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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
クォーターファイナルを懸けた注目の第2試合はフレッシュな顔合わせ。同校史上初めての東京8強を狙う都立東大和南と、2年連続選手権予選ファイナリストの堀越が激突する一戦は引き続き私立武蔵高校グラウンドです。
昨シーズンは新人戦、インターハイ予選、選手権予選といずれも地区予選ないし支部予選での敗退を強いられ、新チームに切り替わった昨年11月の新人戦でも早稲田実業に0-1で惜敗し、またも関東大会予選の出場を逃すなど、なかなか結果が付いてきていなかった都立東大和南。ところが、その新人戦前後から取り組み始めている"繋ぐ"スタイルが浸透してきた中で迎えた今大会は、支部予選を2連勝で勝ち抜くと、一次トーナメントも都立城東との撃ち合いを4-3で制し、八王子を7-0、東亜学園を1-0と続けて撃破し、堂々二次トーナメントまで。「目の前の1試合1試合を大切に戦ってきて、先のことは考えずに次の相手だけに集中してやってきた」と話すのはキャプテンを任されている岸本真輝(3年・JACPA東京FC)。この試合も一戦必勝の覚悟で難敵へと立ち向かいます。
前述したようにここ2年はいずれも選手権予選で西が丘の1勝を経験するなど、全国という舞台を明確に視野へ捉えながら、都内での存在感を高めている堀越。加藤悠矢(3年・アローレはちきたFC)や齊藤一輝(3年・青梅新町中)、広瀬智也(3年・FC Consorte)など、昨年からのレギュラーも残っている今シーズンは、関東大会予選でも国士舘を6-1で下してベスト8まで勝ち上がると、勢いそのままに今大会も都立小松川、東京実業と実力派の曲者集団を相手に共に2-1で競り勝って、二次トーナメント進出。昨年の西が丘ファイナルで屈した駒澤大学高が待つ次のステージへと進むためにも、ここで負ける訳には行きません。バックスタンド側には両チームの部員が勢揃いした大応援団が試合前からヒートアップ。11時30分。東大和南のキックオフで時計の針は動き出しました。
開始早々に決定機を創出したのは東大和南。3分に縦への推進力あるアタックから、最後は平塚真史(3年・POMBA立川FC)がエリア内で放ったシュートはDFにブロックされましたが、いきなり惜しいシーンを迎えると、9分にも決定的なチャンス。右サイドを運んだ宮尾慧吾(3年・東村山第四中)が中央へ折り返し、走り込んだ田中大地(3年・東京久留米FC)のシュートはわずかに枠の右へ外れたものの、まずは東大和南が2つの決定機を生み出します。
以降もゲームリズムは東大和南。「前半に自分たちがボールを持つ時間が長かったので、そこでうまくペースが掴めたのかなと思います」と大原康裕監督も話したように、岸本と飯島彪貴(3年・青梅霞台中)のCBコンビにGKの山本浩也(3年・日野第四中)も加えた3枚でゆっくりボールを回しながら、テンポアップする手段はフィードにパスワークにと自由自在。12分には飯島が左サイドへ好フィードを落とし、完全に抜け出した田中のクロスに住谷大輝(3年・清瀬第五中)が合わせたシュートは、DFが何とか寄せて堀越のGK諏訪雅幸(3年・FC Branco八王子)がキャッチしましたが、13分にも田中のドリブルで左CKを獲得すると、広瀬将一(3年・西東京保谷中)が蹴ったボールを宮尾が頭で折り返し、混戦の中からシュートは打ち切れなかったものの、披露し続けるゴールへの積極性。
一方、「ボールの取り所が掴み切れない印象があった」と佐藤実監督も話した堀越は、なかなか攻撃の形を創り切れない中で、15分には相手のミスを突いた広瀬智也が抜け出し掛けるも、ここは山本が絶妙の飛び出しで大きくクリア。21分にも照井基也(3年・足立第十四中)が右へ振り分け、田中柊(3年・TACサルバトーレ)の折り返しに、3列目から飛び出した加藤がシュートを放つも、東大和南の右サイドバックに入った金子雅弘(3年・FC Branco八王子)が間一髪で決死のブロック。直後に右から齊藤が蹴り込んだCKも中央でオフェンスファウルという判定に。先制点とは行きません。
26分は東大和南。平塚を起点に住谷が右へ展開し、宮尾のクロスをファーで田中が合わせたヘディングは諏訪にキャッチされたものの、30分も東大和南の決定機。左サイドでボールを持った平塚は、少し運びながら中央へスルーパス。走った住谷とGKが交錯し、こぼれをいち早く拾った宮尾がダイレクトで狙ったシュートはわずかにクロスバーの上へ。33分も東大和南。左から住谷がディフェンスラインの裏へ落とし、平塚のボレーは諏訪にキャッチされましたが、「堀越は強豪校だったので『やってやるぞ』という感じで、体もみんなキレキレでした。ボールも凄く入りましたし、好きなようにできたので楽しかったです」とは住谷。明け渡さないゲームリズム。
