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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
3月6日に開幕を迎えたファーストステージもこのゲームが最終節。16位のファジアーノ岡山ネクストと5位のヴァンラーレ八戸が対峙する一戦はシティライトスタジアムです。
2勝12敗、10得点26失点の16位。悪夢の開幕11連敗という厳しいスタートを強いられながら、前節は首位のFC大阪に競り勝ってシーズン2勝目を挙げるなど、ようやくここに来てチーム状況も上向きつつあるファジアーノ岡山ネクスト。「平均年齢も5歳以上違う対戦相手の中で、最初はフィジカル的にもやれるプレーは非常に少なかったですが、徐々にフィジカルも含めてやれることが増えてきて、できれば主導権を持ちながらゲームを進めて上回りたいなと思いながら、少しずつ形になってくる回数は増えてきていると思います」と話すのはチームを率いる牧内辰也監督。セカンドステージでの巻き返しに向けて、何とか勝利を飾りたいファーストステージのホーム最終戦へ挑みます。
6勝4分け4敗、18得点10失点の5位。第7節までは5勝2分けと無敗をキープしていたものの、「前でスピードがあって運べる水谷(侑暉)という選手がケガをして、彼が欠場し始めたぐらいから勝てなくなったんですよ」と望月一仁監督が語ったように、その水谷侑暉(22・愛知学院大)の名前がスタメンリストから消えた第8節以降はわずかに1勝と、少し難しい時期を強いられているヴァンラーレ八戸。今節も菅井慎也(24・仙台大)と市川大祐(36・FC今治)という2人の主力を欠く布陣となりますが、絶対的な目標の4位以内を確保する上でも、負けられないアウェイゲームへ臨みます。トップチームの"後座"的な位置付けの中、J2のゲームが行われていた頃には何とか持ち堪えていたシティライトスタジアムの上空からも大粒の雨が。楽しみなゲームは岡山のキックオフでスタートしました。
いきなりの決定機はホームチーム。8分にシンプルなフィードへ「2日前に結構急に言われたんですけど、自分のフォワードとしてできることは少ないので、それを100パーセントでやろうかなという気持ちでやりました」と自ら明かした、本来はDF登録ながらフォワード起用となった板野圭竜(20・ファジアーノ岡山U-18)が頭で競り勝ち、抜け出した藤岡浩介(21・日章学園)はGKと1対1に。ここは八戸のGK山田賢二(27・国士舘大)がファインセーブで弾き出しましたが、「高さがあって基点になるという所と、足元もそんなに悪い訳ではない」と牧内監督も言及した板野が持ち味を発揮して決定的なシーンを演出すると、8分にも千布一輝(20・ファジアーノ岡山U-18)が山田にキャッチを強いる枠内ミドル。まずは岡山が積極的に立ち上がります。
ところが、先に雨の中でも限られた人数で声援を送るサポーターへ歓喜を届けたのは八戸。13分に左から新井山祥智(31・八戸大)が蹴り込んだCKは板野にクリアされたものの、再び獲得した左CKをここも新井山が丁寧に蹴り込むと、飛び込んだ成田諒介(27・富士大)のヘディングは右スミのゴールネットへ吸い込まれます。これには望月監督も「セットプレーは良いボールがやっと上がり出してきていて。前節もそこからゴールが入りましたし、岡山もセットプレーが苦手だというのはわかっていたので、チャンスだと思っていました」としてやったりの表情。アウェイチームが1点のリードを手にしました。
早くも追い掛ける展開となった岡山は、15分前後から中盤で相手ボールを引っ掛ける回数が増加し、ショートカウンターに可能性が。18分にはやはり中盤でボールを奪い、山下泰明(23・金沢星稜大)が右へ振り分け、千布のクロスはDFに跳ね返されたものの好トライ。24分にもオーバーラップした右サイドバックの佐々木健人(22・龍谷大)のクロスから右CKを得ると、奇特直人(22・浦和レッズユース)が短く蹴り出し、藤岡のリターンを奇特が上げた左クロスはDFのクリアに遭うも、創り出す惜しいチャンス。
30分前後からは岡山がCBの宮川晃至(24・高知UトラスターFC)と山下宏輝(22・高知大)を中心に後ろでボールを動かしながら、八戸の中盤アンカーに入った菅井拓也(24・仙台大)の両脇にサイドハーフや2トップが潜ってパスを受ける所までは持ち込めるものの、「そこから入っていく所に1つ踏み込みが足りなかった」(牧内監督)という展開に。34分には相手CKからのカウンターで左サイドを「僕や右も含めてサイドバックの位置は基点になれるので、僕はボールを受けて前に付けるということを意識してやっていました」と話すサイドバックの田中雄輝(20・ファジアーノ岡山U-18)が駆け上がってクロスを放り込み、ニアに突っ込んだ板野のボレーはヒットしませんでしたが、カウンターから窺う同点機。
