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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年06月07日

インターハイ東京1回戦 東京朝鮮×私立武蔵@私立武蔵G

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0605musashi.JPG東京王者を決するインターハイ予選もいよいよ二次トーナメントへ突入。先陣を切って東京朝鮮と私立武蔵が激突する1回戦は、2頭のヤギがお出迎えしてくれる私立武蔵高校グラウンドです。
昨シーズンはインターハイ予選、選手権予選と共にベスト4での敗退を突き付けられ、あと一歩の所で全国には届かなかった東京朝鮮。ただ、主力の大半が入れ替わった今シーズンも、キャプテンを託されたリャン・ヒョンジュ(3年・大宮アルディージャJY)やCBのキム・テウ(3年・西東京朝鮮第一中)といった昨年からのレギュラーに加え、クォン・ジュンソク(3年・山梨学院高)やムン・インジュ(2年・埼玉朝鮮中)など新たな力も台頭し、「今年は本当に良いメンバーが揃っているので、全国に行かないとダメだと思う」とリャン・ヒョンジュもきっぱり。先週の一次トーナメント決勝も保善に苦しめられながら、PK戦を制してこのステージまで。この日も絶対に負けられない戦いへ赴きます。
都立駒場と多摩大目黒を相次いで撃破し、ベスト8まで躍進したのは昨シーズンの関東大会予選。さらにインターハイ予選でも難敵の保善を退け、敗れたものの早稲田実業と延長までもつれ込む熱戦を演じるなど、近年は確かな存在感を放っている私立武蔵。半分近くレギュラーの残った今シーズンは新人戦も早々に敗退し、リーグ戦も連敗スタートとなりましたが、今大会は4連勝で迎えた先週末のブロック決勝で、強豪の帝京を流れの中からの2ゴールで下して二次トーナメント進出。「僕たちはチャレンジャーの気持ちでやっている」と言い切るのは守護神の松山凛之介(3年・武蔵中)。慣れ親しんだホームグラウンドでさらなる躍進を狙います。ピッチサイドには保護者の方々と東京朝鮮の大応援団が。楽しみな一戦は武蔵のキックオフで幕が上がりました。


最初の決定機は開始3分の東京朝鮮。リャン・ヒョンジュのスルーパスを受け、リ・トンソン(3年・東京朝鮮第五中)がフリーで抜け出してフィニッシュに持ち込むも、飛び出した武蔵のGK松山がファインセーブで弾き出し、リバウンドに詰めたリャン・ヒョンジュのシュートも再び松山がファインセーブ。その左CKをリャン・ヒョンジュが蹴り込むと、キム・テウが合わせたヘディングは枠の左へ。いきなりのラッシュも先制とは行きません。
すると、「武蔵はまずは固めて守って、そこから攻めて行くというのがあるので、そういう所で僕が止めたり、守備陣が止めたりすることで雰囲気は良くなると思う」という松山の連続セーブで勢いは一気に武蔵へ。5分にはレフティの大塚信吾(3年・武蔵中)が右のハイサイドに落とし、走った松本周平(3年・武蔵中)のクロスへフリーで飛び込んだ山田雄貴(3年・武蔵中)のボレーは枠の左へ外れましたが、こちらも決定的なシーンを創出すると、11分にも「あの子は嫌でしたね」と東京朝鮮の高隆志監督も称賛したルーキーの梶原健太郎(1年・武蔵中)を起点に、左サイドで松本が粘って繋ぎ、大塚がトーキックで狙ったシュートはわずかにゴール左へ外れたものの、続けて迎えた決定機に意気上がる武蔵応援席。
以降もゲームリズムは完全に武蔵。セカンドは大塚と高橋俊哉(2年・武蔵中)のドイスボランチがことごとく回収し、「ウチはもう外は1対1では行けないので、なるべく早め早めにサイドチェンジしてというのを狙っていた」と大西正幸監督が明かしたように、10番を背負った大塚が左右に振り分けながら、繰り返すサイドアタック。17分にもサイドバックの柳原佑紀(3年・武蔵中)とのワンツーで左サイドを抜け出した松本のクロスに、フリーで合わせた山田のヘディングは枠の左へ逸れましたが、「守備もできて攻撃も良い形を創れていたと思う」と松山。漂う先制点の雰囲気。
ところが、先にゴールネットを揺らしたのはやはり赤きナンバー10。20分に左サイドの高い位置でスローインを獲得した東京朝鮮は、チョン・リョンホ(3年・埼玉朝鮮中)がロングで投げ入れると、一瞬のエアポケットが生まれ、エリア内でボールがバウンド。これを見逃さなかったリャン・ヒョンジュはフワリとした浮き球でボールをゴールへ流し込みます。キャプテンは迷わず応援団の元に全力で駆け寄り、大きく広がった歓喜の輪。「あそこで足が出るのが凄いですよね。やっぱりキャプテンです」と高監督も認めるエースの一撃が飛び出し、劣勢の東京朝鮮が1点をリードしました。
「セットプレーというのはゲームの流れが1回切れるので、逆に一番集中しなくてはいけない所なんですけど、最初に競るのは結構競れていた中で、こぼれた所の対応が僕も含めあまり良くなかったなと思います」と松山は冷静に失点シーンを振り返りましたが、ビハインドを負ってもペースは変わらず。24分には右で飯塚健太郎(3年・武蔵中)が縦に流し、駆け上がったサイドバックの森陽暉(3年・武蔵中)が入れたクロスは、ニアで東京朝鮮のCBキム・セヨン(3年・東京朝鮮中)が懸命にクリア。30分に左から大塚が蹴ったFKもDFに跳ね返されましたが、武蔵の攻勢は続きます。
「たぶん本人たちが思っていた以上に相手がスピードがあって上手かったので、選手は動揺したと思います」と話した高監督は、30分に早くも1人目の交替を決断。チョン・テギョン(3年・東京朝鮮第一中)とピョン・ヨンジュ(3年・西東京朝鮮第一中)を入れ替え、リャン・ヒョンジュとチョン・リョンホの2トップに切り替えますが、31分のチャンスも武蔵。相手GKのキックミスを奪った高橋は、松本とのパス交換から枠内ミドルを放つも、ここは東京朝鮮のGKチュウ・サンホン(2年・神奈川朝鮮中)が自ら責任を取ってしっかりキャッチしたものの、ゲームの流れは変わりません。
33分も武蔵。梶原、松本、山田の連携で奪った右CKを大塚が蹴り込み、こぼれを柳原が残すと、CBの柳瀬薫(3年・武蔵中)が打ち切ったミドルは枠の右へ。35分も武蔵。松本がここも粘って残し、山田がボレーで叩いたミドルは枠の右へ外れましたが、6年間に渡って共に技術を磨いてきた3年生を中心に、ホームチームが明確に捉える同点への道筋。
それでも勘所を逃さないのが今年の"朝高"。39分に「中へ中へ、縦へ縦へ急ぎ過ぎちゃった所もあった」(大西監督)武蔵の隙を見逃さずにショートカウンターを繰り出すと、チョン・リョンホのスルーパスに抜け出したムン・インジュは左足一閃。強烈な弾道はそのまま右スミのゴールネットへ突き刺さります。「前半は硬かったですけどやっぱり凄いですね。あの子はちょっと違います」と指揮官も評価する2年生レフティがきっちり一仕事。武蔵ペースで推移した前半は、東京朝鮮が2点をリードする格好でハーフタイムに入りました。