35分は堀越。右サイドバックの荒井友星(3年・SCUDETTO)が左へサイドチェンジを送り、トラップでマーカーと入れ替わった齊藤のミドルはわずかに枠の左へ。36分は東大和南。右から宮尾の上げたクロスを、ファーで収めた平塚のシュートは諏訪ががっちりキャッチ。38分は堀越にこの試合最初の決定的なシーン。加藤の右CKをCBの武田竜馬(3年・所沢JY)が完璧なヘディングで捉えましたが、ボールは正面で山本がキャッチ。40分は東大和南。金子、宮尾と綺麗に繋いだボールを住谷はクロスに変え、シュートを放った田中はオフサイドを取られたものの、抜群のサイドアタックに場内からも感嘆の声が。「堀越さんの方がボールを持って、向こうに主導権があるという展開を予想していたんですけど、逆にウチらがやってきたことが出せたので良かったです」とは大原監督。東大和南がペースを握り続けた最初の40分間は、スコアレスでハーフタイムに入りました。
後半は先に堀越へチャンス到来。43分にCBの市村知大(3年・所沢JY)は、田中柊のリターンを受けると、そのまま右サイドを持ちあがって自らクロス。岸本が体を張って掻き出したクリアを、田中柊がダイレクトで狙ったシュートは枠の右へ外れるも、キャプテンマークを託された市村の果敢なオーバーラップが、チームに勢いをもたらすかに見えた矢先に突如として動いたスコア。「『ここで来たか』と思いました」と岸本も言及したその時は46分。
左サイドバックの阿部文哉(3年・JACPA東京FC)からボールを引き出した広瀬将一は、すかさず左へスルーパス。「広瀬はパスが上手いので、『出してくれる』と信じてアイツを見ないで走りました」という住谷は切り返しでマーカーを振り切ると、右足で丁寧なコントロールシュートを選択。グラウンダーで巻いたボールは、そのまま右スミのゴールネットへ吸い込まれます。「中に行く時に1回相手にボールを触られて、『あっ、ヤベッ』と思ったんですけど、自分の前にボールが転がってきて、その時に前を向いたらファーが空いていて、そこに蹴り込めば絶対に入ると思ったので、巻いて蹴ったら入っちゃいました」と笑った10番がベンチ方向へ走り出すと、ピッチの選手もベンチの選手もすぐさま駆け寄って生まれた歓喜の抱擁。「住谷はここぞと言う時はやってくれる選手なんです」と指揮官が話せば、「『やっと決めたな』という感じでした」と岸本。とうとう東大和南が1点のリードを強奪しました。
追い掛ける展開となった堀越は、48分に中央やや左、ゴールまで約25mの位置から齊藤が直接狙ったFKも山本にキャッチされた直後の49分に、1人目の交替を決断。田中に替えて、東京実業戦で負ったケガの影響からベンチスタートとなっていたスピードスターの小磯雄大(3年・ヴィラセーゴ津久井)をここで投入して、サイドの推進力アップに着手すると、51分には早速小磯のドリブルで獲得した右CKを加藤が蹴り入れ、岸本のクリアに遭いましたが、小磯効果が早くもセットプレーに直結。52分にも加藤の右CKに突っ込んだ齊藤のヘディングはゴール左へ。53分にもエリア内でボールを拾った広瀬智也のシュートは枠の右へ外れたものの、少し変わり始めた両者のバランス。
57分に東大和南も1人目の交替を。中盤で奮闘した嘉規泰雅(3年・FC.VIGORE)に替えて、根本勇歩(3年・TACサルバトーレ)を送り込み、中盤のバランス維持へ。堀越も58分に齊藤が蹴った左FKを、もはや鬼神と化していた岸本に気合いのヘディングでクリアされたのを見て、1分後には2人目の交替として広瀬智也と丸山正悟(3年・FC Branco八王子)をスイッチすると、61分には齊藤の左クロスを照井がGKに競り勝ち、ボールはゴール前に浮かび上がるもカバーに入った阿部が冷静にクリア。同じく61分にも齊藤のパスから小磯が右サイドを切り裂き、縦に持ち出しながら放ったシュートはわずかに枠の左へ。ここに来てゲームリズムは互角に近い所まで。
双方が切り合うカード。62分は東大和南。再三サイドを突破し続けていた田中大地を下げて、北里勇次(3年・日野第四中)をピッチヘ送り出すと、直後には宮尾、根本、平塚、根本と細かく回し、最後は平塚がオフサイドになりましたが、根本もスムーズにゲームへ適応。66分には両者が同時に交替カードを。堀越はボランチの佐々木響希(2年・横浜FC JY)とキャプテンの雨宮悠二(3年・東京久留米FC)を入れ替え、ピッチの中に走力と気持ちを注入。東大和南は殊勲の住谷が下がり、「ずっとサブで我慢していたんですけど、出る時はいつもやってくれるので期待して出しました」と大原監督も言及した柿崎拓真(3年・羽村第一中)がそのまま最前線へ。残された時間は15分弱。交替策はどちらに力を。