一方、「こういうスリッピーなグラウンドが苦手みたいで、ボールが下から動かなかったです」と望月監督も渋い表情の八戸は、なかなか手数こそ繰り出せない中でも、岡田祐政(29・グルージャ盛岡)と須藤貴郁(24・平成国際大)のCBコンビを中心にした守備陣はきっちり安定感を。43分に菅井拓也が放ったミドルはクロスバーを越えましたが、ある意味で全体的にリードを後ろ盾にリスクを冒さずバランスを維持した感も。「持っていたというより持たされて、うまく相手に回させられていたと思います」とは板野。前半は八戸が1点のアドバンテージを握って、最初の45分間は終了しました。
後半もスタートから勢いを持って入ったのは岡山。47分には田中宏昌(21・ファジアーノ岡山U-18)、板野とボールが繋がり、山下泰明のシュートはDFにブロックされたものの、アタッカー陣でフィニッシュまで取り切ると、直後に藤岡が蹴った左CKは山田が丁寧にキャッチ。49分にも佐々木健人のクロスに、走り込んだ山下泰明のシュートはDFをかすめて枠の右へ外れ、右から奇特が蹴り入れたCKはゴール前に混戦を生み出すも、最後は山田にキャッチされましたが、「今日は特に両翼がキーになるという話をハーフタイムにもしていた」と牧内監督も言及した"両翼"は機能し続けます。
あまり流れの変わらない状況に「自分たちのディフェンスラインの脇を使われて、そこからアンカーの横に付けられて、そこでみんな前を向かれていたので、そこは後半に修正して、アンカーの脇を使われないようにダブルボランチにして、4-4-2のような形でやった」と望月監督。菅井拓也と前田柊(22・神奈川大)をボランチに並べ、インテリオールにいた新井山を前線に上げる形でバランス向上に着手。53分には新井山の左CKに岡田が合わせたヘディングは枠の右へ逸れましたが、やはりセットプレーは1つの脅威に。
58分は岡山にビッグチャンス。板野が前で基点を創りながら短く付けたボールから、前を向いた藤岡はバイタルへ侵入したものの、シュートモーションでスリップしてしまい、右足で押し出したボールは枠の右へ。これには思わず頭を抱えるスタンドの岡山スタッフ。牧内監督も61分に1人目の交替を。田中宏昌に替えて、小林秀征(21・東海大五)を右サイドハーフに送り込み、山下泰明を左サイドハーフにスライド。「左利きの選手ですから、今後も楽しみにしていきたいですね」と指揮官も話した田中雄輝がキープにフィードにと基点になっていた左サイドに加え、右サイドの推進力増強も意図しつつ、何とか引き寄せたい同点弾。
67分の決定機は八戸。中央やや左、ゴールまで約30mの位置から成田が直接狙ったFKはカベに当たりましたが、こぼれを拾った右サイドバックの佐々木航(23・道都大)がすかさずクロスを放り込むと、新井山が合わせたヘディングはわずかに枠の上へ。直後には望月監督も1人目の交替を決断。左サイドの李澤忍治(28・ソニー仙台FC)と西村啓(26・FCガンジュ岩手)をそのまま入れ替え、こちらも整える左右のバランス。70分は岡山に2人目の交替。「もっと基点を創れたらなという想いがありました」と言いながらも、最前線で奮闘した板野に替えて、西林直輝(20・ファジアーノ岡山U-18)を左サイドハーフに投入し、小林と藤岡の2トップで勝負に出ます。
73分は岡山にチャンス。中央を単騎で運んだ藤岡は、そのままシュートまで持ち込んだものの、軌道は枠の右へ。「彼もなかなか今シーズンはオープンプレーの中から点が取れなくて、もがいている所」と牧内監督も口にした藤岡は、これでこの試合3本目のシュートトライもゴールには至らず。チーム自体も以降は「ウチの選手はまだどうしても若いので焦ってしまって、中央、中央にボールを集めてしまうんですね。もう少し冷静に前半のように中、外、中と動かしながら、最終的にはゴールの所に入って来なければいけなかったんですけど」と牧内監督も振り返る状況に陥ってしまい、望月監督も「守備の修正は少しできました」と認める八戸ディフェンスをこじ開けられないまま、容赦なく進んでいく時計の針。