後半のファーストシュートは東京朝鮮。43分に左サイドで前を向いたクォン・ジュンソクが思い切り良くミドルを繰り出し、ボールはわずかに枠の右へ外れたものの、この日はボランチに入った11番が果敢なシュートチャレンジを。44分は武蔵。飯塚、森と右サイドで繋いだ流れから、最後は山田が1人外して放ったミドルはDFをかすめてわずかに枠外。双方がミドルレンジから惜しいフィニッシュを取り合って、セカンドハーフが立ち上がります。
44分は武蔵に1人目の交替。「向こうが後半はウチの左サイドを行き出したから、それをケアしたかったのもあって」(大西監督)、奮闘した1年生の梶原を下げて同じ左サイドハーフに伊藤真士(2年・武蔵中)を投入しましたが、以降の勢いは東京朝鮮に。45分には高い位置でボールを奪い切ったピョン・ヨンジュが右からグラウンダーでクロスを流し込み、リャン・ヒョンジュの絶妙スルーを経て、ムン・インジュが右足で打ったシュートは枠の右へ。47分にもムン・インジュのスルーパスからチョン・リョンホが1対1を迎えるも、ここは松山がファインセーブで仁王立ち。50分と51分には続けてリャン・ヒョンジュがそれぞれ枠越えと松山にキャッチを強いるシュートを放つなど、徐々に踏み込まれていくアクセル。
54分には武蔵に久々のチャンス。柳瀬が右のハイサイドへフィードを送ると、森は完全なフリーの状態で独走。丁寧に送ったクロスに松本が飛び込むも、ここは東京朝鮮ディフェンスもきっちり対応してシュートは打たせず。55分には東京朝鮮に2人目の交替。リ・トンソンとカン・ガンホン(3年・東京朝鮮中)をスイッチして、推進力アップに着手。61分にはそのカン・ガンホンがCKを獲得すると、右からムン・インジュが入れたボールは、武蔵のキャプテンを託された大谷拓也(3年・武蔵中)が大きくクリア。62分にもカン・ガンホンのパスから、ピョン・ヨンジュの枠内シュートは松山が掴み、直後にムン・インジュが蹴った右CKにリャン・ヒョンジュが合わせたヘディングはクロスバーにハードヒット。スコアは2-0のままで、ゲームは最後の15分間へ。
まずは何とか1点を返したい武蔵のラッシュはここから。65分には山田のスルーパスに飯塚が抜け出し掛け、ここは良いタイミングで飛び出したチュウ・サンホンがきっちりクリアしましたが、際どいシーンを。高橋と福田旺史(3年・武蔵中)を入れ替える2人目の交替を挟み、67分には松本が左サイドで2人をかわしてえぐり切り、エリア内から狙ったシュートはキム・セヨンが体を投げ出してブロック。指揮官も矢継ぎ早に3枚目のカードとして杉本将樹(3年・武蔵中)を送り込み、68分にも松本がドリブルから打ち切ったシュートはキム・テウが体でブロックされたものの、「後半は『切れちゃうかな』という気がしたんですけど、切れないで結構チャンスを創れていた」と大西監督。粘る豊玉の緑。
69分は東京朝鮮に3人目の交替が。右サイドバックのハン・チュンヒョン(3年・東京朝鮮中)とプ・チウ(2年・東京朝鮮第五中)をスイッチして、取り掛かるゲームクローズ。70分にはピョン・ヨンジュ、カン・ガンホン、ピョン・ヨンジュと細かく繋ぎ、リャン・ヒョンジュのシュートは松山がキャッチ。72分は武蔵。大塚の右CKがこぼれ、福田がボレーで叩いたミドルはクロスバーの上へ。74分は東京朝鮮。左サイドバックのリ・ヨンギ(3年・東京朝鮮中)を起点にプ・チウがクロスを上げ切り、突っ込んだカン・ガンホンのヘディングは枠の上へ。直後にもクォン・ジュンソクが左へ素晴らしいサイドチェンジを送り、フリーで受けたカン・ガンホンのシュートは、しかし松山がファインセーブで阻止。残された時間は5分とアディショナルタイム。
ゲームに幕を下ろしたのは、松山も「アレは本当に相手が上手かったと思います」と素直に認めるトップストライカー。76分にリ・ヨンギが左へサイドを変えると、開いていたリャン・ヒョンジュは切り返しでマーカーを外し、少し中へ潜って右足を強振。「速くて低いボールで落ちてきた」と振り返る松山も反応はしていましたが、凄まじいスピードでその手を弾いたボールは直後にゴールネットへ飛び込みます。その衝撃に一瞬静まり返った場内。武蔵も十分に健闘したものの、ファイナルスコアは3-0。東京朝鮮がリャン・ヒョンジュ圧巻のドッピエッタで、2年連続となるクォーターファイナル進出を手繰り寄せる結果となりました。