衝撃の瞬間は両チームの同時交替からわずかに1分後の67分。ハーフウェーラインに近い左サイドで東大和南が獲得したFK。広瀬将一が蹴り込んだキックがグングン伸びると、ニアサイドへ突っ込んできたのは「少ない時間だけどもう1点取って、少しでもチームに力を与えられればいいかなと思いました」という柿崎。頭ですらしたボールはGKとニアポストの狭いコースをすり抜け、ゴールネットへ飛び込みます。これには「ちょっと出来過ぎですね」と大原監督も驚きの笑顔。自身にとってのファーストタッチで追加点を叩き込んだ柿崎本人も「以前『オマエは"頭利き"だな』とか言われたこともあって、ああいう形は得意な形でもあったので、チャンスかなと思って飛び込みました。嬉し過ぎましたね」と破顔一笑。ジョーカーが完璧な仕事を果たし、東大和南のリードは2点に広がりました。
「学校全体がみんな明るいですけど、特にサッカー部の子たちは明るくて、そこが良い形で今は出てきているのかなと思います」と大原監督も認めるように、もはやノリノリの応援団に背中を押され、さらなる追加点を目指す東大和南。68分には右サイドを北里が単騎で抜け出し、GKとの1対1は枠の左へ外れてしまいましたが、目の前でのチャンスに応援団のボルテージも一段階アップ。74分にも平塚のパスから、一度はDFに阻まれたこぼれを宮尾が自ら拾い、枠を越えるシュートまで。76分には堀越も小磯がエリア内まで独力で切れ込み、執念でシュートまで持ち込んだものの、「いつも通りの泥臭いプレーです」と言い切る岸本が体を投げ出して決死のブロック。アディショナルタイムの掲示は2分。歓喜の瞬間はもうすぐそこまで。
意地の反撃弾は90+3分。堀越が左サイドで手にしたFKを大きく蹴り込むと、小磯が頭で残したボールを丸山は体をねじってヘディング。ここはクロスバーを叩いたものの、誰よりも早くリバウンドに反応した照井がゴールネットへ流し込み、ようやく1点を返すことに成功しましたが、このゴールと時を同じくして主審が吹き鳴らしたのはタイムアップのホイッスル。「伝統的に言ったら凄いことをやったなという感じですけど、試合内容からしたら自分たちが通用していた部分もあったので、いわゆる"ジャイアントキリング"という感じではないと思います」という岸本の言葉にも頷ける堂々たる勝利。「内容的なものもチャンスの数や支配率も、彼らの方がほぼほぼ上回っていましたし、もうちょっとスコアが開いてもおかしくないような内容だったと思います」と佐藤監督も素直に認めた一戦を東大和南が制し、東京王者の待つベスト8へと駒を進める結果となりました。
衝撃的な80分間だったと思います。「支配率がほとんど相手で、自分たちには何もやらせてくれないと思っていた分、自分たちのサッカーがしっかり通用したので良かったです」(岸本)「実際楽しかったですし、思っていた以上に自分たちのサッカーができました」(住谷)「自分たちの繋ぐサッカーをビビらずにちゃんとやっていたように見えました」(柿崎)と誰に話を聞いても、自らのスタイルをしっかり打ち出して勝てたということに手応えを感じているようだった東大和南。ただ、てっきりこのスタイルはチームの伝統的なものかと思いきや、「繋ぐというスタイルも結構自分たちのチームでは新しくて、入学した頃は結構蹴っているサッカーだったんですけど、新人戦ぐらいから繋ぎ始めたかなと思います」という話を住谷から聞いて、よりその驚きは増してしまいました。あとは、「基本的にうるさいヤツらばっかなので、みんな元気があって、その元気が悪い方向に出る時もあるんですけど(笑)、まあまあいいヤツばっかなので(笑)」と住谷が笑ったように、とにかくピッチの選手もベンチも応援団も元気が良い!これもこういうトーナメントを勝ち抜くために、1つの大事な要素であることは間違いありません。「1試合ごとにどんどんチームがまとまっていって、今は本当に選手、スタッフ、マネージャー、応援してくれる人、すべての人が1つになって戦えていますし、一体感がものすごく出ているから、ここまで来られているのかなと思います」とチームの団結を強調したのはキャプテンの岸本。これで支部予選から数えると6連勝を飾った東大和南は、都内屈指の実力を有する駒澤大学高とどういうゲームを繰り広げてくれるのでしょうか。今から日曜日が非常に楽しみです。 土屋
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