逆に終盤は八戸に甦った前への積極性。79分には村上聖弥(25・MIOびわこ滋賀)の縦パスを高見啓太(22・国士舘大)が落とし、西村のミドルは岡山のGK木和田匡(19・ファジアーノ岡山U-18)がキャッチしたものの、アタッカー陣トリオの連携でフィニッシュまで。80分には高見を下げて、金井隆太(26・東海大)をピッチヘ解き放ち、「どちらかと言えばフォワードの選手です(笑)」と指揮官も笑う佐々木航を1列上げて、金井は右サイドバックへ。望月監督も「金井もセンターバックの選手なんですけど、守備は航よりできるので、そうやって1-0で終わらせに掛かりました」とゲームクローズを明確に意識した采配を振るいます。
82分は八戸。高い位置でボールを奪った流れから、右に開いた新井山が中央へ戻し、村上が狙ったミドルはゴール左へ。岡山がなかなか攻撃の形を創り切れない中で、90分に八戸は最後の交替。相変わらずのキック精度を見せた新井山がベンチに下がり、児玉昇(22・仙台大)が最終盤のピッチに登場。アディショナルタイムの掲示は3分。ゲームはいよいよクライマックスの180秒へ。
90+2分に佐々木航が繋ぎ、西村を経由して児玉が思い切り良く放ったシュートが枠の左へ外れると、これがこのゲームのラストチャンス。岡山の雨空に吸い込まれた石丸秀平主審のファイナルホイッスル。「1-0で勝てば御の字です(笑) 試合内容はひどかったです」と苦笑いを浮かべたのは望月監督ですが、八戸がきっちり"ウノゼロ"で90分間を切り抜け、ファーストステージの最終戦で勝ち点3を獲得する結果となりました。
「今日は(市川)大祐と菅井慎也がいなくて、ちょっとゲームが落ち着かなかったですね。ボールの落ち着き所がなかったです」と渋い表情を崩さなかった望月監督。続けて「右サイドも落ち着かない、左サイドも落ち着かない、真ん中も落ち着かないという(笑)」とやや自虐的に笑ったものの、逆にこういう展開のアウェイゲームで勝ち点3を取るというのは、上を目指していくためにも非常に大事な要素。指揮官も「これでセカンドステージの頃にはケガ人も帰ってくると思うので、ベストでできるようになってくればまた楽しみですけどね」と今後への明るい展望もしっかり語ってくれました。昨年は年間2位という好成績を残しながら、クラブライセンスの問題で昇格は果たせなかった八戸ですが、「去年はもっとラフに蹴っていたんですよ。でも、J3で戦える力を付けて上がりたかったので、結果プラス内容にもこだわりを持ってやっていこうというのがあって、今年は下から下から繋ぎながらというサッカーにしています。それを続けていけば、J3でも戦えるようなサッカーになっていくのかなと思ってやっています」と望月監督は少し先を見据えたチーム創りに取り組んでらっしゃるとのこと。豪雨の中、遠い岡山の地で声援を送り続けていたサポーターの気概に応えるためにも、セカンドステージは勝負の15試合になりそうです。
岡山は率直に言って、なぜ最下位に沈んでいるのかがわからないような内容でした。そのことをストレートに牧内監督へぶつけると、「比較的こういう内容が多いですね。最初はフィジカル面で持っていかれてしまうことが多かったんですけど、大崩れはそんなにしないチームなので、競り負けてしまうことが多いです。焦ってやってはいけないプレーをするとか、蹴っておけば良いのに無理して繋いでしまって、バックパスをかっさらわれて失点したりとか、そういう展開が多くて。ちょっとずつ減ってきたなという所ですけど、セットプレーも含めてゲームですので、全体の守備がポイントだと思います」と明確な理由を。確かに今シーズンの記録を遡ってみると、この試合で1点差負けは8試合目ということで、やはりその"際"の勝負の部分で若さが出てしまっている部分が否めないのかなと。ただ、今シーズンのJ2開幕戦では、JFLで50試合近い実戦経験を重ねてきた加藤健人(20・ファジアーノ岡山U-18)がJリーグデビューを飾るという大きなトピックスが。これにはU-18の同期に当たる田中雄輝も「ちょうどその時に僕はケガをしていて、リハビリの前にテレビで見たんですけど、『ケガしている場合じゃないな』と強く思いましたね。『早く自分もトップに上がって、J2の舞台でゲームができるようになりたいな』とも強く思いました」と大いに刺激を受けた様子。プロとして目の前の結果を追求するのはもちろんですが、同時に個人の成長にもあるいは結果以上に重きを置いているであろう"ネクスファジ"のセカンドステージも、十分に注視していく必要があるのは間違いありません。 土屋
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