「凄く良いチームだと思います。本当に強かったですね」と東京朝鮮の高監督も口にしたように、武蔵のチーム力が際立ったゲームだったと思います。「最初の感じでやれたら良かったですけどね。3-0になるような試合ではなかったと思いますが、崩されていないのにやられてしまうというのが厳しかったです」とファインセーブを連発した松山が話せば、大西監督も「0-3だからあまり大きなことは言えないけど」と前置きしながら、「悪くはなかったと思いますよ。要は先に点を取れたか取れなかったかで。帝京戦も立ち上がりにピンチがあったし、今日も1本ありましたけど、ああいう形で防いで、その後に点を取れたんだけど今回は取れなくて。帝京戦とはそこの差だけですね。選手たちは普通に自分たちの力を出してやっていたと思います」と一定の手応えを掴んだ様子でした。ただ、これで選手権予選は1次予選が免除となったため、9月からのスタートが濃厚。受験を控える3年生にとっては夏休みのことを考えると、少し悩ましい現状が浮上してくることになります。「『責任取れ』って言っているんですよ。もういきなり2次予選なんだから、『これを後輩だけでやったら後輩もたまらないぞ』と言っているんですけどね。去年は1次予選で負けたんですけど、3年生はみんな残って、しかも現役で東大に5人入ったんですよ。だから今年はもうやるのが当たり前な感じはあったけど、その1次予選を飛び越しちゃったからね」と大西監督も苦笑い。「進学校というのもあって、毎年他の学校より早く辞める人も多いので、結構「オマエどうなんだ?」という話をすることも多いんです。今はスタメンじゃない人は厳しい面があるとは思うんですけど、やっぱり彼らが辞めてしまうと雰囲気も変わったりしますし、全員で6年間頑張ってきたので僕としては全員で頑張りたいなと。残って欲しい気持ちは本当なので、色々話をしていきたいと思います」と松山も心の内を明かしてくれました。個人的には高校3年の選手権は1回しかやってこないので、続ける選択肢を勧めたい気持ちもありますが、そこは当然それぞれの人生の選択なので難しい所。この日の80分間を経て、私立武蔵の3年生たちが下す決断は果たして如何に。        土屋

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