクロスバーの上へ。ここは阿久津の"手"と"足"に託される伊商の時間帯。
それでも「自分たちのサッカーができてきたかなというのはあったので、そこまで焦ることはなかったです」と木村も口にした前商は終盤に猛アタック。71分に右から金枝が蹴ったCKに、センターバックの李守文(2年・ザスパクサツ群馬U-15)が飛び込むも、伊商ディフェンスも懸命にクリア。74分に星野がドリブルでエリア内へ侵入するも、伊商ディフェンスもすかさず3人で囲んでカット。攻める白黒。耐える赤白。両応援団も「勝つのは白黒」「勝つのは赤白」のコール合戦で雰囲気を盛り上げます。
79分も前商。金枝が左から蹴り入れた鋭いFKは良い位置に落ちるも、突っ込んだ風間も木村もわずかに届かず。アディショナルタイムの掲示は3分。80+1分も前商。左サイドバックの若林泰輝(3年・図南SC群馬)が通したフィードに星野が走るも、体を張り続ける宮城がこの局面も執念でカット。80+4分も前商。若林を起点に櫻井が絶妙の浮き球を右サイドへ送ると、全力で走り込んできた木村のヘディングは右ポストの外側を叩いて劇的ゴールとは行かず、ここで80分間の終了を告げるホイッスル。両者譲らず。全国への行方は前後半10分ずつの延長戦へと委ねられることになりました。


延長前半開始から伊商に3人目の交替。多々木に替えて中野雅輝(3年)をそのまま左サイドハーフへ送り込みますが、延長もペースは前商。87分に金枝が蹴った右CKは一旦こぼれ、拾った大塚のミドルは枠の右へ。直後の87分にも櫻井のパスを受けた星野が左からクロスを上げると、宮城が必死にクリア。89分にも金枝の左CKがゴール前に混戦を呼び込み、星野が放ったシュートはDFが体でブロック。伊商も90+1分にはアルタミラノが獲得したCKを左から金塚が放り込むも、前商ディフェンスが確実にクリア。激闘の様相を呈してきたファイナルもいよいよ最後の10分間へ。
91分は前商にビッグチャンス。左サイドを単騎で抜け出した星野はグラウンダーでクロスを送り、突っ込んだ藤生より一瞬早く宮城がスライディングで掻き出し、思わず前商イレブンも頭を抱えましたが、「あの崩しは良かった」と指揮官も認めるアタックを繰り出すと、狂喜の瞬間はその3分後。94分に右サイドを藤生とのワンツーで抜け出した木村は丁寧にクロス。「金枝と入れ替わるというのはいつも練習していた」という"入れ替わり"でファーに潜っていた星野は、「ハーフタイムに『ダイレクトで蹴れ』とコーチから言われていた」ことを瞬時に思い出しながら左足一閃。ボールは豪快にゴールネットへ突き刺さります。新人戦までは左サイドハーフを務めており、「あまり点を取ることはなくて、クロスを上げて終わりという流れを自分の中で作っていた」という7番が、この大事な一戦でドッピエッタの大活躍。前商がこの土壇場で、とうとうスコアを引っ繰り返しました。
何とか耐え凌いできた伊商は、この最終盤でリードを許す展開に。95分には奮闘した宮城に替え、福井大陸(3年)をピッチヘ解き放って最後の勝負に。96分には金塚のFKから追川が粘って右クロスを上げるも、中野にはわずかに届かず。100分にも阿久津の左ロングスローから、ルーズボールを回収した星が左クロスを放り込むも、前商ディフェンスはシュートまで持ち込ませず。100+1分にも阿久津が左ロングスローを投げ入れ、本澤が左へ付けたボールから星はスルーパスを狙うも、田村がきっちりキャッチ。「ボールにしっかり反応して、1個目だけではなくて2個目、3個目の意識も忘れずに、常に声を掛けていました」と木村。崩れないゼブラの壁。
100+2分のラストチャンス。伊商が右サイドで奪ったスローインのスポットへ、全力で走って向かうのはもちろん阿久津。10番が投じたこの日"8球目"も集中の続く前商ディフェンスが跳ね返すと、敷島の空へ吸い込まれたファイナルホイッスル。その瞬間を「ホッとしました」と振り返った木村を中心に、ピッチヘ広がった白黒の歓喜の輪。「初戦の共愛戦も1点を取られてからの逆転なので、慌てないで良くやってくれているなと。底力がちょっとは付いてきたのかなと思いますし、こういう試合で逆転できるというのはちょっと褒めてあげたいなと思います。ああ、でも褒めるかどうかは迷いますね(笑)」と笠原監督も安堵の表情を浮かべた前商が、4年ぶりの全国切符を延長の末にもぎ取る結果となりました。


試合後、開口一番「こんな試合、体に悪いよ」と笑った笠原監督。昨シーズンは関東大会予選を制しながら、インターハイ予選で敗退した経験を踏まえ、「関東大会予選を優勝した時に昨年と表情が違いました。昨年はフワフワした状態でしたけど、今年は『俺たちが目指すのは関東じゃないよ。インターハイの全国だ』と。関東大会はちょっと不甲斐なかったんですけど、今年は僕が言う前にそういう雰囲気になっている」とのこと。今大会の大きなヤマと捉えていた準々決勝の桐生第一戦に勝利した時も、「桐一に無失点で勝てたことは自信になりましたけど、過信し過ぎてはいけないというのはわかっていました」と話したのはキャプテンの木村。今年のゼブラ軍団が全国の切符を掴んだ背景には、明確な理由が存在していたようです。チームとしては4年ぶりの全国となりますが、大半の選手たちにとってはこれが初めての全国大会。大舞台への抱負を問われ、「自分が全力を出して勝利に繋げられたらいいなと思います」と星野が話せば、「先を見ずに1試合1試合そこだけに全力で立ち向かっていくだけですね」と木村も殊勝に言葉を紡ぎましたが、笠原監督は「1試合でも多くやった方が、良い試合をして1試合で終わるより上手くなると思いますし、良い経験ができると思います。上を狙いますよ」と上位進出への意欲をハッキリと口に。白黒のユニフォームを身に纏った"マエショウ"が全国の舞台に帰ってきます。       土屋

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